詠み人知らず、言わずと知れて。

立花伊作

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幼い僕から、手紙が届いた。


“僕は今、悩みがあります。


学校ではいじめられるし、

学校の先生は何もしてくれない。

お父さんとお母さんは仲が悪いし、

たまに僕を強くぶつんだ。

もう、どうしていいか分からなくて、

薬局に行っても、
おばちゃんは薬を買わせてくれなかった。


僕に未来があるのか分からないけれど、
この手紙が、僕に届いていたら嬉しい。

そして、この手紙を読んでいる僕が、
幸せに生きていたら、もっと嬉しい。”


濡れた後が残る
くしゃくしゃの紙に込められた僕の記憶。

あの頃は字が下手で、
自分で書いたのに
たまに読めなかったことがあったっけ。

僕?

今の僕はね_____________。


“手紙、届いたよ。

手紙、読んだよ。

辛かったよね、僕。

ねぇ、僕。

今の僕は、最高に幸せだよ。

僕はあの手紙を書いた二年後に、
ある人物と出会ったんだ。

はじめて僕を叱ってくれて、

はじめて僕を守ってくれて、

はじめて僕を愛してくれて、

はじめて僕の為に泣いてくれた人に。

手紙を書いた一年後に両親が亡くなっても、涙を流すどころか、
安堵してしまった僕が、
その人の死に涙を流すことが出来た。

心から僕を愛してくれた。

本当の親のように、僕の頭を撫でてくれた。

そんな僕にとって大切な人が、
現れるんだよ。

だから今、
僕はこうして僕の手紙を読んでいる。

字も上手くなった。

僕は、死んでないよ?

生きている。

就職して、

恋人が出来て、

結婚して、

子供も二人いる。

僕がもつことがなかった
「あたたかい家族」を、
今はもつことが出来ている。

僕を守り、
愛してくれたあの人はもういないけれど、
僕は今、本当に幸せなんだ。”


そう、言ってやりたい。

幼いころの僕に____________________。



『ねぇ。今、幸せ?』

「うん、幸せだよ。」

『そっか…。』

「ありがとう、幼い僕…。
   生きてくれて、ありがとう。」



‘パパー?何書いてるの?’

‘んー?なんでもないよ。’
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