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4日目
準備
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氷華は凛を抱き抱えたまま外の様子を伺っていた。義明は辺りにいない。しかし他の村人がいた。キョロキョロと周りを見回している。
おそらく氷華と凛を探しに来たのだ。今の状態でも殺すことなら可能。だが問題はその後だ。アリのように湧き出てくる村人を全員殺すのは無理。しかもアリの中にはゴリラも混じってる。
なのでここは隠れるのが正解の択だ。とりあえず小屋の中に身を隠す。
「……どうしようか」
「お怪我大丈夫?」
「うん、大丈夫……」
ただでさえハードモードな状況。凛を引き連れたままだと更に難易度が上がってしまう。かといって放っていく訳ない。
「とりあえずは待機か……桃也も終わってなさそうだし」
「……パパ?」
「ん?大丈夫だからね」
頭を撫でる。また安心したのか、氷華の胸に顔を埋めた。ズキリと痛むのは顔に出さない。
外ではずっと音がしていた。人が歩く音もそうだが、もっと違う何かの音だ。例えるなら重いものを運んでいるような。
「……?」
ここがバレたのではなさそうだ。じゃあなんでこんな音がするのか。――氷華には一つだけ心当たりがある。
「……ねぇ、今って何時か分かる?」
「わかんない」
「えーっと……じゃあこの小屋に入る時、お日様は体のどこに当たってた?」
「背中だよ」
「そんなに時間経ってたの……!?」
太陽は東から昇って西へと落ちる。この小屋の扉はちょうど西にあった。てことはつまり太陽は落ちてきている。
時間はかなり経過していた。もう数時間経てば日は沈んで夜になる。そうなると――。
「――炎渦登竜舞が始まっちゃう」
「なにそれ?」
「し、知らなくていいことだよ」
外での物音は炎渦登竜舞の準備である。儀式が行われるのは0時。現在の時間は約15時なので、9時間ほどは猶予がある。
生贄は一人だけ。そうなると美結しかありえない。なんとかして防がないと美結が犠牲になってしまう。
動きたい……ところ。しかし動けない。状況もそうだが、事前に桃也と考えていた作戦を氷華は思い出していた――。
――昨日。森の中で2人は村崩壊の作戦を練っていた。
「できるのなら今日のうちに助けた方がいい」
「まぁそらそうだな。こんな場所に長居できない」
「それもあるけど――」
少し渋っている様子の氷華。腹を立てた桃也が強めに聞く。
「なんだよ。言ってみろよ」
「……いや……うん」
「まだ隠し事でもあるのか?」
「うん」
「ハッキリ言うなよ」
「ごめん」
大きくため息をつく。さっき話したのが全てだと思っていた。というか拷問されたなら話す。少なくとも氷華は拷問によって桃也のことを怖がってた。
なのにまだ隠し事をしていた。しかも言葉の返し方も若干舐めてる気がする。怖がっているはずなのに。
(コイツの考えてることが分からんな)
だが『裏切るか?』と聞かれたら、『多分裏切らない』と答えられる。絶対とは言えない。なんとなくだ。
本当に不思議な感覚だ。険しい顔をするように努力しているが、困惑の表情が出ていないか心配である。
「んで。何を話してないんだ?」
「……この村では年に一回、お祭りがある。その名も『炎渦登竜舞』」
「かえ……なにそれ?」
「熱は痛みに直結してる。だから八月村は熱も回路様に捧げる。でも炎とかは簡単に使うことはできない」
「なんで?」
「料理と狩猟。この2つに使うだけで精一杯。拷問に使う余裕なんてなかった」
理にかなってる。桃也もちょっと共感してしまった。過去に拷問でバーナーを使ったのだが、値段の割に満足はできなかったからだ。
「だから年に1回。村で盛大に炎を使って拷問する。村全体を周りながらね」
「公開処刑みたいだな」
「そうだね。……地獄絵図そのものだけど」
暗くなる顔を無視。桃也は何かを思いついたように氷華の肩を叩いた。
「――いいこと思いついた。これなら混乱も招ける」
「え?」
「まずはその炎渦……なんちゃらをわざと起こさせるんだ」
「はぇ!?なんで!?」
「聞け聞け。そこから――」
――思い出した記憶を仕舞いながら、それを今もやるべきか考える。
あの時は生贄が死にかけだったからやろうとした作戦だ。結局は『さっさと助けて逃げる』という結論に至ったからしなかった。
だが今回の目的は『美結の奪還』と『八月村』の壊滅。この2つであり、これらを同時にこなすのには桃也の作戦がピッタリだ。
問題としては一つ。美結をもっと苦しませてしまうこと。長い、長い時間だ。それは良心が痛む。
