詠み人知らず、言わずと知れて。

立花伊作

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事実は小説より奇なり

PEACE

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それは遠い昔の話。


戦争があった頃の話だ。



ある二つの国が戦争を行っていた。



片方の国は
国全体が戦争の事を知っていて、


もう片方の国は
一部の軍隊の人々しか
その戦争の事を知らなかった。



ある日、一人の軍人が銃を持ち
森の湖に辿り着いた。


軍人はそこで昼飯を食べ、
誰もいない森の静かな景色を
眺めていた。


軍人の心は穏やかであった。


戦争の事など
忘れてしまいそうになるくらい、
その森は人影がなく、
穏やかで、静寂であった。


軍人はずっとこの時が
続けばいいと思った。



誰も傷つかない、誰も傷つけない。



殺されない、殺さない。



憎まれない、憎まない。



銃を持たずに街を歩きたい。



警戒する事なく熟睡したい。



疑う事なく友人を信じたい。



失うことを恐れる事なく
家族を愛したい。




軍人は素直にそう思ったのだ。



軍人は銃を胸に抱き、
森の中を寝そべった。


軍人の銃を抱く腕には震える程に
力がこもっていた。



いつ、誰が来るか分からないのだ。


ただ、その恐怖だけが、
軍人の中を駆け巡っていた。



その時だった。


ガサガサッ


木々が掻き分けられる音がした。


軍人が寝そべる近くでだ。


軍人は即座に立ち上がり、
銃を向ける。



そこに軍人の意識は無かった。


ただあったのは、本能。



殺らねば、殺られる。



それだけだった。



軍人は気がつかなかった。


その本能のままに突きつけた
銃口の先にあったものに。



パァン‼



少女は森に遊びに来た、
戦争を知らない国民の一人だった…。





こんな話が無いことを、
僕はただ、祈り続けるのだ。


この荒んだ世界に、平和を…。
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