82 / 119
4日目
狙撃
しおりを挟む
「ぐふっ、くくくく――見つけた」
貫通した脇腹には激痛が走っている。痛みで悶えない方がおかしいくらいだ。それだというのに――椿は痛みよりも早く走り出した。
「……」
氷華は淡々としていた。コッキングをして次の弾の用意。これは椿との距離が離れているからこそできることだ。
狙いは頭。近づいてくれば更に当たる可能性は高まる。だが――。
――それは動かなければの話。視界に氷華が移れば椿のターン。鳥のような視力で氷華が引き金を引く姿を見ることができた。
狙いがこちらなら後はタイミングを計るだけ。氷華が引き金を引く、と同時に椿は右へと移動した。
銃弾は椿に当たることなく山の中を通過していく。見事な反射神経。人外じみている。
「ちっ」
距離にして50m。近接戦闘は避けたい氷華。ここで逃亡するのも手のひとつ。
だが今の氷華はスタミナ切れもいいとこだ。相手も満身創痍とはいえ、すぐに追いつかれる。その後の攻撃はいなせない。
だったらここで受けて立つ。まだ距離も空いている。あと1発は撃てる。
コッキング。そしてもう一度構えた。二度は外さない。今度は避けられるのも加味して銃を放つ。
(まだこっちが圧倒的に優位な場所。落ち着け私)
引き金に指を入れる。ここで仕留めなければ不利になる。避けないといけない事態だ。だからこその焦りもある。
野生動物とはまた違った緊張感。意志を持った生物が自分に明確な殺意を持って殺しに来ている。いつもとは違う種類の恐怖だ。
ただ椿の方も焦りを感じていた。このままヒットアンドアウェイでの戦法をされてはジリ貧。こちらが先に潰れてしまう。
運のいいことにスピードではこちらの方が上だ。近づけば勝率は高まる。現状では勝てる可能性が0%だ。
両者にとっても緊張の一瞬。重くなる引き金。重量を増す刀。うるさい森の音がほんの少しの間だけ――静まり返った。
――放たれた銃弾。あえて狙いをズラした。先程は右にズレた。真正面から来るのは椿も避けたいはず。
だからもう一度右へズレる。今度当てるのは脳天。考える暇だって与えない。
椿は――しゃがんだ。地面から生えていた草を引っ張ったのだ。どうやら想像以上に草は地面に根を張っていたらしい。
引っ張ったはずなのに、椿が引っ張られるようになった。単純にしゃがむよりもこっちの方が素早い。
銃弾は椿の額を少し掠めた。直撃はしていない。額から流れる血で椿はそれを認識した。
(避けれた……!!)
(避けられた……!!)
椿の姿はまるでクラウチングスタート。これは意図してしたことじゃないが、功を奏した。――しゃがんだことによって止まったスピード。それが再加速を果たしたのだ。
蹴りあげる地面。舞い上がる土と葉。ゴキブリと見間違う程の初速スピード。銀色の二刀が氷華の体をようやく写した。
誤算。避けられるにしても誤算だ。この避け方は想定していなかった。1度止まって再加速。変則的な動きに思考が追いつかない。
――距離は残り10m。この時点でようやくコッキングを終えた。また狙うのか。いやそれでは間に合わない。
距離はかなり縮まってしまった。不測の事態。最悪の事態だが、受け入れなくてはならない。相手の土俵に踏み込むしかない。
取り出したのはマチェット。ナイフよりかは心強い。だが相手は日本刀。日本が誇る、日本を代表する武器。射程距離でも硬度でも負けている。
だがマチェットの有利な点は切れ味。椿に当てさえすれば大ダメージを与えることだって夢じゃない。
それはそれとして真っ向勝負はダメだ。マチェットで防御しつつ銃で隙を作る。そこを――叩く。最前の手と言えよう。
(いつも剣の練習してるとこしか見てなかった……どの程度の威力かは分かんない)
まずはこの防御。これでどのくらいの力かを推し量る。
――刀の射程距離はもう少し。だから椿は踏み込んだ。さっきのクラウチングスタートとは比較にならないほど。
