レッドリアリティ

アタラクシア

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3日目

暁星

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血が吹き出る。真っ黒な衣服に血が染み込んでいく。100キロを超える体重が刃に沈む。わざわざ振り抜く必要などない。

肉。骨の隙間を超えて内臓。深く深く突き刺さる。心臓からはズレた。それでも顔が歪むほどの痛みが襲ってくる。

「ぐ――ぎ――ぬぅ――!!」


体は固定された。ナイフが刺さって動けない。止まっている相手に銃弾を当てることなど用意だ。

銃口を向け、引き金に指を入れる。貫通したとしても桃也には当たらない。


――回避は不可能。ならば撃たせなければいい。拳銃を構える小次郎を蹴り飛ばした。

「っっは――」

壁に叩きつけられる。あまりの衝撃。体の動きは止まる。

体を回転させて桃也に肘をぶつけた。ナイフは離さない。だが反動で背中からナイフが抜ける。

こめかみに肘の打撃。地震のような揺れが視界を支配する。車酔いのような気分が喉の奥から溢れだしてきた。


――次の攻撃は掌底だった。打撃ではある。単純な攻撃力ならパンチの方が強い。だが怯ませる、という点ならこちらの方が有用だ。

さらに押し込む。数メートル先の壁に背中が衝突した。骨全体が携帯のマナーモードのように振動する。

「ぐ……ふぅ」


背中の傷に小次郎の拳がめり込む。傷口が開き、赤色の血液が滝のように流れる。

「小癪な……」

反撃のフック。――避けた。空いた胴体にアッパー気味のボディを叩き込む。

「硬――!?」
「グゥ――あああ――!!」

顔と腹部を掴んで持ち上げる。頭上に持ち上げ、地面に頭部から――。


――直前。桃也と氷華が立ち上がっている場面が見えた。

「ふん――!!」

全員を潰す。小次郎を投げ飛ばした。立ち上がろうとする2人にぶつかり、3人ともが絡まって地面に転げ落ちた。



「何飛んできてんだお前……!」
「アイツに言えや……俺は悪くないだろ」
「……言い合いしてる場合じゃないでしょ」

顔を振って小石を払う。

「時間がない。さっさと逃げないと」
「外に執行教徒が来てるのか?」
「うん……」
「このまま戦うにしても時間がかかるよな」

現在は優勢。小次郎の言うとおり、このままいけば勝てる可能性は高い。勝てればかなりの戦力低下を狙えるだろう。

しかし時間がかかりすぎる。武器が減っている現状、長期戦になりすぎると消耗が激しい。そうなると外にいる執行教徒の相手ができなくなってしまう。

「……執行教徒の数は?」
「二桁はいる」
「そうか……」


――小次郎が深呼吸をする。

「嫌な作戦を思いついた」
「なんだ?」
「――俺が囮になってやる」
「はぁ?囮?」
「その間に逃げろ。街に行ったら警察署へ行け。俺の名前を出せば捜査もしてくれるはずだ」
「馬鹿言うな殺されるぞ。それも惨たらしく」
「悪が栄えるよりマシだ」
「俺にそれを言うのかよ」

自己犠牲。自分を犠牲にして仲間を逃がす。相当の覚悟がなければできないことだ。

「お前や氷華じゃ時間稼ぎにもならないだろ。この中で1番強いのは俺だ」
「だが……」
「状況を考えろ。殺人鬼のお前が非情にならないでどうする」
「……わかったよ」

後悔。自分の力不足。手が真っ青になるほど拳を握りしめる。

「氷華。頼んだぞ」
「う、うん」
「……よし」


頬を叩く。――気合いが入った。

「桃也」
「……なんだ?」
「――」





「――行くぞ」

全てを託した。全てを頼んだ。後は自分の仕事を果たすのみ――。


走り出す。扉までは3mもない。距離は3人も義明も同じである。

「逃がすかっっっ!!」

この時間。このタイミング。義明にとっては予想外だ。体が動いたのは運がいい。頭が錆び付いていなかったのは幸運だった。



――扉の前で脚を止める。不敵な薄ら笑い。桃也と氷華は、歯を食いしばりながら監禁部屋から脱出した。

「……」

義明は立ち止まる。後ろを振り向かずに扉を閉める小次郎を睨みつけた。

「貴様……」
「これで2人っきりだ」
「どうなるかは分かってるんだろうな」
「さぁ?でも囮になったからといって『自殺』するわけじゃないぞ。デカブツは何人も投げてきた。今更お前程度を倒しても、俺にはなんの栄誉にもならない」
「阿呆が――!!!」
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