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1章 血塗れになったエルフ
第27話 最っ高に胸糞悪い魔物!
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「△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽」
聞き取ることの出来ない言語を放つ。指はカエデの方向へ――。
――指した指はカエデによって切断された。
「何言ってんのか分からん。あと痛みには慣れてる。無駄なことはするな。まず何もするな。質問にだけ答えろ」
「……」
「誰だ?目的は?さっきのデブとはどんな関係だ?――答えろ」
ケセランは喋らない。話さない。少々イラついていたカエデはケセランの脛を踏み潰した。
「――――!!」
「答えろ」
「――〇」
「なんて――」
「〇〇〇〇〇」
「てめぇ――!!」
ケセランは一瞬にして消滅した。カエデの木の棒は空を斬る。
「クソ……どいつもこいつも逃げ足だけは早いな」
「ワープホール系の魔法じゃないから、そう遠くへは逃げてないはずだ」
「仕方ない、探してくる。お前は村長連れて村に戻っとけ」
「わかった」
錯乱している村長をおぶる。村の方向へと走っていくザッシュを見ながら、カエデはぽつりと呟いた。
「――嫌な予感がする」
「――嫌な感じがしてきた」
川の傍で魚を食べていた下着姿のヘキオンとクエッテ。柔らかい身にかぶりついていたヘキオンが、カエデと重なるように呟いた。
「イヤなカンじ?」
「うん。風がちょっと気持ち悪くなってきたから」
「……タシカに。なんかカゼがぬるい」
「村に戻ろう」
「うん」
村へと走る2人。空には黒い雲が一面を覆い隠すように敷き詰められていた。
「クロいクモ……」
「濡れた服ってなんでこんなに不快感があるんだろ……」
この近辺では嵐など滅多に来ない。雨が降るにしても、こんな雲などできたことがない。鳴りっぱなしの心臓が呼吸を妨げに来ている。唾を飲み込む音が間近に聞こえる。
猫のように体の水を弾き飛ばしているヘキオンを横目に、クエッテは嫌な妄想を巡らせていた。
思い出す過去の記憶。その中に――1つの可能性を高める出来事があった。
母が語ってくれたエルフの村に伝わる記録。子供に読み聞かせる昔話のようなもの。そこにはこんな一文がある。
『黒雲と共に麒麟がやってくる』
と。麒麟は物語のみに登場する伝説の獣。創作の中だけにしか存在しない生物。しかし麒麟の出現する情景は、今の状況とかなり酷似している。絵巻物で見せてもらった絵と――。
村の方向からは叫び声がする。楽しんでる声ではないことは確かだ。どちらかというと悲鳴に近い。
何かが起こっている。ヘキオンの悪い予感は当たっていた。踏み込む足により一層力が入る。
「――――」
悪い予感は当たっていた。結果だけならそうだ。だが予想していた景色とは違った。
そこに居たのは麒麟ではない。赤黒く変色した赤ん坊……いや、赤ん坊でもない。赤ん坊の姿に似た化け物だ。
体長は6mにも及び、肌は岩のように固くなっている。赤ん坊だというのに生えている歯は墨のように黒い。目は――それよりも黒かった。
『異常』か。『異様』か。表す言葉は数あれど、完璧に例える言葉などない。2人は地獄の景色に固まるしかなかった。
赤ん坊は村のエルフを襲っている。片手で握り、もう片方の手で掴んでいたエルフを口に――。
赤く染まっていく口内を見て冷静さを取り戻した。鈍くなった脳内が出した命令は『エルフを守れ』である。
「――クエッテ!!」
「ワかってる!」
クエッテは弓を構え、ヘキオンは接近する。片手に水を纏ってジャンプ。顔面に向かって拳と水を叩きつける。
「アクアスマッシュ!!」
――弾かれた。反動でヘキオンの方がダメージを喰らった。
「かったぁ……!」
赤ん坊は傷一つついていない。だがヘキオンを認識した。ゆっくりと顔を向ける。
「――だぁ」
「エルブレイン!!」
背後から矢が飛んできた。――刺さらない。これも弾かれる。
「ウソ……」
「まずい……」
これも効いていない。そしてクエッテも認識した。『敵』として。
無邪気。玩具のようにエルフを投げ捨てた。弾丸のような速度で投げられたエルフをクエッテがキャッチする。
そのまま赤ん坊が遊ぶようにヘキオンに向けて手を叩きつける。スピードはさほどない。軽く避けた。
――地面が揺れる。相手からしたら遊びでも、こちらは命懸けだ。当たれば即死がいいとこ。下手に生き残ると何をされるか……。
「うぅ――最悪なことを思い出した」
ヘキオンも過去のことを思い出した。母に読み聞かせられて……というのではなく、ギルドで酔っ払った男から聞いた話だ。
その男はとても遊び好きだった。女を取っかえ引っ変え。やるだけやって捨てる、なんてこともザラにあった。
そんなある日。1人の女性が流産した。男は面倒事に巻き込まれたくないと逃げる。金もなかった女性は正しい供養もすることができずにいた。
