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赤髪のフランと聖騎士シブースト(オメガバース・ファンタジー)
赤髪のフランと聖騎士シブースト
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マドレーヌ王国のマカロン男爵の領地の森に、魔物が現れるようになった。
村人を傷つけ、家畜を襲い、畑を荒らし回る被害が出た。
どうやら魔界と人間界を隔てる時空の壁に、亀裂が出来たか、穴が開いてしまったようだった。
マカロン男爵は、マドレーヌ王国王立騎士団内の神聖騎士団に、魔物の討伐と時空の壁の修復を要請した。
神聖力を持った騎士が、武器や拳に神聖力をまとわせて攻撃することでしか、魔物は倒せない。
この世界では、神聖力を持つものはごく少数で、持たないものがほとんどだ。
もともと、マドレーヌ王家も強い神聖力を持つために、王家となった。高位の貴族も神聖力の強い家系だ。
マカロン男爵のような、位の低い貴族は神聖力が弱いため、魔物を自力で討伐することは出来なかった。
マカロン男爵家の次男でオメガのフラン・ギモーヴは、村で医者とともに怪我人の治療にあたっていた。
フランは、燃えるような赤髪のほかは、オメガらしい美貌を持たないオメガだった。
フランの特徴と言えば、深い薬草の知識を持っていることだった。死んだフランの母は、森と村の境に住む賢い女だった。フランは、母から薬草の扱いをすべて教えられていた。
獣脂とハーブを使ったフランの調合した軟膏は、治療になかなかの効果があったが、魔物の供給の元を断たねば仕方がない。
今は野ウサギ程度の魔物しか出てきていないから小さな引っかき傷や噛み傷程度で済んでいるが、亀裂だか穴だかが大きくなれば、もっと大きな魔物が出てきてしまうかもしれない。恐ろしいことだ。
牛たちも魔物に噛みつかれたりして、乳の出も、味も悪い。牛乳の加工品が生計の大きな柱であるマカロン男爵領にとっては死活問題だ。
そこに、神聖騎士たちが到着した。
騎士たちは早速、近くにいる魔物を倒し始めた。
彼らの振るう剣は、強く白い光をまとっている。フランたちの神聖力とは桁違いだ。
特に、神聖騎士団団長のカヌレ公爵シブースト・シューアラクレームの、討伐の技倆と神聖力は抜きん出ていた。
思わず、医院の窓越しに見ていたフランが見惚れてしまうほどに。
そしてあらかた倒し終わると、森の周囲に神聖力で結界を張っていった。
森からこれ以上、出てこないようにするためである。翌日以降、森に入って、魔物を狩り尽くし、壁を修復するのだ。
フランは、団長のシブーストに挨拶しようとした。
以前、王都の舞踏会ですれ違ったことがあったが、シブーストは恐ろしいほどに整った容貌をしていた。そのサファイアのように冷たい青い瞳が、フランを見おろした。
「遠いところ、魔物の駆除にお越しいただき、ありがとうございます。私は……」
名を名乗ろうとしたとき、鞘に納めていた剣をシブーストが素早く抜いた。剣が白い光を放つ。
次の瞬間、フランの足元に噛みつこうとした魔物が、シブーストの剣に突き刺され、断末魔の声を上げた。
「あ……ありがとうございます」
思わずよろけるフランを、シブーストが抱きとめた。
「も、申し訳ございません!」
フランは、大きな胸に抱かれて、ひどく動揺した。顔が熱い。
「無事で何より」
相変わらず、シブーストは冷徹にフランを見おろしている。フランは、自分の足でしっかり立つと、気を取り直して頭を下げた。
「助けていただき感謝申し上げます。私は、マカロン男爵の次男、フラン・ギモーヴと申します。マカロン城へご案内いたします」
「私は、神聖騎士団団長、シブースト・シューアラクレームと申す。案内感謝する」
ここまで整った顔立ちで、一分の隙もない無表情だと、怖いとフランは思ったが、恐れることはないとフランは自身を奮い立たせた。
フランは、さっと自分の馬にまたがると、先頭に立って騎士団をマカロン城に案内した。
マカロン城では、騎士たちを迎える準備が進められていた。城のものたちは、忙しく立ち回っていた。
跳ね橋を下げ、城門をくぐり、馬房に騎士たちの馬を繋いだ。騎士の従士らがそれぞれ、馬具を外してやり、水を飲ませ、秣を食べさせて、休ませる。
フランは騎士たちを連れて、城に入った。城と言っても、古く、簡素なものである。
フランの父である、マカロン男爵と、跡継ぎのフランの兄フレジエが騎士たちに挨拶し、感謝の言葉を述べた。
それから、騎士たちを部屋に案内した。
いくら手があっても、足りるということがなかった。フランも、城のものたちと一緒になって、掃除して、客人のベッドにシーツを張り、厨房で料理を手伝った。
今はフランは、客人に振る舞う鶏肉をグリルの前でソースをかけながら、回して焼いていた。
熱くて汗が滴る。
食事の支度に目処が立つと、今度はフランは、給仕をはじめた。
シブーストらが大広間にやってきて、晩餐が始まった。
フランは晩餐の間、空いた盃に酒を注いで周り、食事を厨房から運び、大忙しだった。
シブーストがこちらを見ているので、酌をしにいったが、酒はまだなみなみと満たされていた。
それなら、なぜこちらを見ていたのだろうか。
翌朝、騎士たちは早く出ていくので、フランも早起きして朝食と、持たせる昼食の支度を手伝った。
また、シブーストに見られている気がする。こちらが気付いてそちらを見ると、シブーストはすうっと視線をよそにやった。
給仕が至らないだろうかと不安になってくる。公爵にとっては、マカロン男爵家のもてなしには足りないところもあるだろう。料理だって、洗練されていない田舎料理だ。どうやっても、大貴族のようにはいかない。
騎士たちが討伐に出ていくのを見送ってから、フランは、男爵と兄のフレジエと執事とコックと顔を突き合わせて、今日のメニューを相談した。
討伐は順調に進んでいるようだった。もうすぐ、森の最深部の、魔界と人間界の間の壁の亀裂にも到達するだろうとのことだった。
翌朝も騎士たちは、早朝に森へと入っていった。
昼過ぎ、村から村長の息子が城に馬で駆け込んできた。
「大変です……!! 巨大な魔物が、何匹も! 村まで……!!」
「なんだって!?」
「騎士様たちも、倒れて……!!」
フランたちは村に向かった。
村に駆けつけたとき、村にはたくさんの巨大な魔物の死骸と、戦闘不能の騎士たちがうめき、団長のシブーストたったひとりが、巨大な魔物に対峙していた。