しかし目指すは完全クリア。途中で氷華自身が捕まってしまっては本末転倒だ。最後に全てを終えるのが最善。
ここは心を鬼にする。せめて桃也が戻ってくるまで。氷華は凛と共に待機することを覚悟した。
おそらく氷華と凛を探しに来たのだ。今の状態でも殺すことなら可能。だが問題はその後だ。アリのように湧き出てくる村人を全員殺すのは無理。しかもアリの中にはゴリラも混じってる。
なのでここは隠れるのが正解の択だ。とりあえず小屋の中に身を隠す。
「……どうしようか」
「お怪我大丈夫?」
「うん、大丈夫……」
ただでさえハードモードな状況。凛を引き連れたままだと更に難易度が上がってしまう。かといって放っていく訳ない。
「とりあえずは待機か……桃也も終わってなさそうだし」
「……パパ?」
「ん?大丈夫だからね」
頭を撫でる。また安心したのか、氷華の胸に顔を埋めた。ズキリと痛むのは顔に出さない。
外ではずっと音がしていた。人が歩く音もそうだが、もっと違う何かの音だ。例えるなら重いものを運んでいるような。
「……?」
ここがバレたのではなさそうだ。じゃあなんでこんな音がするのか。――氷華には一つだけ心当たりがある。
「……ねぇ、今って何時か分かる?」
「わかんない」
「えーっと……じゃあこの小屋に入る時、お日様は体のどこに当たってた?」
「背中だよ」
「そんなに時間経ってたの……!?」
太陽は東から昇って西へと落ちる。この小屋の扉はちょうど西にあった。てことはつまり太陽は落ちてきている。
時間はかなり経過していた。もう数時間経てば日は沈んで夜になる。そうなると――。
「――炎渦登竜舞が始まっちゃう」
「なにそれ?」
「し、知らなくていいことだよ」
外での物音は炎渦登竜舞の準備である。儀式が行われるのは0時。現在の時間は約15時なので、9時間ほどは猶予がある。
生贄は一人だけ。そうなると美結しかありえない。なんとかして防がないと美結が犠牲になってしまう。
動きたい……ところ。しかし動けない。状況もそうだが、事前に桃也と考えていた作戦を氷華は思い出していた――。
――昨日。森の中で2人は村崩壊の作戦を練っていた。
「できるのなら今日のうちに助けた方がいい」
「まぁそらそうだな。こんな場所に長居できない」
「それもあるけど――」
少し渋っている様子の氷華。腹を立てた桃也が強めに聞く。
「なんだよ。言ってみろよ」
「……いや……うん」
「まだ隠し事でもあるのか?」
「うん」
「ハッキリ言うなよ」
「ごめん」
大きくため息をつく。さっき話したのが全てだと思っていた。というか拷問されたなら話す。少なくとも氷華は拷問によって桃也のことを怖がってた。
なのにまだ隠し事をしていた。しかも言葉の返し方も若干舐めてる気がする。怖がっているはずなのに。
(コイツの考えてることが分からんな)
だが『裏切るか?』と聞かれたら、『多分裏切らない』と答えられる。絶対とは言えない。なんとなくだ。
本当に不思議な感覚だ。険しい顔をするように努力しているが、困惑の表情が出ていないか心配である。
「んで。何を話してないんだ?」
「……この村では年に一回、お祭りがある。その名も『炎渦登竜舞』」
「かえ……なにそれ?」
「熱は痛みに直結してる。だから八月村は熱も回路様に捧げる。でも炎とかは簡単に使うことはできない」
「なんで?」
「料理と狩猟。この2つに使うだけで精一杯。拷問に使う余裕なんてなかった」
理にかなってる。桃也もちょっと共感してしまった。過去に拷問でバーナーを使ったのだが、値段の割に満足はできなかったからだ。
「だから年に1回。村で盛大に炎を使って拷問する。村全体を周りながらね」
「公開処刑みたいだな」
「そうだね。……地獄絵図そのものだけど」
暗くなる顔を無視。桃也は何かを思いついたように氷華の肩を叩いた。
「――いいこと思いついた。これなら混乱も招ける」
「え?」
「まずはその炎渦……なんちゃらをわざと起こさせるんだ」
「はぇ!?なんで!?」
「聞け聞け。そこから――」
――思い出した記憶を仕舞いながら、それを今もやるべきか考える。
あの時は生贄が死にかけだったからやろうとした作戦だ。結局は『さっさと助けて逃げる』という結論に至ったからしなかった。
だが今回の目的は『美結の奪還』と『八月村』の壊滅。この2つであり、これらを同時にこなすのには桃也の作戦がピッタリだ。
問題としては一つ。美結をもっと苦しませてしまうこと。長い、長い時間だ。それは良心が痛む。
しかし目指すは完全クリア。途中で氷華自身が捕まってしまっては本末転倒だ。最後に全てを終えるのが最善。
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