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小望月
しおりを挟む「もう学校に行きたくない!退学したい!」
保奈美は,ある日,学校から帰ってきて,突然嘆き出した。
「なんで?」
海保菜は,小さく笑った。
「うまくできないの,何も。数学とか,理科とか,教えてくれるもの,全部。面白くないし,興味が持てない。理科で,一週間だけ海の勉強をしたけど,それ以外の勉強は,興味が全くないし…。」
「…海の勉強なら,興味あるの?」
海保菜は,娘の発言の気になる点に喰(く)らい付いた。
「あるよ。魚とか,貝殻とか,好きだし。」
「今も?ありがとう。」
海保菜は,思わず,嬉しくなった。
「何がありがとうなん?おかしい…。」
「そうだね。ありがとう,じゃないね。」
海保菜は,訂正した。
保奈美は,海保菜の返事をあまり気にしていないようだった。すぐに自分の話を続けた。
「好きだし、水泳とか,サーフィンとか,シュノーケルとか,できるようになりたい。習いたい。数学は,どうでもいいの。」
「そうだね。したいね…でも、だめ。」
海保菜は,娘の顔から目を逸らして、言った。
「なんで?海がこんなに近いのに!?みんな習っているし。できないのは,私と龍太だけ。」
「安全じゃないから。」
「何が危ない?」
「海。」
「危なくないよ!みんな,泳いでいるよ!みんなだよ!お母さんは,怖いかもしれないけど,私は怖くないし。」
「私も怖くない。そういう問題じゃない。」
「じゃ、なんで!?」
「守ろうとしているよ,あなたを。」
「守ってほしくない。守ってくれなくていい。」
「そう言われても、私の子だから,守らないといけないよ。」
「大体,守っていないし!私が学校で,毎日,どんなひどい目に遭っているかも知らないくせに!」
「ひどい目!?」
「みんなは私の事が嫌いだし…からかうし。」
「きっと,嫌いじゃないよ。」
「うーん、嫌いよ。馬鹿だと思っているの。海に行ったこともないくせに,海の本ばかり読んで勉強しているから。」
「海の勉強をしているの?そんなに海の事が好きだった?」
海保菜は,少し驚き,口調が急に柔らかくなった。娘のことが,急にとても愛おしく思えた。
「うん。だから,習わせて!」
「保奈美,海には行かせられない。習わせられない。どんなにしたくても…危ない。」
「お母さんって海,に行ったことあるの!?一度でも?ないでしょう!」
保奈美は,カチンときて,怒鳴り始めた。
「…あるよ。海で育ったと言ってもいいぐらいだ。だからこそ…。」
海保菜は,一つ一つ言葉を選びながら慎重に話し始めた。
「なら、どうして私はだめ!?おかしいよ!」
「いつか、わかる日が来るよ。」
海保菜は,少しだけ人魚の雰囲気を出して言った。
「いつ!?もう十二歳だし,もう赤ちゃんじゃないし!話したらいいのに!」
「話したい。でも,今はまだ話せない。話せる日が来たら,ちゃんと話すから,信じて。」
海保菜は,娘と目を合わせて,言った。
「信じないよ!」
「母親だし、信じなさい!話せることなら,私だって話したいし,話すよ!」
「お母さんって,本当に私のお母さんなのかな?内緒にしているのは,それじゃない?本当は,私のお母さんじゃないでしょう!」
海保菜は,激しく首を横に振った。
「どうして,そんなこと言うの!? 母親だし,あなたの気持ちがわかるよ。」
海保菜は,胸に,殴られるような痛みを感じた。
「わかっていない。」
「わかっているよ!私だって,この町で浮いているよ、ずっと。 溶け込めない。そして、あなたの海に行きたい、海で泳ぎたいという気持ちも,よくわかる。でも、行かせられない理由があるの。ただ怖いとか,じゃない。ちゃんとした理由があるの。今は,まだ話せないけど、いつか話せる日が来たら,ちゃんと話すから…信頼してほしい。」
海保菜は,娘の目を真っ直ぐに見て,切実に訴えた。
「どうして,今はだめ?今,話して。」
「だから、今は,まだ話せないって。」
「なんで?」
「ただ,できないの!」
海保菜は,とうとうイライラして来た。
「私は,誰より海の勉強をしているの!危険生物の事も,海流の事も,よくわかっている!危なくない。ちゃんとわかっているから!」
海保菜は,これを聞いて,思わず吹き出した。
「分かっていないよ、保奈美。本を読むだけでは,わからない危ないことだって,たくさんあるの。」
「で、何?お母さんは,知っているというの、そういう本に書いてない危ないこと?」
