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32.次元の狭間
1.紅蓮の魔宮
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紅い塔だった。どこか魔王インサーニアの城の時の火の塔に似ている。
あの時のように、変な奴が出て来たら困るが、はてさて、今回は回避できる気がしない。
「とりあえず、警戒心Maxで行くぞ。何が出てくるか分かんねぇからな」
「そうね。あの歪みもないし、安全圏はどこにもないものね」
「もう何かヤバそう」
コストイラが刀を半分抜き、アストロが後ろを確認する中、アシドはもう嫌そうな顔をしていた。
「あの時ってどうだったんだっけ」
「確か、門の前にドラゴンがいたような」
アシドの言葉に対して、コストイラが昔のことを思い出して言葉にした。その後を追う者はいない。コストイラの思い出した時を、再現するかのように塔の前にドラゴンがいた。
『グルル』
ドラゴンは胸も顎も地面に着けて眠っている。
「あの時の再現ってか」
「じゃあ、あの統計野郎がいるかもって? アイツ、無残な姿で見つかったんじゃねぇの?」
「そうね。でも、グレイソレアは記憶、と言っていたわよね」
不安がる勇者一行をよそに、ドラゴンが目を覚ました。
「ヤバ」
『フン』
ドラゴンがどのような行動に出るのか分からず、最大限の警戒を示す。しかし、ドラゴンは鼻で笑うと、すぐに眠りを再開させた。
「これは、オレ達は舐められているのか?」
「ドラゴンだしなぁ、それはあり得るかもしれないなぁ」
アシドはあの時と同じように槍を構えた。
様子を見ていると、ドラゴンが尾を持ち上げた。何をしているのか分からず、下手に手を出せない。
フレアドラゴンが尾を壁に叩きつけた。
壁に穴が開くほどの衝撃。それに誘われるように、上から声が降ってきた。
『んがぁ!? 誰じゃ!?』
それはどこか聞いたことがある声だった。
『どこだ? ここは、私の知らない場所だな』
青い髪を優しく撫で、立ち上がった。
どのような現象にも必ず原因と結果がある。ランダムと言われる事物でも、突き詰めれば気温や湿度、摩擦といった目に見えぬ力が働いているに過ぎない。
結果に据えるべき事実は、今自分が知らない場所にいるということだ。ここにいる理由についても考えてみる。
どう考えても誰かが、用があって呼んだ。自分が最後、何をしていたのかをうまく思い出せないが、何か罠を踏んだとは考えられない。
とりあえず歩くことにした。歩けばヒントに当たる可能性が上がるからだ。
『うん? あれは』
青髪の青年は自身の目の横の髪をいじりながら先を眺める。そこには顔の傷から歴戦の戦士の雰囲気を醸し出している男がいた。
『強そうな男だな。何だ、アンタは?』
男の胸元には赤と緑と金と黒と白の五色が使われているペンダントがあった。
あまり特徴のない男だ。冒険者をしていれば当たり前のようにつく傷に、冒険者ならば持っていそうなお守り。
きっと明日には忘れているだろう。
青髪の青年は何とはなしに横を通り過ぎようとする。
『お前がカンジャだな』
カンジャがぴたりと止まる。
『なぁ、アンタ。ここはどこなんだい?』
『ここは冥界、死者の世界さ』
カンジャのデータは早くも崩れ去りそうになった。
あの時のように、変な奴が出て来たら困るが、はてさて、今回は回避できる気がしない。
「とりあえず、警戒心Maxで行くぞ。何が出てくるか分かんねぇからな」
「そうね。あの歪みもないし、安全圏はどこにもないものね」
「もう何かヤバそう」
コストイラが刀を半分抜き、アストロが後ろを確認する中、アシドはもう嫌そうな顔をしていた。
「あの時ってどうだったんだっけ」
「確か、門の前にドラゴンがいたような」
アシドの言葉に対して、コストイラが昔のことを思い出して言葉にした。その後を追う者はいない。コストイラの思い出した時を、再現するかのように塔の前にドラゴンがいた。
『グルル』
ドラゴンは胸も顎も地面に着けて眠っている。
「あの時の再現ってか」
「じゃあ、あの統計野郎がいるかもって? アイツ、無残な姿で見つかったんじゃねぇの?」
「そうね。でも、グレイソレアは記憶、と言っていたわよね」
不安がる勇者一行をよそに、ドラゴンが目を覚ました。
「ヤバ」
『フン』
ドラゴンがどのような行動に出るのか分からず、最大限の警戒を示す。しかし、ドラゴンは鼻で笑うと、すぐに眠りを再開させた。
「これは、オレ達は舐められているのか?」
「ドラゴンだしなぁ、それはあり得るかもしれないなぁ」
アシドはあの時と同じように槍を構えた。
様子を見ていると、ドラゴンが尾を持ち上げた。何をしているのか分からず、下手に手を出せない。
フレアドラゴンが尾を壁に叩きつけた。
壁に穴が開くほどの衝撃。それに誘われるように、上から声が降ってきた。
『んがぁ!? 誰じゃ!?』
それはどこか聞いたことがある声だった。
『どこだ? ここは、私の知らない場所だな』
青い髪を優しく撫で、立ち上がった。
どのような現象にも必ず原因と結果がある。ランダムと言われる事物でも、突き詰めれば気温や湿度、摩擦といった目に見えぬ力が働いているに過ぎない。
結果に据えるべき事実は、今自分が知らない場所にいるということだ。ここにいる理由についても考えてみる。
どう考えても誰かが、用があって呼んだ。自分が最後、何をしていたのかをうまく思い出せないが、何か罠を踏んだとは考えられない。
とりあえず歩くことにした。歩けばヒントに当たる可能性が上がるからだ。
『うん? あれは』
青髪の青年は自身の目の横の髪をいじりながら先を眺める。そこには顔の傷から歴戦の戦士の雰囲気を醸し出している男がいた。
『強そうな男だな。何だ、アンタは?』
男の胸元には赤と緑と金と黒と白の五色が使われているペンダントがあった。
あまり特徴のない男だ。冒険者をしていれば当たり前のようにつく傷に、冒険者ならば持っていそうなお守り。
きっと明日には忘れているだろう。
青髪の青年は何とはなしに横を通り過ぎようとする。
『お前がカンジャだな』
カンジャがぴたりと止まる。
『なぁ、アンタ。ここはどこなんだい?』
『ここは冥界、死者の世界さ』
カンジャのデータは早くも崩れ去りそうになった。
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