45 / 51
カラフル(アパートの隣同士・現代)
カラフル2※
しおりを挟む
丁寧だが、表情に乏しい人。
それが戸川さんの印象だった。ゴミ捨ての時に遭遇しても、玄関前でばったり会っても、その印象は変わらなかった。
それが、パンツを届けたときに一変した。
生真面目そうな顔を、恥ずかしがって真っ赤にしている様子に、興味を持った。この人と、仲良くなりたい、と思った。
思えば、あの時から俺は、戸川さんに惹かれていたのかもしれない。
俺と戸川さんは付き合うことになった。
北原夏輝だから夏輝くん、戸川順平だから順平さんと、そう呼び合うことにした。
性行為は、付き合って二週間後に、した。
俺も男相手は初めてだが、順平さんは誰ともしたことがないという。俺は、俺のために残しておいてくれたように感じた。
キスしても、服を脱がせても、前戯をしても、後ろを解しても、順平さんは顔を真っ赤にして泣きそうな顔をして、恥ずかしがった。
実際、少し泣かせてしまった。
申し訳ないと思いながらも、泣いて恥ずかしがって、初めての感覚に戸惑う順平さんは、とても可愛かった。
俺は、十代のころみたいにがっついてしまって、順平さんを引かせた、と思う。
でも、またしましょうね、って言ったら、恥ずかしそうに小さくうなずいてくれた。
それからすぐ、俺は、何でもない日に順平さんにボクサーパンツを贈った。
「ごめんね……俺のが……よれよれだから……」
俺の送った三枚のパンツを片手に持ちながら、順平さんが申し訳無さそうに、不安げに自らの頬を撫でた。
順平さんは不安なときに、頬を撫でるくせがあるようだ。
「違うよ」
そう、俺たちは敬語もやめた。段々と恋人らしくなってきたと思う。
順平さんは、小首を傾げた。
「脱がしたいから、あげたの」
数秒後、俺が何を言っているのかわかった順平さんが、顔を真っ赤にしてパンツを手から落とした。
早速履かせて、早速脱がせた。
それから、一緒にジョギングもするようになったし、車を借りて高速道路をひたすら走って富士山の麓まで行ってうどんも食べたし、俺の実家にも泊まってもらった。
恋人と紹介したわけではないけど、なんとなく伝わったと思う。
順平さんの親は保守的だから、親には紹介できないかもしれない、と言われたけど、俺は俺の親に会ってくれたことが嬉しくて、それで十分だった。
俺が無神経で落ち込ませることもあるけど、概ねうまく行っている、と思う。
テレビに映る女性芸能人を美人だとか、かわいいだとか言うと、順平さんは怒るとか拗ねるではなく、一人で静かに落ち込んでしまう。
順平さんが一番かわいいに決まっているのに。バウムクーヘンを一枚一枚フォークで丁寧に剥がしながら食べる順平さんが、世界で一番かわいいに決まっているのに。
順平さんは、俺の妹を彩花ちゃんと呼ぶのだが、それに俺は意味不明な嫉妬をしているのだから、それとどっこいどっこいか。
順平さんと付き合いだして、一年。
俺は、順平さんに飽きるということがなかった。
これまでの恋愛では、いつもどこかで面倒だなと感じてしまっていた。それで、そう思う俺はひどい男だと感じていた。
なんで、彼女たちを大事にできないんだろうと、いつしか恋愛を避けていた。
そうしたら、会社の人間関係が大惨事になったのだが。
土曜の夜、行為の前にシャワーを浴びて、我慢できずに兜合わせなんかしてしまったら、順平さんが恥ずかしいよと首を振った。
もう一年経つのに、幾度も体を重ねたが、順平さんの恥じらいはまだ擦り切れていない。
「明るいから? でも、気持ちいいでしょ? がちがちだもんね」
まとめてしごくと、順平さんはびくんと体を強張らせて俺にしがみついて、果てた。
「あうっ……!!」
どくどくとペニスが脈打っている。
その達したばかりのペニスに俺のペニスを擦り付ける。苦しいのか、順平さんががくがくと震えている。
「なつ、きくん……!! きつい……!! だめ、それっ!! あ゛っ!! んんんっ……!!!」