「…知っている。」
「お母さんって,何かにここまで惹かれたことがあるの?好きになったことがあるの?わからないの,私の気持ち?」
「わかる。」
海保菜は,強く頷いた。
「そして、私だって話したい。
でも、なんでこんなにしつこい?」
保奈美は,とても静かになった。
「なんか、海だったら…。」
「海だったら,何?」
海保菜は,今日の娘の様子がとても気になった。海についてこんなに熱く語り,習いたいとここまで要求するのは,初めてだ。彼女の中で何かが目覚めようとしているかもしれない。そう思った。海に惹かれている。でも,まだこれなら話せるような,人魚だというはっきりとした証拠はない。
海保菜は,珍しく保奈美のそばに座り,ゆっくり話を聞くことにした。
「海だったら…うまくやれる気がする。ここは,だめなの。みんなは,私の事を変だと思っているし,友達もいないし,勉強に集中できないし,興味も持っていないし、スポーツも苦手だし,速く走れないし…上手に何もできない。」
「私もそうよ。」
海保菜は,囁(ささや)くような小さい声でつぶやいた。保奈美の肩に,自分の手をかけた。
娘は,海にすごく惹かれている。小さい時も,イルカの映像を見て喜んだりしたことは,あったけれど,ただの好奇心だと思っていた。保奈美も,龍太も,「泳ぎたい!」とずっとせがんできたけれど,それも周りの子がみんなやっているから,自分もやりたいだけだと思っていた。
これまで,娘や息子がここまで言うことはなかったし、悩むような様子も見せることはなかった。
今の保奈美は,これまでとは,どこかが違う。ただの好奇心でも,周りからの同調圧力でもない。海と何らかの繋がりを感じてくれている。この世界に自分の居場所はないのかもしれないと真剣に悩んでいる。自分で本を読んだりして,何かを追求してくれている。
「もしかして,体質は変わっているかな?」海保菜は,気になった。娘の目には,前光っていなかったところに明かりがついたようにさえ感じた。海保菜は,あえて体について訊いてみることにした。体に直接触れるようなことではなくて,それを話すきっかけになるようなことを。
「ここでは,うまくやれないけど,海ならうまくやれるのでは?と思っている理由は,それだけ?他に何かあるの?」
海保菜の目は,希望で輝かいていた。体について何か言ってくれないと話せない。それさえ言ってくれたら,話せる。ようやく共有できる。期待してはいけないと自分に言い聞かせながらも,少しだけ期待してしまっていた。
「どういう意味!?理由って,それで充分じゃないの!?もっと,苦しんでほしいの!?」
保奈美は,海保菜の言葉が頭に来たようで,不機嫌な顔をして,言った。
案の定,海保菜の期待の気持ちは,裏切られた。保奈美の困惑した言葉を聞いて,自分でも恥ずかしいくらい,大きくがっかりした。「違う!ただ…体は大丈夫?…痛みとかはない?」
海保菜は,まだ諦めがつかなくて,さらに訊いた。
「…痛くないよ!一体,何の関係があるの!?」
保奈美は,呆れた。
「関係ないね…ごめんなさい。」
海保菜は,とうとう諦めて,謝った。
「いつも嘘ばかり!さっき,何を訊こうとした!?」
保奈美は,海保菜の質問の裏に何かがあることに気づいているようだった。
「何もない…。」
海保菜は,少し呆れた顔を娘に見せた。
「お母さんの部屋の貝殻は?」
海保菜は,大きく溜息をついた。あの貝殻について尋問されるのは,何回目なのだろう。
「見つけた…もう昔のことだけど。」
「見つけたと言っているけど,見つけられないよ。あの種類は,人間が潜れない深海にしかないよ。」
「知っているよ!見つけたというのは,お店でね。」
娘に,人間の潜れない深海でしか生息しない貝だと指摘されて,おかしかった。
「いや、売っていないって!凄(すご)く珍しくて,高価だって。先生は,そう言っていた。」
海保菜は,どの嘘を考えても,海について色々勉強している娘には,すぐに見破られることに気づいて,話題を変えた。
「喧嘩するときは,どうしていつもこの話をするの?」
「ちゃんと説明しないから,どこで手に入ったか。先生でも,見たことがないと言っていたよ。よくダイビングするのに…どこで見つけた!?」
「…保奈美、どうしてここまで追求する?」
「お母さんは,何かを隠しているから…そして,あの貝殻と関係ある。龍太も気づいているよ。」
「貝殻とは,直接関係ないよ。」
