レッドリアリティ

アタラクシア

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3日目

覚悟

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「ぐ――ぬぅ――!!」

苦しんでる声が耳元から聞こえる。何度も聞いたダメージの入る音。それも完璧と言えるほどに決まった。

抑え込むのは不可能。しかしすぐには動けないはず。倒すことができないのは、この1分にも満たない時間で理解できた。

逃げる。それしか生き残る方法は無い。こんなんとまともにやってられるか。

とりあえず手を離す。まだ桃也は動けてない。折れている可能性があるのは腕だ。脚があるなら逃げられる。

「桃也――」


――首。息が急にできなくなった。

「え――」

締められる。呼吸が止まると思考も止まる。首にかけられた手。その手の主は義明。

「ふん――!!」


小次郎を上に投げ飛ばす。脳天に天井が衝突。地面へと抵抗なく落ちた。

「――」

動けない。動かせない。甘い痺れが手足に広がる。声が出せない。

目の前で立ち塞がる義明。相手は敵。自分を捕まえようとしている。なのに小次郎は動けなかった。


「ぐ……ぁ……」
「ぶ――」

2対1。地面に落ちるは桃也と小次郎。見下ろすは義明。勝者――遠藤義明。

肩を回す。首を回す。肩甲骨をゴリゴリと動かす。ノーダメージではない。食いついてきた。

漫画のような相手への敬意などない。今は命令をただ実行するのみ。小次郎の捕獲と――桃也の殺害だ。

「……」

ちょうどいい場所に桃也の頭がある。蹴りを叩き込みやすい角度。

腰を捻る。脚に力を入れる。息を大きく吐く。狙いは定まった――。





――。

爆音。頬から血が流れる。そして火薬の匂い。入口の方をゆっくりと振り向く。


氷華だ。ライフルを向けている。頭を狙った。だが自分の震えで当たらなかったようだ。

「……よ、義明……おじさん」

――目が。拳が。怒りに包まれる。開いた瞳孔に氷華が映る。

「裏切ったな……氷華……!!!」
「うぅ……」

声に怒り――超えて殺意すら感じる。震えが止まっていない。奥歯がずっとガチガチと鳴っている。

恐怖。それでも。震えながら。ライフルを握りしめた。覚悟を決める。全てを決める。もう戻る気はないと。

「……た、正しいことを……する」
「正しいこと――!?」
「もうみんなが人を傷つけるところを見たくない……!!」

引き金に指を入れる。次に狙うのは胴体。多少震えていても狙いは外れない。

「氷華――!!!」





どす黒い殺意が義明の背後から突き刺さった。久しく感じていなかった殺意。

止めることも止まることもままならない。生命としての本能が総立ちする。そんな殺意だった――。


黒い服。黒い影。焔のような残像を纏って縮地する。振りかぶった包丁。先端は義明の方へと向けられている。

「なッッ――!?」

完全不意打ち。来ると思ってなかった攻撃。防御。対策。刺される場所は腹部。避けることはできない。

逆手持ちだ。斬ることは考えにくい。刺すための持ち方。だから刺してくるはず。


それは予想通り。振りかぶった包丁を押し込んだ。

突き刺さったのは腹ではなく前腕。瞬時に防御はできた。だけどあくまでガード。ゲームのようにダメージを消すことはできない。

前腕から血が出る。包丁を伝って持ち手まで血滴が流れる。痛み。苦痛。顔が歪む。

(硬っ……!!??)

頭に流れてきた想像イメージは岩、鋼鉄、鉱石。根元まで突き刺すつもりだった。なのに実際に刺さったのは先端から数センチ程度だ。

肉の鎧と比喩では聞く。よもや比喩ではない。義明は本当に『肉の鎧』を身にまとっていたのだ。


その鎧を――貫通。左肩に熱い感覚。撃たれた。氷華が撃った。もう躊躇はしない。覚悟は決めてある。

それなら完全に敵。義明とて手加減もしない。敵にするはずがない。

桃也を掴んで、ゴミを捨てるかのように氷華へ投げ捨てる。まるでボールを投げたかのようなスピード。避けられずに氷華と激突する。


腕に刺さった包丁を抜いて叩き割る。生暖かい血を腕を振ってばらまいた。

「ん?」

――小次郎は動いていた。地面に落ちている拳銃に手を伸ばして掴んでいる。

「鬱陶しい………!」

飛び道具。それも高威力の銃を使う者が2人。思わず漏らしてしまった言葉も無理はない。

だからなんだという話だ。そう言うかのように小次郎は銃口を向けた。同時に義明も走り出した――。
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