20 / 120
第20話 最初の仕事とざまぁの序曲
しおりを挟む
僕たちが「奴隷商人に攫われた子供たちの救出」という依頼を受けると宣言すると、ギルド内は再びどよめきに包まれた。
「おいおい、正気か? 相手は裏社会の連中だぞ」
「報酬も安いし、下手に手を出したら命がいくつあっても足りない」
「ただの獣人好きかと思ったら、今度はお人好しかよ」
同情的な意見は、ほとんどなかった。誰もが、割に合わない危険な依頼だと、僕たちを遠巻きにしている。
だが、僕たちの決意は揺るがなかった。
「この依頼、私たちが引き受けます」
エリアナさんが、マネージャーとして堂々と宣言し、手続きを進めてくれる。
僕とリナは、早速作戦会議を始めた。
相手はただの魔物ではない。狡猾な人間だ。正面から乗り込んでも、人質にされている子供たちが危険に晒されるだけ。
「どうする、アルク。あんたのスキルで、何とかならないのか?」
「うん。今、最適解を探してる」
僕は目を閉じ、集中した。
【目的:人質の子供たちを、一人残らず、安全に救出する】
【最適行動パターンを提示します……】
脳内に、膨大な情報が流れ込んでくる。
奴隷商人のアジトの場所、警備の薄い時間帯、侵入経路、そして、彼らが取引で使う「合言葉」。
僕のスキルは、街に流れるありとあらゆる情報――噂話、衛兵の巡回ルート、裏社会の取引記録――を瞬時に解析し、完璧な潜入計画を構築してくれたのだ。
「……すごい。これなら、いける」
僕が導き出した作戦を聞き、リナとエリアナさんは驚愕に目を見開いた。
僕たちは、エリアナさんの人脈で手に入れた商人の服に着替え、夜を待って行動を開始した。
配信はもちろん続いている。視聴者たちは、僕たちの無謀とも思える挑戦を、固唾をのんで見守っていた。
作戦は、完璧に進んだ。
僕の『最適化』が示した通りに動くと、面白いように警備の目をかいくぐり、アジトの奥深くへと侵入することができた。
そして、ついに、子供たちが閉じ込められている地下牢を発見する。
リナが、音もなく衛兵を気絶させ、僕が鍵を開ける。
怯える子供たちを、僕たちは静かになだめ、安全な場所へと導いた。
だが、作戦はそれだけでは終わらない。
僕の本当の目的は、この街から、悪の根を断ち切ることだった。
僕たちは、奴隷商人が不正に稼いだ金品と、彼らの顧客リストが記された「裏帳簿」を確保した。
そして、アジトに火を放つ。
街の外れで、アジトが紅蓮の炎に包まれるのを見届けた僕たちの元に、エリアナさんが手配してくれた衛兵隊が到着した。
僕たちは、裏帳簿と、救出した子供たちを彼らに引き渡した。
衛兵隊長は、僕たちの働きに深く感謝し、莫大な報酬とは別に、特別な報奨金を約束してくれた。
その、騒動の少し後。
街の酒場で、数人の冒険者たちが酒を酌み交わしていた。
勇者レオニールと、彼のパーティ『暁の剣』のメンバーだ。
「ちくしょう! なんで最近、簡単な依頼ばっかり失敗するんだ!」
レオニールが、テーブルを叩いて荒れている。
アルクがいなくなってから、彼らのパーティは精彩を欠いていた。ダンジョンの最短ルートが分からず、装備のメンテナンスも疎かになり、依頼の成功率が激減していたのだ。
「そんなことより、聞いたか? あの追放したアルクってやつ、獣人の女と組んで、奴隷商人を壊滅させたらしいぜ」
「はぁ? あの無能が? 馬鹿なことを言うな!」
「いや、本当だ。街中その噂で持ちきりだぞ。衛兵隊からも表彰されたとか……。それに比べて、俺たちは……」
仲間たちの言葉に、レオニールの顔が屈辱に歪む。
彼が「無能」だと切り捨てた男は、今や、街の英雄(ヒーロー)として、彼の手の届かない場所へと駆け上がろうとしていた。
それは、彼の輝かしい経歴に刻まれた、最初の、そして最大の汚点。
彼の破滅へと続く、長い長い物語の、ほんの序曲に過ぎなかった。
「おいおい、正気か? 相手は裏社会の連中だぞ」
「報酬も安いし、下手に手を出したら命がいくつあっても足りない」
「ただの獣人好きかと思ったら、今度はお人好しかよ」
同情的な意見は、ほとんどなかった。誰もが、割に合わない危険な依頼だと、僕たちを遠巻きにしている。