その声で、俺も射精に至る。
夏輝くん、ひどいよ。胸を大きく喘がせながら、そう言いたげないじらしい潤んだ目で俺を見る。
自覚がないのだろうか、それが俺を煽るのに。
ベッドの上で、順平さんが乱れていく。
部屋を明るいままにして、裸の順平さんの乳首を見せつけるように舐め、甘噛して引っ張る。
わざと羞恥を煽るように、じゅっと音を立てて吸う。
「夏、輝くん……!」
快感に耐える声がたまらない。
乳首を口に含みながら、尻の穴を解していく。二本の指で膨らんだ前立腺をやわやわと押し上げる。
「ひっ……!! あっ、ああッッ……!!」
順平さんの粘膜が、ぎゅんぎゅんと指を食いしめて絶頂を伝えた。どこもかしこも感じやすくてかわいい。
俺は、わざと、ぐちゅぐちゅと音を立ててかき回し、彼の尻の穴を解した。
乳首も音を立ててくちゅくちゅと口内で転がす。
「なつ、き、くん……!! うっ! や、やだっ……んっ……だめっ……! ああっ……んんッッ……!!!」
がくがくと体を震わせ、直腸がひくひくして、とろとろの熱い粘膜が二本の指を淫らに締め付けける。
ちゅっと音を立てて、硬く立ち上がった乳首を解放する。
見下ろす順平さんの顔は、眉を八の字にして、目を潤ませて、真っ赤でどこかぼうっとしていて、はあはあと喘いでいる。
世界中の誰も、順平さんがこんなに敏感でエロくて、かわいいことを知らない。俺だけが、知っている。
順平さんの足を開かせると、俺は限界を迎えつつあるペニスをゆっくりと順平さんの熱く潤んだ体内へと埋めていった。
「ああっ……んぐっ……! やっ……んっ! あ、ああっ……!!」
いいところをえぐると、順平さんがひっきりなしに鳴く。
順平さんは、過ぎた快感を恐れるように、正気にしがみついている。
俺は、セックスはこれまで、単純で明るくて楽しいものだ、と思っていた。
それも間違いではないと思うのだが、愛しい相手をどろどろに溶かして、自分もどろどろになって溶けあいたい。俺の中にそんな欲望があったことに驚いた。
腰を使って、順平さんの正気を壊していく。
「はうっ、ひっ、あっ、んんんーーッッ!! ふぎッッ! ンああーーーッッ……!!」
順平さんの目が、とろんと完全に快楽にとろけていく。
この瞬間が好きだ。
喘ぎつづける唇にキスをして、俺より体温の低い舌を吸う。順平さんがキスに応えてくれる。
「んっ……んんっ……!」
順平さんの腰が跳ね、ペニスを受け入れている直腸が一層いやらしくうねり締め付けを増す。
俺は、たまらず抜き差しを速める。
好きだ、好きだ、好きだ。
そして、ぐっと最奥を押し上げて、射精した。
シャワーを浴びて、部屋着を着ると、順平さんはもういつも通りだ。
今度は寝るためにベッドに入る。なんだか少し悔しくて、順平さんに抱きついた。
華奢でもない、女顔でもない、直線的な体に。
でも、この世で一番ほっとする。
「明日は、どうしようか」
そう言いながら、順平さんが俺の頭を撫でる。気持ちがいい。俺と変わらない、男の大きな手だ。
「海が見たいな」
俺は、ドラマで言いそうな、気恥ずかしいことを言った。
たまに、きらきらとした海を眺め、潮風に吹かれ、波の音を聞きたくなる。隣に順平さんがいれば、最高。
二人で交代で運転して海に向かう。俺は、運転している順平さんの横顔が好きだった。
「いいね」
順平さんは馬鹿にしたりせず、そう言って、静かに笑った。
おわり
初出:2024/07/19
それが戸川さんの印象だった。ゴミ捨ての時に遭遇しても、玄関前でばったり会っても、その印象は変わらなかった。
それが、パンツを届けたときに一変した。
生真面目そうな顔を、恥ずかしがって真っ赤にしている様子に、興味を持った。この人と、仲良くなりたい、と思った。
思えば、あの時から俺は、戸川さんに惹かれていたのかもしれない。
俺と戸川さんは付き合うことになった。
北原夏輝だから夏輝くん、戸川順平だから順平さんと、そう呼び合うことにした。
