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26.『黄昏の箱庭』
20.歓喜の夜
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魔力とは生まれ持って一つしかない。どれだけ鍛えたとしても、魔力の質を変えることはできない。
つまり、魔力とは指紋と同じような、その人唯一のものだ。
しかし、魔力の扱い方を鍛えることはできる。これは人の癖がよく出る。魔術師を見れば、その流派が分かる。剣術を同じだ。
レンオニオールはグランセマイユの中でも博識として知られている。グランセマイユの功績が紙に残っているのは、レンオニオールが遺してくれたからといわれている。グランセマイユの中でも知識に優れ、あの癖の強い集団の中でも尊敬された人物であった。
レイヴェニアの魔術・魔法を解析し、コプロとともに研究し、グラッセには魔道具の提案をした。
グランセマイユの常識人。そして、潤滑油。
そして、只人であるレンオニオールは、四人の中で最も初めに亡くなった。グランセマイユが解散する要因の一つだ。
そういわれるほどの実力者にして人格者。レンオニオールが目の前にいる。
興奮しない、はずがない。
「フム。私の記憶に君は存在しない。しかし、その魔力の練り方。どう考えても、レイヴェニア系列だ。君と彼女の関係を聞かせてもらえないかい」
「弟子よ。認めたくないけどね」
「フム。では、私はそれ相応の戦いを演出しようではないか」
レンオニオールが楽しそうに口角を上げる。唐突に晒された爽やか笑顔に、観客の女性達はメロメロだ。
しかし、目の前にいるアストロに、そんなことを考えている余裕はない。目の前の男が発する威圧感に汗が止まらない。
これがグランセマイユの最弱魔法使い? ふざけるな! 最弱でこれなら、私は一般人か!?
「来ないのならば、こちらから仕掛けよう」
人差し指と中指を立てた右手を振ると、レンオニオールの背後に魔法陣がいくつも展開される。
「対応してみたまえ。放つのはどれも初級ばかりだよ」
宣告通り、魔法陣から出現する魔術はいづれも塊を一つ一直線に飛ばすだけのもの。
しかし、それだけだというのに、えげつない密度の攻撃となれば、難易度は格段に上がる。
すべてを躱す。すべてに対応する。この二つの選択肢を手にできるほど、人間を止めていない。どこか一か所に穴をあけてやり過ごす。これしかない。
見える範囲で層の薄いところを探す。
しかし、それをするのに時間が足りなさすぎる。
ドゴォンと派手に爆発し、土煙が舞った。
アストロが片手両膝を着き、汗を滝のように流して地面を濡らしていく。
ドクロが砕けた。たった一回の攻撃で、だ。
異常、という他ない。それを理解できてしまった。ドクロを抜けて、攻撃が通ってしまっている。
アストロの頭から血が垂れてきた。汗で濡れた地面が赤く染まる。
私は明らかなミスを犯している。十分な魔力を用意していなかった。最大火力を放てるように準備しておく必要があった。それに三、いや四連部分が最薄だった。そこしかなかった。おそらく次もそこしか狙ってはいけない。
「定まったかい?」
「えぇ、待ってくれたのかしら?」
「私はどこまでいっても、先生だからね」
レンオニオールは指揮者のように指を振るい、魔法陣を出現させる。
絨毯爆撃という言葉がふさわしいほどの密度。アストロはペロと唇を湿らせる。これは試練。レンオニオールが仕掛けてくれた、私専用の試練。燃えないわけがない。
アストロは瞬時に四連部分を見つけ、魔術を放つ。
爆発、後、土煙。
アストロは爆風に煽られ、両膝を着いた。四方八方から来る風の防ぎ方など知らない。
トローと口から自然と血が垂れた。穴は作った。これでも駄目か~~~~。
土煙舞う中、足音が近づいてくる。十中八九レンオニオール。
「世辞を言わせてもらおう。お見事。そして、キツイ一言を言わせてもらおう。まだまだ餓鬼だな。そのままじゃレイヴェニアの五割も引き出せるか難しいね」
ギリと奥歯を噛み締めたかった。その力さえ残っていない。ただただ睨みつけるしかなかった。
「そんなに超えたいのなら、この痛みは邪魔だろうね。あれに勝ちたいのなら、繊細な魔力の操作を習得する必要だ。あれは自負心や自尊心の塊であることは明白。君も知るところだろう? しかし、あれは存外心が広い。素直に負けを認められる方だよ」
レンオニオールがアストロのネックレスに触れた。ドクロがすべて回復した。
「そしてこれを。私はもう消える。これはレイヴェニアと戦うためのプレゼントだ。天から見守っていよう。あれが負けるとこを見せておくれよ」
