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複雑な思い
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「フレスベルグ……またあの人間が来たのか」
「えぇ、今日も沢山、色んな事を話したわ」
夕暮れ時、二匹の龍——フレスベルグとマスクドワンは、角合わせしながら今日あった事を共有していた。暫くすると二匹はそっと合わせていた角を離し、お互いの顔を見つめ合うと頬擦りをし首を絡め合う。そうこうしていると時期に夜がやってきてフレスベルグは眠そうに目を擦るとそのまま樹の中にスゥっと溶ける様に消えた。
「さて、今日は一体何人の人間が私に牙を向くのか……」
マスクドワンは村のある方角へ首を擡げ視線を向けるとふぅと溜息を吐く。いつも通りであるならば、村人や旅人等の人間がフレスベルグの力を手に入れようとして彼女の眠りを妨げに来るのだ。
だが、その日はいつもと違った。いくら待っても自分達を襲いに来る人間の姿が無かったのだ。
それから暫くそんな夜が続いた。人間も諦めたのだろうと思う反面、何故人間は姿を見せなくなったのかと疑問に思ったマスクドワンは世界樹から少し離れて村の様子を見ていた。すると、自分に近づいてくる存在に気がついた。
「誰だ……」
威圧を込めた声色でマスクドワンは相手に吠えると、その人物は月明かりに照らされて姿を現した。マルクだった。マスクドワンはフレスベルグとの語らいの中に何度か出てきたマルクの事を知っていた。だが、それはフレスベルグの話の中でしか知ら無い。マスクドワンは眼光を鋭くしマルクに問いかける。
「何をしにきた人間」
「別に何も、危害を加えるつもりはないよ」
「フレスベルグに取り入って彼女の力を奪いにきたのか」
「違う、僕はそんなことはしない」
マスクドワンは疑問に思う、何故そう言い切れるのか、人間は今までだってこれからだってフレスベルグの持つ癒しの力を狙ってくる、自分達が生まれた時からずっとそうだったと、だが、目の前の少年マルクからは嘘偽りがかんじとることができない。つまりそれは本心からフレスベルグに危害を加えるつもりがないと言うことだ。
「人間は嘘を吐く、信用なら無いものだ」
「いいよ、信用しなくても、それが人間が今まで君たちにして来た事だから」
「ふん……それで人間よ、何をしにきた、夜は本来外出を禁じられていると聞いたが」
「あぁ、そういえばそうだった……今日はね君に言いたい事があって来たんだ」
訝しげな表情でマルクを見るとマスクドワンは、話を聞くために龍の姿から人間の姿へと変化する。無論周りに細心の注意を払いつつ、怪しい動きをしたらすぐに殺せる様にと。
マルクは、目の前で龍が人の姿になっても全く驚かなかった。何故なら普段からフレスベルグが見せてくれていたからだった。誇り高い龍が人間と同じ姿を取るのはかなり珍しい事なのである。
「……」
「それはね、これからは今まで以上に夜が脅かされる事はないよって事」
「どう言うことだ」
「僕達の村で自警団を作ったんだ、彼女が——フレスベルグが安心して眠れるように、君が安心して夜を過ごせるようにってね」
「余計な事を」
ツンケンした物言いだが、マスクドワンの尻尾は僅かに揺れていた。自分達を気遣ってそこまでしてくれる人間は今までいなかったからだ。だがマスクドワンの表情はマルクには読めなかった。何故なら彼の顔にはベールが掛かっており、その表情は見え無いでいたが、マルクはなんとなく尻尾が揺れているのを見て悪い気はしていないのだろうと判断した。
「はは、それじゃあ僕は村に戻るよ、おやすみ、マスクドワン」
「さっさと失せろ人間」
マスクドワンはマルクが見えなくなるまで見送ると世界樹の根元に戻ってゆっくりと腰掛けるとポツリと呟く。
