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30.月の船
3.我儘の押し付け合い
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ルーンゴーレムが水を飲む必要性は一切ない。しかし、なぜこの水場に来ているのか。
答えは過去の習慣だ。ルーンゴーレムの元が何だったのかを知る者は本人を含めていないだろう。知ったところで何かあるわけではない。唯の獣だ。
獣として水を飲む。獣として物を喰らい、獣として自然に生きる。生前の行動の繰り返しだ。
月に憧れ、月に向かう中で死に、月に近い存在となった獣。それが、こいつだ。
ルーンゴーレムが大きな掌を川につけた。ゆっくりと持ち上げ、じっと見つめる。
赤く染まっている。これがただの血であれば気にせずに飲んだだろう。しかし、これは世界毒蛇の血だ。ゴーレムであってもただでは済まないだろう。
シキには毒耐性がありすぎた。それこそ、世界を死で覆いつくしてしまうような毒であったとしても、生き残ってしまうだろう。人外というレベルすら超越してしまっているかもしれない。
ルーンゴーレムが踏み切る。獣の領域を超えた跳躍力。しかし、獣は獣として生きる。獣として快不快を定め、獣として不快を排除する。
今も川に半分体を沈めているシキを狙う。獣の本能だ。シキがほぼ爪先の力だけでジャンプする。そのまま魔力を使って回転し、蹴りを加えた。
ルーンゴーレムは驚くしかない。獣にそのような動きをするものがいない。こんな変態的な挙動を見たことない。月天石巨人の顔面を踵で砕きながら蹴飛ばした。月天石巨人の顔が崩壊し、数百㎏ある体が飛んだ。
河にルーンゴーレムが落ちる。十数mの高さまで水柱が立ち、沈んだ。ルーンゴーレムの厚みは川の水深よりもあるため、水を堰き止める結果となった。
「おぉ」
「オレ、あそこまで人として終わっているか?」
一撃で終わらせたシキに拍手を送る。コストイラは呆れながら、シキは指差し、アストロを見た。
「終わってる?」
「終わっているかどうかは分かりませんが、人の智を超えているのは確かですね」
「ムムム」
アレンに褒められているのかどうか分からず、悩んでしまう。
「シキ」
アストロが手招きする。シキが不思議そうな顔をしながら近づく。
「いい、シキ。一つ一つの動作、一挙手一投足にアレンの評価を求めては駄目よ」
「ホ?」
「貴女が異次元に強いのは知っているし、そのまま強くなっていくと、アレンは落ち込むかもしれないわ」
「ムムム!?」
自分が引かれているのかと思い、自重しようか考える。
「でもね、いざという時に貴女がアレンを護ることで今より振り向いてもらえるわ。今だけではなく未来を見ましょう」
「うい」
シキはしっかりとアストロの目を見て頷いた。
「み、み、皆さん、おー互いに頑張り、ま、しょう」
エンドローゼがムフーと鼻息荒くガッツポーズしている。シキは再度アレンを見た。
「し、シキさんの視線がすごい刺さっている」
「いい笑顔を向けながら手でも振ってやれ」
「王族貴族のやり方じゃないですか」
「貴族でも一部だぞ、それ」
アレンのツッコミにレイドがさらに突っ込んだ。
「でも、まじめな話、お前助けられてばっかだろ? シキだけでもいいから、何か礼とかした方がいいんじゃねぇの?」
「お礼ですか? 確かに何かした方がいいですね」
「何かやるにしても、もう少し落ち着いてからだな。野宿しているような状況じゃなくて、宿に止まれている状況の方が心に余裕がある」
「それはそう」
アシドの言うことにコストイラが乗っかった。アレンも賛成だ。何なら戦いが終わった平穏なタイミングがいいと考えている。
それが決定事項だとして、いったい何をすればいいのだろうか。アレンはシキのことが好きといっておきながら、実のところ、深くまで知っているわけではない。趣味や好きなこと、食べ物の好嫌すら知らない。
それでも好きな気持ちは変わらない。昔と今では好きな度合いや角度や覚悟が変わったかもしれない。
