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32.次元の狭間
27.陽光に魅せられて
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塔はかなり特殊な造りをしている。影ができていない。正確にはぼんやりとした明るい影があるだけだ。
もちろん中に入れば人の影ができる。
どこの部屋も同じように陽光に照らされる空間となっている。
どこか幻想的にも見える光景が広がっている。しかし、中には誰もいない。いや、誰もいないからこそ幻想的なのかもしれない。
「何もねぇな。しかも、誰もいねぇ」
コストイラが柱に触れながら上を見る。螺旋階段にも何もない。装飾すらも。
アシドがゆっくりと階段を上っていく。一つ一つの部屋を覗き見ているが、何の情報も得られない。
何もない。本当に何もないのだ。誰かがいなくなったとか、誰も帰ってきていない、とかでもない。最初からそこに何もないのだ。家具も装飾もない。最初から置かれておらず、かつて置いてあった痕跡もない。
「何つーか。ここって使われていたっぽくないよな。あまりにも何もなさ過ぎるっつーか、なにもされていないっつーか。気持ち悪ぃ」
「言い方は乱暴だけど、言いたいことは分かるわ。何もなさすぎる。頂上に行けば何か分かるのかしら」
人間には、陰と陽がいる。
陽の人間は、自身の明るさによって周りを照らすことから、太陽に例えられる。
対して、陰の人間は、周りへの影響など関係なく、その暗さから闇と形容されることが多い。
では、その中間にいる、陽の周りに群れる陰は陽光に照らされるという意味で、月と呼称するのが良いのではないだろうか。ちなみに、この月は本筋とは一切関係ない、筆者の考えだ。
話を戻そう。
少女ソユルは限りなく陰側の人間であった。
ソユルはオタク的な一面を持っており、その対象は炎の番人。もはや本人達よりも詳しかったかもしれない。
しかし、それとは正反対に、ファッションに疎く、流行は分からず、異性受けも同性受けもしない、合理的な服ばかりを着ていた。
人付き合いの仕方も分からず、よくしどろもどろしていた。
とはいえ、ソユルもそれでいいとは考えておらず、どうにか陽の人間になろうと努力を始めた。
まずは陽の人間の観察から始めた。陽の人間は、いったい何をして過ごしているのか、いったい何を食べているのか、観察し、記録していく。その中で、自分が実践できそうなものから試していく。
最初は笑顔で過ごすことから始めた。
自分が太陽に近づいていると感じるだけでも、元気が出た。
ちなみに周りはといえば、ぎこちない笑顔を浮かべ続けるソユルに、どこか根源的な恐怖を感じて離れていった。
そんなことに気付いていないソユルは太陽に感謝した。皆が見捨て、皆が見限った私を、太陽は励ましてくれた。太陽だけが私の味方でいてくれた。
だからこそ、太陽を信仰する。
太陽だけは裏切らない。
太陽だけは裏切れない。
血塗れで、片腕を失い、両目を取られ、血に溺れそうになっていた、あの時、少女は地に横たわった時も、天に助けを求めた。空へと手を伸ばし、太陽へと救いを求めた。
その直後、少女の命の灯火が消えた。
そして、少女の体の内側で、魔力が膨張し、暴走し、奔流した。少女を死に追いやった者達が、その死体を発見した。
「よし、死んでいるぜ」
「待て、きちんと死んでいるか確認しよう」
そして、五人組がソユルに近づいた瞬間、魔力が体外に流出した。少女を中心とし、半径3㎞が抉り取られた。五人組はすでに跡形もなく消し飛んだ。
ソユルは自分の目で自分の手を見た。怪我がすべてなくなっている。そして、空色のドレスを着ていた。
『あれ?』
ソユルは陽光の女神となっていた。
誰かが階段を上ってきている。
『だれ?』
ソユルがレイピアを抜いて、来訪者を眺める。
赤い侍がこちらを見ている。その手には血の付いた刀。こちらに来る前に誰かを殺してきたのだろう。ここには太陽のような温かさを求める者がやってくる。私の知らない間に、私の知らない者が、私の知らない数だけ集まってくる。その中の誰かが襲い掛かり、返り討ちにあったのだろう。
