レッドリアリティ

アタラクシア

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5日目

灯火

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「――」

目を見開く。空は暗転。星の煌めきが瞳に反射する。

「あぁ――」

ゾンビのように這い上がる体に痛みが追いかけてくる。焼けるような痛みだ。しかし動けないほどじゃない。むしろ――心地いい。

痛みが現実へと引っ張りあげてくれる。やるべきことを思い出させてくれる。

「――最高の気分だよ」

近くには自分のコートを着た死体と捨てられた仮面が置いてあった。いわば勝負服と言ったやつだ。

制限時間は……もう分からない。短いことだけは分かる。全てが佳境に差し掛かってきたことも。

ならば気合いを入れ直そう。昔のように。仮面とコートを付けて――。





村は異様な雰囲気に包まれていた。それは小屋の中にいる凛にも察知することができる。

「……?」

体力を回復させるために眠っていた氷華を起こす。時間は0時少し前。あの儀式が始まろうとしていた。

「んぅ……ん……んん……!?」

飛び起きる氷華。びっくりして凛は床に転けてしまった。

「あ、ごめんね……私どれくらい寝てた?」
「分かんない。外の様子がおかしいの」
「外の様子……まさか……!?」

凛に「ここにいて」と言いながら扉の方へ移動する。外には誰もいない。確認した瞬間、素早い移動で外へと出た。


小屋の影から道路を覗く。――かなりの時間眠っていたようだ。疲労していたので仕方ないが、事態は予想以上に厳しい。

村は基本的に何も無い。だが今日は違う。道端には一定の感覚で石造の灯篭が置かれてあった。もちろん昨日はなかった物だ。

それだけじゃない。畑の中にはキャンプファイヤーの時に使うような囲いがあり、家々には「炎を灯してください」と言わんばかりに山盛りの藁が敷かれてある。

「……もうすぐだ」

儀式が始まる。なのに動けない。と言うよりは動く時じゃない。歯がゆい。だが村を壊滅させるには最前の作戦を行おうとしていた。

だから今まで動かなかった。変な正義感は持たなくていい。美結には悪いが、これ以上被害を出さないためなのだ。





木製の十字架の上に乗せられた美結。その両手に釘が打ち込まれる。

「あああぁ――!!!」

痛みに悶える。村人は慣れた手つきで両手を済ませると、次は足にも極太の釘を打ち込み始めた。

「っっっっ――!!!!」
「しっかり叩けよお前ら」

まるで作業だ。無機質。人としての感情が見えない。痛がっている美結のことが見えてないかのようだ。


両手両足。全てに釘が打ち込まれた。貫通しているので血は滲み出るくらいしか出てこない。出血死はしなさそうだ。

これで終わり。そう思っていた美結だったが、終わりではなかった。

蓮見の合図と共に村人が何かを持ってきた。――ガスバーナーだ。蓮見を含めた4人にガスバーナーが手渡される。

「さて――お前ら!ここからがスピード勝負だぞ!」
「「「「おう!」」」」

村の一体感が美結の恐怖を駆り立てる。ガスバーナー。これから何をされるのか。無意識の想像力が痛む手足をさらに痛ませた。

「……お前もせいぜい頑張れ」


――手足の釘を目掛けてガスバーナーが発射された。

「なっ――!?」

熱は体内にまで滑り込んでくる。熱された釘は徐々に明るい赤銅色へと変化していった。

「っっああああああああぁぁぁ!!!!」

周りの皮膚も炎に晒される。肌色は土のような茶色へと変化していき、表皮部分を熱で溶かしていった。

中の神経は焼けた紙のように切れる。血管は熱によって収縮される。止血としての機能だけなら果たしていた。痛みは倍以上。悶えて暴れようとすれば肉も引き裂かれる。

今までの拷問の比じゃない。爪を剥がされるよりも、歯を折られるよりも。何十倍も痛かった。熱かった。



『焼き』の時間は終わり、ガスバーナーが止められる。止まったはずなのに熱いのは収まる気配がない。

むしろ熱は膨張して体全体を焼け尽くすような感覚に襲われていた。暴れれば痛みはもっと大きくなり、もっと長引く。

しかし我慢できる痛みのレベルは超えていた。限界を超えれば涙が溢れてくる。

「っっっぎぃ……」
「ほら頑張れ頑張れ。意識は失っちゃダメだぞ。本番は――ここからだ」
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