だが、僕たちの決意は揺るがなかった。
「この依頼、私たちが引き受けます」
エリアナさんが、マネージャーとして堂々と宣言し、手続きを進めてくれる。
僕とリナは、早速作戦会議を始めた。
相手はただの魔物ではない。狡猾な人間だ。正面から乗り込んでも、人質にされている子供たちが危険に晒されるだけ。
「どうする、アルク。あんたのスキルで、何とかならないのか?」
「うん。今、最適解を探してる」
僕は目を閉じ、集中した。
【目的:人質の子供たちを、一人残らず、安全に救出する】
【最適行動パターンを提示します……】
脳内に、膨大な情報が流れ込んでくる。
奴隷商人のアジトの場所、警備の薄い時間帯、侵入経路、そして、彼らが取引で使う「合言葉」。
僕のスキルは、街に流れるありとあらゆる情報――噂話、衛兵の巡回ルート、裏社会の取引記録――を瞬時に解析し、完璧な潜入計画を構築してくれたのだ。
「……すごい。これなら、いける」
僕が導き出した作戦を聞き、リナとエリアナさんは驚愕に目を見開いた。
僕たちは、エリアナさんの人脈で手に入れた商人の服に着替え、夜を待って行動を開始した。
配信はもちろん続いている。視聴者たちは、僕たちの無謀とも思える挑戦を、固唾をのんで見守っていた。
作戦は、完璧に進んだ。
僕の『最適化』が示した通りに動くと、面白いように警備の目をかいくぐり、アジトの奥深くへと侵入することができた。
そして、ついに、子供たちが閉じ込められている地下牢を発見する。
リナが、音もなく衛兵を気絶させ、僕が鍵を開ける。
怯える子供たちを、僕たちは静かになだめ、安全な場所へと導いた。
だが、作戦はそれだけでは終わらない。
僕の本当の目的は、この街から、悪の根を断ち切ることだった。
僕たちは、奴隷商人が不正に稼いだ金品と、彼らの顧客リストが記された「裏帳簿」を確保した。
そして、アジトに火を放つ。
街の外れで、アジトが紅蓮の炎に包まれるのを見届けた僕たちの元に、エリアナさんが手配してくれた衛兵隊が到着した。
僕たちは、裏帳簿と、救出した子供たちを彼らに引き渡した。
衛兵隊長は、僕たちの働きに深く感謝し、莫大な報酬とは別に、特別な報奨金を約束してくれた。
その、騒動の少し後。
街の酒場で、数人の冒険者たちが酒を酌み交わしていた。
勇者レオニールと、彼のパーティ『暁の剣』のメンバーだ。
「ちくしょう! なんで最近、簡単な依頼ばっかり失敗するんだ!」
レオニールが、テーブルを叩いて荒れている。
アルクがいなくなってから、彼らのパーティは精彩を欠いていた。ダンジョンの最短ルートが分からず、装備のメンテナンスも疎かになり、依頼の成功率が激減していたのだ。
「そんなことより、聞いたか? あの追放したアルクってやつ、獣人の女と組んで、奴隷商人を壊滅させたらしいぜ」
「はぁ? あの無能が? 馬鹿なことを言うな!」
「いや、本当だ。街中その噂で持ちきりだぞ。衛兵隊からも表彰されたとか……。それに比べて、俺たちは……」
仲間たちの言葉に、レオニールの顔が屈辱に歪む。
彼が「無能」だと切り捨てた男は、今や、街の英雄(ヒーロー)として、彼の手の届かない場所へと駆け上がろうとしていた。
それは、彼の輝かしい経歴に刻まれた、最初の、そして最大の汚点。
彼の破滅へと続く、長い長い物語の、ほんの序曲に過ぎなかった。
95
あなたにおすすめの小説
最強のコミュ障探索者、Sランクモンスターから美少女配信者を助けてバズりたおす~でも人前で喋るとか無理なのでコラボ配信は断固お断りします!~
尾藤みそぎ
ファンタジー
陰キャのコミュ障女子高生、灰戸亜紀は人見知りが過ぎるあまりソロでのダンジョン探索をライフワークにしている変わり者。そんな彼女は、ダンジョンの出現に呼応して「プライムアビリティ」に覚醒した希少な特級探索者の1人でもあった。
ある日、亜紀はダンジョンの中層に突如現れたSランクモンスターのサラマンドラに襲われている探索者と遭遇する。
亜紀は人助けと思って、サラマンドラを一撃で撃破し探索者を救出。
ところが、襲われていたのは探索者兼インフルエンサーとして知られる水無瀬しずくで。しかも、救出の様子はすべて生配信されてしまっていた!?