海保菜は,嘘を諦めて,話せることを正直に話すことにした。もうばれているから,これ以上,誤魔化(ごまか)したり秘密があることを隠したりしようとしても,無駄だ。人魚の雰囲気もあまり隠さずに,出した方がいいと考え直した。自分から話すのは,禁じられているけれど,子供たちが気づいてくれると言う方法があるかもしれない。そう思った。
「認めた!やっぱり,何か秘密があるんだ!」
海保菜は、すぐに頷(うなず)いた。
「はい,あるよ。でも、あなたたちを傷つけるためじゃない。あなたたちを守るために隠しているの。」
保奈美は,母親の急に開き直った態度に驚いて,少し萎縮してしまった。今のお母さんは,いつものお母さんとは,少し違う。違う生き物のようだ。
「何から守ろうとしているの!?」
小さい声しか出なかった。
「あなたの何も知らない危険な存在から。」海保菜は,即答した。
「海の?」
海保菜は,答えなかった。
「お願い!知りたい…。」
保奈美の態度が,急に,素直な子供に戻った。
「私も,あなたに知ってほしいと思っている…話したい…話したくてたまらない…ずっと,そう。」
海保菜は,心の葛藤を顔に出して,説明した。
「でも、話してくれないんだね?」
「話せない。」
「お父さんは?お父さんなら,話してくれるかな?」
「お父さんの話すことじゃない。」
「でも,お父さんも知っていることなんだね。」
「うん,知っている。」
「なら、お母さん話して。」
「話せないってば!」
海保菜は,むきになった。
「お母さんって,泳げるの?」
「何,急に?」
海保菜が動揺するのが,保奈美にはわかった。
「深い意味はないよ。泳げるの?」
「泳げる。なんで?」
海保菜には,娘の質問の意図がわからない。
「なら、教えて!泳ぎを教えて!習っちゃいけないというなら、お母さんが教えて!お願い!」
保奈美は,また幼い子供のような顔をして,目を輝かせて言った。
海保菜は,すごく困った,苦しそうな顔をした。涙が滲んでくるのを感じた。
「教えて。泳げるようになりたい。それだけだよ。そんな難しいことを求めていないよ。大体、幼稚園児でも泳げるよ。」
保奈美は,訴え続けた。
海保菜は,滲んだ涙が頬を伝って来るのが,自分でも,わかった。
「…できない。」
海保菜は,囁(ささや)くような小さな声で呟いた。
「なんで,できないの?泳げるでしょう?なら、教えられるはず。」
海保菜は,涙顔でも,保奈美の方を向き直し,目を合わせた。
「保奈美…お母さんも教えたい。一緒に泳ぎたい。保奈美と一緒に泳げたら、最高に嬉しい。それに越したことはない…でも、できない。」
海保菜は,保奈美の肩を強く握って,まっすぐ目を見て,言った。とても悲しそうな目をしていた。
「なんで,できない?」
「危ないから。」
「何が危ない!?海が危ないなら,プールでもいいよ。」
「いや、プールでもダメだ…保奈美と一緒に泳げない、どこでも。」
「お願い!お願い!」
「保奈美、できないと言っているでしょう! 」
海保菜は,堪えていた涙を堪え切れなくなって,保奈美にもわかるくらいの大きい粒の涙が頬を伝い始めた。保奈美に見られたくなくて,言ってはいけないことを何か言ってしまうのが怖くて,慌てて部屋を出て行った。
「お母さん,泣いている!?なんで,泣いているの!?」
海保菜は,返事しなかったから,保奈美が追いかけた。
「保奈美、お願い。これ以上,この話を続けることができない。いい加減にして。」
海保菜は,懇願した。
「なんで泣いているか,教えて…お母さんの泣き顔をほとんど見たことがないのに…いつも強い。なのに、なんでこんな時に…。」
海保菜は,自分を落ち着かせてから,しばらく黙って考えた。嘘でも何でもいいと思って,自分の涙の訳を説明するような言葉を必死で探した。でも、五分ぐらい,一生懸命考えた挙句,何も思い浮かばず,結局黙ったままだった。
「…やっぱり,話すつもりないね?」
保奈美は,ため息まじりに言った。
海保菜は,俯(うつむ)いたままだったが,やっと平常心を取り戻していた。
「話したいけど,話せない。いつか話せる日が来ると祈るしかない。」
「でも、どうして泳いじゃいけないか知りたいだけ!特技がほしいし…居場所がほしい。」
保奈美は,最後の言葉をとても小さい声で言った。
娘の言葉を聞いて,海保菜には,娘がますます愛おしく,近い存在に思えてきた。抱きしめたかったが,その衝動を抑えた。とても優しくて,柔らかい声で話しかけた。
「保奈美、もうすでにここにあなたの居場所があるのよ,余所で探さなくても。」
