詠み人知らず、言わずと知れて。

立花伊作

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目頭が熱い

もう、涙は流さない

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僕は時々、抜けている時があるらしい。




「え?なんで?」


「ははっ、なんかお前って、
   たまに変な時あるよな。」


「なにも考えてないって感じ?」


「そう…かな?ははは。」




なにも考えてないんじゃない。


考えないようにしてるだけだ。



考えてしまったら、

思ってしまったら、


もう、後戻り出来ないだろ?



なにも考えたくないから、
なにも考えないでいる。



出した答えが間違っていても、
勘違いだったとしても、
きっと僕は傷付いてしまうから。




なにも考えないように。


なにも想像しないように。




それで、精一杯で。


他のことに手が付かなくなってしまって、
自分で自分を壊してしまう。




誰の所為にも出来ない。




他でもない僕の、自分の所為なんだ。



押し付けようのない感情がこみ上げてきて
吐き気がする。




大声で叫びたくて仕方が無い。




大声で泣き散らしたくて仕方が無い。




でも、誰かの迷惑になってしまう。


誰かの迷惑になるくらいなら、
黙っていた方が何倍もマシだ。


感情を抑え込むことなんて、
今までだって何度もしてきたじゃないか。




大したことじゃない。




「大丈夫だよ。」



ほら、ね。



「お前って体育好きだよな。」


「運動するのが、好きなんだ。」



体を動かしている方が、
なにも考えなくて済むから。


常になにかしていないと、
考えてしまう。


なにかに集中している方が、
余計なことを考えなくて済む。




そうやって、今までずっと。




乗り越えてきたんだ。



「お前も混ざれよ、面白いぞ。」


「いや、僕はいいよ。
   見ているだけでも十分楽しいから。」



本当は、混ざりたい。


みんなと。


でも………。



「あ………。」



また、考えてしまう。



「なにが“十分”だよ。
   そんな顔しておいて。」


「ほら、お前も来いって。」


「いや、でも…だって………。」



僕が行ってしまったら…。



「四の五の言わずに来い!!」


「おらおら!!」


「え?ちょ、ちょっと!!」



強引に腕を引っ張る君たちの背中を、
僕は追いかける。



追いつきそうで、追いつかなくて。



余計なことを考える暇なんてなくて。



君たちが強引な人たちでよかった。



扉をいくら閉じても、
すぐに打ち破って来てくれる。



君たちと、友達になれてよかった。



なにも考える余裕もないくらい、
君たちとの日々は忙しない。




「あははははっ!!楽しい!!」




君たちには、



これから先、



嘘をつける自信がなくなってしまったよ。
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