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序章
第8話 夜の街と月の使徒!
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――夜。
ヘキオンが来ていたのは――ペリルの家であった。
(昼間のペリルさんは怪しかった……なんか絶対に隠してる!)
という訳だ。来ていないウルフィーの討伐依頼。そして子供二人が『死ななかった』との情報を聞いた時の表情。
怪しいと思うには十分な根拠があった。証拠を掴んで警備隊にでも知らせれば、人狼も見つかるかもしれない。
ペリルの家は二階建てだ。灯りは1階だけに灯っている。単純に考えて、人は1階にいると考えられる。
(よしよし……)
――ヘキオンの足の裏に水が集約していく。溜まった水は圧縮され、握り潰され、加圧されていく。
「――アクアインパクト」
地面にヒビをつけ、ヘキオンは大きく飛び上がった。その跳躍力は人外レベル。軽く屋根までひとっ飛びした。
もちろん自前の力じゃない。圧縮した水を解放した反動。それを操るヘキオンの魔力は、自前の力と言えるが。
とにかくヘキオンは屋根に登った。そのまま猿のようにぶら下がり、音を立てないように注意しながら窓を開けて中へと侵入する。
(……なんか泥棒してる気分)
バレたら牢獄だろうか……。なんて考える頭をブルブルと振る。
(今は正義のためだ!いわば正しい悪いことだ!)
矛盾した言葉だ。しかしあんまり冷静じゃないヘキオンの脳じゃ、矛盾したセリフには気が付かない。
「ここは……ペリルさんの部屋かな」
加齢臭の漂うビール臭い匂い。物の少ない部屋からは家にあまり帰ってないことが分かる。
「ギルドにずっと居るもんね。奥さん寂しいだろうなぁ。こんな大人にはならないようにしよっと」
まだ2階には誰も上がってくる様子はない。ヘキオンはもう少しだけこの部屋を散策することに決めた。
タンス。机の引き出し。ベットの下。あらゆる場所を調べて見るが、エッチな本以外は何も無い。
「……こ、これはダメなやつ」
開始から20ページまで読んでストップした。しかし何も無いとなると困った。このままではただの犯罪者だ。しかもエッチな本を読んだ犯罪者だ。
「下……行ってみようかな……」
エッチな本を片付けていた時――。
「――ちょっとどういうことだよ!!」
――2階に上がってくる音が聞こえてきた。だが不思議なことに2人分の足音だ。奥さんだろうか。
不運なことにこの部屋に歩いてきている。まずい。エロ本片付けてるところなんて見られたら一生の恥だ。
すぐさまベットの下へと隠れるヘキオン。窓は閉めた。荒らした場所も全部片付けてある。見つかるはずは無い。そう思い込んだ――。
――入ってきたのはペリルと知らない男。髪はオレンジで少し痩せ型だ。
「ザックとミク死んでねぇじゃねぇか!!」
「仕方ないだろ。邪魔が入ったんだ。本来ならあそこで殺せてたはずだ」
「それじゃあもう1回けしかけろよ!ウルフィーくらいいくらでもいんだろ!?」
「馬鹿言うな。お前一回分の料金しか払ってねぇだろ。やって欲しけりゃ金払え」
「――てめぇ!!」
男と言い争ってる様子だ。ヘキオンも様子を伺う。
(2人を殺す……依頼をしてた……?あの男に……?)
あまり明るい情報では無いようだ。しかもヘキオンが欲していた情報とマッチしている。
男はちょうどベットに座った。ヘキオンの目の前に男の足が現れる。――ちょうどいい場所だ。
ヘキオンの手から野球ボールほど水球が生成される。綺麗な真球だったが、2人の会話が始まると、連続した波紋が浮き出てきた。
「ウォーターレコード」
バレないように技名を発する。この技は名前の通り、音を水球に閉じ込めて録音する技だ。
(これを警備隊に聞かせれば……)
「むしろ感謝してくれよ。お前が姉貴の夫だから格安で受けてやったんだぜ。心鳴の雫をたった2万で動かせるのなんて前代未聞だぞ?」
「くっ……次は絶対に殺せるんだろうな!?」
「さぁな。そんなに心配なら自分で殺せばいいじゃねぇか」
「そ、それは……」
何を話しているのだろうか。殺すやら殺せないやら、物騒な話題ばっかりだ。
(――心鳴の雫?)
だがそれよりも。ヘキオンは『心鳴の雫』という言葉に引っかかっていた。
――その瞬間、うなじを強く掴まれた。
「――!?」
ベットを貫通して引っこ抜かれる。――男だ。ペリルはびっくりした表情でヘキオンを見ている。
それよりもヘキオンは驚いた顔をしていた。反応する余裕もない。反撃する余裕もない。
「さっきから甘ったるい匂いがすると思ったら――知り合いか?」
「ヘ、ヘキオン!?なぜここに!?」
「ペリルさんこそどういうこと!?」
少し冷静さを取り戻したヘキオンが怒鳴る。
「……お前には関係ない」
「関係ないことは――」
体を外へとぶん投げられる。窓ガラスを割り、石の地面に体を叩きつけられる。
「ぐぅ……!」
「――おい。あのガキは殺していいよな」
「あぁ」
ヘキオンの前へと降りる男。その顔には明らかな殺意を宿していた。
「悪いな。でもお前が悪いんだぜ」
ヘキオンが来ていたのは――ペリルの家であった。
(昼間のペリルさんは怪しかった……なんか絶対に隠してる!)
