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これだけは誰にも負けない

ずっとそばに。

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小さい頃から、ずっと一緒だった。

家が近くて、学校も一緒で。

人付き合いが苦手なくせに、
一度心を許したら遠慮がなくて、
信頼を寄せてくれているのが分かるから。

そんなところが心地よくて、
幼馴染としてずっとお前の隣を歩いてきた。


この気持ちに気づいた時には、
お前を裏切ったように思えて、
罪悪感でいっぱいだった。

でも、この思いは決して実るものではない。

実っていいものでは無い。

この気持ちを知られて嫌われるのが怖い。

お前を困らせたくない。

それは世間的な問題もあるし、
お前の人生を、狂わせたい訳でもないから。

僕はお前の隣でずっと、
親友でいることを選んだ。

一番の理解者であることを望んだ。

いつかお前に、好きな子が出来て、
付き合って、結婚して。

幸せな姿を見ることが出来るのなら、
僕にとってそれ以上の幸せはない。

弱ってるお前を慰めるのも、
悩んでいるお前の背中を押すのも、
「よかったな」って笑って、
お前のことを見守るのも、
全部、僕でありたい。

それは、親友の特権。

恋人よりも、
うんといいポジションじゃあないか。


好きになってくれなくてもいい。

キスが出来なくたって、
お前は優しいから、
僕が泣きそうになったら頭を撫でてくれる。

泣いたとしても、
理由を聞かずに胸を貸してくれる。

何度もバレるんじゃないかって思った。

気持ちが溢れて辛い時もあった。

お前が優しいせいで、
僕はどんどんお前に惹かれていく。

絶対に、この気持ちを伝えるようなことはしないから、
せめて親友として、お前の傍にいさせてくれないか。

「好きだ」なんて言わないから、
お前のことを想っていることだけは許して欲しい。


背は僕より高くなったし、
小さい頃に無かった大人の表情、
真剣な眼差し。

低くなった声とか、正直、
めちゃくちゃ格好よくて。

不器用で、ぶっきらぼうの癖に、
ふと見せる笑った顔が優しくて。

仕草とか、クセとか、距離感が近いとことか、
小さい頃から変わってなくて。

「いつも、ありがとな」って言って、
優しく笑って、頭を撫でてくる。

「俺の方が背が低いからって、
頭撫でんなよ。子供みてぇじゃん。」なんて誤魔化すので精一杯で。

ますます、僕を翻弄する。



本当に、お前は、酷い男だ。

そんな男に惚れてしまった僕も、
本当に酷い男だ。


「しょうがねぇなぁ、手伝ってやるよ。
親友だからな。」

そう言って、今日も、明日も、これからも、
ずっと傍で。

お前の幸せを、願ってる。
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