性行為は、付き合って二週間後に、した。
俺も男相手は初めてだが、順平さんは誰ともしたことがないという。俺は、俺のために残しておいてくれたように感じた。
キスしても、服を脱がせても、前戯をしても、後ろを解しても、順平さんは顔を真っ赤にして泣きそうな顔をして、恥ずかしがった。
実際、少し泣かせてしまった。
申し訳ないと思いながらも、泣いて恥ずかしがって、初めての感覚に戸惑う順平さんは、とても可愛かった。
俺は、十代のころみたいにがっついてしまって、順平さんを引かせた、と思う。
でも、またしましょうね、って言ったら、恥ずかしそうに小さくうなずいてくれた。
それからすぐ、俺は、何でもない日に順平さんにボクサーパンツを贈った。
「ごめんね……俺のが……よれよれだから……」
俺の送った三枚のパンツを片手に持ちながら、順平さんが申し訳無さそうに、不安げに自らの頬を撫でた。
順平さんは不安なときに、頬を撫でるくせがあるようだ。
「違うよ」
そう、俺たちは敬語もやめた。段々と恋人らしくなってきたと思う。
順平さんは、小首を傾げた。
「脱がしたいから、あげたの」
数秒後、俺が何を言っているのかわかった順平さんが、顔を真っ赤にしてパンツを手から落とした。
早速履かせて、早速脱がせた。
それから、一緒にジョギングもするようになったし、車を借りて高速道路をひたすら走って富士山の麓まで行ってうどんも食べたし、俺の実家にも泊まってもらった。
恋人と紹介したわけではないけど、なんとなく伝わったと思う。
順平さんの親は保守的だから、親には紹介できないかもしれない、と言われたけど、俺は俺の親に会ってくれたことが嬉しくて、それで十分だった。
俺が無神経で落ち込ませることもあるけど、概ねうまく行っている、と思う。
テレビに映る女性芸能人を美人だとか、かわいいだとか言うと、順平さんは怒るとか拗ねるではなく、一人で静かに落ち込んでしまう。
順平さんが一番かわいいに決まっているのに。バウムクーヘンを一枚一枚フォークで丁寧に剥がしながら食べる順平さんが、世界で一番かわいいに決まっているのに。
順平さんは、俺の妹を彩花ちゃんと呼ぶのだが、それに俺は意味不明な嫉妬をしているのだから、それとどっこいどっこいか。
順平さんと付き合いだして、一年。
俺は、順平さんに飽きるということがなかった。
これまでの恋愛では、いつもどこかで面倒だなと感じてしまっていた。それで、そう思う俺はひどい男だと感じていた。
なんで、彼女たちを大事にできないんだろうと、いつしか恋愛を避けていた。
そうしたら、会社の人間関係が大惨事になったのだが。
土曜の夜、行為の前にシャワーを浴びて、我慢できずに兜合わせなんかしてしまったら、順平さんが恥ずかしいよと首を振った。
もう一年経つのに、幾度も体を重ねたが、順平さんの恥じらいはまだ擦り切れていない。
「明るいから? でも、気持ちいいでしょ? がちがちだもんね」
まとめてしごくと、順平さんはびくんと体を強張らせて俺にしがみついて、果てた。
「あうっ……!!」
どくどくとペニスが脈打っている。
その達したばかりのペニスに俺のペニスを擦り付ける。苦しいのか、順平さんががくがくと震えている。
「なつ、きくん……!! きつい……!! だめ、それっ!! あ゛っ!! んんんっ……!!!」
その声で、俺も射精に至る。
夏輝くん、ひどいよ。胸を大きく喘がせながら、そう言いたげないじらしい潤んだ目で俺を見る。
自覚がないのだろうか、それが俺を煽るのに。
ベッドの上で、順平さんが乱れていく。
部屋を明るいままにして、裸の順平さんの乳首を見せつけるように舐め、甘噛して引っ張る。
わざと羞恥を煽るように、じゅっと音を立てて吸う。
「夏、輝くん……!」
快感に耐える声がたまらない。
乳首を口に含みながら、尻の穴を解していく。二本の指で膨らんだ前立腺をやわやわと押し上げる。
「ひっ……!! あっ、ああッッ……!!」
