最良の日々

鯛田オロロ

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彼の顔に、迷いが浮かぶ。それと、不安の色が。彼は、何度かためらって、口を開いた。

「……僕のペニスには、異常があるんだ」

「え?」

病気か、何かだろうか。

「とても……その……大きくて、君を傷つけてしまうと……」

「アルファのペニスは……大きいとは聞いていますが……」

正直、そんなことなのか、と思った。何か、悪い冗談のようにも感じてしまう。

彼が片手で目元を覆った。

「そういうレベルではないらしい……僕は、その、十八のとき、性的な手ほどきを受けようと、高級娼館に行ったのだが……女性も、男性のオメガも、その……入らなかったんだ。これまでアルファも大勢相手したが、こんなペニスは見たことないと……言われて……」

彼の苦しげな告白の様子に、それが彼の酷い失敗の経験であり、そのせいで劣等感を抱いているのを知った。

私は、実物を見てみないことには、と思った。

「その……大きさに問題がなければ……私と、性行為をしたいとお思いですか?」

無論、と彼は固く目を閉じてうなずいた。

「試してみましょう」

彼が力なく首を横に振った。

「いや……君を傷つけたくない」

「この一年、十分、傷つきました」

彼が申し訳なさそうに目を伏せた。

「私は、女性よりも、一般的な男性のオメガよりも、ずっと体が大きいですから、私となら、もしかしたら可能なのではないですか?」

「それは……」

「あなたと……してみたいんです。挿入は無理でも……他にできることは、あるのでは? 駄目……ですか?」



彼が背を向けて長衣を脱ぐ。私も服を脱ぐ。

私は、彼とは逆に、小さすぎるペニスがコンプレックスではあった。

子供のころからほとんど形も大きさも変わらず、大人の男の肉体に、子供のペニスがついているようなアンバランスさであった。

背中を向けて脱いでいた彼が、こちらの様子を気にするように振り返った。

私は、思わず目をみはった。

馬のそれのようなペニスが、すでに天を向いていた。

彼がまるで私に見せたのを後悔しているように再び背を向けようとした。

私は、いけない、と思った。

「触れても、いいですか?」



おずおずと、彼のそそり立つ巨大なペニスに触れる。

両手でしごく。びくびくと脈打ち、震えている。すごい。

彼が顔を赤くして、体を強張らせて、小さく喘ぐ。

かわいい。そう思った。

「こう? ですか?」

自分のものとは違いすぎて、愛撫の正解が何かわからない。

「それで、いい……! くっ……!」

彼が美しい顔を快感に歪めた。彼の様子に、こちらも、息があがり、体が熱くなってくる。

彼の先端から先走りが滲む。私はそれを亀頭に塗り拡げた。張り出した雁を引っ掛けるようにしごくと、彼がぶるりと震えた。

「もう、出、る」

「エルドレッド、見せて」

「うっ……!」

鈴口から、白濁がほとばしった。ものすごい量だ。彼の胸から腹にかけて、白濁がかかっている。

私は、満ち足りた感情を味わっていた。

私の手で、彼が感じてくれた。彼を射精に導くことができた。

たとえ挿入はなくても十分満たされると、私は感じた。



手拭き用の布を濡らして、彼の精液を拭う。

彼はその間、恥ずかしそうに腕で目元を隠していた。

「きれいになりました」

「……ありがとう」

しかし一体、このあと、どうしたらいいのだろう。彼のものを受け入れるには。

確かに、あまりにも大きいと思う。牧場で見たポニーの雄馬の勃起したペニスほどある。無理に今日挿入を試みるより、どうにか自分で拡張を進めてから、試してみたほうがいいだろう。

布を桶の中で絞ってから立ち上がると、後ろから抱きしめられた。

「僕も君にも触れたい。だめか?」



彼が立ったまま、私の小さな男性器に触れた。

「んっ……」

勃起はするものの、射精はできない、未成熟の器官だ。

小さなペニスを彼の親指、人さし指、中指の三本がしごく。たちまちに勃起した。

「ふっ……あっ……私は、その、出ないんです」

「触られるのは、いや?」

「嫌では……」

彼にしごかれるそこが熱くなっていく。先端からぬめりけのある露が出ている。

自慰するときより、動揺するほど早く登り詰めていく。

「あっ、ああっ!! あうっ……!!」

私は、びくびくと体を引きつらせた。

足腰の立たなくなった私を、彼がベッドに横たえた。

彼は、私のペニスをぱっくりと口に含んだ。

「そんな……!」

「いや?」

私は何も言えず、首を横に振った。

彼は笑ってから、ペニスをねぶり始めた。

さっき達したばかりなのに、また昂っていく。彼の舌が私の亀頭をなめ回す。快感が強すぎて苦しい。

「やっ、きつ、い! あっ……! あ゛あ゛ーーッッ!!」

私は、簡単にまた、絶頂してしまった。



「ずっと君に触れたかった」

彼は私を後ろから抱きかかえて、今度は私の胸に触れた。

しこりたった突起を指の間に挟み、胸筋を揉む。じんじんと痺れるような快感が走る。

彼の再び勃起したペニスが、私の尻の割れ目をさすった。

「はうっ……!」

「触れられぬものを、どうやって触れようか、気が狂わんばかりに繰り返し考えた」

彼の指が、私の胸の尖りをそっとつまみ、こりこりと転がした。

そこから体の奥深くへと、つんと快感が走った。

「あっ、うっ……あっ……! んんッッ!!」

きゅっと軽くつぶされて、優しく引っ張られらる。

「やっ、あっ!」

彼が、私のうなじにそっとキスを落とす。

片方の乳首を愛撫していた手が降りていって、再び私のペニスに触れた。二ヶ所を同時に責められるのは、たまらなかった。

ペニスを彼が三本の指で、優しく同じ速度でしごきつづける。

「んっ……! ああっ……くっ、んっ……! だ、だめ! やっ……!!」

彼が、囁く。

「愛してるよ、エメリー」

「はうっ……!! あっ、ああ、ああーーッッ!!」

彼の囁きに、私は深い絶頂を迎えた。



私が荒い呼吸を整える間もなく、エルドレッドの指が、私のすぼまりに触れた。

指先でなぞられると、すでにしとどに濡れているのがわかった。かっと、顔が熱くなる。

穴をくちくちといじられる。恥ずかしくてたまらない。私は、自分ではそこに極力触れないようにしていた。

そのうちに、つぷりと指が内部に侵入した。

「うっ……!」

ごく浅い挿入が、くちゅくちゅ、ぬぷぬぷ、と、いやらしい音を立ててくり返される。

彼の指がずっぷりと根元まで埋められた。

「はうっ……!! ひぐっ……!!」

「子宮口が下がってきてるね」

私には、それが何を意味するのかはわからなかったが、とてもはしたないことなのだろうとは見当がついた。

きゅう、と彼の指を締め付けてしまう。

「上手だよ、エメリー」

エルドレッドが笑いながら、指をうごめかす。

「あっ! え!? な、に!? んっ、あうっ……!!」

私の体はどんどんおかしくなっていった。腹の奥が熱くて仕方がない。直腸はぐねぐねと大きくうねり、がくがくと体が震えた。

「エルド、レッド……!!」

半分泣きながら彼の名を呼ぶと、彼は私の乳首をきゅうと優しく潰した。

「ううっ!? はうッ!! ああーーッッ!!」

あまりの快感に、一瞬意識が遠のいた。

彼の指を、ぎゅうと、締め付ける。私は、どうやら達したようだった。



彼の指が増やされて、今三本の指が入れられている。オイルが足されて、ゆっくりした一定のペースで抜き差しがくり返されている。

「んっ、うう……!! はっ、あ゛っ……うっ……!!」

延々と指で責められて、ずっと気持ちがいい。私はどうにかなりそうだった。私は、喘がされつづけて、涙を流していた。

「エル、ドレッド……まだ、まだ駄目? はいら、ない……?」

「まだ無理だよ」

「ふっ……!! うう……!!」

「エメリー、少し待っていて」

彼はベッドを離れると、チェストの鍵を開けて、中から繊細な細工を施された箱を取り出した。

その箱を開けて中身を取り出した。

箱からでてきたのは、大きさが少しずつ大きくなっていく、入れ子式になっている金属の張形だった。

「この一番大きいものは、僕のと同じ大きさになっている」

先程、私が自分で拡張するならどうすればいいのかと思った、その答えのようなものが、既に存在していた。

私は、それを少しばかり怖いと思った。

「君と婚約した際に特注で作らせたのだが…………君に不快な思いをさせるかと思い、しまい込んでいた」

彼も彼で、作らせたはいいものの、扱いに困っていたらしい。

凶器のような長大なペニスを見せるよりも、このような張形を見せるよりも、スポイト法を提案するほうがよいと、彼は彼なりに判断したのだ。

自身も、私も、傷つけないために。

私はそんな不器用な彼を、受け入れてあげたかった。

「……つまり、小さいものから順番に使用して慣らしていけば、最終的に、あなたのものを受け入れられると……そういうわけですね」

彼は、額に手を当て、気まずげにうなずいた。



彼は翌朝、王都へと帰っていった。彼が今忙しい身なのは事実だから。

「二週間後には、必ず戻る」

私は、一年の時を経て、キスで見送ることができた。
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