メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば

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4.ナカウへの道

9.知性のある妖精

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 森を迂回することを選択し、砂の中を歩いていた。しばらく経つと森の入り口に辿り着く。アレン達は互いに目配せすると、森の横を通り始めた。



「待って」



 シキが全員を止める。



「ん」



 シキが砂に向かって指をさす。アレンは彼女の指の先を見て、眼を凝らす。



「何か埋まってますね」



 アレンがさらに目を細めていくと、爆弾が埋まっていた。白瓏石が出回るのも問題なのかもしれない。



「昨日のうちに埋めたのか?」



「まめなことで」



「回り道の回り道をしなきゃいけないのね」



 そして、視線が向くのは自然と森の方で。















「完っ全に誘い込まれたな」



 いつも以上に警戒しながらコストイラが呟く。暫く奥まで進み、最大の警戒をしつつ休憩し、前へ歩き出す。



『待て、貴様ら』



 上から少女のような高い声が掛けられる。ライトグリーンの髪。同色の眼。緑色の服。半透明を緑色で縁取りした翅。オレンジに泡立つ右腕。声を掛けてきたのは妖精だ。



 妖精とは精霊の一種だ。魔素に侵され魔物となってしまった精霊のことだ。



 見た目が緑統一なので然属性なのではないかと思ったが、魔力を込めた眼で見てみると火属性と出た。人も妖精も見た目には寄らないらしい。



『何をしに来た』



「この森を抜けてナカウに行くために」



『ふむ』



 妖精は顎を撫でて考える。



『まぁ森を抜けるだけなら行くと良い』



 許可を得たアレン達は妖精の前を通り過ぎる。















 いつからだろう。私の腕が変わってしまったのは。



 この森に住み続けてから、腕に違和感を覚え始めた。オレンジの粒のようなものができ始めた。日を追うごとに粒は多く、また大きくなっていった。多くなるたび、大きくなるたび、意識が刈られ奪われていった。意識を失う時間が増えた。



 まだ、大丈夫。まだ、意識はある。まだ、もう、少し。















 ドゴン!



 レイドがアレン達の横を通り前方に倒れこんだ。その背中からは煙が出ていた。



『あ、ア、ア、あ、あ、ア』



 妖精の眼がオレンジに輝き始める。



『逃、に、げ』



 妖精の声が昏く変わる。



『アアアアアアアアア――――!!!』



 妖精の意識が潰える。



 妖精の体の周りを炎が巻き付き、纏われていく。そして炎を発射する。コストイラは刀で炎を斬り、纏わせていく。コストイラは樹を蹴り、宙へと舞い刀を横薙ぐ。刃は押し当てただけでは斬れない。妖精は刃が頬に当たるが首を同速で回し、斬られないようにする。体も流れるように回し、裏拳気味にコストイラを殴り飛ばす。



 目の前に矢が現れるが、妖精は炎で落とす。



 妖精の右腕がボコボコと音を立てて泡立つ。



「意識がなさそうだぞ」



「倒すしかないのか」



 コストイラ達が倒すのに躊躇していると、アストロは炎の魔術を何の躊躇せずに当てていく。



「というか、森の中なのに火を扱うなんて何してるんですかね」



「そう言えば……」



 アレンが気付いた時、アシドも気付き汗を流した。槍を突き上げるが、躱され掴み取られ、投げ飛ばされる。



 反対側からコストイラが刀を振り下ろす。



 妖精は炎を間に出し、刀に触れさせ爆発させ、威力を殺し攻撃を相殺する。コストイラは落下したかと思いきや、技の力を借り、妖精の元へと上る。



『ナッ!?』



 予想外の出来事に反応が遅れ、頬を掠めていく。その隙にシキはナイフでもってオレンジに泡立つ右腕を斬っていく。その腕の傷口から淡くオレンジと黒の混じった煙が噴き出る。



『アああアアアアあアああアああああああああ―――!!』



 あまりの痛みに絶叫するが、その声音は二重になって聞こえる。妖精はライトグリーンとオレンジの混じった眼を見開き、左手で傷口を鷲摑みにする。



『ヌグワぁ…………』



 小さく口をもごもごさせる。



『燃えろ、燃えろ、燃えろ、燃えろ!!』



 その声は怒りが込められていた。自ら傷口焼いていく。想像を絶する痛みに絶叫する。それはどこか断末魔のようで。



『見苦しいところを見せた』



 妖精は頭を下げた。この謝罪に対してどう返せばいいのか分からない。確かに見苦しいところはあったかもしれない。しかし、右腕を斬ったのはこちらだ。今は火で焼いて無理矢理固めた状態となっている右腕はあまり直視していたいものではない。あまりにも痛々しい。



『この先は気を付けるがいい。何やらきな臭いモノがいるからな』



「そちらもどうかお元気で」



 上手く笑えていただろうか。
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