という訳だ。来ていないウルフィーの討伐依頼。そして子供二人が『死ななかった』との情報を聞いた時の表情。
怪しいと思うには十分な根拠があった。証拠を掴んで警備隊にでも知らせれば、人狼も見つかるかもしれない。
ペリルの家は二階建てだ。灯りは1階だけに灯っている。単純に考えて、人は1階にいると考えられる。
(よしよし……)
――ヘキオンの足の裏に水が集約していく。溜まった水は圧縮され、握り潰され、加圧されていく。
「――アクアインパクト」
地面にヒビをつけ、ヘキオンは大きく飛び上がった。その跳躍力は人外レベル。軽く屋根までひとっ飛びした。
もちろん自前の力じゃない。圧縮した水を解放した反動。それを操るヘキオンの魔力は、自前の力と言えるが。
とにかくヘキオンは屋根に登った。そのまま猿のようにぶら下がり、音を立てないように注意しながら窓を開けて中へと侵入する。
(……なんか泥棒してる気分)
バレたら牢獄だろうか……。なんて考える頭をブルブルと振る。
(今は正義のためだ!いわば正しい悪いことだ!)
矛盾した言葉だ。しかしあんまり冷静じゃないヘキオンの脳じゃ、矛盾したセリフには気が付かない。
「ここは……ペリルさんの部屋かな」
加齢臭の漂うビール臭い匂い。物の少ない部屋からは家にあまり帰ってないことが分かる。
「ギルドにずっと居るもんね。奥さん寂しいだろうなぁ。こんな大人にはならないようにしよっと」
まだ2階には誰も上がってくる様子はない。ヘキオンはもう少しだけこの部屋を散策することに決めた。
タンス。机の引き出し。ベットの下。あらゆる場所を調べて見るが、エッチな本以外は何も無い。
「……こ、これはダメなやつ」
開始から20ページまで読んでストップした。しかし何も無いとなると困った。このままではただの犯罪者だ。しかもエッチな本を読んだ犯罪者だ。
「下……行ってみようかな……」
エッチな本を片付けていた時――。
「――ちょっとどういうことだよ!!」
――2階に上がってくる音が聞こえてきた。だが不思議なことに2人分の足音だ。奥さんだろうか。
不運なことにこの部屋に歩いてきている。まずい。エロ本片付けてるところなんて見られたら一生の恥だ。
すぐさまベットの下へと隠れるヘキオン。窓は閉めた。荒らした場所も全部片付けてある。見つかるはずは無い。そう思い込んだ――。
――入ってきたのはペリルと知らない男。髪はオレンジで少し痩せ型だ。
「ザックとミク死んでねぇじゃねぇか!!」
「仕方ないだろ。邪魔が入ったんだ。本来ならあそこで殺せてたはずだ」
「それじゃあもう1回けしかけろよ!ウルフィーくらいいくらでもいんだろ!?」
「馬鹿言うな。お前一回分の料金しか払ってねぇだろ。やって欲しけりゃ金払え」
「――てめぇ!!」
男と言い争ってる様子だ。ヘキオンも様子を伺う。
(2人を殺す……依頼をしてた……?あの男に……?)
あまり明るい情報では無いようだ。しかもヘキオンが欲していた情報とマッチしている。
男はちょうどベットに座った。ヘキオンの目の前に男の足が現れる。――ちょうどいい場所だ。
ヘキオンの手から野球ボールほど水球が生成される。綺麗な真球だったが、2人の会話が始まると、連続した波紋が浮き出てきた。
「ウォーターレコード」
バレないように技名を発する。この技は名前の通り、音を水球に閉じ込めて録音する技だ。
(これを警備隊に聞かせれば……)
「むしろ感謝してくれよ。お前が姉貴の夫だから格安で受けてやったんだぜ。心鳴の雫をたった2万で動かせるのなんて前代未聞だぞ?」
「くっ……次は絶対に殺せるんだろうな!?」
「さぁな。そんなに心配なら自分で殺せばいいじゃねぇか」
「そ、それは……」
何を話しているのだろうか。殺すやら殺せないやら、物騒な話題ばっかりだ。
(――心鳴の雫?)
だがそれよりも。ヘキオンは『心鳴の雫』という言葉に引っかかっていた。
――その瞬間、うなじを強く掴まれた。
「――!?」
ベットを貫通して引っこ抜かれる。――男だ。ペリルはびっくりした表情でヘキオンを見ている。
それよりもヘキオンは驚いた顔をしていた。反応する余裕もない。反撃する余裕もない。
「さっきから甘ったるい匂いがすると思ったら――知り合いか?」
「ヘ、ヘキオン!?なぜここに!?」
「ペリルさんこそどういうこと!?」
少し冷静さを取り戻したヘキオンが怒鳴る。
「……お前には関係ない」
「関係ないことは――」
体を外へとぶん投げられる。窓ガラスを割り、石の地面に体を叩きつけられる。
「ぐぅ……!」
「――おい。あのガキは殺していいよな」
「あぁ」
ヘキオンの前へと降りる男。その顔には明らかな殺意を宿していた。
「悪いな。でもお前が悪いんだぜ」
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