二階建ての建物の相当の体高をした熊のような魔物は、額から牛のような二本の立派な角を生やし、赤い目をらんらんと光らせている。
フランは、無駄だと知りながらも、シブーストの助太刀をせねばと、持ってきた弓矢で魔物を射った。しかし、これが火事場の力というのか、いつもより神聖力が乗った矢は、魔物の目に突き刺さった。
魔物が、フランの方に荒々しく向き直る。猛り狂い、凄まじい雄叫びを上げる魔物が突進してくる。
「あっ……」
死ぬ、とフランは、思った。
が、シブーストが隙を見せた魔物を背後から切り捨てた。
フランはフレジエに腕を引かれた。それで、フランも、フレジエも、男爵も、どうと倒れてくる魔物の下敷きにならずに済んだ。
助かったものの、三人はしばらく腰が抜けて動けなかった。
村人や騎士たちによって、怪我人はひとまず村の教会に運び込まれた。
「壁は、応急処置として修復してある。修復士のエクレアがより強固に修復てくれることだろう」
教会の椅子に横たえられたシブーストは、マカロン男爵に報告した。
マカロン男爵は、涙ながらに感謝を伝えた。
「貴方がたは、私どもの命の恩人でございます! この御恩は、我が一族代々語り継いでまいります! 私どもの助けが必要なことがあれば、どのようなことでもお申し付けください!」
フランは、シブーストの体から血を洗い流し、傷口に特製の軟膏を塗り、包帯を巻いていった。
シブーストがきつく眉をしかめる。
「ごめんなさい! 痛かったです、よね?」
シブーストは無言で首を横に振った。
「だが、もう……そこまでで、よい」
「いけません。化膿してしまいます」
フランが言うと、シブーストはそっぽを向いた。
フランは、あることに気が付き、シブーストの股間にさっと布を掛けた。戦闘のたぎりによってか、シブーストのそこは立ち上がっていた。
そうすると、フランのほうでも、少しおかしな気分になってくる。
広範囲の擦過傷に軟膏を塗り込む、てのひら全体に、シブーストの素肌や筋肉の感触を感じる。
シブーストが、うっ、とか、んっ、とか呻くのを聞いて妙な気分になってしまいそうだった。
「……終わりました」
「ああ」
「失礼いたします」
フランは、赤い顔を見せないようにしながら、逃げるように次の患者のところへ向かった。
銀色の艷やかな髪、紫の瞳、薔薇色の唇の、麗しい女性の修復士が、ちょうど村に到着した。
彼女がシブーストの言っていた修復士のエクレアで、王族の出で、強い神聖力を有していて、シブーストの従姉妹でもあった。
エクレアが森の最深部との魔界との亀裂を修復するためには、護衛兼案内が必要だった。
シブーストたち神聖騎士たちは全員手負いで行動不能だったため、兄のフレジエとマカロン城の騎士たちがまだ魔物はいないかとおっかなびっくり森に向かった。
エクレアはフレジエに微笑みかけた。
「もう危険はありません。私は半径千エールの魔物の気配を感じることができますが、このあたりはもう安全です」
フレジエは、その微笑みにたちまち魅了された。
森の最深部までくると、シブーストが応急的に塞いだ亀裂にエクレアが触れた。
エクレアの手が白く眩く光り輝き、神聖力を亀裂に注いでいくと、みるみる亀裂は塞がっていった。
フレジエと騎士たちは、おお、と感嘆の声を上げた。
災厄はついに終わった。
傷の回復を待って、神聖騎士団は、王都へと帰っていった。
騎士団の世話をし、騎士団とともに王都に帰還するというエクレアとお茶を楽しんだりもした。
帰還する朝、礼を言い見送るフランに、シブーストは一瞥もくれなかった。
だから、フランはシブーストの従僕のサヴァランに、もしよろしければと特製の軟膏を渡した。
帰る一行のなか、エクレアとシブーストが並び立つと、一幅の絵のようだった。
シブーストが馬車に乗るエクレアを恭しくエスコートした。
食事の時は兄が常にエクレアをエスコートしていたが、まるでエクレアとシブーストに比べればまるで不似合いだったな、とフランは思った。
横目で兄をちらりと見ると、兄弟だからわずかに見て取れる程度に兄が打ちひしがれているのがフランにはわかった。フレジエはこの数日で、すっかりエクレアの虜になったようなのだった。
従兄弟同士の結婚はマドレーヌ王国では禁じられているが、禁じられていなければシブーストとエクレアは結婚したのではないだろうか、とフランは思った。
一月後、カヌレ公爵シブースト・シューアラクレームの使者がマカロン城に手紙を携えてやってきた。
カヌレ公爵家の封蝋が押されている手紙をマカロン男爵が開いた。
「カヌレ公爵と、フランとの、縁組、でございますか?」
マカロン男爵は、そのあり得ない内容に、どういうことだ、と頭が真っ白になった。
「左様でございます。お返事は、一ヶ月後に伺いにまいります」
シブーストの使者は恭しく頭を下げ、帰っていった。
フランは、朝から野原で薬草を摘んでいた。神聖騎士団が魔物を退治してくれたおかげで、安心して薬草を摘むことができる。
薬草摘みからもどったフランは、執事からマカロン男爵がフランに書斎に来るよう言っていると知らされた。
書斎で手紙の内容を聞かされたフランは、男爵と同じく、あり得ない、と思った。
男爵が、聞きにくそうに聞いた。
「その……念の為に聞くのだがな、公爵とお前との間に、そのなにか、間違いがあって、公爵は責任を取るとおっしゃているのでは、あるまいね?」
フランは、怒って否定した。
「肉体関係など、あるはずがないではないですか! 公爵は僕と目を合わそうともしなかったんですよ!?」
「ああ、うん、わかっているよ、わかっている」
しかし、結局、先日の大恩もあり、断れない、ということになった。
フランは、うんうんと考えた。きっと、裏があるに違いないと。
立場の弱い男爵家のオメガはお飾りの妻で、それを隠れ蓑に真に愛する人とよろしくやるつもりなのではないか。
きっと、その人は、シブーストとて結婚が望めない相手に違いない。それは、結婚を許されない相手である、従姉妹のエクレア。
フランは、さすがに下世話な妄想かと、頭を振ったが、なかなかその妄想が離れない。
だって、シブーストがフランと結婚することに利点がなさすぎる。
持参金もない。これは、シブーストには大した問題ではないかもしれない。
公爵家と男爵家では格が釣り合わない。きっと、影でこそこそ言われる。
フランは絶世の美青年なんてことはない。燃えるような赤い髪だけが特徴的な、いたって平凡な青年である。
もしかしたら、公爵は自分を本当に気に入ったのか?
