【配信】無能だと追放された僕の『最適化』スキル、実は神級だった件〜落ちぶれた勇者パーティを尻目に、Sランク冒険者になって人生逆転します〜

桃我タロー

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第55話 始原の山と孤独な調整者

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 光の奔流の中、僕の意識は、一瞬だけ、遠のいていた。
 次に気づいた時、僕は、固い岩の上に、横たわっていた。
 腕の中には、モフが、心配そうに僕の顔を舐めている。
「……ここは……」
 僕が身を起こすと、目の前に、天を突くかのような、巨大な山が、そびえ立っていた。
 山肌は、黒い岩で覆われ、その山頂からは、不気味な紫色の瘴気が、絶えず噴き出している。
 ヴァリスの地図にあった、第三の封印が眠る、『始原の山』だ。
 僕は、無事に、ここまで転移できたのだ。
 だが。
「……リナさん? ギデオンさん?」
 僕が、呼びかけても、返事はない。
 周りには、僕と、モフ以外、誰もいなかった。
 あの時、ゲートに飛び込んだのは、僕だけだったのだ。
 リナとギデオンは、僕を逃がすために、あの遺跡に残った。
 アリアも、僕を送り出すために、その命を、使い果たした。
「……ああ」
 その事実を、理解した瞬間。
 僕の胸に、今まで感じたことのない、強烈な喪失感と、絶望が、押し寄せてきた。
 僕は、また、一人になってしまった。
 仲間たちが、命がけで、僕をここに送ってくれた。
 僕が、この世界の、最後の希望だから。
 その、あまりにも重い事実に、僕の心は、押し潰されそうだった。
 何が、最適化だ。何が、調整者だ。
 僕は、仲間一人、守ることすらできなかったじゃないか。
≪そんな……リナとギデオンは……?≫
≪嘘だろ……アルク、一人になっちまったのかよ……≫
≪アリア……。最高のキャラだったのに……≫
≪やめろ、こんな鬱展開……≫
 配信のコメント欄も、この、あまりにも衝撃的な展開に、悲痛な言葉で溢れかえっている。
 もう、やめてしまいたい。
 何もかも、投げ出して、逃げ出してしまいたい。
 僕が、うずくまって、膝を抱えていると、腕の中のモフが、「きゅぅん」と、悲しそうな声を上げた。
 そして、その温かい舌で、僕の頬を伝う、涙を、そっと舐めてくれた。
 モフ……。
 そうだ。僕は、まだ、完全な一人じゃない。
 この、小さな、温かい命が、そばにいてくれる。
 そして、僕の心の中には、仲間たちの想いが、確かに生きている。
『行け、アルク!』
『ここは、我々が食い止める!』
『私の想いを、無駄にしないでください』
 リナの声が、ギデオンの声が、アリアの声が、僕の脳裏に、鮮やかに蘇る。
 彼らは、僕に、未来を託してくれた。
 僕が、ここで諦めてしまえば、彼らの覚悟が、想いが、すべて、無駄になってしまう。
 僕は、涙を拭い、ゆっくりと立ち上がった。
 その瞳には、もはや、迷いはなかった。
 あるのは、仲間たちの想いを背負い、たった一人でも、宿命を全うするという、鋼の決意だけだった。
「……行こう、モフ」
 僕は、相棒に、力強く語りかけた。
「僕たちの、最後の戦いを、始めよう」
 僕は、一人と一匹で、世界の歪みの根源が待つ、始原の山の頂上へと、その一歩を、踏み出した。
 リナとギデオンの安否も、仮面の男との決着も、まだ、分からない。
 だが、今は、ただ、前へ進むしかない。
 すべての悲しみを、怒りを、希望を、力に変えて。
 孤独な調整者の、最後の試練が、今、始まろうとしていた。
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