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幼少期編
魔法陣とオリジナル魔法からの模擬戦
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夕食ではアスラもいて4人での食卓となった。
「母さま、今日ハーフエルフの子にあったよ」
「それで友達になっちゃった」
「ハーフエルフ……もしかしてライカちゃん?」
「知ってるの?」
「この前治療院に来てたのよ。治療院のエリン先生のとこのお子さんよ」
「ケガでもしてたの?」
「ケガ自体は大したことなかったのよ、その時もエリン先生の【小回復】ですぐに治ったのよね。」
治ったという割には影のある言い方だ。
「どうも、ハーフエルフってことで近所の子供たちに虐められてるみたいなのよ。あなた達は仲良くしてあげるのよ」
「友達だもん、仲良くするのは当たり前だよ」
どうよ、子供理論。
「そうね、あなた達なら大丈夫よね」
なぜかお墨付きをいただいた。結果オーライだ。
それはさておき、治療院のエリン先生というのがエルフなのかな。
ライカがあれだけ可愛いのだ、きっと超美人に違いない。
ライカをもっとずっと大人にして、綺麗な長い銀髪にボンッキュッボン!てな感じだよな、きっと。
しかも、女医って響きもいい!
女医。
女医かぁ……むふ。
ふとユイを見ると同じことを考えているのか、鼻の下が伸びている。
いや、お前も一応女だろ!
まあ、精神的なものは別として肉体的に性欲なんてまだまだ発生しないんだよな、5歳児の体じゃ。
オネショタ展開はもっと先だな。
夕食後は誕生日にもらった本と格闘していた。
魔力の流れが分かっても、魔法陣の意味なんてさっぱりだからだ。
本に記載されているのと同じように模様を描いて、そこに魔力を流し込むと確かに魔法は発動する。
現に今もこの部屋の照明は【照光】の魔法陣だ。
とりあえず使えなくはないけど原理とかはちゃんと理論立てて説明してほしい。
どの模様がどういった意味合いなのか分からないということは、まったく同じ魔法陣を覚える記憶力勝負ってことになる。
前世よりは優秀っぽいこの肉体でもあまり複雑なのはちょっと無理……だと思う。
ちなみに魔法陣の普通の使用方法は、手の平を魔法陣の端において【照光】と唱えると
自動的に手から魔力を吸い取って魔法が発動する。
光の精霊がどうとかの詠唱は必要ない。
【火球】の魔法陣に【照光】と唱えても何も起きなし、【照光】とか唱えなくても魔力を流し込めば魔法は発動する。
今回は魔力が尽きるまで二人で【照光】の魔法陣に魔力を流し込んでから寝た。
魔力を使いこんでから就寝はいつも通りだ。
翌日、魔法陣はまだ光っていた。
まあ別に害はないだろうから放置だ。
朝食の後、ユイと二人で庭でストレッチをしていた。
今日はアスラはお仕事でいない。アスラもララも不在の時も、剣術の稽古はする。
ユイと決めたマイルールだからだ。
でも、今日の稽古はアスラがいなくて丁度良かったかもしれない。同じ素振りでも、アスラと対峙しているのを想像しながらできるからだ。
今までと同じ振りではアスラには掠りもしない。だからもっと速く。もっと鋭く。
型の練習もアスラと対峙したときを想像して少しでも速く。もっと速く。もっと鋭く。
そんな風に意識しながらしているといつの間にかお昼になっていた。
昼食後、今朝の訓練ではアスラを想定してやっていたのでユイと作戦会議だ。
「正直、魔法を使ったとしてもアスラに勝てるイメージが出てこないよね」
「仮にスタート位置で十分距離があったとしても【火球】とか普通によけて接近戦になりそうだし、ね」
「あのスピードに対抗できそうなのは【電撃】くらいだよなぁ」
「電気なら紙一重でよけられても電気の通りやすい剣に流れていきそうだけど」
「普段の模擬線だと金物とか身に着けてないよね。武器も木刀だし」
「じゃあ土魔法で砂鉄的なのを避けようがないくらい広範囲にばら撒くとか」
「それすると電撃エネルギーが分散されそうだよね」
「やっぱりベースとなる剣術レベルをもう少し上げてから考えようか」
「だね。じゃあそろそろ行こっか」
昔の偉い人は言った。
レベルを上げて物理で殴れ! と。
そういうことだろう。(ちょっと違う)
昼食を終えたら村はずれの一本杉までジョギングだ。
一本杉広場に辿り着くとライカが一本杉の根元ライカが座っている。
「「やあ、ライカ」」
「ケン、ユイ……」
こちらを向いたライカの顔には擦り傷があった。
よく見ると腕や足にも。
「どうしたの? それ」
「……ちょっと転んじゃって」
声のトーンが低い。っていうか、まずは治さなきゃ。
俺とユイがライカの左右からそれぞれ【小回復】を使う。
すぐに全身を治療できたが、しかしどうしたものか。明らかにちょっと転んだ程度のケガじゃないしなぁ。でもそれを隠してるってことは突っ込まれたくないんだろうな。
「もう痛くない?」
「うん、ありがと」
「元気ないね……どうしたの?」
まずは探りを入れてみるか。
「うん、大丈夫だよ」
うーん、思い当たるのは確かハーフエルフってことでいじめられてるとかなんとか。昨日聞いて今日さっそくそういうことってあるか?
