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第1章
6.宣誓
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「では、第1位王位継承者、レオン=ヴィル=エレニア、前へ。」
ついに始まった宣誓の時。王位継承権が早い順に王の前で将来の展望を述べる時だ。ここでの宣誓は強い効力を持ち、変えることはかなわない。実質、ここでの宣言で本人の人生は決まる。
普通、王位継承権は『王位を継承する権利』であるため、本来ならば第1位の人物が次期国王になるのは当然である。そのルール自体は存在するが、慣例として、下剋上的な争いをすることが許されているため、今日を終えた時点で第1位王位継承権をもつレオンは暫定の国王候補となるだけである。
レオンが前に出る。父の前に膝をつく。国王はその姿を見て、声を発した。
「第1位王位継承者、レオン=ヴィル=エレニア。お前の望みはなんだ。」
低い声が響き渡る。その威厳は謁見の間にふさわしく、血のつながった父とは思えない、重みを帯びていた。リアは思わず背筋が伸びる。レオンはその言葉を聞き、顔を上げて王に言った。
「王よ、私は、次期国王として、この国をより豊かに、強くしていく所存、第1位王位継承者として、王位を望みます!」
国王が満足そうにうなづく。これは誰しも予測していたことだった。
レオン=ヴィル=エレニア。エレニア王国の第1王子。背が高く細身のさわやかな青年だが、剣の腕はエレニア随一といわれるほどで、国王に気に入られている。国王はレオンを順当に国王にしたいと思っているのだろう。
「では、次。キース=ヘラ=エレニア。前へ」
レオンが下がると、次に第2位王位継承者のキースが呼ばれた。呼ばれたキースは端にいる従者に合図を送る。すると従者がすっと部屋から出ていった。
王の前に立つキース。国王は少々不満げにキースを見ていた。
「第2位王位継承者、キース=ヘラ=エレニア。お前の望みは何だ。」
レオンと同じく膝をついていたキースは、その言葉を聞き顔を上げた。
「私は、王位を望みます、父上。そのための手土産も用意いたしました。」その言葉に国王が首をかしげる。
「手土産、とな。」
キースが手をたたく。すると扉が開き、先ほどいなくなった従者が誰かを引き連れてやってきた。投げ飛ばされるようにキースの横に連れ出された人物は、ぼろぼろの服を着て、足枷をしている。罪人のようだった。
(アルマの言っていた罪人ってこの子か。…え?あれは…)
リアはその人物、罪人の少女のある特徴に驚き目を見開く。ユリオスもつい「うそだろ…」と声を上げてしまう。その少女は、エレニア王家と同じ青い目をしており、髪の色が黒だった。エレニア王家の人間は、金髪もしくは赤髪なのだが、その色の組み合わせは、エレニア王家にとって大きな意味のあるものだった。
「黒髪に、青い目、とな。」国王がつぶやく。キースは自慢げに話し始める。
「この罪人は、つい先日、レオン兄上に暗殺を試みた人物です。兄上の命により処刑される予定でしたが、この目を偶然私が見てしまったもので、止めたのでございます。」
レオンはキースをにらんでいる。
「さて、古い文献には、黒い髪をもち、エレニア一族特有の青い瞳をもつ者こそが、エレニア王家の秘宝を扱うことができるとしております。」
そこまでキースが言ったとき、レオンが鼻で笑った。
「キース、それはおとぎ話の類だ。そもそも秘宝が何かもわかっていないのにそれは…」
「控えよレオン。今はキースの話す時である。」
国王に言われ、レオンは悔しそうに黙る。キースの得意げな顔を見ていると、リアはあることに気づいた。
(そういえば、父上はこの秘宝に執着していた時期があられた。そこをキースは狙ったのか。)
「この少女の目が本当にエレニア王家のものなのであれば、秘宝について何かヒントがあるかもしれない。そう思い、お連れしたのでございます。…王よ、私は次期国王になり、この偉大なるエレニア王国の失われし歴史を紐解き、より威厳のある国にしていきたいと考えております!」
キースは言い切り、王の返答を待つことなく元の場所に戻った。レオンは現実主義、実利主義だ。国のために今できることに注力する。国民の幸せを考える指導者になるだろう。それに対しキースは、かつてより大国だったエレニアを復活させることで国を強大にしようと思っているのだろう。恐ろしいのはそんなキースの言う言葉は世迷言ではなく、現実味を帯びるだけの圧倒的な研究データを持っているのだった。
(1位と2位は何かしてくると思ったが、まさか秘宝について突いてくるとは思わなかったな…)