順平さんの粘膜が、ぎゅんぎゅんと指を食いしめて絶頂を伝えた。どこもかしこも感じやすくてかわいい。
俺は、わざと、ぐちゅぐちゅと音を立ててかき回し、彼の尻の穴を解した。
乳首も音を立ててくちゅくちゅと口内で転がす。
「なつ、き、くん……!! うっ! や、やだっ……んっ……だめっ……! ああっ……んんッッ……!!!」
がくがくと体を震わせ、直腸がひくひくして、とろとろの熱い粘膜が二本の指を淫らに締め付けける。
ちゅっと音を立てて、硬く立ち上がった乳首を解放する。
見下ろす順平さんの顔は、眉を八の字にして、目を潤ませて、真っ赤でどこかぼうっとしていて、はあはあと喘いでいる。
世界中の誰も、順平さんがこんなに敏感でエロくて、かわいいことを知らない。俺だけが、知っている。
順平さんの足を開かせると、俺は限界を迎えつつあるペニスをゆっくりと順平さんの熱く潤んだ体内へと埋めていった。
「ああっ……んぐっ……! やっ……んっ! あ、ああっ……!!」
いいところをえぐると、順平さんがひっきりなしに鳴く。
順平さんは、過ぎた快感を恐れるように、正気にしがみついている。
俺は、セックスはこれまで、単純で明るくて楽しいものだ、と思っていた。
それも間違いではないと思うのだが、愛しい相手をどろどろに溶かして、自分もどろどろになって溶けあいたい。俺の中にそんな欲望があったことに驚いた。
腰を使って、順平さんの正気を壊していく。
「はうっ、ひっ、あっ、んんんーーッッ!! ふぎッッ! ンああーーーッッ……!!」
順平さんの目が、とろんと完全に快楽にとろけていく。
この瞬間が好きだ。
喘ぎつづける唇にキスをして、俺より体温の低い舌を吸う。順平さんがキスに応えてくれる。
「んっ……んんっ……!」
順平さんの腰が跳ね、ペニスを受け入れている直腸が一層いやらしくうねり締め付けを増す。
俺は、たまらず抜き差しを速める。
好きだ、好きだ、好きだ。
そして、ぐっと最奥を押し上げて、射精した。
シャワーを浴びて、部屋着を着ると、順平さんはもういつも通りだ。
今度は寝るためにベッドに入る。なんだか少し悔しくて、順平さんに抱きついた。
華奢でもない、女顔でもない、直線的な体に。
でも、この世で一番ほっとする。
「明日は、どうしようか」
そう言いながら、順平さんが俺の頭を撫でる。気持ちがいい。俺と変わらない、男の大きな手だ。
「海が見たいな」
俺は、ドラマで言いそうな、気恥ずかしいことを言った。
たまに、きらきらとした海を眺め、潮風に吹かれ、波の音を聞きたくなる。隣に順平さんがいれば、最高。
二人で交代で運転して海に向かう。俺は、運転している順平さんの横顔が好きだった。
「いいね」
順平さんは馬鹿にしたりせず、そう言って、静かに笑った。
おわり
初出:2024/07/19
47
あなたにおすすめの小説
普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。
山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。
お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。
サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
【花言葉】
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただければ嬉しいです!
【異世界短編】単発ネタ殴り書き随時掲載。
◻︎お付きくんは反社ボスから逃げ出したい!:お馬鹿主人公くんと傲慢ボス
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
二日に一度を目安に更新しております
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる