エレンディア王国記

火燈スズ

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第1章

5.友か敵か

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 謁見の間。本来であれば王が民の話を聞くときに使う部屋だ。あとは儀式でたまに使うくらい。リアもこの部屋に入るのは久しぶりだった。
 高い天井、ステンドグラスの窓からはカラフルな光が見え隠れしている。中央奥には玉座があり、そこには現国王ジル=キグ=エレニアが座る予定だが、まだ来ていないようだ。
 ヒナが扉を開き、リアが中に入ると、すでにほとんどの王子たちは来ていた。シャリスはまだのようだが、もう最後の方だった。

「シャリス様、大丈夫でしょうか?」

「またぐずるってこと?大丈夫だろ。」

「いえ、単純に化粧が間に合うか…」

「アルマ次第だな。まあ大丈夫だろ」

 王位継承者たちは玉座の下に集まっている。継承順位の順にならぶようだ。王位継承者は全部で21人。リアは後ろから4番目だから一番後ろの列だった。
 並ぶと、前にいる男が振り返って話しかけてくる。

「遅かったなリア。やる気あんのか?」

「もちろんですよユリオス兄さま。」

「ま、お前程度ではまともな宣誓も言えないだろうからな。せいぜい王都に残れるよう泣いて懇願すればいいさ」

 嫌味な言い方をするこの男の名はユリオス。第13位王位継承権をもつ人物だ。シャリスと同じ母をもつ、正真正銘のシャリスの兄だった。

「ユリオス兄さまこそ、足が震えておいででは?そんなことでは、壇上で転んでしまいますよ?」

 リアの返しを聞いて、ユリオスは眉にしわを寄せる。そしてニヤッと笑った。

「その呼び方気持ち悪いわ!心配してたんだぜ?俺は。」ユリオスは手をリアに差し出す。

 リアはユリオスと同じくニヤッと笑いその手を握った。
 シャリスと仲がいいこともあってか、リアはユリオスともかかわりが深い。2つしか年が変わらないからだろうか。ユリオスはリアの良き理解者だった。
 
「そろそろ始まりそうだな。…シャリスは?」

 ユリオスが心配そうに聞く。リアは「大丈夫、すぐ来るさ」と小声で耳打ちした。その数秒後、扉があく音がして、シャリスが入ってきた。

(…来たか。万全だな。)

 シャリスの表情は先ほどの涙ぼろぼろの姿ではなく、きりっとした、王族の目をしていた。ユリオスもシャリスの様子を見て、彼女の覚悟が決まったのだろうということに気づき、からかう言葉を飲み込んだ。
 全員がそろったのを確認し、宰相のトゥラメスが合図をする。すると、玉座の裏にある扉が開き、リアの父、現国王ジルが現れ、玉座に座った。

「それでは国王、よろしいですかな?」トゥラメスが聞く。国王は重々しくうなづいた。

「うむ。…始めるとしよう、『宣誓の日』を」
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