24 / 120
第24話 辺境伯の夜会と渦巻く陰謀
しおりを挟む
数日後、僕たちは辺境伯の屋敷で開かれる夜会へと向かった。
エリアナさんが用意してくれた、上等な礼服に身を包む。普段の冒険者服とは違う、窮屈な服装に、どうにも落ち着かない。
隣を歩くリナも、優美なドレスを着こなしているが、その表情は硬い。獣人である彼女が、貴族の夜会に出席するなど、前代未聞のことだろう。周囲から好奇と差別の視線が突き刺さるのが、僕にも分かった。
「大丈夫ですか、二人とも。胸を張ってください。あなたたちは、この街の英雄として招待された、主役なんですから」
付き人として同行してくれているエリアナさんが、僕たちを励ましてくれる。
彼女もまた、美しいドレス姿だった。
屋敷のホールは、きらびやかなシャンデリアの光に照らされ、着飾った貴族たちの談笑の声で満ちていた。僕たちが足を踏み入れると、その場の全ての視線が、一斉に僕たちに注がれた。
「あれが、噂の『アークライト』か」
「獣人を連れているぞ。はしたない」
「だが、あの少年が、あの『最適化』の使い手……」
囁き声が、波のように広がっていく。
やがて、人垣が割れ、一人の壮年の男性が僕たちの前に姿を現した。この屋敷の主、辺境伯ヴァルガスその人だった。
「ようこそ、アルク君。君たちの活躍は、かねがね噂に聞いている。街を救ってくれたこと、領主として、心から感謝する」
「もったいないお言葉です、辺境伯様」
僕は、練習した通りに、なんとか挨拶を返す。
辺境伯は、僕のスキルに強い興味を持っているようだった。彼は僕をそばに置き、他の貴族たちに自慢げに紹介して回った。僕は、まるで珍しい見世物のようで、生きた心地がしなかった。
そんな中、僕はホールの一角に、見知った顔を見つけた。
勇者レオニールだ。
彼もまた、貴族の一員としてこの夜会に招待されていたのだ。彼は、僕を憎々しげに睨みつけながら、何人かの貴族とひそひそと話をしていた。
嫌な予感がする。彼が、何かを企んでいるのは間違いない。
宴もたけなわとなった頃。
レオニールが、辺境伯の前に進み出た。
「辺境伯様! この度のアルク様の活躍、誠に素晴らしいものでございます! ですが、一つ、懸念すべき噂が私の耳に入っております」
「ほう、懸念とは?」
「はい。彼のスキル『最適化』……それは、あまりにも強力すぎる。一説によれば、人の心を操り、物事を意のままに捻じ曲げることすら可能な、邪悪な力であると……」
レオニールは、朗々と、しかし悪意に満ちた声でそう言った。
ホールが、ざわめきに包まれる。
「奴隷商人が、あれほどあっさりと壊滅したのも、彼がスキルを使って商人たちを同士討ちさせたからだ、という話もございます。そのような危険な力を、野放しにしておいて、本当によろしいのでしょうか?」
なんという言い草だ。彼は、僕のスキルを「悪魔の力」だと断じ、貴族たちの恐怖と猜疑心を煽っているのだ。
≪ふざけるな!≫
≪言いがかりにもほどがある!≫
≪アルク、負けるな!≫
コメント欄が怒りに燃え上がるが、その声は、この場には届かない。
貴族たちは、レオニールの言葉に動揺し、僕を疑いの目で見始めた。
辺境伯も、難しい顔で僕を見つめている。
これが、レオニールの狙いだったのだ。直接的な暴力ではなく、言葉と権威を使って、僕を社会的に抹殺しようとしている。
「……では、レオニール君。君は、どうすれば良いと申すのかね?」
辺境伯が、静かに問うた。
待ってましたとばかりに、レオニールは口の端を吊り上げた。
「彼のスキルが、本当に国益となる安全なものか、それとも、国を揺るがしかねない危険な力なのか。それを、皆様の前で、はっきりと証明していただくべきかと存じます。……例えば、私との『決闘』で、ね」
決闘。
その言葉に、ホールは最大のどよめきに包まれた。
勇者と、街の英雄の、直接対決。
レオニールは、僕がこの申し出を断れないことを見越していた。断れば、スキルがやましいものであると認めたも同然。受ければ、戦闘経験豊富な彼が、僕を叩きのめすことができる。
どちらに転んでも、僕が破滅する、完璧な罠だった。
僕は、唇を噛みしめた。
どうする? どうすれば、この絶体絶命の状況を覆せる?
