メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば

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17.彼岸

13.三途の大渦

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「抜けたァァあああああっ!?」

 コストイラが鬱陶しそうに伸びた木々を抜けて、声を出したかと思えば、その場に崩れ落ちた。アストロがその背中を遠慮なしにゲシゲシと踏みつける。
 コストイラは少し項垂れながら、横に逸れる。アレン達にも先の光景が見えた。そして、肩を落とした。
 そこには幅が広い川があった。いや、幅が広すぎる河があった。今、後ろにある長い樹を切り倒しても、向こう岸にまで届かないだろう。というか届かなかった。

「どうやって向こう岸にまで行くんだ?」

 コストイラがこれからジャンプでもするのか、屈伸している。辞めて。多分川に落ちるから。

「え? 跳ぶんですか?」

 助走距離を稼ぐために後ろに下がるコストイラに、アレンがとうとう口に出す。

「いける気しかしねェ」

 どこからそんな自信が来るのか分からないが、止めていただきたい。

「よっしゃ」

 コストイラが全力で助走をつけ、岸ギリギリの位置で踏み切る。

「無理だな」
「そうね。アシドとかシキならまだしも、コストイラはちょっと」

 ちょっと何なのか気になるが、想像はできる。幼馴染の2人がコストイラを見限った。空中でもがくようにて足をバタつかせているが、あと2m近く足らなそうだ。

 しかし、樹を倒しても届かないところまで跳んでいる時点で人外じみているだろう。後衛組では絶対できないだろう。
 25m地点で下から何かが出てきた。エルダーサーペントだ。牙を剥く海蛇に、コストイラが空中で刀を抜き対処する。顎から頬までの筋肉が切り裂かれ、口が閉じなくなる。
 刀を振ったことで勢いが変わり、余計に向こう岸に届かなくなった。コストイラも諦めたのか、腕力だけで刀を振り、エルダーサーペントの首を斬り落とした。コストイラはそのままエルダーサーペントとともに川に落ちた。エルダーサーペントの血が川に流れ、少しだけ赤く染まる。

 コストイラがプハァと川から顔を出す。川には流れがあるため、それに逆らうように必死に泳いでいる。本気で泳いでいるわけではないが、それなりに流れが速いようだ。泳いでいるのは不可能だろう。
 川上の方にある木は岩に引っかかっているので、あれを使うのがいいのだろうが、あと10m程足りない。川下8mほど流されてコストイラが向こう岸に出た。

「もう一人だけでも誰か行く?」
「オレが行こうかな?」

 アシドが上半身のストレッチをしている。行くにしても使うのは下半身なのに、なぜか上半身のストレッチをしている。

「オレがあっちに行って、コストイラと2人であの木の近くに樹を倒すから、それを伝ってあっちに行けるようにするわ」
「お願いね」

 アシドはアストロのお願いを聞き届けると、地面を爆発させる勢いで踏み切り、走り出した。そして、岸と河の境に来て―――。

 アシドは跳ばなかった。

 アシドは河の上を走った。

 それが、河の主を起こした。

 アシドの横で水が盛り上がった。その波に押され、アシドがこけそうになる。盛り上がった水の中から魔物の口が現れる。
 アシドの足がもつれて水の中に沈む。そのおかげで魔物の口の下を通ることができた。川岸にいた6人には魔物の体が見えた。それは20m級のクジラだった。腹が少し赤くなっている。

 ブリーチングのように水面に出たクジラが、水中に戻っていく。大質量のものが水中に入ったことで大きな波が生まれる。
 アシドは真下にいたわけではないので、波にさらわれコストイラのいる岸に打ち上げられる。アシドの口から水がピューと出る。樹が少し動いたが、すぐに河の流れに押され、岩に引っかかる。あの巨体なら体の向きを180度回転させるのは時間がかかるだろう。

「今の内にあの木を渡りましょう」

 アレンが言うが早いか、皆が走り始めた。いや、エンドローゼだけはレイドに抱えられていた。

 シキが先陣を切って樹木の橋に足を着けた時、クジラの魔物がブリーチングをした。20m級のクジラがブリーチングできるということは、それだけの深さがあるということだろう。
 ほぼ体を直立に立たせ、反転して水中に戻る。大きな波が発生して、木の上にまで到達する。レイドが木に魔力を流し、木の蔓を出現させる。波が編まれていく蔓にぶつかり、隙間から水を浴びる。足を滑らしそうになりながらも木の上を歩く。走ったら落ちてしまいそうなので、走れるがもどかしい。

 その時、蔓の張られていない川上から巌石が流れてきた。
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