それはこれっぽっちもないと、フランはすぐに思った。公爵の滞在中のフランは、使用人と見まがうばかりに汗水たらしていたし、優雅でもなんでもなかった。公爵は、フランとは目も合わそうとしなかった。
それが答えだ。
マドレーヌ王国の男子の結婚可能年齢は、二十歳なので、その日を待って、二年後に正式に結婚することになった。
王都の教会で、司祭の前で婚約式を執り行ったのだが、シブーストはやはりフランと目を合わそうとしなかった。
婚約式のあと、王都のカヌレ公爵邸でパーティーが開かれたのだが、主役のシブーストとフランのダンスは実におかしなものだった。
本来は体を密着させるダンスで、公爵はわざと、フランと体を密着させなかった。
見る人が見れば、すぐにわかる。
フランは、恥をかかされたと怒りがわき、次に悲しくなった。
エクレアとフレジエのほうが、よほど仲良く踊っているではないか。
この方はやはり、僕を愛していない。フランは、思った。
王都のカヌレ公爵邸に、フランとフレジエはしばらく滞在することになった。
神聖騎士団の非番日に出かけるときは、何故かいつも、シブースト、エクレア、フラン、フレジエの四人だった。
打ち解けて話すエクレアとフレジエに比べて、婚約者であるシブーストとフランはどうだ。まるで会話が成り立たない。
二組に分かれて王都の公園を散歩した。
「いいお天気ですね」
「ああ」
「プラタナの葉が黄色く色づいて美しいですね」
「そうだな」
終始このような会話とも言えない状態だった。
思い切って、フランは今更ながらに聞いてみた。
「どうして、僕に結婚を申し込んでくださったのですか」
この問いにはシブーストもようやくフランを見た。
「……君を、好ましく思ったからだ」
「それは……ありがとうございます」
好ましい。都合がいい、ということにしか思えない。
「ああ、神よ、感謝いたします! エクレア様と結婚できるなんて、だいそれたことは考えておりません! ああ、それでも私は、エクレア様と散歩した、今日と言う日を忘れないでしょう!」
フランとフレジエの為に用意された客室に戻ると、フレジエは小躍りしながら、今日の感激を神に感謝していた。
領地経営に向かないマカロン男爵に代わり領地経営を任されている、堅実な実務家のフレジエがこんなに舞い上がっているなんて珍しい。
一方のフランは、めっきり落ち込んでいた。
「兄上、僕は、思い切って、公爵閣下に聞いてみたよ。どうして僕と結婚しようとおもったのですかって」
「それで? なんとおっしゃった?」
「好ましく思ったから、だって」
「良かったじゃないか」
「どう考えても、都合がいいってことでしょう!?」
「いや、悪く取りすぎだ。いつものお前らしくもない」
本当に、そうだろうか。
シブーストとフランの仲は、一年半経っても何の進展もしなかった。いや、酷くなった。
シブーストとフランとエクレアとフレジエとで、オペラを見に行ったときだ。
二組に分かれて桟敷席に入った。
そのときは、オペラの途中でシブーストはどういうわけか帰ってしまった。
手紙のやりとりはしていた。
いつも、他人行儀な、決まりきった、使い古された定型句のような手紙がフランのもとに届いた。
フランのほうは、もう少し長い文章を書いていた。家のことや、読んだ本、新しい薬の調合、今年のチーズの出来、などを書き送っていた。
それでも返ってくるのは、ごく短い手紙ばかりで、フランの心は折れそうだった。
お互いの家を行き来もしていた。
フランは、シブーストと手を繋いでみようと思った。いつもお目付け役がいるので、それ以上はできようはずがないのだが。
しかし、王都の公園で、だれもこちらに注目していないのを見計らって、シブーストの手を握ったときだった。
シブーストは、フランの手を振りはらったのだ。
シブーストはばつが悪そうに、謝罪して言った。
「そうしたことは……正式な婚姻後にすべきだ」
そんなはずがあるか。フランは、怒りと悲しみで爆発しそうだった。
もし、結婚したとして、辛い生活になるだろう。
顔も見れず、会話も成り立たず、手を繋ぐこともできず。
本当に隠れ蓑にされるのだ、というのがフランにはわかってきた。
とどめは、庭でお茶をしようと公爵から誘われて庭で待っていたときのことだった。
いつものように、フレジエとエクレア、そして今日は、公爵の幼い弟のパルミエがいた。
シブーストがなかなか来ない。
無作法すぎることだが、パルミエに、
「お兄様の書斎までお迎えに行こう!」
と手を引かれて、書斎まで行って、フランは聞いてしまった。
まず、シブーストの従僕、サヴァランの声がした。
「今日せっかく、フラン様がお見えになっているのですから、誕生日の贈り物はなにがよろしいか、それとなく聞き出してみては?」
次に、苛立ったようなシブーストの声がした。
「何度も言っているだろう! いつものように、お前が適当に見繕って、手配しておいてくれ!」
フランとパルミエは、こっそりと庭に戻った。
シブーストは十分すぎるほど、四季折々にフランに贈り物は送ってくれていた。
物だけ贈ればいいと思っているのかと憤慨もしていたが、そこに一縷の希望を託してもいた。
しかし、それが、従僕のサヴァランに選ばせて送っているものだとは。いつものように。適当に。
もう、無理だ。限界だ。
しかし、家の格が違いすぎてこちらからは婚約破棄を言い出しづらい。
しかし、フランは丘の散策の際に、勇気を振り絞って切り出した。
「閣下、その、一度、結婚を考え直したく存じます」
シブーストがフランを冷たい目で射抜いた。
「名誉にかけて婚約解消などできない」
「名誉……ですか。生娘を傷物にしたわけでもなし。名誉には、かかわらないと存じますが」
フランが言い返すと、シブーストが顔を真っ赤にして激昂した。
「き、傷物になど、誰がするものか!」