僕が答えを探して思考を巡らせていると、僕の隣にいたリナが、一歩前に進み出た。
「面白い。その決闘、受けて立とう」
その声は、僕のものではなかった。
エリアナさんが用意してくれた、上等な礼服に身を包む。普段の冒険者服とは違う、窮屈な服装に、どうにも落ち着かない。
隣を歩くリナも、優美なドレスを着こなしているが、その表情は硬い。獣人である彼女が、貴族の夜会に出席するなど、前代未聞のことだろう。周囲から好奇と差別の視線が突き刺さるのが、僕にも分かった。
「大丈夫ですか、二人とも。胸を張ってください。あなたたちは、この街の英雄として招待された、主役なんですから」
付き人として同行してくれているエリアナさんが、僕たちを励ましてくれる。
彼女もまた、美しいドレス姿だった。
屋敷のホールは、きらびやかなシャンデリアの光に照らされ、着飾った貴族たちの談笑の声で満ちていた。僕たちが足を踏み入れると、その場の全ての視線が、一斉に僕たちに注がれた。
「あれが、噂の『アークライト』か」
「獣人を連れているぞ。はしたない」
「だが、あの少年が、あの『最適化』の使い手……」
囁き声が、波のように広がっていく。
やがて、人垣が割れ、一人の壮年の男性が僕たちの前に姿を現した。この屋敷の主、辺境伯ヴァルガスその人だった。
「ようこそ、アルク君。君たちの活躍は、かねがね噂に聞いている。街を救ってくれたこと、領主として、心から感謝する」
「もったいないお言葉です、辺境伯様」
僕は、練習した通りに、なんとか挨拶を返す。
辺境伯は、僕のスキルに強い興味を持っているようだった。彼は僕をそばに置き、他の貴族たちに自慢げに紹介して回った。僕は、まるで珍しい見世物のようで、生きた心地がしなかった。
そんな中、僕はホールの一角に、見知った顔を見つけた。
勇者レオニールだ。
彼もまた、貴族の一員としてこの夜会に招待されていたのだ。彼は、僕を憎々しげに睨みつけながら、何人かの貴族とひそひそと話をしていた。
嫌な予感がする。彼が、何かを企んでいるのは間違いない。
宴もたけなわとなった頃。
レオニールが、辺境伯の前に進み出た。
「辺境伯様! この度のアルク様の活躍、誠に素晴らしいものでございます! ですが、一つ、懸念すべき噂が私の耳に入っております」
「ほう、懸念とは?」
「はい。彼のスキル『最適化』……それは、あまりにも強力すぎる。一説によれば、人の心を操り、物事を意のままに捻じ曲げることすら可能な、邪悪な力であると……」
レオニールは、朗々と、しかし悪意に満ちた声でそう言った。
ホールが、ざわめきに包まれる。
「奴隷商人が、あれほどあっさりと壊滅したのも、彼がスキルを使って商人たちを同士討ちさせたからだ、という話もございます。そのような危険な力を、野放しにしておいて、本当によろしいのでしょうか?」
なんという言い草だ。彼は、僕のスキルを「悪魔の力」だと断じ、貴族たちの恐怖と猜疑心を煽っているのだ。
≪ふざけるな!≫
≪言いがかりにもほどがある!≫
≪アルク、負けるな!≫
コメント欄が怒りに燃え上がるが、その声は、この場には届かない。
貴族たちは、レオニールの言葉に動揺し、僕を疑いの目で見始めた。
辺境伯も、難しい顔で僕を見つめている。
これが、レオニールの狙いだったのだ。直接的な暴力ではなく、言葉と権威を使って、僕を社会的に抹殺しようとしている。
「……では、レオニール君。君は、どうすれば良いと申すのかね?」
辺境伯が、静かに問うた。
待ってましたとばかりに、レオニールは口の端を吊り上げた。
「彼のスキルが、本当に国益となる安全なものか、それとも、国を揺るがしかねない危険な力なのか。それを、皆様の前で、はっきりと証明していただくべきかと存じます。……例えば、私との『決闘』で、ね」
決闘。
その言葉に、ホールは最大のどよめきに包まれた。
勇者と、街の英雄の、直接対決。
レオニールは、僕がこの申し出を断れないことを見越していた。断れば、スキルがやましいものであると認めたも同然。受ければ、戦闘経験豊富な彼が、僕を叩きのめすことができる。
どちらに転んでも、僕が破滅する、完璧な罠だった。
僕は、唇を噛みしめた。
どうする? どうすれば、この絶体絶命の状況を覆せる?
