メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば

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29.暴霊の傷跡

2.開けてびっくり宝箱

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 アストロ達が建物の中に入る。アシドの体はすでに乾燥しているが、服はまだ湿っている。不快になるため、今は着ないでおく。
 上半身裸のアシドの体を見られず、エンドローゼが目を逸らした。恥ずかしいのではない。寒そうなのだ。

 アストロ達がコストイラのいる2階に辿り着く。

「おう、来たか」

 コストイラが宝箱に座っていた。

 大きい。宝箱がベッドと同じくらいの広さがあり、腰当たりの高さまである。この大きさとなると、中に期待してしまう。

「アレンは宝箱の中身が分かるの?」
「……皆さん勘違いされているかもしれませんけど、僕の魔眼は鑑定眼じゃないですからね」
「ごめんて」
「とりあえず見てみますけど」

 アレンが気だるげに魔眼を発動させた。
 コストイラが瞬発的に体を動かした。踵で鍵穴当たりを蹴飛ばした。

 ズドンと宝箱が跳ねた。

 宝箱の中身が跳ねたのかと思ったが、どうやら違うらしい。アレンが敵の正体を口に出したのだ。

「シェイプシフター」

 宝箱がガバリと開いた。宝箱の蓋部分が二つに割れ、魔物の腕になった。下部分も二つに分かれ、脚になった。宝箱のそれぞれの部分を繋ぐのは、泥のような色をした光沢ある影。
 シェイプシフターは形状変化を自在に行う魔物だ。泥のような色をした光沢ある影の部分が不定形であるため、その部分がグニャグニャ変身して様々な形となる。

 ぐにゃりと伸び、シェイプシフターがコストイラを殴ろうとする。コストイラは刀を素早く抜き、斜めにして防御した。コストイラは切り返して刀を振るうが、それよりも速くシェイプシフターが戻った。
 シェイプシフターが再び体を伸ばし、宝箱の蓋を蟷螂の鎌のように振るった。コストイラが跳んで躱す。

「シキ、いいところを見せるのよ」
「承知」

 アストロに小さな声でシキに声を掛け、背を押した。シキは意識している男にいい恰好を見せつけようと張り切った。
 跳んで躱したコストイラが着地する前に、シキが通り過ぎた。シェイプシフターが宝箱の蓋で防御しようとする。

 シキが少し跳んで宝箱の蓋を鋭く蹴った。蓋は爆破し、粉々に砕け散る。シキは空中で体を反転させ、天井にくっつく。自前の握力で天井に指をめり込ませ、一秒後も落ちない。
 さしものシェイプシフターも驚いた。形状変化の魔物は体を伸ばして、叩き落とそうとする。その隙に天井を蹴飛ばして一瞬で距離をなくした。
 移動しながらナイフを抜き、何度も振り、建物を貫通した。

「は?」
「え?」
「嘘?」

 コストイラ達が間抜けた声を出した。実際、当人も驚いている。本人も反転して直地したつまりだった。しかし、床が崩れてしまった。床が脆かったというよりは、シキがすごい速さで突っ込んだのが原因だろう。

 ズズンとシェイプシフターが倒れた。泥のような色をした光沢ある影がドロドロとなり、形を保てなくなり、溶けていった。

「魔物は死んだっぽいし、シキのとこに行くか」

 コストイラが穴の開いた床を眺めながら、刀を収めた。





「どうも。見えていますよ」

 シキがひっくり返ったまま誰かさんに声を掛けた。

「私なんかより、自身の心配をした方がいいのではないか?」

 シキの頭の横に少女が立っている。その少女はスカートのため、中が丸見えだ。
 白の下着を晒したまま、少女は頬を掻いた。

「回復薬、あったかな?」
「構わない」
「え? 本当に?」

 シキがアクロバティックに立ち上がった。パタパタと服を叩いて埃を落とす。

「ま、君がいいならいいんだけど」

 少女が探っていた鞄から手を抜き、蓋を閉める。

「君は迷子?」
「なぜ?」
「だって、こんなところで寝転がっているなんて、かなり特殊な状況だと思ったから」
「アテはない。目的地もない。でも、迷子ではない」
「……強がり?」
「違う」

 驚異的な即答に沈黙する。

「私のとこ、来る?」

 なぜか少女は同情するような目を向けてきた。
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