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33.魔大陸
26.世代交代
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その小娘が魔力を練りながら、蹴りを繰り出してくる。
粗く単調と言わざるを得ない。しかし、成長が見られる。この戦いの中で学んだことだけではない。その前から積み重ねてきた何かと何かを組み合わせて進化しているのだ。
『甘い』
コプロは左腕を流水のように動かし、足を往なすと、アストロの懐に入り、右手に当て、魔術を放った髑髏がまた割れた。
距離が離れた途端に、コプロは魔力を練り始める。そして、最速で雷撃を放つ。
アストロと同じ技であるにもかかわらず、その威力やスピードは圧倒的に精錬されている。
アストロは髑髏を信用し、そのまま真正面から突進した。アストロは雷を突き抜け、右手を前に出した。
完全な不意による魔術を放つ。そんな計画をしていた。しかし、目の前にコプロはいない。
「ナッ!?」
『髑髏があるなら、オレ様だってそうする』
コプロは右手首を掴み、アストロを背負い投げをして地面に叩きつける。そして、首に足刀を叩き込んだ。
肺に空気が入り込んでくれない。
もう髑髏が残っていないため、距離が必要だ。
アストロは練っていた魔力を放出し、コプロを退かせる。
魔力を何度でも練る。コプロを睨みつけるように観察する。
コプロが一歩近づくと、アストロが一歩下がる。魔法使いだというのに近接で戦いすぎた。次は本物の不意打ちを見せてやる。
『その目、いいな。オレ様の好きな眼だ』
コプロが口角を上げると、アストロがぐっと力を入れる。
コプロが雷撃を放つ。
アストロはその雷撃に再び真正面から突っ込んだ。
「え!?」
「な!?」
『ハ!?』
仲間も敵も驚愕する。もう身代わりとなってくれる髑髏はもう一つも残っていない。だというのに、アストロは正面から食らいに行った。
「が、あ!?」
アストロは体を電撃に痺れさせながら、前に出た。これは完全な不意打ちとなる。コプロがその伸ばされた手を避けるように顔を後ろに送る。
しかし、その行為は魔法使いに何の意味も持たない。
アストロの手に魔力が集約されていく。
魔術師や魔法使いにとって、距離関係なく一直線上は射程範囲であることが大半だ。
アストロの手から火炎が放出される。
ところが、軌道が少しズレており、火炎はコプロの左半身を焼くに留まった。
抜かれるのが怖かった。アストロに才能などなかった。しかし、才覚はあった。根性もあった。
何度も何度も同じことを繰り返した。魔力酔いで倒れてしまいそうになるまで続け、時には失神してしまった。オレ様に視られた時、怒られると思ったのだろう。正直、オレ様は魔の道に関しては真摯でありたいと思っている。むしろ、魔術には誉めてやろうと思っていた。女心は分からない。秋の空は読めるのだが。
アストロの、その試行回数が千回に達しようとする時になって、アストロは気付くようになる。理論を理解するのだ。
アストロは一度でも理解できたら、そこからは早い。次の魔術は前までに理解していた理論を用いて、以前よりも理解を早めていく。
もう一度言う。アストロに才能などない。魔術の才能など一欠片もない。その代わり、忍耐、耐久に関する才能はある。
それがあるからこそできる修行法は、いつしか天才の理解する速さを超えて理解できるようになる。
そうなれば、いつか必ず。しかし。
『抜かされたくない』
これまで培ってきたもの、積み上げてきたものを。
『奪われたくない』
パリパリと焼けた肌を割りながら、コプロが言葉を紡ぐ。天才特有の歯抜けの言葉。誰が、誰の、何を、そのすべてが含まれていない。
とはいえ、アストロは理解した。私が、父の、何もかもを、だろう。
『だが、理解しているさ』
コプロは失活し、力を失った白く濁る眼でアストロを見た。そして、変質した手で足首を掴み、そこを軸に体を起こす。
唯一動く中指でアストロを襲おうとする。アストロは嬉しくなり、口角を上げた。
「あぁ、ありがとう、お父さん」
アストロはコプロの攻撃ごと焼いた。
「ム。コプロが死んだか。アイツは最後まで悪者でおったようじゃな。冥福くらいなら祈ってやろう。貴重じゃぞ、ヴェーの祈りは」
レイヴェニアは上を向き、少し遠くの空を見て、微笑んだ。
「おや、コプロ。そうか、二番手は君だったか」
「レンオニオール」
コプロが目を覚ますと、いかにも優男、という男が立っていた。周りに女がいたならば、その爽やかな笑顔に胸打たれて倒れてしまうだろう。残念ながらコプロはその笑みに気持ち悪さしか感じない。
「何が言いたい」
コプロがレンオニオールのことを睨む。レンオニオールは溜息を吐きながら、肩を竦めた。
「父に成れたのかい?」
コプロは激昂し、酒瓶を投げつけようとするが、手に酒瓶はない。
「チ」
コプロは大きく聞こえるように舌打ちをすると、魔力を放った。レンオニオールは爽やかな笑顔のまま、相反する魔力を放出し、相殺する。
「本気じゃなくて助かったよ」
「チッ。どうせオレ様は地獄行きだ。くそつまんねぇ旅になんだから、テメェも付き合え、優男」
「フム。不死魔族の宝飾魔術師と吸血鬼の絶対的神力と魔法使いも地獄に来そうだ。どうせ行くなら楽しい方がいいだろう。冥界の王に頼んで地獄へ行けるようにしてもらおう」
