詠み人知らず、言わずと知れて。

立花伊作

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愛を育む

キスしたい

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バレンタインのチョコレート。


今年は、君の作ったトリュフ。


甘くて優しい味がする。


君の愛をぎゅーっと詰め込んで、
僕の口の中で広がっていく。



「ん…美味しい。」

「本当?よかった。」



君の気持ちはこんなに甘くて、
優しいんだね。


あたたかく、とろけていく。


僕は不意に君に近づいた。



「……_________!?」

「ははっ、耳まで真っ赤だ。」

「いっ…!?いきなり何!?」

「ごめん、ついしたくなって。」

「~~っ!!もうっ!!バカ!!」



あ…。



「照れて怒ってる…可愛い。」

「言わないで!!」



本当、可愛いね。


バレンタインは好き。


可愛い君が、もっと可愛くなる日だから。



「来年は僕が作るよ、チョコ。」

「え?」



そして、君の笑顔が一番輝く日だから。



「どんなのがいい?」

「うーん……あ、あれがいいな。
    ガトーショコラ。」

「ガトーショコラか……分かった。」



君が笑ってくれるなら、
僕がなんでも作ってあげるから。



「ほら、君も食べなよ。
    トリュフ。」

「いいよ、私は味見で食べたから。」

「そんなこと言わずに、はい、あーん。」

「だからいらないって。
   貴方にあげたやつなんだから。」

「全く素直じゃないなぁ……。」



僕は口にくわえたトリュフを
君の口へと運ぶ。


触れた唇から、チョコが溶け出して行く。


ココアパウダーが少し落ちてしまったけど、
構わず少し強引に
なかなか開かない君の口へと
チョコを押し入れた。



「……ははっ、強情。」

「………ベタな人。」



頬を染めて僕を睨みつける君が
なんだか可愛らしくて、
口の周りに溶けてついたチョコを
恥ずかしそうに取る姿がいじらしくて。



「チョコを食べたら
   キスしたくなる気持ちが分かったよ。」

「分からなくていいっ!!」



たまには、
こういうベタな展開もいいかもしれない。


きっと誰でも、ときめいてしまうのだ。



「…口、チョコついてるわよ。」



君の手が、僕の頬をさする。

チョコを取った指を君は無意識になめた。



「…………!?」



僕は少し顔が熱くなって、
心臓が一瞬跳ね上がった気がした。





王道には、王道たる所以があるのだと思う。
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