ソユルは目を見開いた。
温かい。何とも温かい雰囲気だ。それこそ春の日差しのように温かい。
『あ』
ダランとレイピアを持つ腕を下げ、ソユルは立ち上がった。
ピクリと赤い侍が反応するが、構えを取らない。
夜間、光へと誘われる蛾のように、ユラユラと幽鬼の如き足取りで侍に近づく。
ソユルが赤い侍の頬に触れようと手を伸ばす。壊人は眉根に皺を刻みながら、アッパーした。
『ク!?』
カキーンと歯がかち鳴り、歯が二本抜けた。口の中からパタタと血が出ている。
「え、何?」
流石に行動がいきなりすぎたようだ。陽光をその身に浴びながら、ソユルは目をパチクリさせて、背筋を伸ばした。
赤髪黄眼の男は不審に思いながらも、攻撃してこない。この男は陰の人間にも優しいのかもしれない。
もしかしたら、私の性癖に答えてくれるかもしれない。
ソユルはレイピアを振るった。
「は?」
急に敵対してきたとでも思っているのだろう。しかし、違う。私の夢だ、これは。どうしようもない程の破滅的願望だ。この侍はそれを叶えてくれるかもしれない。
赤い侍が刀を振るう。陽光女神が返り討ちにあう。立ち上がり、再びレイピアを振るう。赤い侍が刀を振るう。陽光女神が返り討ちにあう。立ち上がり、再びレイピアを振るう。赤い侍が刀を振るう。陽光女神が返り討ちにあう。立ち上がり、再びレイピアを振るう。赤い侍が刀を振るう。陽光女神が返り討ちにあう。立ち上がり、再びレイピアを振るう。赤い侍が刀を振るう。陽光女神が返り討ちにあう。立ち上がり、再びレイピアを振るう。赤い侍が刀を振るう。陽光女神が返り討ちにあう。立ち上がり、再びレイピアを振るう。赤い侍が刀を振るう。陽光女神が返り討ちにあう。立ち上がり、再びレイピアを振るう。赤い侍が刀を振るう。陽光女神が返り討ちにあう。立ち上がり、再びレイピアを振るう。赤い侍が刀を振るう。陽光女神が返り討ちにあう。立ち上がり、再びレイピアを振るう。赤い侍が刀を振るう。陽光女神が返り討ちにあう。立ち上がり、再びレイピアを振るう。
もう何度繰り返したか分からぬ攻防の中で、壊人は一つの結論に至った。
ヨシ、殺そう。
赤い侍はもう遠慮などなく、陽光女神の首を狙った。
その時、天が光った。
もちろん中に入れば人の影ができる。
どこの部屋も同じように陽光に照らされる空間となっている。
どこか幻想的にも見える光景が広がっている。しかし、中には誰もいない。いや、誰もいないからこそ幻想的なのかもしれない。
「何もねぇな。しかも、誰もいねぇ」
コストイラが柱に触れながら上を見る。螺旋階段にも何もない。装飾すらも。
アシドがゆっくりと階段を上っていく。一つ一つの部屋を覗き見ているが、何の情報も得られない。
何もない。本当に何もないのだ。誰かがいなくなったとか、誰も帰ってきていない、とかでもない。最初からそこに何もないのだ。家具も装飾もない。最初から置かれておらず、かつて置いてあった痕跡もない。
「何つーか。ここって使われていたっぽくないよな。あまりにも何もなさ過ぎるっつーか、なにもされていないっつーか。気持ち悪ぃ」
「言い方は乱暴だけど、言いたいことは分かるわ。何もなさすぎる。頂上に行けば何か分かるのかしら」
人間には、陰と陽がいる。
陽の人間は、自身の明るさによって周りを照らすことから、太陽に例えられる。
対して、陰の人間は、周りへの影響など関係なく、その暗さから闇と形容されることが多い。
では、その中間にいる、陽の周りに群れる陰は陽光に照らされるという意味で、月と呼称するのが良いのではないだろうか。ちなみに、この月は本筋とは一切関係ない、筆者の考えだ。
話を戻そう。
少女ソユルは限りなく陰側の人間であった。
ソユルはオタク的な一面を持っており、その対象は炎の番人。もはや本人達よりも詳しかったかもしれない。
しかし、それとは正反対に、ファッションに疎く、流行は分からず、異性受けも同性受けもしない、合理的な服ばかりを着ていた。
人付き合いの仕方も分からず、よくしどろもどろしていた。
とはいえ、ソユルもそれでいいとは考えておらず、どうにか陽の人間になろうと努力を始めた。