また手を娘の肩に掛けた。
海保菜は,娘の新たな心の動きには,気づいていた。体質は,どうも前と変わらず人間のままだが,心は単純に人間のものではないようだ。海に自分が惹かれているのを感じ,その理由に戸惑い,今自分の中でその答えを見出そうと模索をしている。人魚の親,自分を必要としている。体は,関係ない。
しかし,体が違うと,命令は命令だから,話せないし,見せられない。それでも,この自分には,何か今の娘に役立てることがあるはずだ。
「ないよ。」
「ある。」
海保菜は,言い張った。
保奈美の手を握って,自分と尚弥の部屋まで案内した。保奈美がいつもしつこく質問する貝殻を箪笥(たんす)の上からとって,床の上に並べた。貝殻を一つ一つ説明した。どんな生き物が中で暮らして,海のどういうところに生息し、どのくらいの深さのところに行けば見つかるかなど,ことごとく説明した。
保奈美は,目を丸くして,熱心に聞き入った。
説明が終わると,貝殻を入っていた籠に戻し,保奈美に差し出した。
「あげる。もう要らない。」
「なんで,あんなに詳しい!?」
保奈美は,呆然としたままだった。
「私も,海が好きなんだよ。海に囲まれて育ったし、海についていろんなことを知っているの。私も海の生き物とか,貝殻とか,好きだよ。
ほら、ここにちゃんとあなたの居場所があるんだよ…私の娘だ。」
海保菜は,人魚の雰囲気を全面に出しながら、意味深く付け加えた。
保奈美は,まだ母親の豆知識の披露に驚いていた。
「なんで,言わなかった?」
「海は,美しいものばかりじゃないってちゃんとわかっているから。暗くて怖いことも,沢山あるのは,知っているから。」
海保菜は,暗い口調で言った。しかし,口調が暗いのに,目は輝いていた。
「そして、この貝は?」
「ずっと言っているように見つけたって。」
「でも、どこで?」
「どんなところで探したら,見つかるかぐらい知っているよ。あなたの理科の先生より,ずっと詳しい。」
「なら、私にも教えて。」
保奈美は,目を輝かせて,お願いした。
「海について?喜んで教えるよ。」
「それと,泳ぎも。」
「それは,できない…ごめんね。」
海保菜は,しぶしぶ,悲しそうに項垂(うなだ)れて断った。
「なんで?泳げるのに…。」
「…禁じられているから。」
海保菜は,しばらく考えてからようやく答えた。口を滑らせたわけではない。他に言い訳を思い付かなかっただけで。そして,そう言った方が,「本当は,教えたいけど…。」と言う海保菜の言葉の切実さが伝わると思ったからでもある。
「禁じられている!?誰に!?」
保奈美は,狼狽(うろた)えた。
海保菜は,それ以上,返事しようとはしなかった。娘の姿を愛しい目で見つめ続けただけ。「もしかして…。」
海保菜は,小さな声で呟いてから,自分の手を娘の胸に軽く当ててみた。でも、望んでいたような反応は,なかった。人魚にあるような反応は,なかった。
「何をしているの?」
保奈美は,母親の顔を訝しく見つめ返した。
「…やっぱり教えられない。一緒に泳げない。」
海保菜は,悲しく呟いた。
その夜、保奈美と揉めたことを尚弥に話した。
「僕も,そう思うよ。もう十二歳だし,話したらいいと思うよ。娘だし,信じたらいいよ。きっと,他言しない。内緒にしてくれる。」
「話せないよ。」
「なんで?信用出来ないの?」
「違う!言ったでしょう!信用の問題じゃない。約束したから。」
「聞いた。聞いた。誰かに,子供は人魚だとわかるまで話さないと約束したんだね?」
「そうなの。」
「その約束は守らなくてもいいと思うよ。あなたの事は,絶対に子供には,話すべき。人魚であれ,人間であれ。まずは,一番年上の保奈美から。」
「私もそう思うよ。見せたいし,知ってほしいし、泳ぎも教えたいし、一緒に泳ぎたいし!…私が決めたことじゃない。」
「なら、見せて。話して。話しちゃいけないと言われただけでしょう?守らなくてもいい約束だってあるよ。誰に約束したか知らないけどさ…。」
海保菜は,首を横に振った。
「この約束を守らないと彼らの命が危ないよ。」
「は!?脅されているの!?脅迫じゃない,それ!犯罪だよ!」
「私の世界では,犯罪じゃない。犯罪という発想もないし,神様のような人だよ。海はきれいな貝殻と長い髪の美しい人魚ばかりじゃないよ。」
「一体,誰なんだ、僕たちの子供を殺すと言っているのは!?」
「もうこれ以上は,話せない。本当は,今言ったことも,言っちゃいけないことだ。」
