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24.深層の備え
6.守護精霊
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光の柱が近づいてきた。山の頂上から伸びる光の柱は真っ直ぐこちらを誘っている。
飛び込めば終わる。
その時、シキが何かに殴られた。シキの体重は45㎏前後だ。軽くて簡単に飛び込んでしまう。
何かを確認すると、端正な顔立ちをした、土色の少女がいた。シキと似た銀の髪、エメラルド色の小手に、黄色のワンピース、少女の周りを飛び交う岩の数々。少女はどう見ても武闘派だ。
トントンと跳んで、タイミングを計っている。少女の動きに合わせて岩も動いている。
少女は拳を動かすと、岩も拳を繰り出した。レイドが楯で止める。
最初、パワーが拮抗していると思ったが、レイドが押していた。楯で押して、バランスを崩させると、楯で殴りつけ、岩の拳を砕いた。
武器破壊成功かと思ったが、少女が開いた右手で再び拳を作ると、岩が集まって元の状態に戻った。
コストイラが懐に入り込もうと走るが、間に岩が挟まり、拒んでくる。ただの岩ではなく、念が籠っているのか、コストイラの無造作な一振りでは断てなかった。
アシドが跳んで上から狙うが、少女には3本目の腕が出現して、アシドの体をキャッチする。圧迫感に口から血を出す。ちなみに、この血は今朝インフェルノを食べた際に口内を噛んでできた傷からのものである。
投げられたアシドはシキ同様、山の頂上から消える。
アストロが魔力で狙い撃ちする。しかし、これも岩に阻まれる。
硬い。それが素直な感想であり、それだけが共通の感想だった。直接戦闘に参加していないエンドローゼとアレンには強いという印象が芽生えたが、他の者達はそんなことを考えなかった。
押せば通るな。
勇者一行は自分達の行為の代償など考えずに、目の前の相手に武器を振るった。
「な、何だ、これは?」
旧ゴール領、現リリアス領となっているところで、リリアス家次男が頭を抱えていた。具体的な政策が敷かれていたわけでなければ、問題に対応していたわけでもない。ゴール家当主は全く領地の運営をしていなかった。
「エヴァンズ・ゴールさんは何をしていたんだ」
「もう貴族ではないのだから、様の字は要らないぞ」
当主はペンを走らせながら、次男の発言を訂正する。
旧ゴール領は政策を打ち出していなかった。それどころか、エヴァンズは何もしていなかった。
メイド達に領民の話を聞きに行かせたところ、エヴァンズは不評だったが、レイドやナイトの評判だった。民のためにかなり奔走したらしい。
領民の流出は避けられなかったが、抑えることには成功していた。それと考えると、レイドはかなり凄腕の男だったのだろう。
貴族達の間で野蛮などと呼ばれていたが、この人物のどこが野蛮なのだ。次男は心の中で敬意を表した。
「では、まずやるべきことは、農地開発だな」
次男は現在視察に出掛けている兄のことを考えながら、溜息を吐いた。
ナイトとフィリスは背中に冷たいものが走るのを感じた。これはたぶん冷や汗だろう。
同じ部屋の中にはかなり上の位に属するフォンがいた。なぜこんなことになっているのか、クレア兄弟には分かっていなかった。
子爵の位で暮らしていたクレア家にとって、王という存在は大きすぎる。言動一つで首が飛びかねない。
ビクビクしながら仕事をしていると、フォンがつまらなそうに口を開いた。
『レイドって、恋愛面ではどんな奴なんだい?』
「どんな奴』
「自他共に認める、シスコンですね。私達は兄から恋愛の話を聞いたことがありません」
『好きな人ができたら、奴はどうする?』
「どうする』
「そうですね。難しいですが、今度は失わないように全力を尽くすかもしれません。監禁や束縛の可能性も考えられます」
『ぐ、クグヌヌ……』
王が何を考えているのか分からず、クレア家兄弟の胃は限界を迎えていた。
飛び込めば終わる。
その時、シキが何かに殴られた。シキの体重は45㎏前後だ。軽くて簡単に飛び込んでしまう。
何かを確認すると、端正な顔立ちをした、土色の少女がいた。シキと似た銀の髪、エメラルド色の小手に、黄色のワンピース、少女の周りを飛び交う岩の数々。少女はどう見ても武闘派だ。
トントンと跳んで、タイミングを計っている。少女の動きに合わせて岩も動いている。
少女は拳を動かすと、岩も拳を繰り出した。レイドが楯で止める。
最初、パワーが拮抗していると思ったが、レイドが押していた。楯で押して、バランスを崩させると、楯で殴りつけ、岩の拳を砕いた。
武器破壊成功かと思ったが、少女が開いた右手で再び拳を作ると、岩が集まって元の状態に戻った。
コストイラが懐に入り込もうと走るが、間に岩が挟まり、拒んでくる。ただの岩ではなく、念が籠っているのか、コストイラの無造作な一振りでは断てなかった。
アシドが跳んで上から狙うが、少女には3本目の腕が出現して、アシドの体をキャッチする。圧迫感に口から血を出す。ちなみに、この血は今朝インフェルノを食べた際に口内を噛んでできた傷からのものである。
投げられたアシドはシキ同様、山の頂上から消える。
アストロが魔力で狙い撃ちする。しかし、これも岩に阻まれる。
硬い。それが素直な感想であり、それだけが共通の感想だった。直接戦闘に参加していないエンドローゼとアレンには強いという印象が芽生えたが、他の者達はそんなことを考えなかった。
押せば通るな。
勇者一行は自分達の行為の代償など考えずに、目の前の相手に武器を振るった。
「な、何だ、これは?」
旧ゴール領、現リリアス領となっているところで、リリアス家次男が頭を抱えていた。具体的な政策が敷かれていたわけでなければ、問題に対応していたわけでもない。ゴール家当主は全く領地の運営をしていなかった。
「エヴァンズ・ゴールさんは何をしていたんだ」
「もう貴族ではないのだから、様の字は要らないぞ」
当主はペンを走らせながら、次男の発言を訂正する。
旧ゴール領は政策を打ち出していなかった。それどころか、エヴァンズは何もしていなかった。
メイド達に領民の話を聞きに行かせたところ、エヴァンズは不評だったが、レイドやナイトの評判だった。民のためにかなり奔走したらしい。
領民の流出は避けられなかったが、抑えることには成功していた。それと考えると、レイドはかなり凄腕の男だったのだろう。
貴族達の間で野蛮などと呼ばれていたが、この人物のどこが野蛮なのだ。次男は心の中で敬意を表した。
「では、まずやるべきことは、農地開発だな」
次男は現在視察に出掛けている兄のことを考えながら、溜息を吐いた。
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子爵の位で暮らしていたクレア家にとって、王という存在は大きすぎる。言動一つで首が飛びかねない。
ビクビクしながら仕事をしていると、フォンがつまらなそうに口を開いた。
『レイドって、恋愛面ではどんな奴なんだい?』
「どんな奴』
「自他共に認める、シスコンですね。私達は兄から恋愛の話を聞いたことがありません」
『好きな人ができたら、奴はどうする?』
「どうする』
「そうですね。難しいですが、今度は失わないように全力を尽くすかもしれません。監禁や束縛の可能性も考えられます」
『ぐ、クグヌヌ……』
王が何を考えているのか分からず、クレア家兄弟の胃は限界を迎えていた。
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