そう言って、大股でずんずん先に行ってしまった。フランは、小走りで追いかけながら、怒りたいような、悲しいような気持ちになった。
自分がどこまでも、矮小な人間になったようで、惨めで仕方なかった。
マドレーヌ王宮での舞踏会の会場で、惨めさは最高潮に達した。
シブーストは、貴族の美しい女性たちと、体を密着させて、つぎつぎと見事に踊っていた。
踊りの最中に、談笑もしているようだった。
それを、フランは壁の花よろしく見ていた。
シブーストは、僕にだけに冷たい。
マカロン城に戻ったフランは、食事も喉を通らないほどになった。
どんどん痩せて衰えていった。
名誉にかけても絶対に婚約解消しないと、シブーストは言っていた。
二人の状況とは裏腹に、結婚の準備は着々と進んでいた。
シブーストの母の、シブーストそっくりの冷たい美貌の持ち主である前公爵夫人にも、フランは氷のようなサファイアの瞳を向けられていた。
フランは、好感を持たれていないと感じていた。気に入られなくて当然だと思った。
しかし、その前公爵夫人が、二人の婚礼衣装を手ずから大変な手間ひまをかけて、縫ってくれていた。それもフランには気が重かった。
このままでは、三ヶ月後にそれはそれは、惨めで苦しい結婚生活が始まってしまう。
いっそ、このまま死んでしまえたら、とまでフランは思い詰めた。
というのも、このような扱いをされてなお、フランはシブーストを憎からず思っていたからだ。どうしてか、シブーストを愛してしまっていた。
シブーストを愛するゆえに、彼の非道な行いがフランを苛んだ。いっそ、一片の愛もなければ、割り切った政略結婚と思えたことだろう。
マカロン男爵家にしてみれば、カヌレ公爵家と縁続きになることは、悪いことではないのだから。
そこに、マカロン男爵家の隣の領地の、サントノーレ伯爵の三男で、隣国ベニエ公国の女伯爵シャルロット・ブルトンヌの婿となった、ガレット・ブルトンヌが夫婦揃ってやってきた。
ガレットは、フレジエと同じ年で、フランの五つ年長だった。三人は、仲の良い幼馴染だ。
「どうした、こんなに痩せこけて!」
ガレットがフランを見て、叫ぶ。
ガレットは、フランに言った。
「なあ、フラン。俺達の国に来て、名前を変え、そこで新しい人生を送ればいいさ」
隣で妻のシャルロットもこくこくと頷いている。
「そうですわ! そんなろくでなしと結婚して、人生を不意にすることございませんもの!」
「なあ、フラン。お前は、ベニエのグジェール大学にも行きたがっていたじゃないか。薬草学を学びたいと。なあ、うちから通えばいいよ」
これにもシャルロットは頷いている。
フレジエが口を挟んだ。
「そんな簡単に言うなよ。相手は公爵なんだぞ? 絶対に婚約は解消しないと言っているんだぞ。出家って手段も使えないんだぞ」
このタイミングでフランが出家すれば、カヌレ公爵家への侮辱となり、マカロン男爵家はこの国で生きていけなくなるだろう。
フランは、泣き出した。
「僕、おかしいよね。これだけ侮辱されても、シブーストを愛しているんだ。だから、彼を傷つけたり、辱めたりはしたくないんだ」
ふむ、と少し考えて、ガレットがにやりと笑った。
「それじゃあ、死んでみる、っていうのは、どうだ?」
ガレットが言うのは、偽の葬式をしよう、ということだった。
フランが死んだふりをして棺に横たわり、葬式をあげる。墓廟に運び込んで、しかる後にフランを墓廟から出して、ガレットとシャルロットの夫妻とともにベニエ公国に出国する、というものだった。
マカロン男爵も、城付きの司祭も、城の召使いたちも、騎士たちも、この計画に賛同した。
フランを生かす道は、これより他にないと誰もが思った。それほど、今のフランは痛ましかった。
「公爵が婚約者の葬式にどうくるか、見てやろう。そうしたら、きっと、お前も吹っ切れるさ」
公爵のもとに、フランの死を伝える使者を送った。
フランは顔に真っ白く白粉をはたいた。そうすると、痩せこけた顔と相まって、本当の死に顔のように見えた。
白い服に着替えて、棺の中に両手を組んで横たわった。
シブーストは、何度も馬を乗り換えて、マカロン城に駆けつけた。
髪は乱れ、顔面は蒼白だ。
司祭が、死者への祈りの言葉を唱え始める。
用意した花を、参列者が一本ずつフランの棺に入れていく。
シブーストはマカロン男爵に促されて、ふらふらと棺まで歩き、フランを見ずに、そっと花を置いた。
参列者一同は、シブーストがフランを見なかったことに心の底からほっとした。これで、この計画はほとんど成功したようなものだ。
次に、親族の男性らによって、棺に蓋が打ちつけられた。この蓋は特別で、息が出来るように見えないように空気穴が空いている。
フレジエは、是非公爵も棺に釘を打ってくださいと、金槌を握らせた。
その時、公爵が叫んだ。
「ま、待ってくれ、最後の別れをさせてくれ! 先程、あまりにつらく、顔を見ることさえ出来なかった! 最後に、一目、フランの顔を見せて欲しい! お願い申し上げる!」
参列者は、思わず顔を引き攣らせた。
「そ、そんなことをしては、死者の魂をいたずらに呼びもどすことになります!」
司祭がとってつけたように、それらしいことを言った。
「それは願ってもないことだ! 愛しいフランが私の元へ戻ってきてくれるというなら!」
フランは、棺の中で、外の喧騒を聞いていた。しかし、はっきりとは聞き取れない。一体、何が起こっているのだろうか。
シブーストは、すらりと腰に下げた剣を抜いた。
一同、一歩も二歩も後ずさる。
「こ、公爵! 愛していると、おっしゃいましたか!?」
ガレットが、後ずさりながら問うた。
「ああ! 私は、誰よりもフランを愛している! 愛しさのあまり、触れることもできぬほど!」
公爵は棺と蓋の間に、剣先を突っ込み、むりやり釘を打った蓋をこじ開け始めた。
中のフランは、怯えた。
な、なんだ、なんで、怖い!
