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事実は小説より奇なり
希望を持つ人の足跡は汚い
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「うー…さっみー。」
雪が降った翌日の早朝。
僕は外を歩いていた。
道には雪が積もり、朝が早いせいか、
僕の前に足跡はない。
後ろを振り返れば、
僕の足跡が道を汚している。
何と無くそれに耐えられなくて、
僕は少し早歩きになった。
早歩きになればなるほど、
足跡は形を乱してゆく事も知らずに…。
ふと僕は大通りに出た。
そこには大きな足跡が
綺麗な形を残して続いていた。
僕はその足跡を追いかけた。
少し離れた隣を、
足跡の主のところまで慎重に、
歩幅を合わせながら歩いた。
どんな人だろうと、単純に興味があった。
やっと追いついた足跡の主は
なんと近所の公園にいる浮浪者だった。
僕はギョッとして
急いで来た道を走って戻った。
息を切らしながら膝に手をついた。
ショックだった。
頭の中には、それしかなかった。
ふとさっきの僕の足跡を見る。
綺麗な形を残して、そこにあった。
なんか………。
「………残酷だな。」
どうしてあの人が
こんなに綺麗な形を
作る事が出来たのだろう。
人生に迷った
その果てにいるようなあの人に。
それに比べて僕は一応頑張っている。
人生に迷ってはいない。
少し困っているだけだ。
悩んでいるだけだ。
そんな事をしているうちに、
人が増えてきた。
僕の隣を、
若いサラリーマンが通り過ぎる。
足跡はとても汚かった。
そこらの野良猫が隣を過ぎてった。
足跡はとても荒々しかった。
すぐそこのカフェの女性店員が
店のシャッターを上げにきた。
その足跡も綺麗とは言い難かった。
僕には何故かわからなかった。
みんな涼しい顔をして
過ぎ去っていくことが悲しかった。
すると僕の隣で足を止める
同年代くらいの男の子が声をかけてきた。
「まだ、
分からなくていいんじゃねぇの。」
そう言って差し出してくれた
彼の手を取った。
体制を立て直して、大きく深呼吸をする。
吐いた息が顔にかかる。
突然吹いた風に僕は目を瞑った。
なにか吹っ切れた気分だった。
「…分かるかな?」
「分かんだろ、んな焦んなって。」
「そうだな。」
無理に大人ぶらなくていい。
そう言ってくれているように聞こえて、
安心した。
もしかしたら、僕はいままで、
無意識のうちに
背伸びしていたのかもしれない。
隣を気軽に歩く彼の足跡を隠し見た。
その足跡は乱れており、
お世辞にも
綺麗と言えるものではなかった。
雪が降った翌日の早朝。
僕は外を歩いていた。
道には雪が積もり、朝が早いせいか、
僕の前に足跡はない。
後ろを振り返れば、
僕の足跡が道を汚している。
何と無くそれに耐えられなくて、
僕は少し早歩きになった。
早歩きになればなるほど、
足跡は形を乱してゆく事も知らずに…。
ふと僕は大通りに出た。
そこには大きな足跡が
綺麗な形を残して続いていた。
僕はその足跡を追いかけた。
少し離れた隣を、
足跡の主のところまで慎重に、
歩幅を合わせながら歩いた。
どんな人だろうと、単純に興味があった。
やっと追いついた足跡の主は
なんと近所の公園にいる浮浪者だった。
僕はギョッとして
急いで来た道を走って戻った。
息を切らしながら膝に手をついた。
ショックだった。
頭の中には、それしかなかった。
ふとさっきの僕の足跡を見る。
綺麗な形を残して、そこにあった。
なんか………。
「………残酷だな。」
どうしてあの人が
こんなに綺麗な形を
作る事が出来たのだろう。
人生に迷った
その果てにいるようなあの人に。
それに比べて僕は一応頑張っている。
人生に迷ってはいない。
少し困っているだけだ。
悩んでいるだけだ。
そんな事をしているうちに、
人が増えてきた。
僕の隣を、
若いサラリーマンが通り過ぎる。
足跡はとても汚かった。
そこらの野良猫が隣を過ぎてった。
足跡はとても荒々しかった。
すぐそこのカフェの女性店員が
店のシャッターを上げにきた。
その足跡も綺麗とは言い難かった。
僕には何故かわからなかった。
みんな涼しい顔をして
過ぎ去っていくことが悲しかった。
すると僕の隣で足を止める
同年代くらいの男の子が声をかけてきた。
「まだ、
分からなくていいんじゃねぇの。」
そう言って差し出してくれた
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安心した。
もしかしたら、僕はいままで、
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