「お前はいい友人を持ったのだな……」
その言葉は雲が月を隠すように、誰にも届く事なく消えた。
「えぇ、今日も沢山、色んな事を話したわ」
夕暮れ時、二匹の龍——フレスベルグとマスクドワンは、角合わせしながら今日あった事を共有していた。暫くすると二匹はそっと合わせていた角を離し、お互いの顔を見つめ合うと頬擦りをし首を絡め合う。そうこうしていると時期に夜がやってきてフレスベルグは眠そうに目を擦るとそのまま樹の中にスゥっと溶ける様に消えた。
「さて、今日は一体何人の人間が私に牙を向くのか……」
マスクドワンは村のある方角へ首を擡げ視線を向けるとふぅと溜息を吐く。いつも通りであるならば、村人や旅人等の人間がフレスベルグの力を手に入れようとして彼女の眠りを妨げに来るのだ。
だが、その日はいつもと違った。いくら待っても自分達を襲いに来る人間の姿が無かったのだ。
それから暫くそんな夜が続いた。人間も諦めたのだろうと思う反面、何故人間は姿を見せなくなったのかと疑問に思ったマスクドワンは世界樹から少し離れて村の様子を見ていた。すると、自分に近づいてくる存在に気がついた。
「誰だ……」
威圧を込めた声色でマスクドワンは相手に吠えると、その人物は月明かりに照らされて姿を現した。マルクだった。マスクドワンはフレスベルグとの語らいの中に何度か出てきたマルクの事を知っていた。だが、それはフレスベルグの話の中でしか知ら無い。マスクドワンは眼光を鋭くしマルクに問いかける。
「何をしにきた人間」
「別に何も、危害を加えるつもりはないよ」
「フレスベルグに取り入って彼女の力を奪いにきたのか」
「違う、僕はそんなことはしない」
マスクドワンは疑問に思う、何故そう言い切れるのか、人間は今までだってこれからだってフレスベルグの持つ癒しの力を狙ってくる、自分達が生まれた時からずっとそうだったと、だが、目の前の少年マルクからは嘘偽りがかんじとることができない。つまりそれは本心からフレスベルグに危害を加えるつもりがないと言うことだ。
「人間は嘘を吐く、信用なら無いものだ」
「いいよ、信用しなくても、それが人間が今まで君たちにして来た事だから」
「ふん……それで人間よ、何をしにきた、夜は本来外出を禁じられていると聞いたが」
「あぁ、そういえばそうだった……今日はね君に言いたい事があって来たんだ」
訝しげな表情でマルクを見るとマスクドワンは、話を聞くために龍の姿から人間の姿へと変化する。無論周りに細心の注意を払いつつ、怪しい動きをしたらすぐに殺せる様にと。
マルクは、目の前で龍が人の姿になっても全く驚かなかった。何故なら普段からフレスベルグが見せてくれていたからだった。誇り高い龍が人間と同じ姿を取るのはかなり珍しい事なのである。
「……」
「それはね、これからは今まで以上に夜が脅かされる事はないよって事」
「どう言うことだ」
「僕達の村で自警団を作ったんだ、彼女が——フレスベルグが安心して眠れるように、君が安心して夜を過ごせるようにってね」
「余計な事を」
ツンケンした物言いだが、マスクドワンの尻尾は僅かに揺れていた。自分達を気遣ってそこまでしてくれる人間は今までいなかったからだ。だがマスクドワンの表情はマルクには読めなかった。何故なら彼の顔にはベールが掛かっており、その表情は見え無いでいたが、マルクはなんとなく尻尾が揺れているのを見て悪い気はしていないのだろうと判断した。
「はは、それじゃあ僕は村に戻るよ、おやすみ、マスクドワン」
「さっさと失せろ人間」
マスクドワンはマルクが見えなくなるまで見送ると世界樹の根元に戻ってゆっくりと腰掛けるとポツリと呟く。
「お前はいい友人を持ったのだな……」
その言葉は雲が月を隠すように、誰にも届く事なく消えた。
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