しんとした謁見の間では、トゥラメスが慌てて次の王子に声をかけるのだった。
ついに始まった宣誓の時。王位継承権が早い順に王の前で将来の展望を述べる時だ。ここでの宣誓は強い効力を持ち、変えることはかなわない。実質、ここでの宣言で本人の人生は決まる。
普通、王位継承権は『王位を継承する権利』であるため、本来ならば第1位の人物が次期国王になるのは当然である。そのルール自体は存在するが、慣例として、下剋上的な争いをすることが許されているため、今日を終えた時点で第1位王位継承権をもつレオンは暫定の国王候補となるだけである。
レオンが前に出る。父の前に膝をつく。国王はその姿を見て、声を発した。
「第1位王位継承者、レオン=ヴィル=エレニア。お前の望みはなんだ。」
低い声が響き渡る。その威厳は謁見の間にふさわしく、血のつながった父とは思えない、重みを帯びていた。リアは思わず背筋が伸びる。レオンはその言葉を聞き、顔を上げて王に言った。
「王よ、私は、次期国王として、この国をより豊かに、強くしていく所存、第1位王位継承者として、王位を望みます!」
国王が満足そうにうなづく。これは誰しも予測していたことだった。
レオン=ヴィル=エレニア。エレニア王国の第1王子。背が高く細身のさわやかな青年だが、剣の腕はエレニア随一といわれるほどで、国王に気に入られている。国王はレオンを順当に国王にしたいと思っているのだろう。
「では、次。キース=ヘラ=エレニア。前へ」
レオンが下がると、次に第2位王位継承者のキースが呼ばれた。呼ばれたキースは端にいる従者に合図を送る。すると従者がすっと部屋から出ていった。
王の前に立つキース。国王は少々不満げにキースを見ていた。
「第2位王位継承者、キース=ヘラ=エレニア。お前の望みは何だ。」
レオンと同じく膝をついていたキースは、その言葉を聞き顔を上げた。
「私は、王位を望みます、父上。そのための手土産も用意いたしました。」その言葉に国王が首をかしげる。
「手土産、とな。」
キースが手をたたく。すると扉が開き、先ほどいなくなった従者が誰かを引き連れてやってきた。投げ飛ばされるようにキースの横に連れ出された人物は、ぼろぼろの服を着て、足枷をしている。罪人のようだった。
(アルマの言っていた罪人ってこの子か。…え?あれは…)
リアはその人物、罪人の少女のある特徴に驚き目を見開く。ユリオスもつい「うそだろ…」と声を上げてしまう。その少女は、エレニア王家と同じ青い目をしており、髪の色が黒だった。エレニア王家の人間は、金髪もしくは赤髪なのだが、その色の組み合わせは、エレニア王家にとって大きな意味のあるものだった。
「黒髪に、青い目、とな。」国王がつぶやく。キースは自慢げに話し始める。
「この罪人は、つい先日、レオン兄上に暗殺を試みた人物です。兄上の命により処刑される予定でしたが、この目を偶然私が見てしまったもので、止めたのでございます。」
レオンはキースをにらんでいる。
「さて、古い文献には、黒い髪をもち、エレニア一族特有の青い瞳をもつ者こそが、エレニア王家の秘宝を扱うことができるとしております。」
そこまでキースが言ったとき、レオンが鼻で笑った。
「キース、それはおとぎ話の類だ。そもそも秘宝が何かもわかっていないのにそれは…」
「控えよレオン。今はキースの話す時である。」
国王に言われ、レオンは悔しそうに黙る。キースの得意げな顔を見ていると、リアはあることに気づいた。
(そういえば、父上はこの秘宝に執着していた時期があられた。そこをキースは狙ったのか。)
「この少女の目が本当にエレニア王家のものなのであれば、秘宝について何かヒントがあるかもしれない。そう思い、お連れしたのでございます。…王よ、私は次期国王になり、この偉大なるエレニア王国の失われし歴史を紐解き、より威厳のある国にしていきたいと考えております!」
キースは言い切り、王の返答を待つことなく元の場所に戻った。レオンは現実主義、実利主義だ。国のために今できることに注力する。国民の幸せを考える指導者になるだろう。それに対しキースは、かつてより大国だったエレニアを復活させることで国を強大にしようと思っているのだろう。恐ろしいのはそんなキースの言う言葉は世迷言ではなく、現実味を帯びるだけの圧倒的な研究データを持っているのだった。
(1位と2位は何かしてくると思ったが、まさか秘宝について突いてくるとは思わなかったな…)
しんとした謁見の間では、トゥラメスが慌てて次の王子に声をかけるのだった。
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