ばきばきと音を立てながら、蓋が外れて、閉じた目蓋ごしに明るい光を感じた。
「ああ、こんなに痩せこけて……しかし、まるで……眠っているだけのようではないか……」
聞いたこともない、力ないシブーストの声が明瞭に聞こえた。フランの背中を冷や汗がじっとりと濡らした。
それから、フランの顔にぽたりぽたりと水滴が落ちてきた。
一体何が起こっているんだ。
「ああ、愛しいフラン。君のいない生を、私はどう生きればいいというのだ。私は、君を生涯、愛し続ける……」
シブーストが、フランに口付けた。
あまりのことに、フランはつい目を開けた。
そして、がばりと身を起こしてしまった。
フランは、しまった、と思ったが、もう遅い。
シブーストが、泣き濡れた瞳を、極限まで見開いた。
水を打ったように静まり返る。
そこに、計画の失敗を取り戻すべく、この度の立案者、ガレットが起死回生をかけて、いちかばちかの大博打をうった。
ガレットは、やけのやんぱちで叫んだ。
「こ、公爵のキスで、い、生き返ったぞーーー!!!」
司祭も叫んだ。
「か、神が奇跡を起こしたもうた……!」
参列者一同もそれに乗っかった。
マカロン男爵も、フレジエも、騎士たちも、召使いたちも、必死に喜びの声を上げた。
「ばんざーい! ばんざーい! ばんざーい!」
シブーストは、フランを力いっぱい抱きしめ、愛しい唇にもう一度キスをした。
シブーストとフランは、末永く幸せに暮らしましたとさ。
おわり
初出:2025/02/07
村人を傷つけ、家畜を襲い、畑を荒らし回る被害が出た。
どうやら魔界と人間界を隔てる時空の壁に、亀裂が出来たか、穴が開いてしまったようだった。
マカロン男爵は、マドレーヌ王国王立騎士団内の神聖騎士団に、魔物の討伐と時空の壁の修復を要請した。
神聖力を持った騎士が、武器や拳に神聖力をまとわせて攻撃することでしか、魔物は倒せない。
この世界では、神聖力を持つものはごく少数で、持たないものがほとんどだ。
もともと、マドレーヌ王家も強い神聖力を持つために、王家となった。高位の貴族も神聖力の強い家系だ。
マカロン男爵のような、位の低い貴族は神聖力が弱いため、魔物を自力で討伐することは出来なかった。
マカロン男爵家の次男でオメガのフラン・ギモーヴは、村で医者とともに怪我人の治療にあたっていた。
フランは、燃えるような赤髪のほかは、オメガらしい美貌を持たないオメガだった。
フランの特徴と言えば、深い薬草の知識を持っていることだった。死んだフランの母は、森と村の境に住む賢い女だった。フランは、母から薬草の扱いをすべて教えられていた。
獣脂とハーブを使ったフランの調合した軟膏は、治療になかなかの効果があったが、魔物の供給の元を断たねば仕方がない。
今は野ウサギ程度の魔物しか出てきていないから小さな引っかき傷や噛み傷程度で済んでいるが、亀裂だか穴だかが大きくなれば、もっと大きな魔物が出てきてしまうかもしれない。恐ろしいことだ。
牛たちも魔物に噛みつかれたりして、乳の出も、味も悪い。牛乳の加工品が生計の大きな柱であるマカロン男爵領にとっては死活問題だ。
そこに、神聖騎士たちが到着した。
騎士たちは早速、近くにいる魔物を倒し始めた。
彼らの振るう剣は、強く白い光をまとっている。フランたちの神聖力とは桁違いだ。
特に、神聖騎士団団長のカヌレ公爵シブースト・シューアラクレームの、討伐の技倆と神聖力は抜きん出ていた。
思わず、医院の窓越しに見ていたフランが見惚れてしまうほどに。
そしてあらかた倒し終わると、森の周囲に神聖力で結界を張っていった。
森からこれ以上、出てこないようにするためである。翌日以降、森に入って、魔物を狩り尽くし、壁を修復するのだ。
フランは、団長のシブーストに挨拶しようとした。
以前、王都の舞踏会ですれ違ったことがあったが、シブーストは恐ろしいほどに整った容貌をしていた。そのサファイアのように冷たい青い瞳が、フランを見おろした。
「遠いところ、魔物の駆除にお越しいただき、ありがとうございます。私は……」
名を名乗ろうとしたとき、鞘に納めていた剣をシブーストが素早く抜いた。剣が白い光を放つ。
次の瞬間、フランの足元に噛みつこうとした魔物が、シブーストの剣に突き刺され、断末魔の声を上げた。
「あ……ありがとうございます」
思わずよろけるフランを、シブーストが抱きとめた。
「も、申し訳ございません!」
フランは、大きな胸に抱かれて、ひどく動揺した。顔が熱い。
「無事で何より」
相変わらず、シブーストは冷徹にフランを見おろしている。フランは、自分の足でしっかり立つと、気を取り直して頭を下げた。
「助けていただき感謝申し上げます。私は、マカロン男爵の次男、フラン・ギモーヴと申します。マカロン城へご案内いたします」
「私は、神聖騎士団団長、シブースト・シューアラクレームと申す。案内感謝する」
ここまで整った顔立ちで、一分の隙もない無表情だと、怖いとフランは思ったが、恐れることはないとフランは自身を奮い立たせた。
フランは、さっと自分の馬にまたがると、先頭に立って騎士団をマカロン城に案内した。
マカロン城では、騎士たちを迎える準備が進められていた。城のものたちは、忙しく立ち回っていた。
跳ね橋を下げ、城門をくぐり、馬房に騎士たちの馬を繋いだ。騎士の従士らがそれぞれ、馬具を外してやり、水を飲ませ、秣を食べさせて、休ませる。
フランは騎士たちを連れて、城に入った。城と言っても、古く、簡素なものである。
フランの父である、マカロン男爵と、跡継ぎのフランの兄フレジエが騎士たちに挨拶し、感謝の言葉を述べた。
それから、騎士たちを部屋に案内した。
いくら手があっても、足りるということがなかった。フランも、城のものたちと一緒になって、掃除して、客人のベッドにシーツを張り、厨房で料理を手伝った。
今はフランは、客人に振る舞う鶏肉をグリルの前でソースをかけながら、回して焼いていた。
熱くて汗が滴る。
食事の支度に目処が立つと、今度はフランは、給仕をはじめた。
シブーストらが大広間にやってきて、晩餐が始まった。
フランは晩餐の間、空いた盃に酒を注いで周り、食事を厨房から運び、大忙しだった。
シブーストがこちらを見ているので、酌をしにいったが、酒はまだなみなみと満たされていた。
それなら、なぜこちらを見ていたのだろうか。
翌朝、騎士たちは早く出ていくので、フランも早起きして朝食と、持たせる昼食の支度を手伝った。
また、シブーストに見られている気がする。こちらが気付いてそちらを見ると、シブーストはすうっと視線をよそにやった。
給仕が至らないだろうかと不安になってくる。公爵にとっては、マカロン男爵家のもてなしには足りないところもあるだろう。料理だって、洗練されていない田舎料理だ。どうやっても、大貴族のようにはいかない。
騎士たちが討伐に出ていくのを見送ってから、フランは、男爵と兄のフレジエと執事とコックと顔を突き合わせて、今日のメニューを相談した。
討伐は順調に進んでいるようだった。もうすぐ、森の最深部の、魔界と人間界の間の壁の亀裂にも到達するだろうとのことだった。
翌朝も騎士たちは、早朝に森へと入っていった。
昼過ぎ、村から村長の息子が城に馬で駆け込んできた。
「大変です……!! 巨大な魔物が、何匹も! 村まで……!!」
「なんだって!?」
「騎士様たちも、倒れて……!!」
フランたちは村に向かった。
村に駆けつけたとき、村にはたくさんの巨大な魔物の死骸と、戦闘不能の騎士たちがうめき、団長のシブーストたったひとりが、巨大な魔物に対峙していた。
二階建ての建物の相当の体高をした熊のような魔物は、額から牛のような二本の立派な角を生やし、赤い目をらんらんと光らせている。
フランは、無駄だと知りながらも、シブーストの助太刀をせねばと、持ってきた弓矢で魔物を射った。しかし、これが火事場の力というのか、いつもより神聖力が乗った矢は、魔物の目に突き刺さった。
魔物が、フランの方に荒々しく向き直る。猛り狂い、凄まじい雄叫びを上げる魔物が突進してくる。
「あっ……」
死ぬ、とフランは、思った。
が、シブーストが隙を見せた魔物を背後から切り捨てた。
フランはフレジエに腕を引かれた。それで、フランも、フレジエも、男爵も、どうと倒れてくる魔物の下敷きにならずに済んだ。
助かったものの、三人はしばらく腰が抜けて動けなかった。
村人や騎士たちによって、怪我人はひとまず村の教会に運び込まれた。
「壁は、応急処置として修復してある。修復士のエクレアがより強固に修復てくれることだろう」
教会の椅子に横たえられたシブーストは、マカロン男爵に報告した。
マカロン男爵は、涙ながらに感謝を伝えた。
「貴方がたは、私どもの命の恩人でございます! この御恩は、我が一族代々語り継いでまいります! 私どもの助けが必要なことがあれば、どのようなことでもお申し付けください!」
フランは、シブーストの体から血を洗い流し、傷口に特製の軟膏を塗り、包帯を巻いていった。
シブーストがきつく眉をしかめる。
「ごめんなさい! 痛かったです、よね?」
シブーストは無言で首を横に振った。
「だが、もう……そこまでで、よい」
「いけません。化膿してしまいます」
フランが言うと、シブーストはそっぽを向いた。
フランは、あることに気が付き、シブーストの股間にさっと布を掛けた。戦闘のたぎりによってか、シブーストのそこは立ち上がっていた。
そうすると、フランのほうでも、少しおかしな気分になってくる。
広範囲の擦過傷に軟膏を塗り込む、てのひら全体に、シブーストの素肌や筋肉の感触を感じる。
シブーストが、うっ、とか、んっ、とか呻くのを聞いて妙な気分になってしまいそうだった。
「……終わりました」
「ああ」
「失礼いたします」
フランは、赤い顔を見せないようにしながら、逃げるように次の患者のところへ向かった。
銀色の艷やかな髪、紫の瞳、薔薇色の唇の、麗しい女性の修復士が、ちょうど村に到着した。
彼女がシブーストの言っていた修復士のエクレアで、王族の出で、強い神聖力を有していて、シブーストの従姉妹でもあった。
エクレアが森の最深部との魔界との亀裂を修復するためには、護衛兼案内が必要だった。
シブーストたち神聖騎士たちは全員手負いで行動不能だったため、兄のフレジエとマカロン城の騎士たちがまだ魔物はいないかとおっかなびっくり森に向かった。
エクレアはフレジエに微笑みかけた。
「もう危険はありません。私は半径千エールの魔物の気配を感じることができますが、このあたりはもう安全です」
フレジエは、その微笑みにたちまち魅了された。
森の最深部までくると、シブーストが応急的に塞いだ亀裂にエクレアが触れた。
エクレアの手が白く眩く光り輝き、神聖力を亀裂に注いでいくと、みるみる亀裂は塞がっていった。
フレジエと騎士たちは、おお、と感嘆の声を上げた。
災厄はついに終わった。
傷の回復を待って、神聖騎士団は、王都へと帰っていった。
騎士団の世話をし、騎士団とともに王都に帰還するというエクレアとお茶を楽しんだりもした。
帰還する朝、礼を言い見送るフランに、シブーストは一瞥もくれなかった。
だから、フランはシブーストの従僕のサヴァランに、もしよろしければと特製の軟膏を渡した。
帰る一行のなか、エクレアとシブーストが並び立つと、一幅の絵のようだった。
シブーストが馬車に乗るエクレアを恭しくエスコートした。
食事の時は兄が常にエクレアをエスコートしていたが、まるでエクレアとシブーストに比べればまるで不似合いだったな、とフランは思った。
横目で兄をちらりと見ると、兄弟だからわずかに見て取れる程度に兄が打ちひしがれているのがフランにはわかった。フレジエはこの数日で、すっかりエクレアの虜になったようなのだった。
従兄弟同士の結婚はマドレーヌ王国では禁じられているが、禁じられていなければシブーストとエクレアは結婚したのではないだろうか、とフランは思った。
一月後、カヌレ公爵シブースト・シューアラクレームの使者がマカロン城に手紙を携えてやってきた。
カヌレ公爵家の封蝋が押されている手紙をマカロン男爵が開いた。
「カヌレ公爵と、フランとの、縁組、でございますか?」
マカロン男爵は、そのあり得ない内容に、どういうことだ、と頭が真っ白になった。
「左様でございます。お返事は、一ヶ月後に伺いにまいります」
シブーストの使者は恭しく頭を下げ、帰っていった。
フランは、朝から野原で薬草を摘んでいた。神聖騎士団が魔物を退治してくれたおかげで、安心して薬草を摘むことができる。
薬草摘みからもどったフランは、執事からマカロン男爵がフランに書斎に来るよう言っていると知らされた。
書斎で手紙の内容を聞かされたフランは、男爵と同じく、あり得ない、と思った。
男爵が、聞きにくそうに聞いた。
「その……念の為に聞くのだがな、公爵とお前との間に、そのなにか、間違いがあって、公爵は責任を取るとおっしゃているのでは、あるまいね?」
フランは、怒って否定した。
「肉体関係など、あるはずがないではないですか! 公爵は僕と目を合わそうともしなかったんですよ!?」
「ああ、うん、わかっているよ、わかっている」
しかし、結局、先日の大恩もあり、断れない、ということになった。
フランは、うんうんと考えた。きっと、裏があるに違いないと。
立場の弱い男爵家のオメガはお飾りの妻で、それを隠れ蓑に真に愛する人とよろしくやるつもりなのではないか。
きっと、その人は、シブーストとて結婚が望めない相手に違いない。それは、結婚を許されない相手である、従姉妹のエクレア。
フランは、さすがに下世話な妄想かと、頭を振ったが、なかなかその妄想が離れない。
だって、シブーストがフランと結婚することに利点がなさすぎる。
持参金もない。これは、シブーストには大した問題ではないかもしれない。
公爵家と男爵家では格が釣り合わない。きっと、影でこそこそ言われる。
フランは絶世の美青年なんてことはない。燃えるような赤い髪だけが特徴的な、いたって平凡な青年である。
もしかしたら、公爵は自分を本当に気に入ったのか?