力になりたいのに真正面から聞いても話してくれないなら、勝手に想像でアプローチしてみるか。
「今日はどうする?」
「うん、今日は二人がやってるのを見てるよ。どんなことをするの?」
「実はね、剣術で父さまに勝てなくってね。というか勝負にもならないんだよね」
「ケンとユイのお父様ってあのアスラ隊長でしょ?」
あら、父さまったら隊長だったの? 村の警備隊とは聞いていたがやり手だったのか。
確かにべらぼうに強いもんな。
「まあ勝てないにしてもひと泡吹かせてやりたいんだよね。だって一発も入れれないんだぜ?」
「何か考えがあるの?」
「ふふふ。基本的には魔法なしでなんとかしたいと思っていたんだけどね。大人と子供だし多少は
使ってもいいかなって。でも単純に初級魔法使っても避けられると思うんだよ」
「だから魔法っていうか、魔力を使って身体機能を強化ブーストとかできないかなって。」
俺の説明を引き継いでユイが話す。
「腕力を強化して普段より強い力で剣を振ったり、脚力を強化してすごい速さで動けるようになったり」
例えばいじめっ子にやり返したり、すごい勢いで逃げることもできると。
そこまではっきりは言わないけど。
「そ、そんなことができるの??」
さっきまで元気なかったのに、すごい食いついた感じの目をしてる。やはり予想通りだったかな?
「わっかんないけど、魔力って万能だからなんとかなるんじゃない?」
「魔力って普段から体に流れてるのはライカもわかるだろ?」
「うん、今までは当たり前すぎて気づかなかったけど昨日のあれからは感じ取れるようになった」
「じゃあその魔力で腕を振る瞬間、腕にある魔力を使って筋肉を増大させたりとか」
「脚力も足で蹴り出す瞬間、足の裏から魔力を押し出して足を速くうごかしてみたりとか」
「もしくは戦闘民族みたいに体中から力を噴き出して髪を逆立てて金色にしてみたりとか!」
「髪の色を変えたら強くなるの?」
「あ、ごめん。最後のはなんでもない」
しまった、前世のマンガがモトネタなんて言えない。
でもま、RPGだと攻撃力を上げる魔法とか防御力を上げる魔法とか素早さを上げる魔法とかあるしね。
「じゃあまずは、子供ならではの小さい体を生かして素早さを上げるのを目標にしてみようよ」
「そうだね」
じゃあ足を巡っている魔力をどんどん速くして、その密度も少しずつ増やしていってと。
その状態から魔力が筋肉と同化させるようなイメージをしつつ……こんなもんかな。
ユイも同じようにやってるぽい。
ちょっと走ってみよう。ユイと並んで準備して、頷きあった。
ダッ! ズシャーーーー!!!!
「え?」
顔から思いっきり突っ込んでこけた。
「いてててててて……」
「たぶん成功なんだけど、急に脚力が増しても感覚が追い付かなかった」
「ぷぷぷぷ! あははははは! 何泥まみれの顔で真面目なこといってんのー! あははは! しかも二人そろって、ぷぷぷ、変な顔ーーーー!!」」
「「……」」
くそう、まさかこんなに効果があるとは思わなかった。
とりあえず水魔法で水を出して顔を洗う。続いて擦り傷とかも出来てしまったので【小回復】で治す。
「そんなに笑うことないじゃないか。感覚がつかめないからライカもやってみろって!」
「でもさケン、足だけ強化してもなんだかバランス悪くない?」
うむ、確かにそう思っていた。
「どうせだから体全部を対象に魔力で強化してみようか」
「だね」
「でも、足だけ強化してライカがこけるのを見なくていい?」
「そんな意地悪しなくていいです!」
ありゃ、断られた。
「じゃあ、全体強化やってみようか」
さっきと違い体中を巡る魔力を少しずつ流れを速く、密度を徐々に上げる。そして筋肉だけじゃなく自分の体と同化するイメージで練り上げる。そして同化したら固定化する。
「できた、かな?」
よっし、動いてみよう。
ダッ!
すごい勢いで景色が流れる。
「おーーーーできたーーーー!」
でもすごい力に振り回される。
けり出す足、着地する足にきちんと意識して踏ん張る。体重移動を確認しながら動いてみる。
タッッタッタッタッタッタ
「おお、安定したーー!」
一本杉を中心にぐるぐる走り回って見たけど、なかなかの出来だ。
アーマード筋肉スーツを初めて着たスパイのお兄さんが言ってた言葉を思い出した。
たしか、力がべらぼうに上がっても体重は同じなんだからしっかり足を踏ん張って反動を台地で受け止める!!!
マンガの知識も役立つじゃないか!
続いてシャドーボクシングの真似事。
シュ!シュシュシュ!
素晴らしい、拳の速度も上がってる! これならアスラと同等、いやそれよりも上の速度で動き回れる! しかも全然疲れない!
「わーーーすごいーーー」
「すごいじゃなくて、ライカもやってみ?」
先ほどのイメージを漠然とライカにも伝える。
しばらくするとライカは魔力に集中しはじめたのか、目を閉じてプルプルしはじめた。ナニコレ可愛い過ぎなんですけど。
邪魔しちゃ悪いのでそっとしておこう。
「ユイ、打ち合ってみようぜ」
「オッケー!」
俺たちはライトセーバーを作り出し強化状態で剣術模擬試合を始めた。
ガンッ!
と、一発目の打ち合いでライトセーバーが真っ二つに折れた。
「攻撃力もべらぼうに上がってるっぽいね。」
「どのくらいあがったのか試してみよう」
半分に折れたライトセーバーをいつも魔法の標的になってくれている岩に向けて思いっきり投げた。
ガンッ!という音を立てて岩に突き刺さるライトセーバー。
予想では、へこんでヒビが入るくらいだと思ったんだけど、突き刺さりおった!
これにはさすがにびっくりだ。
この世界で魔力による身体能力強化ブーストはヤバいレベルだ。というか、ちょっと調整したい。
一度固定化した練り上げた魔力を今度は解放する。そして今度は込める魔力量をずっと減らして同化させ、固定化する。
ピョーンピョーンという配管工のおじさんがジャンプしたときの音が脳内で再生されながら垂直ジャンプを繰り返して動きを確認する。
さっきまでとは比べ物にならないけど、普段の3倍はジャンプできる。
「込める魔力量によって強化度合も変えれるね」
「よし、今度は素手でやり合ってみよう」
「オッケー」
とはいえ、前世から含めても素手での殴り合いなんてほとんど経験ない。
丸見えの大きく振りかぶった右ストレートがくる、速い!
けどこっちもガードに動くスピードが速いので左ガード。
続いてこちらから右ストレート!
バレバレだったらしくあっさりガードされる。
いくら身体機能が強化されても技能レベルとか皆無な俺たちは雑魚でしかないことを思い知った。
戦い方はアスラに教わっていくこととして、ライカの様子をみる。
どうやら魔力を体に同化させることに成功したっぽく、丁度これから動き回ってみようとしているところだった。
ダッ!
ズコーーーー!
「ぎゃあああ」
「ちょ!ライカ!! 大丈夫??」
なんだろう、デジャブかな? ついさっき俺たちがやった光景そのままだった。
「走り出す感覚が変!!!」
「うん、だから大地を踏みしめるのを丁寧に、、、やってみ?」
【小回復】をかけてあげながら続きを促す。
「わかった」
今度はゆっくり歩きだした。そして競歩。
ジョギング
ランニング
と徐々に速度を上げていく。
しばらく走っているのをみて、そろそろ慣れて来たと思ったので、
「じゃあそろそろ全力で走ってみたらー?」
「え? もう全開だよーー!」
ふむ、普段の2~3倍程度の速さかな?
俺たちが最初にやった魔力量で10倍、2回目に調整したので5倍程度の速さになったので込める魔力量が違ったらしい。
3分ほど走っていただろうか、速度を落としながら戻ってきた
「はぁはぁ……もうだめだ」
「どうしたの?」
「もう体中から魔力が出てこなくなった」
ありゃ、魔力切れか。
確かエルフって人族よりも魔力高いんじゃなかったっけ。まぁ、産まれてからずっと魔力鍛錬してた俺たちとは違うのかな。
「そっか、じゃあライカの魔力だと3分位が限界なんだね」
「そうみたい」
「でもさ、この【身体能力強化】って使い始めるときにちょっと時間がかかるよね」
「魔力を肉体に同化させる時ね。どうせならもうちょっとスムーズにしたいよね」
「明日からはそのあたりを練習してみよう」
「じゃあキリもいいしそろそろ帰ろうか」
「さんせー!」
ということで俺たちは帰宅の途についた。
帰り道、3人で話したことは【身体能力強化】についてはまだ誰にも使わないってこと。
まだ完成とは言えない段階なので、満場一致だった。
つまり、俺たちはアスラとの模擬戦でまだ使わないということ。もっと技術的なものを教わりたいという気持ちが強かったからだ。そして技術を学び、【身体能力強化】も完成したらその時アスラに挑もう。
敢えてライカにも同意してもらったのは、いじめっ子に調整出来てない【身体能力強化】使ってやりすぎちゃったらいけないからだ。
意外と気が利くでしょ、俺たち。
いつも通り途中でライカと別れ帰宅した。
夕食を終えて部屋に入ると、昨日【照光】の魔法陣はいまだに光輝いていた。
オリジナル魔法、【身体能力強化】を開発してから1週間程経っただろうか。
午前中の剣術の稽古は真面目に取り組んでいたが模擬戦ではアスラに掠らせることも出来ず、口惜しさからその後の基礎訓練には気合が入っていた。
午後からの時間は一本杉平原でライカと一緒に【身体能力強化】の練習をしていた。
ライカは一度使うと魔力切れしてしばらく使えなくなるため俺達ほどは練習できなかった。それでも最初に比べればスムーズになり発動まで1分ほどでできるようになった。
俺とユイは何度も練習し、「ブースト」って言う間くらいの時間で使用することができるようになっていたし込める魔力調整も出来た。
5歳になってからなんだか生活が安定したような気がする。体力、魔力ともにしっかりと鍛えることができていると思うし、実際に向上していくのが実感できて楽しかった。
「そろそろアスラ山に登りますか」
「そこに山があるからね」
誰もなぜ登るかなんて聞いていない。
が、手近な目標が父親ってのはよくある話だと思う。超えられるかどうかは別としてね。
ある日、午前中の剣術の時間でのことだ。
ストレッチも基礎訓練も終わってアスラとの模擬戦の時間だ。
「父さま、一度魔法を使っての模擬戦というのをやりたいのですが受けてもらえないでしょうか?」
目の前にある高い壁は超えてこそ意味がある!
とはいえ、攻撃魔法は使わない。
「ん? まあいいぞ。お前たちの魔法はすごいからな! 俺もちょいと気合を入れるか!」
受諾してもらえた。
「ではいきます!」
まず使うのは闇魔法のひとつ。
「【認識疎外】」
「【認識疎外】」
俺たちは光学明細って呼んでるけど(笑)
「ほぅ……」
そして【身体能力強化】だ。こちらは見た目には何も変わらない。
ゆっくりアスラを中心に俺とユイが左右に分かれる。
丁度、俺とアスラとユイが一直線になった瞬間、ユイと同時に飛び出した。
が、ダッシュの速度は微妙に俺のほうが速くユイは一人時間差狙いだ。
まず俺の一振りをアスラの左側から一発!
アスラからすれば認識しずらい相手から放たれる想定外の速度の攻撃だ。
「あまい!」
ガンッ!
防がれた? が、まだまだ想定内。ガードされたとはいえそこからさらに魔法を追加だ。
「【照光】」
俺とアスラの交わっている木刀から急激に光が発生!
俺とユイは片目を瞑っている
直後、アスラの右側からユイの横なぎ一閃!
ガンッ
「うぉ?」
背中側からの一発をギリギリ小手で受け止めたアスラだったが体制が崩れた。
【魔法弾】×2
俺もユイもいない、アスラの近くの足元に放つ
ザンッ! ザンッ! という音を立てて2発とも地面に直撃すると砂をまき散らした。
アスラの意識が一瞬予想外の音を立てたほうに向く。そこに俺とユイが同時に追撃!
ガガンッ!
ギリギリでアスラの木刀によりガードされた
驚きを隠せないアスラと、どうだと言わんばかりのユイの顔が見える。俺の顔もどうだと言ってるんだろうな。
「よ、よし、それまで」
その掛け声で木刀を腰に収める
「「ありがとうございました!」」
一礼した。
今までガードはおろか、掠らせることすら出来なかったアスラに大した成果だ!
とはいえまずはアスラに【小回復】で治療する。
「魔法を使えるとなるとお前たちはさすがにすごいな!」
褒められてうれしくなる。
「だがせっかくの魔法が生かし切れていないところもあったぞ。例えば、【認識疎外】で俺から見えにくくなったのに気配は丸出しだし足音は聞こえるし。さすがに【照光】にはビックリして不意を突かれたけどな」
「足音や気配ってどうやれば消せるのですか?」
「気配は修練あるのみ。足音は今でも訓練やってるだろ?体重移動の基礎訓練の延長だ」
「精進します」
「だが二人ともよくやった。それだけ動けるようになっていれば、練習量は倍にしても大丈夫だ!」
なんてこった、練習量が倍になった。動きに関しては【身体機能強化】のおかげなんですが。
「まぁそんな顔するなって。褒美にいいものを見せてやるよ」
アスラは普段使っている真剣を持ち出すと家の裏に周り、大きな岩の前まで俺たちを連れてきた。
岩の前で真剣を抜くと、岩まで2メートルほどの距離をとって気合を入れている。
一太刀!
岩が真っ二つになった。
「これが神明流の剣撃だ」
カッケーーー!!! これは惚れてまうわー!!
剣と魔法のファンタジー世界にしかあり得ない物理法則なんて知ったこっちゃないこの剣撃は俺たちを魅了した!
「父さま、すごいです!」
魔法がいろいろ使えるとはいえ、5歳の子供に一本取られたことなど忘れたように得意満面の顔になっているアスラ。父親の威厳ってやつを示せれてよかったね。
「よし、じゃあそろそろ昼食にするか」
「「はーい」」
昼食はいつもより賑やかだった。その中で、アスラから提案があった
「お前たちもだいぶ動けるようなったようだし、今度の魔物討伐に一緒に行くか?」
「「行きたいです!」」
魔物の種類なんて関係ない。ファンタジー世界なのにこの村は平和過ぎて魔物を見る機会がなかったのだ。俺達は毎日いろいろ鍛錬してきたからレベル1ってことはないだろう。その辺にいるような雑魚モンスターなんかに負けることはないはず。負けないよね?
討伐隊に連れて行ってもらう魔物見学ツアーだ!
「よし、じゃあ明日は少し早いから寝坊するんじゃないぞ」
「「はい!」」
「母さま、今日ハーフエルフの子にあったよ」
「それで友達になっちゃった」
「ハーフエルフ……もしかしてライカちゃん?」
「知ってるの?」
「この前治療院に来てたのよ。治療院のエリン先生のとこのお子さんよ」
「ケガでもしてたの?」
「ケガ自体は大したことなかったのよ、その時もエリン先生の【小回復】ですぐに治ったのよね。」
治ったという割には影のある言い方だ。
「どうも、ハーフエルフってことで近所の子供たちに虐められてるみたいなのよ。あなた達は仲良くしてあげるのよ」
「友達だもん、仲良くするのは当たり前だよ」
どうよ、子供理論。
「そうね、あなた達なら大丈夫よね」
なぜかお墨付きをいただいた。結果オーライだ。
それはさておき、治療院のエリン先生というのがエルフなのかな。
ライカがあれだけ可愛いのだ、きっと超美人に違いない。
ライカをもっとずっと大人にして、綺麗な長い銀髪にボンッキュッボン!てな感じだよな、きっと。
しかも、女医って響きもいい!
女医。
女医かぁ……むふ。
ふとユイを見ると同じことを考えているのか、鼻の下が伸びている。
いや、お前も一応女だろ!
まあ、精神的なものは別として肉体的に性欲なんてまだまだ発生しないんだよな、5歳児の体じゃ。
オネショタ展開はもっと先だな。
夕食後は誕生日にもらった本と格闘していた。
魔力の流れが分かっても、魔法陣の意味なんてさっぱりだからだ。
本に記載されているのと同じように模様を描いて、そこに魔力を流し込むと確かに魔法は発動する。
現に今もこの部屋の照明は【照光】の魔法陣だ。
とりあえず使えなくはないけど原理とかはちゃんと理論立てて説明してほしい。
どの模様がどういった意味合いなのか分からないということは、まったく同じ魔法陣を覚える記憶力勝負ってことになる。
前世よりは優秀っぽいこの肉体でもあまり複雑なのはちょっと無理……だと思う。
ちなみに魔法陣の普通の使用方法は、手の平を魔法陣の端において【照光】と唱えると
自動的に手から魔力を吸い取って魔法が発動する。
光の精霊がどうとかの詠唱は必要ない。
【火球】の魔法陣に【照光】と唱えても何も起きなし、【照光】とか唱えなくても魔力を流し込めば魔法は発動する。
今回は魔力が尽きるまで二人で【照光】の魔法陣に魔力を流し込んでから寝た。
魔力を使いこんでから就寝はいつも通りだ。
翌日、魔法陣はまだ光っていた。
まあ別に害はないだろうから放置だ。
朝食の後、ユイと二人で庭でストレッチをしていた。
今日はアスラはお仕事でいない。アスラもララも不在の時も、剣術の稽古はする。
ユイと決めたマイルールだからだ。
でも、今日の稽古はアスラがいなくて丁度良かったかもしれない。同じ素振りでも、アスラと対峙しているのを想像しながらできるからだ。
今までと同じ振りではアスラには掠りもしない。だからもっと速く。もっと鋭く。
型の練習もアスラと対峙したときを想像して少しでも速く。もっと速く。もっと鋭く。
そんな風に意識しながらしているといつの間にかお昼になっていた。
昼食後、今朝の訓練ではアスラを想定してやっていたのでユイと作戦会議だ。
「正直、魔法を使ったとしてもアスラに勝てるイメージが出てこないよね」
「仮にスタート位置で十分距離があったとしても【火球】とか普通によけて接近戦になりそうだし、ね」
「あのスピードに対抗できそうなのは【電撃】くらいだよなぁ」
「電気なら紙一重でよけられても電気の通りやすい剣に流れていきそうだけど」
「普段の模擬線だと金物とか身に着けてないよね。武器も木刀だし」
「じゃあ土魔法で砂鉄的なのを避けようがないくらい広範囲にばら撒くとか」
「それすると電撃エネルギーが分散されそうだよね」
「やっぱりベースとなる剣術レベルをもう少し上げてから考えようか」
「だね。じゃあそろそろ行こっか」
昔の偉い人は言った。
レベルを上げて物理で殴れ! と。
そういうことだろう。(ちょっと違う)
昼食を終えたら村はずれの一本杉までジョギングだ。
一本杉広場に辿り着くとライカが一本杉の根元ライカが座っている。
「「やあ、ライカ」」
「ケン、ユイ……」
こちらを向いたライカの顔には擦り傷があった。
よく見ると腕や足にも。
「どうしたの? それ」
「……ちょっと転んじゃって」
声のトーンが低い。っていうか、まずは治さなきゃ。
俺とユイがライカの左右からそれぞれ【小回復】を使う。
すぐに全身を治療できたが、しかしどうしたものか。明らかにちょっと転んだ程度のケガじゃないしなぁ。でもそれを隠してるってことは突っ込まれたくないんだろうな。
「もう痛くない?」
「うん、ありがと」
「元気ないね……どうしたの?」
まずは探りを入れてみるか。
「うん、大丈夫だよ」
うーん、思い当たるのは確かハーフエルフってことでいじめられてるとかなんとか。昨日聞いて今日さっそくそういうことってあるか?
力になりたいのに真正面から聞いても話してくれないなら、勝手に想像でアプローチしてみるか。
「今日はどうする?」
「うん、今日は二人がやってるのを見てるよ。どんなことをするの?」
「実はね、剣術で父さまに勝てなくってね。というか勝負にもならないんだよね」
「ケンとユイのお父様ってあのアスラ隊長でしょ?」
あら、父さまったら隊長だったの? 村の警備隊とは聞いていたがやり手だったのか。
確かにべらぼうに強いもんな。
「まあ勝てないにしてもひと泡吹かせてやりたいんだよね。だって一発も入れれないんだぜ?」
「何か考えがあるの?」
「ふふふ。基本的には魔法なしでなんとかしたいと思っていたんだけどね。大人と子供だし多少は
使ってもいいかなって。でも単純に初級魔法使っても避けられると思うんだよ」
「だから魔法っていうか、魔力を使って身体機能を強化ブーストとかできないかなって。」
俺の説明を引き継いでユイが話す。
「腕力を強化して普段より強い力で剣を振ったり、脚力を強化してすごい速さで動けるようになったり」
例えばいじめっ子にやり返したり、すごい勢いで逃げることもできると。
そこまではっきりは言わないけど。
「そ、そんなことができるの??」
さっきまで元気なかったのに、すごい食いついた感じの目をしてる。やはり予想通りだったかな?
「わっかんないけど、魔力って万能だからなんとかなるんじゃない?」
「魔力って普段から体に流れてるのはライカもわかるだろ?」
「うん、今までは当たり前すぎて気づかなかったけど昨日のあれからは感じ取れるようになった」
「じゃあその魔力で腕を振る瞬間、腕にある魔力を使って筋肉を増大させたりとか」
「脚力も足で蹴り出す瞬間、足の裏から魔力を押し出して足を速くうごかしてみたりとか」
「もしくは戦闘民族みたいに体中から力を噴き出して髪を逆立てて金色にしてみたりとか!」
「髪の色を変えたら強くなるの?」
「あ、ごめん。最後のはなんでもない」
しまった、前世のマンガがモトネタなんて言えない。
でもま、RPGだと攻撃力を上げる魔法とか防御力を上げる魔法とか素早さを上げる魔法とかあるしね。
「じゃあまずは、子供ならではの小さい体を生かして素早さを上げるのを目標にしてみようよ」
「そうだね」
じゃあ足を巡っている魔力をどんどん速くして、その密度も少しずつ増やしていってと。
その状態から魔力が筋肉と同化させるようなイメージをしつつ……こんなもんかな。
ユイも同じようにやってるぽい。
ちょっと走ってみよう。ユイと並んで準備して、頷きあった。
ダッ! ズシャーーーー!!!!
「え?」
顔から思いっきり突っ込んでこけた。
「いてててててて……」
「たぶん成功なんだけど、急に脚力が増しても感覚が追い付かなかった」
「ぷぷぷぷ! あははははは! 何泥まみれの顔で真面目なこといってんのー! あははは! しかも二人そろって、ぷぷぷ、変な顔ーーーー!!」」
「「……」」
くそう、まさかこんなに効果があるとは思わなかった。
とりあえず水魔法で水を出して顔を洗う。続いて擦り傷とかも出来てしまったので【小回復】で治す。
「そんなに笑うことないじゃないか。感覚がつかめないからライカもやってみろって!」
「でもさケン、足だけ強化してもなんだかバランス悪くない?」
うむ、確かにそう思っていた。
「どうせだから体全部を対象に魔力で強化してみようか」
「だね」
「でも、足だけ強化してライカがこけるのを見なくていい?」
「そんな意地悪しなくていいです!」
ありゃ、断られた。
「じゃあ、全体強化やってみようか」
さっきと違い体中を巡る魔力を少しずつ流れを速く、密度を徐々に上げる。そして筋肉だけじゃなく自分の体と同化するイメージで練り上げる。そして同化したら固定化する。
「できた、かな?」
よっし、動いてみよう。
ダッ!
すごい勢いで景色が流れる。
「おーーーーできたーーーー!」
でもすごい力に振り回される。
けり出す足、着地する足にきちんと意識して踏ん張る。体重移動を確認しながら動いてみる。
タッッタッタッタッタッタ
「おお、安定したーー!」
一本杉を中心にぐるぐる走り回って見たけど、なかなかの出来だ。
アーマード筋肉スーツを初めて着たスパイのお兄さんが言ってた言葉を思い出した。
たしか、力がべらぼうに上がっても体重は同じなんだからしっかり足を踏ん張って反動を台地で受け止める!!!
マンガの知識も役立つじゃないか!
続いてシャドーボクシングの真似事。
シュ!シュシュシュ!
素晴らしい、拳の速度も上がってる! これならアスラと同等、いやそれよりも上の速度で動き回れる! しかも全然疲れない!
「わーーーすごいーーー」
「すごいじゃなくて、ライカもやってみ?」
先ほどのイメージを漠然とライカにも伝える。
しばらくするとライカは魔力に集中しはじめたのか、目を閉じてプルプルしはじめた。ナニコレ可愛い過ぎなんですけど。
邪魔しちゃ悪いのでそっとしておこう。
「ユイ、打ち合ってみようぜ」
「オッケー!」
俺たちはライトセーバーを作り出し強化状態で剣術模擬試合を始めた。
ガンッ!
と、一発目の打ち合いでライトセーバーが真っ二つに折れた。
「攻撃力もべらぼうに上がってるっぽいね。」
「どのくらいあがったのか試してみよう」
半分に折れたライトセーバーをいつも魔法の標的になってくれている岩に向けて思いっきり投げた。
ガンッ!という音を立てて岩に突き刺さるライトセーバー。
予想では、へこんでヒビが入るくらいだと思ったんだけど、突き刺さりおった!
これにはさすがにびっくりだ。
この世界で魔力による身体能力強化ブーストはヤバいレベルだ。というか、ちょっと調整したい。
一度固定化した練り上げた魔力を今度は解放する。そして今度は込める魔力量をずっと減らして同化させ、固定化する。
ピョーンピョーンという配管工のおじさんがジャンプしたときの音が脳内で再生されながら垂直ジャンプを繰り返して動きを確認する。
さっきまでとは比べ物にならないけど、普段の3倍はジャンプできる。
「込める魔力量によって強化度合も変えれるね」
「よし、今度は素手でやり合ってみよう」
「オッケー」
とはいえ、前世から含めても素手での殴り合いなんてほとんど経験ない。
丸見えの大きく振りかぶった右ストレートがくる、速い!
けどこっちもガードに動くスピードが速いので左ガード。
続いてこちらから右ストレート!
バレバレだったらしくあっさりガードされる。
いくら身体機能が強化されても技能レベルとか皆無な俺たちは雑魚でしかないことを思い知った。
戦い方はアスラに教わっていくこととして、ライカの様子をみる。
どうやら魔力を体に同化させることに成功したっぽく、丁度これから動き回ってみようとしているところだった。
ダッ!
ズコーーーー!
「ぎゃあああ」
「ちょ!ライカ!! 大丈夫??」
なんだろう、デジャブかな? ついさっき俺たちがやった光景そのままだった。
「走り出す感覚が変!!!」
「うん、だから大地を踏みしめるのを丁寧に、、、やってみ?」
【小回復】をかけてあげながら続きを促す。
「わかった」
今度はゆっくり歩きだした。そして競歩。
ジョギング
ランニング
と徐々に速度を上げていく。
しばらく走っているのをみて、そろそろ慣れて来たと思ったので、
「じゃあそろそろ全力で走ってみたらー?」
「え? もう全開だよーー!」
ふむ、普段の2~3倍程度の速さかな?
俺たちが最初にやった魔力量で10倍、2回目に調整したので5倍程度の速さになったので込める魔力量が違ったらしい。
3分ほど走っていただろうか、速度を落としながら戻ってきた
「はぁはぁ……もうだめだ」
「どうしたの?」
「もう体中から魔力が出てこなくなった」
ありゃ、魔力切れか。
確かエルフって人族よりも魔力高いんじゃなかったっけ。まぁ、産まれてからずっと魔力鍛錬してた俺たちとは違うのかな。
「そっか、じゃあライカの魔力だと3分位が限界なんだね」
「そうみたい」
「でもさ、この【身体能力強化】って使い始めるときにちょっと時間がかかるよね」
「魔力を肉体に同化させる時ね。どうせならもうちょっとスムーズにしたいよね」
「明日からはそのあたりを練習してみよう」
「じゃあキリもいいしそろそろ帰ろうか」
「さんせー!」
ということで俺たちは帰宅の途についた。
帰り道、3人で話したことは【身体能力強化】についてはまだ誰にも使わないってこと。
まだ完成とは言えない段階なので、満場一致だった。
つまり、俺たちはアスラとの模擬戦でまだ使わないということ。もっと技術的なものを教わりたいという気持ちが強かったからだ。そして技術を学び、【身体能力強化】も完成したらその時アスラに挑もう。
敢えてライカにも同意してもらったのは、いじめっ子に調整出来てない【身体能力強化】使ってやりすぎちゃったらいけないからだ。
意外と気が利くでしょ、俺たち。
いつも通り途中でライカと別れ帰宅した。
夕食を終えて部屋に入ると、昨日【照光】の魔法陣はいまだに光輝いていた。
オリジナル魔法、【身体能力強化】を開発してから1週間程経っただろうか。
午前中の剣術の稽古は真面目に取り組んでいたが模擬戦ではアスラに掠らせることも出来ず、口惜しさからその後の基礎訓練には気合が入っていた。
午後からの時間は一本杉平原でライカと一緒に【身体能力強化】の練習をしていた。
ライカは一度使うと魔力切れしてしばらく使えなくなるため俺達ほどは練習できなかった。それでも最初に比べればスムーズになり発動まで1分ほどでできるようになった。
俺とユイは何度も練習し、「ブースト」って言う間くらいの時間で使用することができるようになっていたし込める魔力調整も出来た。
5歳になってからなんだか生活が安定したような気がする。体力、魔力ともにしっかりと鍛えることができていると思うし、実際に向上していくのが実感できて楽しかった。
「そろそろアスラ山に登りますか」
「そこに山があるからね」
誰もなぜ登るかなんて聞いていない。
が、手近な目標が父親ってのはよくある話だと思う。超えられるかどうかは別としてね。
ある日、午前中の剣術の時間でのことだ。
ストレッチも基礎訓練も終わってアスラとの模擬戦の時間だ。
「父さま、一度魔法を使っての模擬戦というのをやりたいのですが受けてもらえないでしょうか?」
目の前にある高い壁は超えてこそ意味がある!