「僕も,殺すと言っているの、この人?あなたは,このことを一人で抱え込まなくてもいいよ。」
「いや、一人で抱え込まないといけない。そういう約束だから。」
数日後,保奈美と龍太は,いきなり二人で海に遊びに行って来ると言い出した。海保菜は,どんなに口で説得しようとしても,無駄だったから,玄関の扉を開けようとした娘の手を掴んだ。
「離して!」
保奈美は,抵抗した。
「行っちゃダメ!もう何度も,言っているだろう!」
「もう行くと決めた。もう私たちを止められないよ、お母さん!」
「お願いだから、やめて!」
海保菜は,手を合わせて,懇願した。
「教えないというなら,一人で頑張る!一人というか,二人で!」
龍太も,頷いた。
「だめよ!大人になったら,好きなようにできる。でも、今は…。」
保奈美は,ぷんぷん怒って,龍太を置いて,土星を吐きながら,一人で階段を上がり始めた。
「禁じられているからって、一体,誰に!?そして、どうして何も言わないの!?なんで,お母さんはいつも服従ばかりしているの!?なんで,こんなに弱い!? 」
龍太も,珍しく癇癪(かんしゃく)を起こしていた。
「まるで囚人みたいじゃない!?好きなところには行けないし、やりたいことができないし!この家にいると、全く何もできない。自由がない!」
海保菜は,少し考えて,このままでは,さすがにだめだと思った。大人になっても,いつまでも,子供を海に近付けないなんて,無理に決まっている。そして,大きな決意をした。
「わかった!」
海保菜は,階段を上がり始めた保奈美の顔と目の前に真っ赤な顔で立っている龍太の顔を交互に見ながら,宣言した。
「今夜、お父さんが寝たら,ここに来て。待っているから。私は,泳がないけど、あなたたちが,どうしても行ってみたいというなら,連れて行ってあげる。約束だ。」
子供たちは,半信半疑で海保菜の顔を見つめ返してから,無言で階段を上がり,夜まで降りて来なかった。
その夜,海保菜は,尚弥が寝たのを確かめてから,こっそりと階段を下りて,保奈美と龍太が来るのを待ったが,来なかった。 いつまで待っても来ないから,海保菜は,起こしに行くことにした。
「保奈美、龍太,起きて。」
海保菜は,優しく肩を揺さぶりながら,声をかけて,起こした。
「なんで?」
「どうしたの?」
「だから,海へ…。」
「本当!?」
「本当に,連れて行ってくれるの!?」
海保菜は,珍しく目を輝かせて,頷いた。すると,子供たちはすぐに飛び起きて、海保菜の後を追って行った。
三人で,家から一番近い浜辺まで歩いて行った。保奈美と龍太を産んだ浜辺だ。でも、子供たちは、自分たちがここで生まれたことを知らない。
生まれて初めてではないが,物心がついてから初めて,美しい海を目にした二人は,うっとりし,立ち竦んでしまった。
海保菜が二人の見惚(みほ)れている表情を見て、優しく,小さく笑った。
「覚えているの?」
囁き声と同じぐらい小さい声で,訊いた。
「覚えているって,何を?」
保奈美だけが,反応した。
「何もない…。」
海保菜は,黙りこみ、俯いた。海を見ていると,飛び込みたいというなかなか逆らえないくらい強い衝動に襲われるからだ。見ないことにした。
「お母さん,あれって満月?」
龍太が,訊いた。
海保菜も,空を見上げた。暗いのに,雲の姿が昼間と同じようにはっきりと見えていて,月は雲間から覗き,輝いていた。なかなか美しい夜空だった。
しかし,月は少し欠けている。つまり,満月ではない。
「満月じゃなくて,小望月(こもちづき)だね…素敵だね。」
海保菜も,空に見惚れて、言った。
しかし,二人の注目は,海に戻っていた。水面に映る月と雲の影,打ち寄せて来る波の音,果てしなく広がる黒い海,二人は釘付けになっていた。
「一回でいいから,触ってもいい?水に触れてもいい?手を付けるだけでもいいから。」
保奈美は,物欲しそうに海を眺めながら,尋ねた。
海保菜は,保奈美の顔をじっくり見ながらしばらく黙りこんで考えたが、村長夫妻の忠告を思い出して,しぶしぶ止めた。
「いや、やめといた方がいい。」
悲しそうな声で,言った。
「なんでいけないんだ!?何があんなに怖いの!?いったい,何が危ないの?」
保奈美は,抗議した。
「ごめんなさい。どうせ,私のせいだから…。」
海保菜は,胸の痛みに耐えながら,謝った。人魚が海の引力に逆らうと,胸が痛くなる。歯を食いしばりたくなるような痛みだ。
「何が?何がお母さんのせいなの?」
龍太が,尋ねた。
