ビースト・オンライン 〜追憶の道しるべ。操作ミスで兎になった俺は、仲間の記憶を辿り世界を紐解く〜

八ッ坂千鶴

文字の大きさ
73 / 123
兎と狼 第2部

第73話 数の暴力

しおりを挟む
 Vさんの号令でケイが紋章を発動させる。彼が紋章を発動すると音も色も全て失う、だけど、迷いな敵を倒していく姿は実際は見えているんじゃないかというくらい正確だった。

 今回のリーダーは無所属なのにアーサーラウンダーを先導するVさん。
 そんな彼はというと、亜空間を数10個以上作成して4本の剣を自由自在に操っている。どう処理すればそんなことができるのか?

 そう考えるよりも先に俺の方にも敵が迫ってくる。俺は鉤爪を自分の延長と意識して戦ってみるがなかなかうまく当たらない。

 こんな数の暴力でこっちが劣勢なのにも関わらず、ケイとVさんはすがすがしそうに戦う。

 というよりもVさんは初期位置から一歩も動いていない。それなのに数100体単位で倒していく。
 俺はただの足手まとい。戦力外宣告受けてもいいはずなのに、2人はなにも言ってこない。

「カケル。全然戦えていないじゃない」

 ヤサイダーがそんなことをつぶやいた。俺はそれに怒りを感じたが、さらに集中することに専念した。

 思考が爆発しそうになりながらもできるだけ気持ちを落ち着かせて、それでも確実に戦える方法を探した。敵は雪崩のようにやってくる。

 俺はアイアンクローから普通のボクシンググローブに切り替えた。こっちの方がイメージしやすいからだ。延長線上がわからない。

 それくらいイメージが苦手な俺に鉤爪は難しかった。そう難しかっただけなのだ。

 それならそもそも使わない方向でやった方が早い。鉤爪の方がリーチが長いし、やりやすいのだろうけど、俺には無理だ。

 もしかしたらそこも含めてVさんは俺に紋章を与えたのか? もしそんなことをしたのなら治療するためというのも嘘になってしまう。

 その可能性は絶対ないと考えつつも、それなりに思考速度が遅くなってきた。かなりの労力だ。ゲームでここまで疲れることは経験したことがない。

 俺はサボろうと試みるが、そんなことができる場面があるはずもなく。このままでは、最強揃いのギルドという肩書を抱えるアーサーラウンダーに汚名を擦り付けるかもしれないと考えたので、サボろうとする思考は端っこに追いやった。


 それでも減らない敵。この言葉が出てくるのは2度目だが数の暴力はあまり好きじゃない。というのに、ケイとVさんは速度が落ちない。2人だけで20万以上は倒しているんじゃないか?

 こんまま俺の出番なしで終わってしまうのでは? そんなのは嫌だ。俺は真面目モードに入ることにした。

 ここまで仲間にライバル意識を持つのは正直言って初めてだ。仲間は最大のライバルというけれど、弟を探すためにいろんなゲームを遊んでいた俺はギルドとは無縁のことをしていた。


 そもそも、弟を探すのにギルドに入る必要がなかった。
 入ったとしても、空気でしかなかった。ライバル意識というのも全く感じなかった。

 それくらいずぼらにゲームをしていた自分が恥ずかしい。ケイやフォルテたちはギルドを通して成長をしている。

 だけど、俺は最初にアリスを助けた時くらいで他は仲間任せ。余計なお世話しかしていない。

 そんなんじゃ副団長失格だ。人生で考えてもこの役職は会社の副社長になったのと一緒。

 社長がいない時にヘマやらかしたら全体の印象が悪くなる。
 ここはきっとその器を確かめる試験と考えた方がいい。俺は拳を敵にぶつける。1体につき3撃から4撃。

 ボクシンググローブは初期武器枠なのでかなり攻撃力が低い。そんな時に役立つのがストロングブレイクだが、そっちもあまり使いたくない。

 使った方がワンパンで倒せる可能性が格段に上がるのだろうけど、クールタイムが気に入らない。

 俺はとにかく手と足を動かした。数の暴力――敵――には数の暴力――攻撃回数――だ。とにかく攻撃する。

 ここで俺は気が付いた。一発が相手の頭部にぶつかった時混乱状態にさせることに成功した。

 これは複数体を混乱状態にさせれば、鉤爪で一掃できる。これは俺にとっての大発見かもしれない。

「ケイ! Vさん! 敵を俺の方に誘導させてください!」

 俺は2人に指示をする。

「本当に大丈夫なんだよね?」

 Vさんが反応した。ケイはというと戦闘に集中していて反応がない。俺はそんな彼なら問題ないきっと声が届いているはずだと信じ、Vさんに指示通り動くよう促す。

 すると空中を舞う剣が軌道を変えた。敵を囲むように並べられ、俺の方に誘導を開始する。

 俺は押し寄せる敵に少し恐怖を感じた。一度にこんな数を相手するのは初めてだ。今日は初めてなことづくしで、整理が追い付かない。でも、今の俺には整理する暇すらない。

 整理に集中していたら敵の群れに押し流されて非常に情けない姿をさらすことになる。そんなことをしているわけにはいかない。

 俺は押し寄せる敵の頭部に確実に拳を当てていく。どんどんその場でよろよろと動く敵。それが昆虫でも同じ動きを見せる。

 これならいける。心の中でガッツポーズをして、鉤爪に変更し一気に敵HPを削り切る。こんな爽快な戦闘はとても楽しかった。これを澪に見せられたら彼はどんな反応をするだろうか?

 もちろんVさんの協力のもと、かなり早いペースで片付いていく。戦闘時間は約1時間半。ようやく敵の数が減り安全が確認されたのち、会場は大歓声に包まれた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界宇宙SFの建艦記 ――最強の宇宙戦艦を建造せよ――

黒鯛の刺身♪
SF
主人公の飯富晴信(16)はしがない高校生。 ある朝目覚めると、そこは見たことのない工場の中だった。 この工場は宇宙船を作るための設備であり、材料さえあれば巨大な宇宙船を造ることもできた。 未知の世界を開拓しながら、主人公は現地の生物達とも交流。 そして時には、戦乱にも巻き込まれ……。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

この世界、貞操が逆で男女比1対100!?〜文哉の転生学園性活〜

妄想屋さん
SF
気がつけば、そこは“男女の常識”がひっくり返った世界だった。 男は極端に希少で守られる存在、女は戦い、競い、恋を挑む時代。 現代日本で命を落とした青年・文哉は、最先端の学園都市《ノア・クロス》に転生する。 そこでは「バイオギア」と呼ばれる強化装甲を纏う少女たちが、日々鍛錬に明け暮れていた。 しかし、ただの転生では終わらなかった―― 彼は“男でありながらバイオギアに適合する”という奇跡的な特性を持っていたのだ。 無自覚に女子の心をかき乱し、甘さと葛藤の狭間で揺れる日々。 護衛科トップの快活系ヒロイン・桜葉梨羽、内向的で絵を描く少女・柊真帆、 毒気を纏った闇の装甲をまとう守護者・海里しずく…… 個性的な少女たちとのイチャイチャ・バトル・三角関係は、次第に“恋と戦い”の渦へと深まっていく。 ――これは、“守られるはずだった少年”が、“守る覚悟”を知るまでの物語。 そして、少女たちは彼の隣で、“本当の強さ”と“愛し方”を知ってゆく。 「誰かのために戦うって、こういうことなんだな……」 恋も戦場も、手加減なんてしてられない。 逆転世界ラブコメ×ハーレム×SFバトル群像劇、開幕。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました

まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。 その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。 理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。 ……笑えない。 人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。 だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!? 気づけば―― 記憶喪失の魔王の娘 迫害された獣人一家 古代魔法を使うエルフの美少女 天然ドジな女神 理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕! ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに…… 魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。 「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」 これは、追放された“地味なおっさん”が、 異種族たちとスローライフしながら、 世界を救ってしまう(予定)のお話である。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...