メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば

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17.彼岸

14.重罪人が逝く深強瀬

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 川上から巌石が流れてくるなど完全に予想外だ。
 木に乗る時に下ろされていたエンドローゼが、必死に木にしがみつく。レイドやアストロが腰を落とし、何とか耐えようとする。アレンはすでにバランスを崩しており、腕をバタバタと動かして耐えようとしている。

 ドゴンと巌石がぶつかった。衝撃で体が浮く。脆くなっていたのか、巌石が砕けた。

 アレンは河に落っこちた。川の中に入った時、見たくなかった光景を見た。川底に地面が見えないほどに蛇が埋め尽くされていた。蛇はこっちを睨みつけているが、襲ってこない。この位置は縄張りではないらしい。
 川上からはまた巌石が流れてきた。このままでは潰されかねないので何とか木の上に乗ろうとする。バシャンと数m級の波ができる。コストイラ達が木を倒したようだ。シキはアストロの腕を取り、新しい木に乗り移させる。
 続いてシキがエンドローゼの腕を取った時、クジラの魔物が辿り着いてしまった。レイドが2人を纏めて抱きかかえ、コストイラ達が切り倒した木に向けて投げ飛ばした。

「ぴぇええええええ!?」

 空中散歩することになったエンドローゼが悲鳴を漏らす。シキは上手く空中で体勢を変え、木の上に着地する。バランスが崩れる前に即座に跳躍して岸までエンドローゼを投げた。エンドローゼは空中でバタつかせていた手が偶々アシドの側頭部に当たった。

「あ、あ、あ、ごめんなさい」
「構わんよ」

 シキが踏み切ったことで木が少し動いたので、アストロがバランスを崩して落ちそうになる。着地したシキが手を取り、落ちないようにした。

 レイドはネイビーブルーの突進を受け、河の中に飛び込む。レイドはアレンを抱え、バタ足をする。ネイビーブルーがバキリと木を噛み砕く。巌石がネイビーブルーの鼻頭にぶつかる。
 ネイビーブルーは鼻頭を少し曲げながら、河の中に沈んでいく。その衝撃で起きた波に攫われ、レイドとアレンが川上の方に流されそうになるが、川上からの流れもあり、その場に留まる。
 シキが自分から水の中に入っていく。アストロはすでに岸に辿り着いている。シキがナイフを抜き、魔力を込める。シキは水中だというのに上手く手足を動かし、その場に留まる。レイドもアレンも羨ましそうに見ている。

 シキはそんな視線に目もくれず、身を捻ってナイフを振るう。水中でできた斬撃は見事に形を作り、ネイビーブルーの鰭に当たる。ザックリと大きな切れ込みが入り、片方の鰭が機能しなくなる。
 水中でのバランスが取れなくなったクジラは川底に沈んでいく。そこでシキも大量の蛇を見た。シキは一切の表情を変えず、それでもいつもより早く浮上していった。

「おぉ、上がってきた」

 コストイラがいっそ間抜けた声で言った。死にかけたアレンは少しイラッとしたが、仲間の不和に繋がりそうなので、止めておく。

「ほれ、今のうちに上がれ。水中じゃ戦いづらいだろ」

 コストイラが手を差し出してくる。シキは助走なく、コストイラを超えるほどの高さまで飛び上がった。レイドは己の長身を活かし、岸に手をかけて、腕力だけで上がっていった。

 アレンはどうしようかと考えたが、そこで巌石が流れてきた。川の水を分けるように流れてくる巌石が、アレンの後ろを通り過ぎた。押し上げられた水に乗っかり、岸に上がった。
 コストイラは手を差し出した状態で固まっている。

「あ、えっと」
「放っておきましょ」

 アレンが何か言おうとすると、アストロが肩を叩いて冷酷なことを言ってきた。

「惨め!」

 コストイラが差し出していた手で額を叩き、大いに笑った。






 パチリと松明の火が跳ねた。

 水色の触手を動かし、何かを探り始める影があった。8枚の翅を持つ蝶が尾をくねらせて上を見た。美しい空の中に少し黒い雲があった。

『どうかされましたか?』

 足のない蝶が聞いてくる。8枚翅の蝶が複眼の中のいくつかの目を向けた。

『空が荒れています。ほら』
『本当だ』

 8枚翅の蝶に促されるままに空へと視線を向けると、美しい空の中に黒い雲を見た。足のない蝶が不安げな顔をする。

『異分子が、この彼岸に来たのですね』

 パチリと松明の火が跳ねた。
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