「あなたたちが好きなようにできないのは、海に近寄れないのは,私のせい。もしあなたたちには,違う母親がいたら、何でも好きなことができた。」
海保菜は,海から目を逸らし,暗い声で言った。彼女の目は,海と同じぐらい黒く見えた。
「どういうこと?」
龍太は,納得がいかない顔で,さらに訊いた。
「言えないけど…誰かを責めるなら私しかいないよ。」
海保菜は,見ていられなくなって,海に背を向けた。
「お母さんは,海に入らないの?」
保奈美が,訊いた。
「私も入らない。今は,入れない。」
「なんで?病気?」
龍太が、訊いた。
「いや、病気じゃない。」
「どうして入っちゃいけないの?すぐ近くまで来たのに,なんで触れちゃいけないの?お母さんだって,入りたいでしょう?入りたいって,顔に書いてあるよ。」
保奈美は,相変わらずよく見ている。なかなかの観察力だ。
「私は,あなたたちをここまで連れてくるだけで,充分逆らった。これ以上は進めない。取り返しのつかないことになる。」
「なんで?大体,何が問題なの!?」
海保菜は,返事せず、ただ黙々と浜辺の砂を見下ろした。
「どうして,何も教えてくれないの!?どうしていつも…?」
保奈美の言葉は,途中で途切れた。
「いつも何…?」
「どうして,色々考えたり,感じたりしているのに,言いたいことがあるのに,閉じられた箱みたいに黙るの?大事なことを全部秘密にして…なんで,そうしなきゃならないの?」
「私だって、こうしたいわけじゃないの…もう帰ろう。」
海保菜は,いろんな意味で,そろそろ限界だった。
「僕は,帰らない。ここにいる。」
龍太は,抵抗した。
「龍太,それは,だめに決まっているだろう。今,私と一緒に帰ったら、また連れてくるよ。約束。」
海保菜は,説得しようとした。
「何しに?また見に?見るだけじゃ,嫌だ。」
保奈美も,まだ帰りたくないようだ。
「私だって,この現状が嫌なの。でも,変えられない。」
海保菜は,久しぶりに海の方を向き直って,言った。
「本当に嫌なら、変えられる!いい加減,海に飛び込んでしまえば?何も怖いことは,起こらないよ。」
保奈美は,うまく母親の心を揺さぶろうとした。
「…あなたには,そんなことはわからないよ、保奈美。海に飛び込んだら,どうなるかとか,あなたにはわからない。」
海保菜は,小さく笑いながら,娘を叱った。
「そして、なんでしゃべり方が,皆とは,違うの?訛(なま)っている。いつもおかしいの。」
龍太が言った。
「ごめんなさい…。」
「謝ってほしくない。なぜか知りたいだけ。今日ここに来てから,特に訛りがきつい。」
「そんなことは,関係ないの。どうでもいいの。もう,帰ろう!」
「どうでもよくない。あなたは,私たちお母さんだよ!親子だよ。関係なくない!」
「知っている。」
「なら、なんで自分の子供にも言えないの!?」
「そんな簡単なことじゃない。」
「何が難しい!?約束した人があんなに怖い!?別に背いたって,殺されたりしないでしょう!?最悪でも怒られるぐらいだ。」
「いや、単に,誰かがだめだと言ったから、海に入らないとか、そんな簡単なことじゃないの。もっと,ややこしいの。怒られるぐらいで済む話なら,今にでも,あなたたちと一緒に平気で飛び込んじゃう。」
海保菜が苦笑いを交えて,言った。
「なら、なんで!?」
「今日は,もういい。もう帰ろう。そして、また来よう。」
「いや,次は二人で来る。」
「それは,ダメ!」
「なんで?もう十二歳だよ!もうそんなに小さくないの!学校の友達なんかは,もう小学ニ
年生のときから,へいっちゃらで一人で来ているし!理由もわからないのに,これ以上我慢するのは,もういやだ!」
「保奈美、いけない!絶対ダメ!」
「何がいけない?」
「私がいない時に,この海に入ることが…。」
「なんで?」
「…何が起こるか,わからないから。」
「何も悪いことは起きないのに!お母さんと一緒でも,入っちゃいけないでしょう!?それなら,いつまでも入れないじゃないの!?お願い,入らせて。今日まで随分長いこと,待った。龍太も。」
海保菜は,この言葉を聞いて、しばらく果てしなく目の前に広がる海から目を逸らさずに,見渡した。
「絶対に入れないのは私。」
海保菜は,ようやく口を開けた。
「あなたたちは,大丈夫かもしれない。やってみないとわからない…ただ、泳げないし…溺れそうになったら,助けるけど…いや,やっぱり、だめだ…そういう状況でも,きっとゆるされない。」
「やっぱり、水が怖いの?」
