メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば

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26.『黄昏の箱庭』

4.孤児の天使

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 メル。スタディハウスに住んでいた金髪の少女。焦ると言葉が跳ねてしまう。水浴びをするのが好き。エンドローゼとは仲が良く、一緒に水浴びをしたことがかなりある。

 ルーサ。スタディハウスで育てられた緑髪の少女。焦ると言葉が跳ねてしまう。魔力が優れており、成人の儀をする前から然の魔術が使えた稀有な子。エンドローゼとは花の冠を送り合った仲。かか様に燃やされてしまったので、負い目に感じている。

 2人はスタディハウスに売られた。2人とも優秀だからこそ、貴族に売られたのだ。
 その貴族に嫌われると身売りをやらされると考え、かなりの媚びを売った。そうしているうちに、いつの間にかここが職場になっていた。

 メルとルーサの仕事は虹を作ることだ。装置に水や風を適量入れることで虹が生まれる。
 そこの監督がマスターである。

 マスター、ミノタウロスがコストイラを睨んだ。そして、ミノタウロスは何も言葉を発することなく、コストイラに斧を下ろした。

 コストイラは斧を見てから躱した。ミノタウロスは横に振った。コストイラは身を屈めて避ける。
 膝を伸ばしながら刀を抜く。ミノタウロスは無茶な体勢で刀を躱した。
 体表に切り傷が浅く生まれる。

『俺の邪魔はさせねェ。テメェにもあそこで隠れている奴等にもな!』

 ミノタウロスが斧を振りかぶった。

 まさか岩陰に隠れている仲間がバレているとは。この男は意外と実力者なのか? 早く倒した方がいいかもしれない。

 振られる斧に対応しようとすると、ミノタウロスがタックルしてきた。

 コストイラの体が少し浮いたところに、斧が振られた。コストイラは刀で防御した。
 しかし、コストイラの体があるのは空中。踏ん張ることが許されず、吹っ飛ばされた。

 コストイラから注意を奪うように、アシドが間に入る。その後ろを少女が走る。

 金髪と緑髪の少女はその目を張った。その少女が真っ直ぐに走る姿は、かつて皆のために奔走していた姿に重ねられた。孤児の天使、淡紫の悪魔などの様々な渾名を持つ、2人の大親友。スタディハウスのために回復魔法を扱えるようになった、自己犠牲の塊、エンドローゼがそこにいた。

 エンドローゼは極力2人の前には出たくなかった。理由はシンプルで、エンドローゼは、2人が自分のことをよく思っていないと思っているからだ。
 メルは別れの挨拶をせずにいつの間にかいなくなっていた。挨拶をするほどの仲にはなれなかったのだ。
 ルーサは互いに送り合った花の冠を燃やした。贈り物をされることを拒んだ証拠だ。

 だからこそ、2人の前には出たくなかった。しかし、今はそんなことを言っている暇はない。仲間が怪我をしたのだ。ここで前に出ないでどうする。

 そんな心が手に取るように分かった。まったく、あの時のエンドローゼのままだ。
 今必要なのは謝罪でも弁明でもない。手助けだ。

 メルとルーサは背中を合わせてミノタウロスの方に手を伸ばして、指を絡めた。両者の髪がざわめく。2人の力を合わせた技が繰り出される。

 風と水が合わさった攻撃がマスターを襲う。しかし、ミノタウロスの力があれば簡単に避けることができるだろう。

『小癪なァ!』

 グッと両足に力が籠った。そこで後頭部に攻撃が加えられる。

『あッ!?』

 両足の力がどこにも向かえずに霧散する。その場に留まったミノタウロスの体に合技がぶつかる。
 ミノタウロスの胸板に細かい傷が刻まれていく。

『がァ!!?』

 ミノタウロスが余りある膂力をふんだんに使い、斧を振り下ろした。合技ごと断ち切り、地面も叩き割った。

『フシュー』

 マスターはブチギレていて、この場にいる全員の死が確定してしまった。口角を上げ、斧を振り上げた。ここから一気に距離を詰めて下ろす気だ。
 その斧の向こう側、スゥと目を細めたエンドローゼが立っていた。2人には見覚えがある眼だった。それは、かか様を敵だと認識した時の眼だ。非暴力不服従猛反撃を信条として、知戦と舌戦を繰り広げた少女の眼だ。

 しかし、エンドローゼのした行動は、2人の少女の知らないものだった。

 エンドローゼの手から月のような淡い光が放たれた。あまりにも遅い光球に、ミノタウロスは鼻で笑った。
 斧が光に振る。触れた瞬間に、斧が消失し、ミノタウロスは吹き飛んだ。体は半分以上削れており、素人目にも死んでいることが分かった。

 え? エンドローゼって、こんな力があったの?
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