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第1章
8.リアの願い
しおりを挟むユリオスの発言でざわつきはしたが、そこは王族、すぐに感情を隠し、粛々と再開した。その後も別にユリオスに感化される人物が現れることもなく、シャリスの番になったのだった。
「次、第17位王位継承者、シャリス=レイ=エレニア。前へ。」
シャリスが呼ばれ、前に出る。その横顔をリアは見たが、先ほどの泣きじゃくっていた少女の面影はどこにもなく、王族としての顔を見せていた。
(シャリスはやる時はやるからな。)
「第17位王位継承者、シャリス=レイ=エレニア。お前は何を望む。」
国王の言葉に、シャリスは少しの沈黙を返す。何かを思案している、言葉を探している?シャリスの普段の姿を見ている兄弟からすると、あがって話せなくなってしまったのではないかと思っているようだった。しかし、それは違った。
シャリスは国王の方をまっすぐに向き、こう言い放った。
「お父様、いえ、国王陛下。私の願いを宣誓する前に、弟である第18位王位継承者、リア=セイム=エレニアの願いをお聞きになるほうがよろしいかと存じます。」
ユリオスとは違ったざわつきが起きる。トゥラメスは慌ててシャリスに言う。
「し、しかしシャリス。これは儀式であるため…」
「関係ありませんわ叔父上。いえ、宰相様。私の願いは、リアの願いに賛同し、ついていくことですもの」
ユリオスが驚いてリアの方を見る。リアも驚いた表情で首を横に振る。
「…シャリスよ。お前はリアの願いの内容を知っておるのか?」国王が問うことで謁見の間に沈黙が走る。シャリスはその言葉を聞き、うなづいた。
「もちろんですわ。」
「…そうか。ではよかろう。…第18位王位継承者、リア=セイム=エレニア。前へ。」
(きっと、下位継承者の戯言だと思ってるんだろうな。)
リアはゆっくりと前に出る。シャリスと目が合ったとき、シャリスはすべてをわかっているような目でリアの方を見た。
国王の前に立つ。目が国王と合ったとき、そのプレッシャーに驚かされた。
(そりゃ、兄上様方がおじけづくわけだ。父上は、試しておられるのか?)
国王という存在の大きさを示すためか、国王の放つプレッシャーは壇上に来てさらに凄みを増した。
「リア=セイム=エレニアよ。お前の望みは何だ。」
国王がゆっくりと聞く。リアは用意していた言葉を伝えるため、国王の目をまっすぐに見て、答えた。
「王よ。私、リア=セイム=エレニアは、王位継承の権利を破棄し、南方『エレンディア』にて、新たな領地開拓をしたいと思っております。」
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