射程距離に届いた。右に体を捻り、最大まで力を溜める。
捻りの力。
日本刀の重さ。
そして助走によるスピード。
3つの溜まった力が合わさった結果――マチェットと刀が触れ、氷華の方にマチェットの峰がくい込んだ。
「――」
そのまま刀を押し込む。重量は軽くない。重いものが肋骨部分に衝突した。骨は耐えきれずに――砕ける。
「っっぎっ――!!??」
溜まった力は全て解放しきれていない。さらに押し込んで、野球ボールを打ち返すかのごとく、刀を振り切った。
2mほど後方。大木に氷華の背中が衝突する。激痛。例えようのない痛みが氷華を襲った。
「かっ――はっ――!?」
まだ攻撃は収まらない。さらなる踏み込み。椿は木を背にしている氷華に向かって刀を振るう。
先程よりからスピードが落ちる。痛みに支配されていた氷華だが、死の恐怖はそれを上回った。即座に転がって刀を回避する。
地面と転がる。折れた骨の場所を地面に付けた。結果的に見ればいい判断だったが、氷華の体はそれをNOと言った。
「いっっ――っっっっ!!」
とにかく痛い。痛み。何よりも痛み。歯がガチガチと震えるほど。持っているものが壊れそうになるほど握りしめる。
これはチャンスだ。しかし椿もまた動けない。単純なヤツダメージ量は椿の方が上だ。しかも無理な動きを何度も行ったのだ。
「く……そ……」
仇が近くにいる。殺すべき者が近くにいる。なんから隙を晒している。なのに動けない。体が一時的に限界を迎えてしまっていた。
貫通した脇腹には激痛が走っている。痛みで悶えない方がおかしいくらいだ。それだというのに――椿は痛みよりも早く走り出した。
「……」
氷華は淡々としていた。コッキングをして次の弾の用意。これは椿との距離が離れているからこそできることだ。
狙いは頭。近づいてくれば更に当たる可能性は高まる。だが――。
――それは動かなければの話。視界に氷華が移れば椿のターン。鳥のような視力で氷華が引き金を引く姿を見ることができた。
狙いがこちらなら後はタイミングを計るだけ。氷華が引き金を引く、と同時に椿は右へと移動した。
銃弾は椿に当たることなく山の中を通過していく。見事な反射神経。人外じみている。
「ちっ」
距離にして50m。近接戦闘は避けたい氷華。ここで逃亡するのも手のひとつ。
だが今の氷華はスタミナ切れもいいとこだ。相手も満身創痍とはいえ、すぐに追いつかれる。その後の攻撃はいなせない。
だったらここで受けて立つ。まだ距離も空いている。あと1発は撃てる。
コッキング。そしてもう一度構えた。二度は外さない。今度は避けられるのも加味して銃を放つ。
(まだこっちが圧倒的に優位な場所。落ち着け私)
引き金に指を入れる。ここで仕留めなければ不利になる。避けないといけない事態だ。だからこその焦りもある。
野生動物とはまた違った緊張感。意志を持った生物が自分に明確な殺意を持って殺しに来ている。いつもとは違う種類の恐怖だ。
ただ椿の方も焦りを感じていた。このままヒットアンドアウェイでの戦法をされてはジリ貧。こちらが先に潰れてしまう。
運のいいことにスピードではこちらの方が上だ。近づけば勝率は高まる。現状では勝てる可能性が0%だ。
両者にとっても緊張の一瞬。重くなる引き金。重量を増す刀。うるさい森の音がほんの少しの間だけ――静まり返った。
――放たれた銃弾。あえて狙いをズラした。先程は右にズレた。真正面から来るのは椿も避けたいはず。
だからもう一度右へズレる。今度当てるのは脳天。考える暇だって与えない。
椿は――しゃがんだ。地面から生えていた草を引っ張ったのだ。どうやら想像以上に草は地面に根を張っていたらしい。
引っ張ったはずなのに、椿が引っ張られるようになった。単純にしゃがむよりもこっちの方が素早い。
銃弾は椿の額を少し掠めた。直撃はしていない。額から流れる血で椿はそれを認識した。
(避けれた……!!)