「違うよ。ただ、前も言ったように,今は入れないだけなの。 約束したから。」
「誰に,何を約束した!?」
海保菜は,また黙りこんだ。
「やっぱり,今度二人で来よう,龍太!」
「保奈美、だからいけないってば!私がいないとダメ!」
海保菜は,泣きそうになりながら,怒鳴った。
「でも、お母さんと一緒でも,入れないでしょう?」
「わかった!そんなに入りたい?なら、足を入れてみて。でも、それ以上は,進むな。一歩だけだよ。足が浸かる程度。龍太も,どうぞ。」
保奈美も,龍太も,半信半疑で,海保菜の顔を見上げた。
「いいの!?」
「ちょっとだけならいい。やってみて。」
海保菜が,静かに言った。本当は,海保菜も気になっていた。赤ちゃんの時から,試していない。もう一回試してみたかった。あれから十年も経っている…あれから何かが変わっているかもしれない。変わっていても不思議ではない。
海保菜は,波から安心できるくらい離れたところで,二人の様子を注意深く見守った。「期待してはいけない」と自分に何回言い聞かせても,またまた期待してしまっていた。
保奈美と龍太は,嬉しそうに手を繋いで,波に近寄って行った。波打ち際まで来ると,少しためらって海保菜の方を振り向いた。
「大丈夫。一歩だけ,水の中へ進んでみて。足を入れてみて。」
海保菜の声が背後から響いた。数メートルだけ子供たちの後ろの方へ下がって,見守った。
保奈美と龍太が同時に,波の中へと,一歩踏み出した。すると、すごく嬉しそうに、海保菜の方を振り向いた。
「ほら!大丈夫でしょう!何も怖いことは,起こらなかったでしょう?」
「はい。」
海保菜が,小さく、少ししょんぼりした口ぶりで言った。
少しだけ期待していた。最後に海に連れてきてから十年も経っているから,もしかして人魚の体質に変わっているかもしれないと,期待してしまっていた。でも、その期待は,またまた裏切られた。やっぱり、いくら我が子でも,真実を打ち明けられない。禁じられたままだ。少しでも人魚の体質があると分かったら、話せるのに。海保菜は,淋しく一人で悲しんだ。
「何も感じないの?」
海保菜は,少しためらいがちに訊いた。
「…水と潮風を感じるし、気持ちいいよ!」
二人の答えは,単純だった。
「気持ちいいだろうね。」
海保菜は,力の抜けた口調で相槌を打った。
「一緒に入ってみて!お母さんも足だけでいいから!」
龍太は,海から出てきて,海保菜の手を握り,海の方へ引っ張って行った。
「いや、だめよ!私はだめ!足だけでもダメ!」
海保菜は,パニックになった。
「いいのに!怖くないよ!」
保奈美も,励まそうとした。
「本当にダメだよ!龍太,手を離して!」
と海保菜が言っても,龍太も,保奈美も,聞かないので、抵抗しようとわざと転(こ)けて見せて,砂の上で倒れてみた。あと一歩でも進んでいたら子供たちにばれているところだった。すごく危ないところだった。たった一歩という短い距離にどれだけの秘密と危険が潜んでいるのか…。
保奈美も,龍太も,転けたのは、わざとやったことだと見抜いていた。
「やっぱり怖いんだね、お母さん。」
龍太が言った。
「怖くない…というか、私が恐れているのは水とか海とかじゃない。もういい加減にしろ。今すぐ,帰るんだ。私たちが帰る前に,お父さんが起きたら,大変だよ。」
今回は,海保菜が保奈美と龍太の手を握り,逆の方向へ引っ張って行った。子供たちは,従順に後をついて行った。
保奈美は,後ろ髪を引かれるような気持ちで歩きながら,何度も振り向いて,黒い海と小望月の光夜空を見た。自分の意思ではなく,何かに取り憑(つ)かれているかのようだった。
「どうした?」
海保菜は,保奈美が何度も振り向いていることが気になり,心配そうに尋ねた。
「何もない。」
保奈美は,すぐに答えた。
海保菜は,保奈美の返事を見抜いていたようで,その後も娘の横顔をジッと見つめ続けた。
「大丈夫だから。」
海保菜は,ようやくまた口を開けた。
家に帰っても,自分の部屋に戻っても,海を初めて自分の目で見た興奮は,残っていた。
保奈美の手は,どことなく悴んでいて、痒かったから,ちらっと見てみた。すると、手のひらに鱗の様な発疹ができていた。あまり気づかない程度だったが、気持ち悪くて、保奈美は思わず悲鳴をあげそうになった。でも、龍太に気づかれないように,頑張って堪えた。
暫くすると、海保菜が尚弥を起こさないように,極力音を立てずに,保奈美と龍太の部屋に入ってきた。
保奈美は,焦って母親を見上げた。
「どうだった?」