それはこれっぽっちもないと、フランはすぐに思った。公爵の滞在中のフランは、使用人と見まがうばかりに汗水たらしていたし、優雅でもなんでもなかった。公爵は、フランとは目も合わそうとしなかった。
それが答えだ。
マドレーヌ王国の男子の結婚可能年齢は、二十歳なので、その日を待って、二年後に正式に結婚することになった。
王都の教会で、司祭の前で婚約式を執り行ったのだが、シブーストはやはりフランと目を合わそうとしなかった。
婚約式のあと、王都のカヌレ公爵邸でパーティーが開かれたのだが、主役のシブーストとフランのダンスは実におかしなものだった。
本来は体を密着させるダンスで、公爵はわざと、フランと体を密着させなかった。
見る人が見れば、すぐにわかる。
フランは、恥をかかされたと怒りがわき、次に悲しくなった。
エクレアとフレジエのほうが、よほど仲良く踊っているではないか。
この方はやはり、僕を愛していない。フランは、思った。
王都のカヌレ公爵邸に、フランとフレジエはしばらく滞在することになった。
神聖騎士団の非番日に出かけるときは、何故かいつも、シブースト、エクレア、フラン、フレジエの四人だった。
打ち解けて話すエクレアとフレジエに比べて、婚約者であるシブーストとフランはどうだ。まるで会話が成り立たない。
二組に分かれて王都の公園を散歩した。
「いいお天気ですね」
「ああ」
「プラタナの葉が黄色く色づいて美しいですね」
「そうだな」
終始このような会話とも言えない状態だった。
思い切って、フランは今更ながらに聞いてみた。
「どうして、僕に結婚を申し込んでくださったのですか」
この問いにはシブーストもようやくフランを見た。
「……君を、好ましく思ったからだ」
「それは……ありがとうございます」
好ましい。都合がいい、ということにしか思えない。
「ああ、神よ、感謝いたします! エクレア様と結婚できるなんて、だいそれたことは考えておりません! ああ、それでも私は、エクレア様と散歩した、今日と言う日を忘れないでしょう!」
フランとフレジエの為に用意された客室に戻ると、フレジエは小躍りしながら、今日の感激を神に感謝していた。
領地経営に向かないマカロン男爵に代わり領地経営を任されている、堅実な実務家のフレジエがこんなに舞い上がっているなんて珍しい。
一方のフランは、めっきり落ち込んでいた。
「兄上、僕は、思い切って、公爵閣下に聞いてみたよ。どうして僕と結婚しようとおもったのですかって」
「それで? なんとおっしゃった?」
「好ましく思ったから、だって」
「良かったじゃないか」
「どう考えても、都合がいいってことでしょう!?」
「いや、悪く取りすぎだ。いつものお前らしくもない」
本当に、そうだろうか。
シブーストとフランの仲は、一年半経っても何の進展もしなかった。いや、酷くなった。
シブーストとフランとエクレアとフレジエとで、オペラを見に行ったときだ。
二組に分かれて桟敷席に入った。
そのときは、オペラの途中でシブーストはどういうわけか帰ってしまった。
手紙のやりとりはしていた。
いつも、他人行儀な、決まりきった、使い古された定型句のような手紙がフランのもとに届いた。
フランのほうは、もう少し長い文章を書いていた。家のことや、読んだ本、新しい薬の調合、今年のチーズの出来、などを書き送っていた。
それでも返ってくるのは、ごく短い手紙ばかりで、フランの心は折れそうだった。
お互いの家を行き来もしていた。
フランは、シブーストと手を繋いでみようと思った。いつもお目付け役がいるので、それ以上はできようはずがないのだが。
しかし、王都の公園で、だれもこちらに注目していないのを見計らって、シブーストの手を握ったときだった。
シブーストは、フランの手を振りはらったのだ。
シブーストはばつが悪そうに、謝罪して言った。
「そうしたことは……正式な婚姻後にすべきだ」
そんなはずがあるか。フランは、怒りと悲しみで爆発しそうだった。
もし、結婚したとして、辛い生活になるだろう。
顔も見れず、会話も成り立たず、手を繋ぐこともできず。
本当に隠れ蓑にされるのだ、というのがフランにはわかってきた。
とどめは、庭でお茶をしようと公爵から誘われて庭で待っていたときのことだった。
いつものように、フレジエとエクレア、そして今日は、公爵の幼い弟のパルミエがいた。
シブーストがなかなか来ない。
無作法すぎることだが、パルミエに、
「お兄様の書斎までお迎えに行こう!」
と手を引かれて、書斎まで行って、フランは聞いてしまった。
まず、シブーストの従僕、サヴァランの声がした。
「今日せっかく、フラン様がお見えになっているのですから、誕生日の贈り物はなにがよろしいか、それとなく聞き出してみては?」
次に、苛立ったようなシブーストの声がした。
「何度も言っているだろう! いつものように、お前が適当に見繕って、手配しておいてくれ!」
フランとパルミエは、こっそりと庭に戻った。
シブーストは十分すぎるほど、四季折々にフランに贈り物は送ってくれていた。
物だけ贈ればいいと思っているのかと憤慨もしていたが、そこに一縷の希望を託してもいた。
しかし、それが、従僕のサヴァランに選ばせて送っているものだとは。いつものように。適当に。
もう、無理だ。限界だ。
しかし、家の格が違いすぎてこちらからは婚約破棄を言い出しづらい。
しかし、フランは丘の散策の際に、勇気を振り絞って切り出した。
「閣下、その、一度、結婚を考え直したく存じます」
シブーストがフランを冷たい目で射抜いた。
「名誉にかけて婚約解消などできない」
「名誉……ですか。生娘を傷物にしたわけでもなし。名誉には、かかわらないと存じますが」
フランが言い返すと、シブーストが顔を真っ赤にして激昂した。
「き、傷物になど、誰がするものか!」
そう言って、大股でずんずん先に行ってしまった。フランは、小走りで追いかけながら、怒りたいような、悲しいような気持ちになった。
自分がどこまでも、矮小な人間になったようで、惨めで仕方なかった。
マドレーヌ王宮での舞踏会の会場で、惨めさは最高潮に達した。
シブーストは、貴族の美しい女性たちと、体を密着させて、つぎつぎと見事に踊っていた。
踊りの最中に、談笑もしているようだった。
それを、フランは壁の花よろしく見ていた。
シブーストは、僕にだけに冷たい。
マカロン城に戻ったフランは、食事も喉を通らないほどになった。
どんどん痩せて衰えていった。
名誉にかけても絶対に婚約解消しないと、シブーストは言っていた。
二人の状況とは裏腹に、結婚の準備は着々と進んでいた。
