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33.魔大陸
49.脱俗超凡
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もし、この世界で一番強い者は誰か?
その質問をもしされたのなら、アストロは悩んでしまうだろう。
自分よりも強く、まともな敗北を目撃したことがなければ、優劣がつけられない。判断材料がないのだ。
ヲルクィトゥやシキ、コストイラ。他にも昔の人や集団で戦った強敵なんかもそうだ。
その中でも、アストロの思い出補正もあり、レイヴェニアは最強の一角に思えてしまう。
実際、レイヴェニアは吸血鬼が最悪な種族であるという迫害の原因を作る事件を起こした。敵も味方も関係なく血の海に沈めたのだ。
伝聞だが、レイヴェニアは死体の山での上に立って笑っていたらしい。その光景を伝えられたことで、吸血鬼は恐ろしい種族であると広められた。
実際は吸血鬼という種族ではなく、レイヴェニア個人の狂気的事件なのだが、知らない人にはどちらも同じなのだ。
そのレイヴェニアが目の前にいる。私の師でもあるレイヴェニアが。
しかし、こちらを視てすらいない。双眼鏡とかいう超高価な道具(レイヴェニアの自作)でずっと仲間の少年(?少女?)のことを見ている。
「……えっと、レイヴェニア?」
「待て。待て待て待て、チョット待て。今、良い所なのじゃ。童が固まっておる。お前んところの弓術士が雑魚過ぎて困っておるわ。あの困り顔、グヘヘ、たまらん。グヘヘ」
アストロは変態然としているレイヴェニアに、溜息を吐き、片手を額に当てて首を振った。アストロはレイヴェニアに半眼を送りながら、師の視線の先を見る。
「誰なの? あの子」
「あの童の名はサーシャ。どうじゃ、可愛いじゃろう?」
ずっと家にいなかったり、教育が不定期だったりしていたりしていた師匠は、どうやらあの少年にお熱だったようだ。
「まぁ、姿は……」
「何じゃ! あの姿だけでなく、あの仕草も可愛らしいじゃろうが!」
「そんな怒んないでよ。というか、そんなに観察していないんだから、分かんないわよ」
「なら、よーく見ておけ! 今、この時は絶対攻撃せん。サーシャに誓おう!」
「はぁ、まぁ、いいわ」
アストロは再び溜息を吐き、頭を振り、サーシャのことを眺めた。
レイヴェニアは強い。それは変えられない事実だ。時代が時代ならば、魔王と呼ばれていただろう。
レイヴェニアの生まれた年はもう500年以上も前だ。魔力がこの世界にやってくるよりも前の事である。
魔王という言葉が生まれる前、そういった存在は選神民と呼ばれていた。
昔は魔術師という者がいなかった。当たり前だろう。魔力がないのだ。
そのため、魔術のようなものを扱う者が珍しかった。古来の魔術師は選ばれた存在であるとされ、選民と呼ばれていた。
さらにその中で特に魔術のようなものを連発したり、種類が多かったりする者を選神民と呼ばれ、崇められていた。
もし、その概念を今に持ち込んだのなら、アストロは選民、レイヴェニアが選神民と言われることだろう。
圧倒的な実力差がある。アストロがまともに戦ったのならば、誇りがズタボロになるだろう。
アストロもある程度成長しているつもりだが、まだ足元にも及ばないだろう。レベルでいえば、アストロは850、レイヴェニアは1300くらいだ。
「そういえばアストロよ」
「何?」
双眼鏡を覗きながら、アストロに言葉をかける。
「左腕はどうした」
「食われた」
「そうか、そりゃ残念じゃな」
声に残念さがない。サーシャに集中しているからだと思いたい。
「アストロ。お前等は魔力をなくそうとしておるじゃろ」
「まぁ、そうなるわね」
「魔力のなくなった世では、魔術がなくなる。分かるな?」
「まぁ、当たり前よね」
「では、その世に憚るものは何か」
アストロはその問いに、脳の容量のいくらかを裂く。答えはすでに出ている。
「神力」
「おぉ、よく学んでおるの。正解じゃ」
「それで? 何が言いたいの?」
「見るか? 神力」
アストロが目を見開き、レイヴェニアを見る。
「いいの?」
「まぁ、戦いの中で、じゃが」
「構わないわ」
