転生をきっかけに今世を謳歌したい！

プロローグ

1

「おかあさぁぁぁぁん！！！おとうさぁぁぁん！！いやぁぁぁぁ！！」

ザァーと雨が降る中少女の悲痛な叫びが響き渡る。膝を降り両手で顔を隠すように泣け叫ぶ少女、篠塚百合ｼﾉﾂﾞｶﾕﾘは突然すぎる出来事に涙が止まらかった。
その傍らには百合の兄篠塚薫ｼﾉﾂﾞｶｶｵﾙが妹の百合に掛ける言葉が解らなく呆然と立っていた。

…事故ですって

…相手の運転手は飲酒運転らしいですよ。

…まだ幼いのに可哀想に…

…あら、ならお宅が引き取っては？

…馬鹿言え俺には子供が居るんだぞ

…そんなの私だって今お腹に子がいるのよ！


親戚の大人達は兄妹に同情こそはしても誰も彼らを引き取ろうとはしなかった。

｢お…ｯに…ちゃ…っん…ﾝｸﾞｯ…わ、たしっ
たち…どうｯなる…の…？｣
未だに泣き止まらない百合は嗚咽しながら兄に言葉を掛けた。

「…ゆり……子供の僕達には…自身のことすら決められないんだよっ…」

どうしようもない焦燥感に駆られ爪がくい込むほど強く手を握った。

「ゆり…ゆりはどうしたい？？……僕はっ…僕はどうすればいいんだ…っ！！」
段々と視界が歪んでいく…でも妹に情けない姿を見せたくない一心で零れないように更に強く手を握る。

「…いっしょ！！…やだ！！ひとり…ひとりはやだよっ！おにいちゃ…んといっしょじゃな…きゃやだぁぁ！」

百合は薫に抱きつき更に泣いた。
その様子に親戚は同情の視線を強めた


雨はまだ止みそうになく
まるでそれは兄妹の心の叫びのように思えたのだった。