海保菜は,満面の笑顔で訊いた。
「綺麗だった。」
龍太が答えた。保奈美は,無言で,母親と目を合わせようとしない。
「良かった。また連れて行ってあげるからね。」
海保菜は,約束した。
「いや、もういいよ。もう行きたくない。」
保奈美は,帰ってきて初めて口を開けた。
「え!?あんなにせがんだのに…!?」
海保菜は,狼狽(うろた)え,戸惑った。娘には,一体何があったのだろう。
「もういい。でも、ありがとう。初めて本物の海が見られて,嬉しかった。」
海保菜は,娘の態度の変化が気になり,保奈美の手を握ろうとした。すると、保奈美は,すぐに,反射的に手を引っ込めた。 海保菜は,少し首を傾げて,保奈美の手を自分の手で包んだ。
「どうした?言っていいよ。何か怖いことがあった?」
海保菜は,心配そうに,娘の目の奥を覗いて,尋ねた。
でも,保奈美は,答えなかった。
「きっと,大丈夫だよ。興奮しているだけ。」
龍太が,代わりに答えた。
「そうだね。」
海保菜は,娘の手を離した。
「今夜見たことや,感じたことを忘れないでね。」
海保菜は,しんみりして言った。
「嬉しかった…私…。」
海保菜の言葉は,途中で途切れてしまった。言いたいことが言えない。自分の気持ちが伝えられない。なぜ嬉しかったのか,秘密に触れずには,言えない。あの忌々しい秘密がいつも自分と子供の間に壁を作ってしまう。
龍太は,頷いた。「僕たちも,嬉しかったよ。」
海保菜も,頷いて,
「では,おやすみなさい。」
と挨拶(あいさつ)してから,子供たちの部屋を出ていった。
海保菜が部屋を出てから、保奈美は,もう一度自分の手を調べた。鱗の様な発疹は,消えていた。 元に戻っていた。 でも、さっきは,確かにあったのだ。疑う余地は,なかった。自分の目で見たのだ。
でも、お母さんが触ったのに,どうして気づかなかったのだろう?お母さんが手を握ったときは,まだ消えていなかったはずだ。ざらざらしていて,いつもとは違う感触だったはずなのに,お母さんには,そのことに気付いている様子はなかった。
お母さんが怖かったのはこれだったのかな?何らかのアレルギー反応だったのだろうか?お母さんが,海に入るのをそこまで嫌がったのは,その発疹が出るからのかな?
お母さんは話してくれないから、答えがわからない。でも,答えが知りたいとも,そこまで思わなくなっていた。ただ、二度と海には近寄りたくない。その気持ちだけが自分の胸の中で固まってしまっていた。お母さんが何を隠しているのか,知るのが怖かったのだ。
その夜は,どう頑張っても眠れなかった。黒い海と小望月(こもちづき)のイメージが頭の中をぐるぐる回り,朝までうなされた。
「昨日はありがとう。」
保奈美は,次の朝,起きてすぐにお母さんにお礼を言った。
海保菜は,今朝起きてから静かだ。何も言わない。
「でも、もう行きたくないでしょう?」
娘の気持ちが変わっていないか,確かめたくて,尋ねた。
「行きたくないというか、訳が分からない…私が足を水につけて,どうして取り返しのつかないことになるの?私が泳いで,何が悪い!?そして,誰が禁じているの!?そして、どうして!?誰にもその権利は,ないわ。」
「泳いでもいい…またいつでも連れてってあげる。私は泳がないけど、あなたは,大丈夫。この間,確認できた。」
「確認できたって、どういう意味?」
「え?特に、深い意味はないよ。」
「自分は、入れないのに,何で連れて行ってくれたの?」
「あなたたちに海を知ってほしいから,連れて行ったの。」
「なら、なんで泳がないの!?」
「できないから。」
「なんで!?病気?アレルギー?金槌?」
「違う…。」
「なら、なんで!?」
「なんで,ここまで追求する?」
「知りたいから!」
海保菜は,朝起きて初めて保奈美と目を合わせた。すると,ハッとした。
「保奈美,大丈夫!?顔色が悪い…!」
「昨夜眠れなかっただけだよ。大丈夫。お母さんって,海に入ると,何か変なことが起きるの?発疹ができたり…。」
「は?発疹は,できないよ…なんで,そんなこと?」
「何もない…ただ泳げるようになりたいし,お母さんと一緒に泳ぎたかった。せっかく似ているところを見つけたのに。お互い海が好きだって,せっかくわかったのに。」
海保菜は,娘の言葉に心を打たれた。
「私も一緒に泳ぎたかった…。」
海保菜は,涙を堪えながら,とても小さい声で呟いた。
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