「なら、さっさと終わらせて、童を助くかの」
レイヴェニアは初めてアストロのことを見た。
その質問をもしされたのなら、アストロは悩んでしまうだろう。
自分よりも強く、まともな敗北を目撃したことがなければ、優劣がつけられない。判断材料がないのだ。
ヲルクィトゥやシキ、コストイラ。他にも昔の人や集団で戦った強敵なんかもそうだ。
その中でも、アストロの思い出補正もあり、レイヴェニアは最強の一角に思えてしまう。
実際、レイヴェニアは吸血鬼が最悪な種族であるという迫害の原因を作る事件を起こした。敵も味方も関係なく血の海に沈めたのだ。
伝聞だが、レイヴェニアは死体の山での上に立って笑っていたらしい。その光景を伝えられたことで、吸血鬼は恐ろしい種族であると広められた。
実際は吸血鬼という種族ではなく、レイヴェニア個人の狂気的事件なのだが、知らない人にはどちらも同じなのだ。
そのレイヴェニアが目の前にいる。私の師でもあるレイヴェニアが。
しかし、こちらを視てすらいない。双眼鏡とかいう超高価な道具(レイヴェニアの自作)でずっと仲間の少年(?少女?)のことを見ている。
「……えっと、レイヴェニア?」
「待て。待て待て待て、チョット待て。今、良い所なのじゃ。童が固まっておる。お前んところの弓術士が雑魚過ぎて困っておるわ。あの困り顔、グヘヘ、たまらん。グヘヘ」
アストロは変態然としているレイヴェニアに、溜息を吐き、片手を額に当てて首を振った。アストロはレイヴェニアに半眼を送りながら、師の視線の先を見る。
「誰なの? あの子」
「あの童の名はサーシャ。どうじゃ、可愛いじゃろう?」
ずっと家にいなかったり、教育が不定期だったりしていたりしていた師匠は、どうやらあの少年にお熱だったようだ。
「まぁ、姿は……」
「何じゃ! あの姿だけでなく、あの仕草も可愛らしいじゃろうが!」
「そんな怒んないでよ。というか、そんなに観察していないんだから、分かんないわよ」
「なら、よーく見ておけ! 今、この時は絶対攻撃せん。サーシャに誓おう!」
「はぁ、まぁ、いいわ」
アストロは再び溜息を吐き、頭を振り、サーシャのことを眺めた。
レイヴェニアは強い。それは変えられない事実だ。時代が時代ならば、魔王と呼ばれていただろう。
レイヴェニアの生まれた年はもう500年以上も前だ。魔力がこの世界にやってくるよりも前の事である。
魔王という言葉が生まれる前、そういった存在は選神民と呼ばれていた。
昔は魔術師という者がいなかった。当たり前だろう。魔力がないのだ。
そのため、魔術のようなものを扱う者が珍しかった。古来の魔術師は選ばれた存在であるとされ、選民と呼ばれていた。
さらにその中で特に魔術のようなものを連発したり、種類が多かったりする者を選神民と呼ばれ、崇められていた。
もし、その概念を今に持ち込んだのなら、アストロは選民、レイヴェニアが選神民と言われることだろう。
圧倒的な実力差がある。アストロがまともに戦ったのならば、誇りがズタボロになるだろう。
アストロもある程度成長しているつもりだが、まだ足元にも及ばないだろう。レベルでいえば、アストロは850、レイヴェニアは1300くらいだ。
「そういえばアストロよ」
「何?」
双眼鏡を覗きながら、アストロに言葉をかける。
「左腕はどうした」
「食われた」
「そうか、そりゃ残念じゃな」
声に残念さがない。サーシャに集中しているからだと思いたい。
「アストロ。お前等は魔力をなくそうとしておるじゃろ」
「まぁ、そうなるわね」
「魔力のなくなった世では、魔術がなくなる。分かるな?」
「まぁ、当たり前よね」
「では、その世に憚るものは何か」
アストロはその問いに、脳の容量のいくらかを裂く。答えはすでに出ている。
「神力」
「おぉ、よく学んでおるの。正解じゃ」
「それで? 何が言いたいの?」
「見るか? 神力」
アストロが目を見開き、レイヴェニアを見る。
「いいの?」
「まぁ、戦いの中で、じゃが」
「構わないわ」
「なら、さっさと終わらせて、童を助くかの」
レイヴェニアは初めてアストロのことを見た。
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