僕が答えを探して思考を巡らせていると、僕の隣にいたリナが、一歩前に進み出た。
「面白い。その決闘、受けて立とう」
その声は、僕のものではなかった。
66
あなたにおすすめの小説
最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~
華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』
たったこの一言から、すべてが始まった。
ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。
そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。
それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。
ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。
スキルとは祝福か、呪いか……
ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!!
主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。
ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。
ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。
しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。
一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。
途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。
その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。
そして、世界存亡の危機。
全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した……
※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。
キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~
サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。
ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。
木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。
そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。
もう一度言う。
手違いだったのだ。もしくは事故。
出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた!
そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて――
※本作は他サイトでも掲載しています
俺の家に異世界ファンタジーガチャが来た結果→現実世界で最強に ~極大に増えていくスキルの数が膨大になったので現実世界で無双します~
仮実谷 望
ファンタジー
ガチャを廻したいからそんな理由で謎の異世界ガチャを買った主人公はガチャを廻して自分を鍛えて、最強に至る。現実世界で最強になった主人公は難事件やトラブルを解決する。敵の襲来から世界を守るたった一人の最強が誕生した。そしてガチャの真の仕組みに気付く主人公はさらに仲間と共に最強へと至る物語。ダンジョンに挑戦して仲間たちと共に最強へと至る道。
ガチャを廻しまくり次第に世界最強の人物になっていた。
ガチャ好きすぎて書いてしまった。
レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)
荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」
俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」
ハーデス 「では……」
俺 「だが断る!」
ハーデス 「むっ、今何と?」
俺 「断ると言ったんだ」
ハーデス 「なぜだ?」
俺 「……俺のレベルだ」
ハーデス 「……は?」
俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」
ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」
俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」
ハーデス 「……正気……なのか?」
俺 「もちろん」
異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。
たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~
さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。
キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。
弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。
偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。
二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。
現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。
はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!
異世界に行けるようになったんだが自宅に令嬢を持ち帰ってしまった件
シュミ
ファンタジー
高二である天音 旬はある日、女神によって異世界と現実世界を行き来できるようになった。
旬が異世界から現実世界に帰る直前に転びそうな少女を助けた結果、旬の自宅にその少女を持ち帰ってしまった。その少女はリーシャ・ミリセントと名乗り、王子に婚約破棄されたと話し───!?
転生前のチュートリアルで異世界最強になりました。 準備し過ぎて第二の人生はイージーモードです!
小川悟
ファンタジー
いじめやパワハラなどの理不尽な人生から、現実逃避するように寝る間を惜しんでゲーム三昧に明け暮れた33歳の男がある日死んでしまう。
しかし異世界転生の候補に選ばれたが、チートはくれないと転生の案内女性に言われる。
チートの代わりに異世界転生の為の研修施設で3ヶ月の研修が受けられるという。
研修施設はスキルの取得が比較的簡単に取得できると言われるが、3ヶ月という短期間で何が出来るのか……。
ボーナススキルで鑑定とアイテムボックスを貰い、適性の設定を始めると時間がないと、研修施設に放り込まれてしまう。
新たな人生を生き残るため、3ヶ月必死に研修施設で訓練に明け暮れる。
しかし3ヶ月を過ぎても、1年が過ぎても、10年過ぎても転生されない。
もしかしてゲームやりすぎで死んだ為の無間地獄かもと不安になりながらも、必死に訓練に励んでいた。
実は案内女性の手違いで、転生手続きがされていないとは思いもしなかった。
結局、研修が15年過ぎた頃、不意に転生の案内が来る。
すでにエンシェントドラゴンを倒すほどのチート野郎になっていた男は、異世界を普通に楽しむことに全力を尽くす。
主人公は優柔不断で出て来るキャラは問題児が多いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる