ビターはお好き?

蛇穴さん

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ビターはお好き?

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 またか……男は呟いた。
 「真さん…可哀想に…24?」笑いそうな顔をしながら、1人男が近づいてきた。
 「なんだよ…辻か。人手が足んねーんだから仕方なかろう。本当にブラックだよ!警備業は!いや、ブラック超えてビターだ!」
 真はそう言って、椅子に踏ん反り返った。
 
 そう…ここは警備会社…彼の職業は警備員である。
 夏は体温以上の場所、冬は凍えるような場所に立ち、ふざけた給料で働く人…

 「ただ、立ってるだけと思って欲しくないわな!現場の人間より危険な事やってるわけだし、気を使うわ」
 胸のポケットからタバコを取り出し火をつけ辻に、わざと煙を吹きかけた。
  「まぁ確かに…現場の人間は、俺たちは突っ立っているように見えるけど、実際、走ってる車止めてるわけやから、作業員よか危ないんだけどね」
 煙たそうな顔で、辻も椅子に座り込んだ。

 皆さんは、警備員って、道路に立ってるだけで、楽そうだなって思う人が多いと思いますが、立ってるのだって楽ではありません!夏は道路に影は無く直射日光地獄。冬は体を動かす事も出来ず、凍えながら立ち続け…田舎の警備会社になれば、台風が来れば真っ只中で災害現場に呼び出される。

 「明日は給料日やけど、いくらやった?30万はあったんやない?」
 
 先ほど手渡された給与明細書を眺めながら真は辻に話しかけた。

 「そんなにあったらイイっすよ…雨にやられて休みばっかで、今月は手取り10万切ってますわ」

 そう…警備の給料は安い!天気や現場に左右され、特に、四五六と言われる時期は、公共工事があまりなく、又、雨のせいで仕事が究極に少ない!工事会社は民間の仕事に移るため、民間は大企業以外は警備を頼む事はない。

 「うわ~最悪やわぁ」

 明細書を見ながら、痩せ細った男が真達に近づいてきた。

 「お疲れ様。青山くん久しぶり!どうしたの?顔が青ざめてるよ?」

  真が青山の明細書を見ると、驚くような金額が飛び込んできた。

 「500円…やばくない?」
 
 出勤日数…5日
 総支給額…35,000円
 
 「あ~なるほど…そっから労災と社会保険引かれてか…やばいを超えて危険やね…辞めれば?コンビニのバイトの方が、まだましだわ」

 辻が慰めるように、青山の肩を叩いた。

 「いや…やめたいけど、俺も50歳で、雇ってくれる場所無いし…警備はクビが無いから」

 「本当に、ビターだよな…警備は…てか、青山くんは、三月に現場でやらかしたから、干される結果になったら…」
 
 真は、慰めあっている辻と青山を遠目で眺めながら呟いた。

 「実家やから、親から借りるかな…そんじゃ帰るわ」

 青山はそう言うと、自転車に乗り、颯爽と帰って行った。

 「青山くん出来ないから仕方ないんやないかな…明日は我が身なんで、俺も帰るよ。ビターな会社から」

 辻も苦笑しながら帰って行った。
 
 
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