――そうして怪物が現れた。名は『インカーネーション』。水子が変異して産まれた魔物である。
人の心がギリギリ残っていた男が女性の元へ帰ってきた時にインカーネーションに遭遇したらしい。かなり苦戦したが、なんとか勝利。しかし女性はその後ショックで自殺。後味の悪い話だ。
聞き取ることの出来ない言語を放つ。指はカエデの方向へ――。
――指した指はカエデによって切断された。
「何言ってんのか分からん。あと痛みには慣れてる。無駄なことはするな。まず何もするな。質問にだけ答えろ」
「……」
「誰だ?目的は?さっきのデブとはどんな関係だ?――答えろ」
ケセランは喋らない。話さない。少々イラついていたカエデはケセランの脛を踏み潰した。
「――――!!」
「答えろ」
「――〇」
「なんて――」
「〇〇〇〇〇」
「てめぇ――!!」
ケセランは一瞬にして消滅した。カエデの木の棒は空を斬る。
「クソ……どいつもこいつも逃げ足だけは早いな」
「ワープホール系の魔法じゃないから、そう遠くへは逃げてないはずだ」
「仕方ない、探してくる。お前は村長連れて村に戻っとけ」
「わかった」
錯乱している村長をおぶる。村の方向へと走っていくザッシュを見ながら、カエデはぽつりと呟いた。
「――嫌な予感がする」
「――嫌な感じがしてきた」
川の傍で魚を食べていた下着姿のヘキオンとクエッテ。柔らかい身にかぶりついていたヘキオンが、カエデと重なるように呟いた。
「イヤなカンじ?」
「うん。風がちょっと気持ち悪くなってきたから」
「……タシカに。なんかカゼがぬるい」
「村に戻ろう」
「うん」
村へと走る2人。空には黒い雲が一面を覆い隠すように敷き詰められていた。
「クロいクモ……」
「濡れた服ってなんでこんなに不快感があるんだろ……」
この近辺では嵐など滅多に来ない。雨が降るにしても、こんな雲などできたことがない。鳴りっぱなしの心臓が呼吸を妨げに来ている。唾を飲み込む音が間近に聞こえる。
猫のように体の水を弾き飛ばしているヘキオンを横目に、クエッテは嫌な妄想を巡らせていた。
思い出す過去の記憶。その中に――1つの可能性を高める出来事があった。
母が語ってくれたエルフの村に伝わる記録。子供に読み聞かせる昔話のようなもの。そこにはこんな一文がある。
『黒雲と共に麒麟がやってくる』
と。麒麟は物語のみに登場する伝説の獣。創作の中だけにしか存在しない生物。しかし麒麟の出現する情景は、今の状況とかなり酷似している。絵巻物で見せてもらった絵と――。
村の方向からは叫び声がする。楽しんでる声ではないことは確かだ。どちらかというと悲鳴に近い。
何かが起こっている。ヘキオンの悪い予感は当たっていた。踏み込む足により一層力が入る。
「――――」
悪い予感は当たっていた。結果だけならそうだ。だが予想していた景色とは違った。
そこに居たのは麒麟ではない。赤黒く変色した赤ん坊……いや、赤ん坊でもない。赤ん坊の姿に似た化け物だ。
体長は6mにも及び、肌は岩のように固くなっている。赤ん坊だというのに生えている歯は墨のように黒い。目は――それよりも黒かった。
『異常』か。『異様』か。表す言葉は数あれど、完璧に例える言葉などない。2人は地獄の景色に固まるしかなかった。
赤ん坊は村のエルフを襲っている。片手で握り、もう片方の手で掴んでいたエルフを口に――。
赤く染まっていく口内を見て冷静さを取り戻した。鈍くなった脳内が出した命令は『エルフを守れ』である。
「――クエッテ!!」
「ワかってる!」
クエッテは弓を構え、ヘキオンは接近する。片手に水を纏ってジャンプ。顔面に向かって拳と水を叩きつける。
「アクアスマッシュ!!」
――弾かれた。反動でヘキオンの方がダメージを喰らった。
「かったぁ……!」
赤ん坊は傷一つついていない。だがヘキオンを認識した。ゆっくりと顔を向ける。
「――だぁ」
「エルブレイン!!」
背後から矢が飛んできた。――刺さらない。これも弾かれる。
「ウソ……」
「まずい……」
これも効いていない。そしてクエッテも認識した。『敵』として。
無邪気。玩具のようにエルフを投げ捨てた。弾丸のような速度で投げられたエルフをクエッテがキャッチする。
そのまま赤ん坊が遊ぶようにヘキオンに向けて手を叩きつける。スピードはさほどない。軽く避けた。
――地面が揺れる。相手からしたら遊びでも、こちらは命懸けだ。当たれば即死がいいとこ。下手に生き残ると何をされるか……。
「うぅ――最悪なことを思い出した」
ヘキオンも過去のことを思い出した。母に読み聞かせられて……というのではなく、ギルドで酔っ払った男から聞いた話だ。
その男はとても遊び好きだった。女を取っかえ引っ変え。やるだけやって捨てる、なんてこともザラにあった。
そんなある日。1人の女性が流産した。男は面倒事に巻き込まれたくないと逃げる。金もなかった女性は正しい供養もすることができずにいた。
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