ネックレスにドクロを一つ追加した。
ドクロが追加された瞬間、左腕に発生していた幻肢痛がなくなった。
アストロはドクロから視線を切り、前を見ると、レンオニオールはいなくなっていた。
つまり、魔力とは指紋と同じような、その人唯一のものだ。
しかし、魔力の扱い方を鍛えることはできる。これは人の癖がよく出る。魔術師を見れば、その流派が分かる。剣術を同じだ。
レンオニオールはグランセマイユの中でも博識として知られている。グランセマイユの功績が紙に残っているのは、レンオニオールが遺してくれたからといわれている。グランセマイユの中でも知識に優れ、あの癖の強い集団の中でも尊敬された人物であった。
レイヴェニアの魔術・魔法を解析し、コプロとともに研究し、グラッセには魔道具の提案をした。
グランセマイユの常識人。そして、潤滑油。
そして、只人であるレンオニオールは、四人の中で最も初めに亡くなった。グランセマイユが解散する要因の一つだ。
そういわれるほどの実力者にして人格者。レンオニオールが目の前にいる。
興奮しない、はずがない。
「フム。私の記憶に君は存在しない。しかし、その魔力の練り方。どう考えても、レイヴェニア系列だ。君と彼女の関係を聞かせてもらえないかい」
「弟子よ。認めたくないけどね」
「フム。では、私はそれ相応の戦いを演出しようではないか」
レンオニオールが楽しそうに口角を上げる。唐突に晒された爽やか笑顔に、観客の女性達はメロメロだ。
しかし、目の前にいるアストロに、そんなことを考えている余裕はない。目の前の男が発する威圧感に汗が止まらない。
これがグランセマイユの最弱魔法使い? ふざけるな! 最弱でこれなら、私は一般人か!?
「来ないのならば、こちらから仕掛けよう」
人差し指と中指を立てた右手を振ると、レンオニオールの背後に魔法陣がいくつも展開される。
「対応してみたまえ。放つのはどれも初級ばかりだよ」
宣告通り、魔法陣から出現する魔術はいづれも塊を一つ一直線に飛ばすだけのもの。
しかし、それだけだというのに、えげつない密度の攻撃となれば、難易度は格段に上がる。
すべてを躱す。すべてに対応する。この二つの選択肢を手にできるほど、人間を止めていない。どこか一か所に穴をあけてやり過ごす。これしかない。
見える範囲で層の薄いところを探す。
しかし、それをするのに時間が足りなさすぎる。
ドゴォンと派手に爆発し、土煙が舞った。
アストロが片手両膝を着き、汗を滝のように流して地面を濡らしていく。
ドクロが砕けた。たった一回の攻撃で、だ。
異常、という他ない。それを理解できてしまった。ドクロを抜けて、攻撃が通ってしまっている。
アストロの頭から血が垂れてきた。汗で濡れた地面が赤く染まる。
私は明らかなミスを犯している。十分な魔力を用意していなかった。最大火力を放てるように準備しておく必要があった。それに三、いや四連部分が最薄だった。そこしかなかった。おそらく次もそこしか狙ってはいけない。
「定まったかい?」
「えぇ、待ってくれたのかしら?」
「私はどこまでいっても、先生だからね」
レンオニオールは指揮者のように指を振るい、魔法陣を出現させる。
絨毯爆撃という言葉がふさわしいほどの密度。アストロはペロと唇を湿らせる。これは試練。レンオニオールが仕掛けてくれた、私専用の試練。燃えないわけがない。
アストロは瞬時に四連部分を見つけ、魔術を放つ。
爆発、後、土煙。
アストロは爆風に煽られ、両膝を着いた。四方八方から来る風の防ぎ方など知らない。
トローと口から自然と血が垂れた。穴は作った。これでも駄目か~~~~。
土煙舞う中、足音が近づいてくる。十中八九レンオニオール。
「世辞を言わせてもらおう。お見事。そして、キツイ一言を言わせてもらおう。まだまだ餓鬼だな。そのままじゃレイヴェニアの五割も引き出せるか難しいね」
ギリと奥歯を噛み締めたかった。その力さえ残っていない。ただただ睨みつけるしかなかった。
「そんなに超えたいのなら、この痛みは邪魔だろうね。あれに勝ちたいのなら、繊細な魔力の操作を習得する必要だ。あれは自負心や自尊心の塊であることは明白。君も知るところだろう? しかし、あれは存外心が広い。素直に負けを認められる方だよ」
レンオニオールがアストロのネックレスに触れた。ドクロがすべて回復した。
「そしてこれを。私はもう消える。これはレイヴェニアと戦うためのプレゼントだ。天から見守っていよう。あれが負けるとこを見せておくれよ」
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