「よし」
アレンは密かに拳を握り、人知れず覚悟を決めた。
答えは過去の習慣だ。ルーンゴーレムの元が何だったのかを知る者は本人を含めていないだろう。知ったところで何かあるわけではない。唯の獣だ。
獣として水を飲む。獣として物を喰らい、獣として自然に生きる。生前の行動の繰り返しだ。
月に憧れ、月に向かう中で死に、月に近い存在となった獣。それが、こいつだ。
ルーンゴーレムが大きな掌を川につけた。ゆっくりと持ち上げ、じっと見つめる。
赤く染まっている。これがただの血であれば気にせずに飲んだだろう。しかし、これは世界毒蛇の血だ。ゴーレムであってもただでは済まないだろう。
シキには毒耐性がありすぎた。それこそ、世界を死で覆いつくしてしまうような毒であったとしても、生き残ってしまうだろう。人外というレベルすら超越してしまっているかもしれない。
ルーンゴーレムが踏み切る。獣の領域を超えた跳躍力。しかし、獣は獣として生きる。獣として快不快を定め、獣として不快を排除する。
今も川に半分体を沈めているシキを狙う。獣の本能だ。シキがほぼ爪先の力だけでジャンプする。そのまま魔力を使って回転し、蹴りを加えた。
ルーンゴーレムは驚くしかない。獣にそのような動きをするものがいない。こんな変態的な挙動を見たことない。月天石巨人の顔面を踵で砕きながら蹴飛ばした。月天石巨人の顔が崩壊し、数百㎏ある体が飛んだ。
河にルーンゴーレムが落ちる。十数mの高さまで水柱が立ち、沈んだ。ルーンゴーレムの厚みは川の水深よりもあるため、水を堰き止める結果となった。
「おぉ」
「オレ、あそこまで人として終わっているか?」
一撃で終わらせたシキに拍手を送る。コストイラは呆れながら、シキは指差し、アストロを見た。
「終わってる?」
「終わっているかどうかは分かりませんが、人の智を超えているのは確かですね」
「ムムム」
アレンに褒められているのかどうか分からず、悩んでしまう。
「シキ」
アストロが手招きする。シキが不思議そうな顔をしながら近づく。
「いい、シキ。一つ一つの動作、一挙手一投足にアレンの評価を求めては駄目よ」
「ホ?」
「貴女が異次元に強いのは知っているし、そのまま強くなっていくと、アレンは落ち込むかもしれないわ」
「ムムム!?」
自分が引かれているのかと思い、自重しようか考える。
「でもね、いざという時に貴女がアレンを護ることで今より振り向いてもらえるわ。今だけではなく未来を見ましょう」
「うい」
シキはしっかりとアストロの目を見て頷いた。
「み、み、皆さん、おー互いに頑張り、ま、しょう」
エンドローゼがムフーと鼻息荒くガッツポーズしている。シキは再度アレンを見た。
「し、シキさんの視線がすごい刺さっている」
「いい笑顔を向けながら手でも振ってやれ」
「王族貴族のやり方じゃないですか」
「貴族でも一部だぞ、それ」
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「でも、まじめな話、お前助けられてばっかだろ? シキだけでもいいから、何か礼とかした方がいいんじゃねぇの?」
「お礼ですか? 確かに何かした方がいいですね」
「何かやるにしても、もう少し落ち着いてからだな。野宿しているような状況じゃなくて、宿に止まれている状況の方が心に余裕がある」
「それはそう」
アシドの言うことにコストイラが乗っかった。アレンも賛成だ。何なら戦いが終わった平穏なタイミングがいいと考えている。
それが決定事項だとして、いったい何をすればいいのだろうか。アレンはシキのことが好きといっておきながら、実のところ、深くまで知っているわけではない。趣味や好きなこと、食べ物の好嫌すら知らない。
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「よし」
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