そして配信された動画がバズりまくる中、偶然にも同じ学校の生徒だった水無瀬しずくがお礼に現れたことで、亜紀は瞬く間に身バレしてしまう。
さらには、ダンジョン管理局に目をつけられて依頼が舞い込んだり、水無瀬しずくからコラボ配信を持ちかけられたり。
コミュ障を極めてひっそりと生活していた亜紀の日常はガラリと様相を変えて行く!
はたして表舞台に立たされてしまった亜紀は安らぎのぼっちライフを守り抜くことができるのか!?
召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~
さとう
ファンタジー
生まれながらにして身に宿る『召喚獣』を使役する『召喚師』
誰もが持つ召喚獣は、様々な能力を持ったよきパートナーであり、位の高い召喚獣ほど持つ者は強く、憧れの存在である。
辺境貴族リグヴェータ家の末っ子アルフェンの召喚獣は最低も最低、手のひらに乗る小さな『モグラ』だった。アルフェンは、兄や姉からは蔑まれ、両親からは冷遇される生活を送っていた。
だが十五歳になり、高位な召喚獣を宿す幼馴染のフェニアと共に召喚学園の『アースガルズ召喚学園』に通うことになる。
学園でも蔑まれるアルフェン。秀な兄や姉、強くなっていく幼馴染、そしてアルフェンと同じ最底辺の仲間たち。同じレベルの仲間と共に絆を深め、一時の平穏を手に入れる
これは、全てを失う少年が最強の力を手に入れ、学園生活を送る物語。
キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~
サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。
ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。
木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。
そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。
もう一度言う。
手違いだったのだ。もしくは事故。
出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた!
そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて――
※本作は他サイトでも掲載しています
レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)
荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」
俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」
ハーデス 「では……」
俺 「だが断る!」
ハーデス 「むっ、今何と?」
俺 「断ると言ったんだ」
ハーデス 「なぜだ?」
俺 「……俺のレベルだ」
ハーデス 「……は?」
俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」
ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」
俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」
ハーデス 「……正気……なのか?」
俺 「もちろん」
異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。
たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!
僕だけ入れちゃうステータス欄 ~追放された凄腕バッファーは、たまたま出会った新人冒険者たちと真の最強パーティーを作り上げる~
めでめで汰
ファンタジー
バッファーの少年カイトのバフスキルは「ステータス欄の中に入って直接数字を動かす」というもの。
しかし、その能力を信じなかった仲間からカイトは追放され迷宮に置き去りにされる。
そこで出会ったLUK(幸運)値の高い少女ハルと共にカイトは無事迷宮から生還。
その後、カイトはハルの両親を探すため地下迷宮の奥へと挑むことを決意する。
(スライム、もふもふ出てきます。女の子に囲まれるけどメインヒロインは一人です。「ざまぁ」もしっかりあります)
レベルアップは異世界がおすすめ!
まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。
そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。
ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。
夜兎ましろ
ファンタジー
高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。
ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。
バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる