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5日目
闊歩
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炎渦登竜舞は年に一度だけ開催される大きな祭り。痛みと熱を崇拝し、感謝するための行事であり、村全体で大々的に行われる。
その内容は『儀式』と違い、明るく派手なもの。だが外には見せることはできない。どれだけ明るくても内容は凄惨そのものだから。
1.生贄に選ばれた人が十字架に磔にされる。
2.数人の男性がそれを持ち、村全体を歩き回る。
3.道中にある灯篭や藁に火を灯す
4.その間は常に周りで舞と歌を流し続ける。
5.途中の大きな灯篭の前で一旦下ろし、焼けた鉄の棒で生贄の皮膚を焼く
6.村を1周したら、焼けた刃物で生贄を解体する
といった内容だ。その日の夜はまるで昼間のように明るくなる。だが八月村は山奥。一般の人が見ることはない。気が付かれることは無いのだ。
十字架に磔にされている姿は、まるでキリストのように。神輿を担いで歩く人たちのように。焔の蛇のように。
松明の炎は村を覆い尽くす。祈るように座っている人は誰も美結に目を向けない。何を考えてるのかも分からない。
熱は膨張するように辺りの温度を上昇させていく。全ての人からボタボタと落ちる汗。目に入っても気にしない。誰も。
周りで踊っているのは阿波踊りだろうか。かなり似ている。だが少し違う。手と足のリズムが若干異なっていた。
絶え間なく聞こえてくる炎の音。その隙間から不気味な歌が聞こえてくる。
『ラーラーラララー。ラーラーラララー』
一定のリズム。子供が歌っているかのように高い声。クリスマスの夜に聞こえてきても違和感はない。
運ばれている十字架は動く度に酷く揺れる。釘は自重と熱によって皮膚を溶かし、骨を溶かし、神経を焼き切っていく。
「くっ……っっ……」
もう手先の感覚も足の感覚もない。肩の負担も大きく、既に脱臼寸前であった。
皮膚の焼ける音。謎のリズムで歌う声。焼けつく熱さによる痛み。味方のいない恐怖。そして苦しみ。
怯えや恐怖。全てを超えて支配するのは――孤独感であった。
周りは人間のはずだ。なのに人間とは思えない。種族の違う怪物。話し合いが成立するとも思えない。
その中にたった1人だけ残されている。夫の居場所も、娘の無事も分からないのだ。
――立ち止まる。村人の1人が鉄の棒を炎に捧げた。
黒くなった鉄の棒は真っ赤に染まり変わる。赤色を通り超えて黄色い光を放っていく。
溶ける寸前にまで熱された棒。炭酸が抜けるかのような音を出しながら、動けない美結に棒が近づいてくる。
「――」
鉄が――触れた。皮膚の奥にある脂肪を巻き込んで焼き尽くす。
「がぁぁぁぁァァァ――!!??」
肉の焼ける匂いが鼻腔へ侵入してくる。音も同様。熱さは痛みと結びつく。脳は痛みと熱さでエラーを起こし始めていた。
鉄の棒を横にスライドさせる。美結の腹に横一文字の火傷跡が付けていく。皮膚は鉄に引っ付き、柔らかくなった皮膚は軽く破れた。
「――っくっ!!」
頭の中は容量オーバーだ。どこに感情を向ければいいのか。どんな感情を向ければいいのか。考える余裕もなくなっていた。
体の全てが痛い。苦しい。泣きそうになるが、目に溜まった涙はすぐに熱で乾いてしまう。もはや泣くことすらできない。
声を上げようとしてもかき消される。喉の奥まで乾いた。唾もすぐに乾く。身体中の水分が乾いた感覚だった。
(桃也……凛……小次郎さん……)
心で名前を出しても現実には現れない。叫んでも意味は無い。言葉に出しても出てこない。全て無意味だ。
その内容は『儀式』と違い、明るく派手なもの。だが外には見せることはできない。どれだけ明るくても内容は凄惨そのものだから。
1.生贄に選ばれた人が十字架に磔にされる。
2.数人の男性がそれを持ち、村全体を歩き回る。
3.道中にある灯篭や藁に火を灯す
4.その間は常に周りで舞と歌を流し続ける。
5.途中の大きな灯篭の前で一旦下ろし、焼けた鉄の棒で生贄の皮膚を焼く
6.村を1周したら、焼けた刃物で生贄を解体する
といった内容だ。その日の夜はまるで昼間のように明るくなる。だが八月村は山奥。一般の人が見ることはない。気が付かれることは無いのだ。
十字架に磔にされている姿は、まるでキリストのように。神輿を担いで歩く人たちのように。焔の蛇のように。
松明の炎は村を覆い尽くす。祈るように座っている人は誰も美結に目を向けない。何を考えてるのかも分からない。
熱は膨張するように辺りの温度を上昇させていく。全ての人からボタボタと落ちる汗。目に入っても気にしない。誰も。
周りで踊っているのは阿波踊りだろうか。かなり似ている。だが少し違う。手と足のリズムが若干異なっていた。
絶え間なく聞こえてくる炎の音。その隙間から不気味な歌が聞こえてくる。
『ラーラーラララー。ラーラーラララー』
一定のリズム。子供が歌っているかのように高い声。クリスマスの夜に聞こえてきても違和感はない。
運ばれている十字架は動く度に酷く揺れる。釘は自重と熱によって皮膚を溶かし、骨を溶かし、神経を焼き切っていく。
「くっ……っっ……」
もう手先の感覚も足の感覚もない。肩の負担も大きく、既に脱臼寸前であった。
皮膚の焼ける音。謎のリズムで歌う声。焼けつく熱さによる痛み。味方のいない恐怖。そして苦しみ。
怯えや恐怖。全てを超えて支配するのは――孤独感であった。
周りは人間のはずだ。なのに人間とは思えない。種族の違う怪物。話し合いが成立するとも思えない。
その中にたった1人だけ残されている。夫の居場所も、娘の無事も分からないのだ。
――立ち止まる。村人の1人が鉄の棒を炎に捧げた。
黒くなった鉄の棒は真っ赤に染まり変わる。赤色を通り超えて黄色い光を放っていく。
溶ける寸前にまで熱された棒。炭酸が抜けるかのような音を出しながら、動けない美結に棒が近づいてくる。
「――」
鉄が――触れた。皮膚の奥にある脂肪を巻き込んで焼き尽くす。
「がぁぁぁぁァァァ――!!??」
肉の焼ける匂いが鼻腔へ侵入してくる。音も同様。熱さは痛みと結びつく。脳は痛みと熱さでエラーを起こし始めていた。
鉄の棒を横にスライドさせる。美結の腹に横一文字の火傷跡が付けていく。皮膚は鉄に引っ付き、柔らかくなった皮膚は軽く破れた。
「――っくっ!!」
頭の中は容量オーバーだ。どこに感情を向ければいいのか。どんな感情を向ければいいのか。考える余裕もなくなっていた。
体の全てが痛い。苦しい。泣きそうになるが、目に溜まった涙はすぐに熱で乾いてしまう。もはや泣くことすらできない。
声を上げようとしてもかき消される。喉の奥まで乾いた。唾もすぐに乾く。身体中の水分が乾いた感覚だった。
(桃也……凛……小次郎さん……)
心で名前を出しても現実には現れない。叫んでも意味は無い。言葉に出しても出てこない。全て無意味だ。
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