まずは陽の人間の観察から始めた。陽の人間は、いったい何をして過ごしているのか、いったい何を食べているのか、観察し、記録していく。その中で、自分が実践できそうなものから試していく。
最初は笑顔で過ごすことから始めた。
自分が太陽に近づいていると感じるだけでも、元気が出た。
ちなみに周りはといえば、ぎこちない笑顔を浮かべ続けるソユルに、どこか根源的な恐怖を感じて離れていった。
そんなことに気付いていないソユルは太陽に感謝した。皆が見捨て、皆が見限った私を、太陽は励ましてくれた。太陽だけが私の味方でいてくれた。
だからこそ、太陽を信仰する。
太陽だけは裏切らない。
太陽だけは裏切れない。
血塗れで、片腕を失い、両目を取られ、血に溺れそうになっていた、あの時、少女は地に横たわった時も、天に助けを求めた。空へと手を伸ばし、太陽へと救いを求めた。
その直後、少女の命の灯火が消えた。
そして、少女の体の内側で、魔力が膨張し、暴走し、奔流した。少女を死に追いやった者達が、その死体を発見した。
「よし、死んでいるぜ」
「待て、きちんと死んでいるか確認しよう」
そして、五人組がソユルに近づいた瞬間、魔力が体外に流出した。少女を中心とし、半径3㎞が抉り取られた。五人組はすでに跡形もなく消し飛んだ。
ソユルは自分の目で自分の手を見た。怪我がすべてなくなっている。そして、空色のドレスを着ていた。
『あれ?』
ソユルは陽光の女神となっていた。
誰かが階段を上ってきている。
『だれ?』
ソユルがレイピアを抜いて、来訪者を眺める。
赤い侍がこちらを見ている。その手には血の付いた刀。こちらに来る前に誰かを殺してきたのだろう。ここには太陽のような温かさを求める者がやってくる。私の知らない間に、私の知らない者が、私の知らない数だけ集まってくる。その中の誰かが襲い掛かり、返り討ちにあったのだろう。
ソユルは目を見開いた。
温かい。何とも温かい雰囲気だ。それこそ春の日差しのように温かい。
『あ』
ダランとレイピアを持つ腕を下げ、ソユルは立ち上がった。
ピクリと赤い侍が反応するが、構えを取らない。
夜間、光へと誘われる蛾のように、ユラユラと幽鬼の如き足取りで侍に近づく。
ソユルが赤い侍の頬に触れようと手を伸ばす。壊人は眉根に皺を刻みながら、アッパーした。
『ク!?』
カキーンと歯がかち鳴り、歯が二本抜けた。口の中からパタタと血が出ている。
「え、何?」
流石に行動がいきなりすぎたようだ。陽光をその身に浴びながら、ソユルは目をパチクリさせて、背筋を伸ばした。
赤髪黄眼の男は不審に思いながらも、攻撃してこない。この男は陰の人間にも優しいのかもしれない。
もしかしたら、私の性癖に答えてくれるかもしれない。
ソユルはレイピアを振るった。
「は?」
急に敵対してきたとでも思っているのだろう。しかし、違う。私の夢だ、これは。どうしようもない程の破滅的願望だ。この侍はそれを叶えてくれるかもしれない。
赤い侍が刀を振るう。陽光女神が返り討ちにあう。立ち上がり、再びレイピアを振るう。赤い侍が刀を振るう。陽光女神が返り討ちにあう。立ち上がり、再びレイピアを振るう。赤い侍が刀を振るう。陽光女神が返り討ちにあう。立ち上がり、再びレイピアを振るう。赤い侍が刀を振るう。陽光女神が返り討ちにあう。立ち上がり、再びレイピアを振るう。赤い侍が刀を振るう。陽光女神が返り討ちにあう。立ち上がり、再びレイピアを振るう。赤い侍が刀を振るう。陽光女神が返り討ちにあう。立ち上がり、再びレイピアを振るう。赤い侍が刀を振るう。陽光女神が返り討ちにあう。立ち上がり、再びレイピアを振るう。赤い侍が刀を振るう。陽光女神が返り討ちにあう。立ち上がり、再びレイピアを振るう。赤い侍が刀を振るう。陽光女神が返り討ちにあう。立ち上がり、再びレイピアを振るう。赤い侍が刀を振るう。陽光女神が返り討ちにあう。立ち上がり、再びレイピアを振るう。
もう何度繰り返したか分からぬ攻防の中で、壊人は一つの結論に至った。
ヨシ、殺そう。
赤い侍はもう遠慮などなく、陽光女神の首を狙った。
その時、天が光った。
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