とはいえ、攻撃魔法は使わない。
「ん? まあいいぞ。お前たちの魔法はすごいからな! 俺もちょいと気合を入れるか!」
受諾してもらえた。
「ではいきます!」
まず使うのは闇魔法のひとつ。
「【認識疎外】」
「【認識疎外】」
俺たちは光学明細って呼んでるけど(笑)
「ほぅ……」
そして【身体能力強化】だ。こちらは見た目には何も変わらない。
ゆっくりアスラを中心に俺とユイが左右に分かれる。
丁度、俺とアスラとユイが一直線になった瞬間、ユイと同時に飛び出した。
が、ダッシュの速度は微妙に俺のほうが速くユイは一人時間差狙いだ。
まず俺の一振りをアスラの左側から一発!
アスラからすれば認識しずらい相手から放たれる想定外の速度の攻撃だ。
「あまい!」
ガンッ!
防がれた? が、まだまだ想定内。ガードされたとはいえそこからさらに魔法を追加だ。
「【照光】」
俺とアスラの交わっている木刀から急激に光が発生!
俺とユイは片目を瞑っている
直後、アスラの右側からユイの横なぎ一閃!
ガンッ
「うぉ?」
背中側からの一発をギリギリ小手で受け止めたアスラだったが体制が崩れた。
【魔法弾】×2
俺もユイもいない、アスラの近くの足元に放つ
ザンッ! ザンッ! という音を立てて2発とも地面に直撃すると砂をまき散らした。
アスラの意識が一瞬予想外の音を立てたほうに向く。そこに俺とユイが同時に追撃!
ガガンッ!
ギリギリでアスラの木刀によりガードされた
驚きを隠せないアスラと、どうだと言わんばかりのユイの顔が見える。俺の顔もどうだと言ってるんだろうな。
「よ、よし、それまで」
その掛け声で木刀を腰に収める
「「ありがとうございました!」」
一礼した。
今までガードはおろか、掠らせることすら出来なかったアスラに大した成果だ!
とはいえまずはアスラに【小回復】で治療する。
「魔法を使えるとなるとお前たちはさすがにすごいな!」
褒められてうれしくなる。
「だがせっかくの魔法が生かし切れていないところもあったぞ。例えば、【認識疎外】で俺から見えにくくなったのに気配は丸出しだし足音は聞こえるし。さすがに【照光】にはビックリして不意を突かれたけどな」
「足音や気配ってどうやれば消せるのですか?」
「気配は修練あるのみ。足音は今でも訓練やってるだろ?体重移動の基礎訓練の延長だ」
「精進します」
「だが二人ともよくやった。それだけ動けるようになっていれば、練習量は倍にしても大丈夫だ!」
なんてこった、練習量が倍になった。動きに関しては【身体機能強化】のおかげなんですが。
「まぁそんな顔するなって。褒美にいいものを見せてやるよ」
アスラは普段使っている真剣を持ち出すと家の裏に周り、大きな岩の前まで俺たちを連れてきた。
岩の前で真剣を抜くと、岩まで2メートルほどの距離をとって気合を入れている。
一太刀!
岩が真っ二つになった。
「これが神明流の剣撃だ」
カッケーーー!!! これは惚れてまうわー!!
剣と魔法のファンタジー世界にしかあり得ない物理法則なんて知ったこっちゃないこの剣撃は俺たちを魅了した!
「父さま、すごいです!」
魔法がいろいろ使えるとはいえ、5歳の子供に一本取られたことなど忘れたように得意満面の顔になっているアスラ。父親の威厳ってやつを示せれてよかったね。
「よし、じゃあそろそろ昼食にするか」
「「はーい」」
昼食はいつもより賑やかだった。その中で、アスラから提案があった
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「「行きたいです!」」
魔物の種類なんて関係ない。ファンタジー世界なのにこの村は平和過ぎて魔物を見る機会がなかったのだ。俺達は毎日いろいろ鍛錬してきたからレベル1ってことはないだろう。その辺にいるような雑魚モンスターなんかに負けることはないはず。負けないよね?
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「「はい!」」
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