シブーストの母の、シブーストそっくりの冷たい美貌の持ち主である前公爵夫人にも、フランは氷のようなサファイアの瞳を向けられていた。
フランは、好感を持たれていないと感じていた。気に入られなくて当然だと思った。
しかし、その前公爵夫人が、二人の婚礼衣装を手ずから大変な手間ひまをかけて、縫ってくれていた。それもフランには気が重かった。
このままでは、三ヶ月後にそれはそれは、惨めで苦しい結婚生活が始まってしまう。
いっそ、このまま死んでしまえたら、とまでフランは思い詰めた。
というのも、このような扱いをされてなお、フランはシブーストを憎からず思っていたからだ。どうしてか、シブーストを愛してしまっていた。
シブーストを愛するゆえに、彼の非道な行いがフランを苛んだ。いっそ、一片の愛もなければ、割り切った政略結婚と思えたことだろう。
マカロン男爵家にしてみれば、カヌレ公爵家と縁続きになることは、悪いことではないのだから。
そこに、マカロン男爵家の隣の領地の、サントノーレ伯爵の三男で、隣国ベニエ公国の女伯爵シャルロット・ブルトンヌの婿となった、ガレット・ブルトンヌが夫婦揃ってやってきた。
ガレットは、フレジエと同じ年で、フランの五つ年長だった。三人は、仲の良い幼馴染だ。
「どうした、こんなに痩せこけて!」
ガレットがフランを見て、叫ぶ。
ガレットは、フランに言った。
「なあ、フラン。俺達の国に来て、名前を変え、そこで新しい人生を送ればいいさ」
隣で妻のシャルロットもこくこくと頷いている。
「そうですわ! そんなろくでなしと結婚して、人生を不意にすることございませんもの!」
「なあ、フラン。お前は、ベニエのグジェール大学にも行きたがっていたじゃないか。薬草学を学びたいと。なあ、うちから通えばいいよ」
これにもシャルロットは頷いている。
フレジエが口を挟んだ。
「そんな簡単に言うなよ。相手は公爵なんだぞ? 絶対に婚約は解消しないと言っているんだぞ。出家って手段も使えないんだぞ」
このタイミングでフランが出家すれば、カヌレ公爵家への侮辱となり、マカロン男爵家はこの国で生きていけなくなるだろう。
フランは、泣き出した。
「僕、おかしいよね。これだけ侮辱されても、シブーストを愛しているんだ。だから、彼を傷つけたり、辱めたりはしたくないんだ」
ふむ、と少し考えて、ガレットがにやりと笑った。
「それじゃあ、死んでみる、っていうのは、どうだ?」
ガレットが言うのは、偽の葬式をしよう、ということだった。
フランが死んだふりをして棺に横たわり、葬式をあげる。墓廟に運び込んで、しかる後にフランを墓廟から出して、ガレットとシャルロットの夫妻とともにベニエ公国に出国する、というものだった。
マカロン男爵も、城付きの司祭も、城の召使いたちも、騎士たちも、この計画に賛同した。
フランを生かす道は、これより他にないと誰もが思った。それほど、今のフランは痛ましかった。
「公爵が婚約者の葬式にどうくるか、見てやろう。そうしたら、きっと、お前も吹っ切れるさ」
公爵のもとに、フランの死を伝える使者を送った。
フランは顔に真っ白く白粉をはたいた。そうすると、痩せこけた顔と相まって、本当の死に顔のように見えた。
白い服に着替えて、棺の中に両手を組んで横たわった。
シブーストは、何度も馬を乗り換えて、マカロン城に駆けつけた。
髪は乱れ、顔面は蒼白だ。
司祭が、死者への祈りの言葉を唱え始める。
用意した花を、参列者が一本ずつフランの棺に入れていく。
シブーストはマカロン男爵に促されて、ふらふらと棺まで歩き、フランを見ずに、そっと花を置いた。
参列者一同は、シブーストがフランを見なかったことに心の底からほっとした。これで、この計画はほとんど成功したようなものだ。
次に、親族の男性らによって、棺に蓋が打ちつけられた。この蓋は特別で、息が出来るように見えないように空気穴が空いている。
フレジエは、是非公爵も棺に釘を打ってくださいと、金槌を握らせた。
その時、公爵が叫んだ。
「ま、待ってくれ、最後の別れをさせてくれ! 先程、あまりにつらく、顔を見ることさえ出来なかった! 最後に、一目、フランの顔を見せて欲しい! お願い申し上げる!」
参列者は、思わず顔を引き攣らせた。
「そ、そんなことをしては、死者の魂をいたずらに呼びもどすことになります!」
司祭がとってつけたように、それらしいことを言った。
「それは願ってもないことだ! 愛しいフランが私の元へ戻ってきてくれるというなら!」
フランは、棺の中で、外の喧騒を聞いていた。しかし、はっきりとは聞き取れない。一体、何が起こっているのだろうか。
シブーストは、すらりと腰に下げた剣を抜いた。
一同、一歩も二歩も後ずさる。
「こ、公爵! 愛していると、おっしゃいましたか!?」
ガレットが、後ずさりながら問うた。
「ああ! 私は、誰よりもフランを愛している! 愛しさのあまり、触れることもできぬほど!」
公爵は棺と蓋の間に、剣先を突っ込み、むりやり釘を打った蓋をこじ開け始めた。
中のフランは、怯えた。
な、なんだ、なんで、怖い!
ばきばきと音を立てながら、蓋が外れて、閉じた目蓋ごしに明るい光を感じた。
「ああ、こんなに痩せこけて……しかし、まるで……眠っているだけのようではないか……」
聞いたこともない、力ないシブーストの声が明瞭に聞こえた。フランの背中を冷や汗がじっとりと濡らした。
それから、フランの顔にぽたりぽたりと水滴が落ちてきた。
一体何が起こっているんだ。
「ああ、愛しいフラン。君のいない生を、私はどう生きればいいというのだ。私は、君を生涯、愛し続ける……」
シブーストが、フランに口付けた。
あまりのことに、フランはつい目を開けた。
そして、がばりと身を起こしてしまった。
フランは、しまった、と思ったが、もう遅い。
シブーストが、泣き濡れた瞳を、極限まで見開いた。
水を打ったように静まり返る。
そこに、計画の失敗を取り戻すべく、この度の立案者、ガレットが起死回生をかけて、いちかばちかの大博打をうった。
ガレットは、やけのやんぱちで叫んだ。
「こ、公爵のキスで、い、生き返ったぞーーー!!!」
司祭も叫んだ。
「か、神が奇跡を起こしたもうた……!」
参列者一同もそれに乗っかった。
マカロン男爵も、フレジエも、騎士たちも、召使いたちも、必死に喜びの声を上げた。
「ばんざーい! ばんざーい! ばんざーい!」
シブーストは、フランを力いっぱい抱きしめ、愛しい唇にもう一度キスをした。
シブーストとフランは、末永く幸せに暮らしましたとさ。
おわり
初出:2025/02/07
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