詠み人知らず、言わずと知れて。

恋を知る

君にだけsecret

「別に自惚れているわけでは
   ないんだけど、
   自分に恋愛感情を持っている人は、 
   なんか…苦手なんだ。
   対応に困ってしまうから。」



そう、君が言ったから、
僕はこの気持ちを隠すことにした。


もし、
この気持ちを伝えてしまったら、
きっと君は、
僕の近くにいてくれなくなるだろうから。


これは、君への裏切りなのかな。


友達のフリをして、
君を好きでいることは、
君を裏切っていることに
なるのだろうか。



「雑に言ってしまうと、
   異性として意識されるのが
   嫌なんだ。
   変に意識したくない。
   誰とも対等に、
   平等でいたいから。」



僕のこの気持ちを、
君だけが知らない。


君以外のみんなは、
僕の気持ちに気付いている。



「大丈夫か？」

「大丈夫だよ。」

「辛くねぇ？」

「うん。でも、言わないでくれよ。」

「ああ…あいつ、
   色恋沙汰苦手って
   言ってたもんな…。」



恋を嫌う君に、
恋をしてしまった僕。



それはもうどうしようもなくて、
でも、伝えることは絶対にない。


ずっと君に隠しておく、
大切にしまいこむような恋を。



「あなたの隣は、
   なんだか落ち着く。」

「そう？」

「うん。友達だから。」

「そうだね、友達だ。
   僕は絶対に、
   君を好きになることは
   ないからね。」

「そう。だから対等でいられる。
    私は、そういうのが好きだ。」



僕は、そういう君が好きだから。


僕の隣で安心してくれる君が、
僕に気を許してくれる君が、
僕の側で弱いところを見せてくれる君が。


僕は、愛しくてたまらないんだから。



此処は、僕の特等席なんだ。


恋人には程遠いけれど、
君の一番近い位置でいられる。

ずっと一緒にいられるのは、
友達の特権かもしれない。



仕方がないじゃないか。


僕は利口じゃないから、
恋を嫌う君に惚れてしまったんだ。


僕は頭が良くないから、
君を意識させる言葉を知らない。


僕は勇気がないから、
君に想いを伝えることが恐ろしい。



いつかこの熱が冷めて、
また新しい恋が出来た時、
それを君に伝えたら、
君はどんな顔をするのだろう。



「どうしたの？」

「いや、なんでもない。」



まぁ、例えその時が来たとしても、
伝える気はさらさらないけれど。

僕の恋の行方は、
君だけが知らなければ
いいだけの話なのだから。