「……ありがとよ」
「おっと? こういう時に礼を言わぬのがコプロだと思っていたが、ハッハッ、成長したのか」
「うるせぇ!!」
粗く単調と言わざるを得ない。しかし、成長が見られる。この戦いの中で学んだことだけではない。その前から積み重ねてきた何かと何かを組み合わせて進化しているのだ。
『甘い』
コプロは左腕を流水のように動かし、足を往なすと、アストロの懐に入り、右手に当て、魔術を放った髑髏がまた割れた。
距離が離れた途端に、コプロは魔力を練り始める。そして、最速で雷撃を放つ。
アストロと同じ技であるにもかかわらず、その威力やスピードは圧倒的に精錬されている。
アストロは髑髏を信用し、そのまま真正面から突進した。アストロは雷を突き抜け、右手を前に出した。
完全な不意による魔術を放つ。そんな計画をしていた。しかし、目の前にコプロはいない。
「ナッ!?」
『髑髏があるなら、オレ様だってそうする』
コプロは右手首を掴み、アストロを背負い投げをして地面に叩きつける。そして、首に足刀を叩き込んだ。
肺に空気が入り込んでくれない。
もう髑髏が残っていないため、距離が必要だ。
アストロは練っていた魔力を放出し、コプロを退かせる。
魔力を何度でも練る。コプロを睨みつけるように観察する。
コプロが一歩近づくと、アストロが一歩下がる。魔法使いだというのに近接で戦いすぎた。次は本物の不意打ちを見せてやる。
『その目、いいな。オレ様の好きな眼だ』
コプロが口角を上げると、アストロがぐっと力を入れる。
コプロが雷撃を放つ。
アストロはその雷撃に再び真正面から突っ込んだ。
「え!?」
「な!?」
『ハ!?』
仲間も敵も驚愕する。もう身代わりとなってくれる髑髏はもう一つも残っていない。だというのに、アストロは正面から食らいに行った。
「が、あ!?」
アストロは体を電撃に痺れさせながら、前に出た。これは完全な不意打ちとなる。コプロがその伸ばされた手を避けるように顔を後ろに送る。
しかし、その行為は魔法使いに何の意味も持たない。
アストロの手に魔力が集約されていく。
魔術師や魔法使いにとって、距離関係なく一直線上は射程範囲であることが大半だ。
アストロの手から火炎が放出される。
ところが、軌道が少しズレており、火炎はコプロの左半身を焼くに留まった。
抜かれるのが怖かった。アストロに才能などなかった。しかし、才覚はあった。根性もあった。
何度も何度も同じことを繰り返した。魔力酔いで倒れてしまいそうになるまで続け、時には失神してしまった。オレ様に視られた時、怒られると思ったのだろう。正直、オレ様は魔の道に関しては真摯でありたいと思っている。むしろ、魔術には誉めてやろうと思っていた。女心は分からない。秋の空は読めるのだが。
アストロの、その試行回数が千回に達しようとする時になって、アストロは気付くようになる。理論を理解するのだ。
アストロは一度でも理解できたら、そこからは早い。次の魔術は前までに理解していた理論を用いて、以前よりも理解を早めていく。
もう一度言う。アストロに才能などない。魔術の才能など一欠片もない。その代わり、忍耐、耐久に関する才能はある。
それがあるからこそできる修行法は、いつしか天才の理解する速さを超えて理解できるようになる。
そうなれば、いつか必ず。しかし。
『抜かされたくない』
これまで培ってきたもの、積み上げてきたものを。
『奪われたくない』
パリパリと焼けた肌を割りながら、コプロが言葉を紡ぐ。天才特有の歯抜けの言葉。誰が、誰の、何を、そのすべてが含まれていない。
とはいえ、アストロは理解した。私が、父の、何もかもを、だろう。
『だが、理解しているさ』
コプロは失活し、力を失った白く濁る眼でアストロを見た。そして、変質した手で足首を掴み、そこを軸に体を起こす。
唯一動く中指でアストロを襲おうとする。アストロは嬉しくなり、口角を上げた。
「あぁ、ありがとう、お父さん」
アストロはコプロの攻撃ごと焼いた。
「ム。コプロが死んだか。アイツは最後まで悪者でおったようじゃな。冥福くらいなら祈ってやろう。貴重じゃぞ、ヴェーの祈りは」
レイヴェニアは上を向き、少し遠くの空を見て、微笑んだ。
「おや、コプロ。そうか、二番手は君だったか」
「レンオニオール」
コプロが目を覚ますと、いかにも優男、という男が立っていた。周りに女がいたならば、その爽やかな笑顔に胸打たれて倒れてしまうだろう。残念ながらコプロはその笑みに気持ち悪さしか感じない。
「何が言いたい」
コプロがレンオニオールのことを睨む。レンオニオールは溜息を吐きながら、肩を竦めた。
「父に成れたのかい?」
コプロは激昂し、酒瓶を投げつけようとするが、手に酒瓶はない。
「チ」
コプロは大きく聞こえるように舌打ちをすると、魔力を放った。レンオニオールは爽やかな笑顔のまま、相反する魔力を放出し、相殺する。
「本気じゃなくて助かったよ」
「チッ。どうせオレ様は地獄行きだ。くそつまんねぇ旅になんだから、テメェも付き合え、優男」
「フム。不死魔族の宝飾魔術師と吸血鬼の絶対的神力と魔法使いも地獄に来そうだ。どうせ行くなら楽しい方がいいだろう。冥界の王に頼んで地獄へ行けるようにしてもらおう」
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