(避けられた……!!)
椿の姿はまるでクラウチングスタート。これは意図してしたことじゃないが、功を奏した。――しゃがんだことによって止まったスピード。それが再加速を果たしたのだ。
蹴りあげる地面。舞い上がる土と葉。ゴキブリと見間違う程の初速スピード。銀色の二刀が氷華の体をようやく写した。
誤算。避けられるにしても誤算だ。この避け方は想定していなかった。1度止まって再加速。変則的な動きに思考が追いつかない。
――距離は残り10m。この時点でようやくコッキングを終えた。また狙うのか。いやそれでは間に合わない。
距離はかなり縮まってしまった。不測の事態。最悪の事態だが、受け入れなくてはならない。相手の土俵に踏み込むしかない。
取り出したのはマチェット。ナイフよりかは心強い。だが相手は日本刀。日本が誇る、日本を代表する武器。射程距離でも硬度でも負けている。
だがマチェットの有利な点は切れ味。椿に当てさえすれば大ダメージを与えることだって夢じゃない。
それはそれとして真っ向勝負はダメだ。マチェットで防御しつつ銃で隙を作る。そこを――叩く。最前の手と言えよう。
(いつも剣の練習してるとこしか見てなかった……どの程度の威力かは分かんない)
まずはこの防御。これでどのくらいの力かを推し量る。
――刀の射程距離はもう少し。だから椿は踏み込んだ。さっきのクラウチングスタートとは比較にならないほど。
射程距離に届いた。右に体を捻り、最大まで力を溜める。
捻りの力。
日本刀の重さ。
そして助走によるスピード。
3つの溜まった力が合わさった結果――マチェットと刀が触れ、氷華の方にマチェットの峰がくい込んだ。
「――」
そのまま刀を押し込む。重量は軽くない。重いものが肋骨部分に衝突した。骨は耐えきれずに――砕ける。
「っっぎっ――!!??」
溜まった力は全て解放しきれていない。さらに押し込んで、野球ボールを打ち返すかのごとく、刀を振り切った。
2mほど後方。大木に氷華の背中が衝突する。激痛。例えようのない痛みが氷華を襲った。
「かっ――はっ――!?」
まだ攻撃は収まらない。さらなる踏み込み。椿は木を背にしている氷華に向かって刀を振るう。
先程よりからスピードが落ちる。痛みに支配されていた氷華だが、死の恐怖はそれを上回った。即座に転がって刀を回避する。
地面と転がる。折れた骨の場所を地面に付けた。結果的に見ればいい判断だったが、氷華の体はそれをNOと言った。
「いっっ――っっっっ!!」
とにかく痛い。痛み。何よりも痛み。歯がガチガチと震えるほど。持っているものが壊れそうになるほど握りしめる。
これはチャンスだ。しかし椿もまた動けない。単純なヤツダメージ量は椿の方が上だ。しかも無理な動きを何度も行ったのだ。
「く……そ……」
仇が近くにいる。殺すべき者が近くにいる。なんから隙を晒している。なのに動けない。体が一時的に限界を迎えてしまっていた。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
M性に目覚めた若かりしころの思い出 その2
kazu106
青春
わたし自身が生涯の性癖として持ち合わせるM性について、終活的に少しづつ綴らせていただいてます。
荒れていた地域での、高校時代の体験になります。このような、古き良き(?)時代があったことを、理解いただけましたらうれしいです。
一部、フィクションも交えながら、述べさせていただいてます。フィクション/ノンフィクションの境界は、読んでくださった方の想像におまかせいたします。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
M性に目覚めた若かりしころの思い出
kazu106
青春
わたし自身が生涯の性癖として持ち合わせるM性について、それをはじめて自覚した中学時代の体験になります。歳を重ねた者の、人生の回顧録のひとつとして、読んでいただけましたら幸いです。
一部、フィクションも交えながら、述べさせていただいてます。フィクション/ノンフィクションの境界は、読んでくださった方の想像におまかせいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる