転生したらなぜか双子になってたけどそれはそれで便利だし気にせずこの素晴らしき世界を楽しみます

気まぐれ八咫烏

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水の精霊編

旅には準備が必要だと思うのです

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 翌朝、お土産に魚の干物を購入しギルド隣の獣舎で地竜を引き取ると乗り込むとバリの町を出発した。

 急ぐわけでもないので、お尻と相談してゆっくり目で進んだが4時間ほどでサイージョ村に到着した。



 アスラは地竜を獣舎に返し、ライカをベンのところまで送っていったあと自宅に帰った。



 自宅ではお告げの話とそれを受けて一か月後旅立つことになった話をララに報告した。

 冒険者になったという話をしたら、予想していたようでやっぱりという表情だった。



 ララに報告したあとは旅の疲れを癒すため、ユイとお風呂に入るぜ。



 ほぼ村の交流施設と化した我が家の風呂だが、この時間は誰も入りに来ていないようで俺達だけの貸し切り状態だった。

 まぁ、自宅を貸し切りってのも変な話だけど。



 湯船につかると疲れが取れる。

 やっぱりベースは日本人なんだなぁと思うひと時である。



 そこで思いついたことがあった。



 俺はチョーカーの水印を触りそーっと魔力を送った。



 ちなみに、このチョーカーは外すことができない。

 風呂に入るため服は全部脱いだが、これだけは外すことができなかった。

 呪いのアイテムなのかもしれん。





 水印がチョーカーから分離し青白い光と共にウンディーネが現れた。



『呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃーん!』



「あ、うん。そういうのはいいから普通に出てきてよ」



『なによ、ちゃんと魔力送ったからサービスしてあげてんのに。それで、今回はどうしたのさ?』



「いやね、ちょっとこのお風呂を見てもらいたいんだけどね」



『へぇ~、個人の風呂にしては上等じゃない。特に岩場から湧き出てる感じも好感もてるわね。……で?』



「ほら、魔法の力でお湯を作ってるんだ。だからこのお湯、特別効能とかはないわけ。で、ウンディーネならこのお湯をミネラルたっぷりにしたり、地下水っぽくというか温泉っぽくいい感じにしてもらえないかなと」



『水の質にこだわるなんて、あんた結構いい趣味してるじゃん!そういうところ好きよ!じゃあえっと、ああ、この魔法陣で水を作ってるのね。これをこうやって……』



 なんかノリよく手伝ってくれるみたいだ。

 水を生成する魔法陣をなにやらいじりはじめた。



 湯船に浸かって待つこと5分ほど。



『こんなもんでいいわね。ちょっと、今のお湯を抜いてこの魔法陣を使ってみなさいよ』



 さっそく湯船からお湯を抜き、全部抜けたら栓をした。

 しっかり温まっていたので湯冷ましにちょうどよかった。



「じゃあ、魔力を入れるね」



 俺はウンディーネが改造したっぽい魔法陣に魔力を込める。



 すると温泉っぽい匂いがしてきた。しかも少し白みがかっている。



「おお、温泉っぽい!」



『そうでしょうそうでしょう!』



 しばらくすると湯船いっぱいになったので早速入ってみる。



 お湯は炭酸が入っているのかシュワシュワしているのに肌ざわりは柔らかくとても気持ちがいい。



『どうよ? ねぇ、どうよ?』



「こりゃ気持ちいわー!このお湯、どんな効能があるんだ?」



『聞いて驚きなさい!このお湯は全て聖水で出来ているのよ。まぁ、私が直接作るものよりは聖水としての格が低くなるから力は落ちるけど、入浴で使う分には問題ないのよ。このお湯に浸かると、しばらくは聖水の効果で魔物は近づきにくくなるわ!さらに腰痛、切り傷、冷え性、乾燥肌にも効能があるんだからね!』



「おお、お前すごいなー!」



『そうでしょうそうでしょう!もっと敬ってもいいわよ!』



 俺達に褒められてもともと高い鼻が伸びていく。



「水の精霊様さまだな!じゃあお礼に魔力を送っておくよ」



 ユイはチョーカーの水印に触れるとそーーーと魔力を送った。



『ああーー!そうよ!!!そうそう、そのくらいがちょうどいいのよ!やればできるじゃない!』



「ありがとう!ところでもう一つ用事があるんだけど、いいかな?」



『なんでも言ってみなさい!この私に不可能はないのよ!』



1/6だけどな。

でも今はそんなツッコミはしない。



「他の精霊のところを回れって言ってたけど、どこからいったほうがいいとかあるのか?」



『そうね。まずはここから南のほうにある火の精霊のところがいいんじゃないかしら』



「行き方とかなんか指定ある?」



『行き方もなにも、あの辺はは島がたくさんあるから船で行くしかないわよ?』



 船か。しかしバリからの定期便はシーマにしか出ていないのは確認済みだ。

 シーマから出ていたりするのかな。

 アスラと相談してみよう。



「了解、わかったよ。ちょっと調べて火の精霊様のところから行くようにする」



『私の言う通りにしておけば万事問題ないわけ。しっかり敬いなさいね。あと魔力もちょくちょく送りなさいね』



 それだけ言うとウンディーネは光を放ちながら小さくなり、俺のチョーカーの装飾の一部になった。



 いやー、ウンディーネっていい子じゃないか。

 これからはちょくちょく魔力送ってやろうかな。



 自宅に温泉って贅沢の極みだ。



 そういえばシーマまで行ったのに石鹸とかシャンプー探すの忘れてたな。

 今度行ったときはそういうのも探そう。



 温泉温泉極楽極楽。







 俺達は心行くまで精霊温泉を堪能し、風呂を出た。


 その日の夕食の時だった。
 どうしても山間の田舎村だから山菜を中心に狩でとれた肉類がメインディッシュになりがちな我が家の食卓。



 それが今日はお土産に買った魚の干物がメインディッシュだった。

 基本肉食な俺達だけど、たまには海のものも食べたい。

 きっとララもそうだろうという予想のもと、お土産は魚の干物にしたんだがこれが結構いけたようだ。



 そんなウチの食卓事情は置いといて。



 10歳のお告げで冒険者となり世界中を旅することになった俺達。

 具体的には精霊のところを巡らないといけないらしい。



「しかしまぁ、精霊様のところを全部めぐるとなると、本当に世界一周しないといけなくなるが10歳の子供に無茶なお告げをなさったものだな」



「父さま、世界を一周しようとするとどのくらいの期間がかかるものなのですか?」



「そうだなぁ。5年から10年はかかるんじゃないか……?」



 そんなにもかかるのか。

 まぁ、前世みたいに飛行機でひとっ飛び~ってわけにはいかないだろうから仕方ないのかな?

 この世界に生れ落ちて10年経ったけど、どうやら新幹線はないっぽいということは分かっていた。



 となると、徒歩、馬車、竜車、船。

 このあたりがメインの移動手段となるのか。



「ちなみに、最初は火の精霊様のところへ行けと言われました。ここからだとどういうルートになるのですか?」



「そうだな。精霊都市シーマから西の森林地帯を抜けるとセーキの村というところがある。そこから南に行くと陸地の最後は港町ゴカジに辿り着く。そこから船に乗ってずーとずーと南に島々を渡る感じでいけば精霊都市に着くはずだ。だが、俺も行ったことはないから詳しくは現地で情報を集めながらとなるだろうな」



「情報を集めながら進路を決めるというのも冒険者っぽいですね」



「まぁ、そういうことだ。おそらくだが3か月くらいあればたどり着けるんじゃないかと俺は予想するぞ」





 うわー、船旅何か月とか俺大丈夫かな。。。

 前世でも船なんて数時間しか乗ったことないのに。

 酔い止めとか売ってるかな?



「なるほど。ではシーマからはそのように進んでみるようにします。ところで、僕たちが出発するまで1か月ほど準備期間としたのですがその間に装備を整えたいと考えています。冒険者としてというよりも、旅人として自分の身を守るものなのでしっかりしたものを手に入れたいと思いますが、どこで仕立ててもらうといいでしょうか?」



「それだったらレムザに相談してみるといい。本来彼はこんな田舎で動物の世話をしているのが不思議なくらいなんだからな」



「わかりました。では早速明日にでもレムザさんのところへ行ってきます」



 ということで翌日は朝の日課を終えるとレムザ宅にやってきた。



 レムザさんはエリン先生の治療院からさらに山奥に入っていったところにあった。

 家はかなりでかかった。前世の住宅事情を知っていると、この辺の田舎だとどの家も大きくは感じるが、レムザさん宅はそれにしても大きい。図書館とか大型スーパーくらいのサイズだ。

 ただし、豪華かと言われるとそれは違うと言い切れる。

 なんというか……古びているのはそうだけど、そもそも作りがおおざっぱというか、

 端的に言うと人の家というより獣舎とかのほうが近い感じがしたからだ。



 まぁ、あの人のことだから動物とかと一緒に暮らしているとしてもなんら不思議じゃない。



「レームーザーさーん!」



「おお、珍しい客人じゃな!ガハハハ」



「こんにちは、レムザさん」



「おう、こんにちは。まぁ遠慮せずに入った入った」





 レムザ邸に入ると意外(失礼)にもきちんとした応接間に通された。



「ちょっと待っとれよ。今酒を用意するからの」



「レムザさん、僕たちは子供なのでお酒はダメですよ!」



「ああ、そうじゃったな!ガハハ。ではお茶でも。さーて、お茶はどこじゃったかな」



 あまりお茶を出す客人が来ないのか、お茶のありかを探して探して。



「レムザさん、お構いなく!僕たちが突然来ちゃったわけですし」



「そうはいかん!いいか、ドワーフっちゅーのは礼儀を大事にするんじゃ。覚えておくといいぞ。ガハハハ」



 なんというかそれは意外。

 もっと大雑把な性格でお酒が好きってイメージがあったんだけども。



「おお、あったぞ。やっぱりここだと思っておったんじゃ!ワシの記憶力は確かじゃわい。ガハハハ」



 という声が奥から聞こえてきた。

 この人、独り言でも笑ってるんだな。



 しばらくすると、どう見てもこれはエールを入れるジョッキじゃないか?という木製のグラスにお茶が入ったものが出てきた。



 礼儀を大事にする……まぁ気持ちの問題で格式高いとは言ってないもんね。



「ありがとうございます、いただきます」



 レムザは同じジョッキを持って俺達の向かいにドンと腰かけるとグビグビ飲み始めた。



 それ、絶対お茶じゃないよね?エールでしょ!

 というツッコミは置いといて。



「それで、二人してワシのところに来るなんて珍しいの。どうしたんじゃ?」



「実は先日10歳になりまして、精霊のところにお告げを受けに行ってきました」



「そうかそうか。もうそんな歳なんじゃな。ついこないだ産まれたばかりかと思っとったがの。ガハハハ」



「はい、それで冒険者となって世界中を巡ることになったのです」



「そうか。お前さん達は10歳とは思えない程強くなったからの。この村におさまる器ではないと思っとったよ」



 器とかじゃなくて問題は魂らしいんだけどね。



「それで、旅をするにあたりきちんとした装備を整えたくて。父さまからまずはレムザさんに相談するといいと助言を頂きました」



「そうか……」

さっきまで笑顔だったのに急に真面目な顔になってしまった。



「確かにワシの作る装備はこの村では上等な部類かもしれん。しかしな、世界は広い。ワシの作るものなど、分かる者から見たら子供の玩具じゃ」



 悲しそうな顔になった。

 何か過去にありましたエアーがあたりを漂っている。



 聞いてみるべきか……いや、悲しい過去を掘り起こしたら申し訳ないしな。



「そんなことは無いですよ。それに、僕たちはまだ冒険者といっても新人ルーキーですから、いきなり最強装備が欲しいなんて思っていません。それよりも、どこの誰が作ったか分からないものよりもレムザさんのお手製がいいと思っているから相談に来たのです」



「そうか……」

 一言そう呟くと、レムザは黙ってしまった。



 しばらく俯いていたが、ふと語り始めた。





「ワシらドワーフ族っちゅーのは他のどの種族よりも鍛冶が得意なんじゃ。ワシは昔はドワーフの村で鍛冶の修行をしとったことがあるんじゃ」

 少し寂しそうな表情のまま話し続ける

「ワシの師匠は特に厳しい人じゃってね。修行を初めて10年経っても銅や鉄、せいぜい鋼しか触らせてくれんかったんじゃ。そんな折、鉱山でたまたまミスリルを見つけての。ワシは好奇心から師匠に内緒でそれを製錬したんじゃ」



「それで、何かあったんですか?」



「ミスリルっちゅーのは本当に扱いが難しい金属でな。銅や鉄と同じ要領ではいかん。ずっと魔力を流し続けておかねば鍛える途中で爆発するんじゃの。ワシはそんなことは知らんかった。仮に知っていたとしても、師匠はワシにそこまでの魔力が無いことが分かっておったんじゃろう。だから師匠はワシにミスリルを扱わしてくれなかったし、ワシも内緒で製錬を始めた」



そこまで言うと、レムザは左手で右の肩あたりを撫でた。



「そうしてワシは鍛冶の途中で事故を起こしたんじゃ。高温のミスリルが無数の粒となってワシの体に襲い掛かった。その影響でな、今では最大限に力を出すことが出来なくなったんじゃ」



「回復魔法でも治らなかったのですか?」



「そうじゃな。ワシの右肩には今でもミスリルが埋まっとる。それが回復魔法の邪魔をしているんじゃな」



「そうですか……」



「そういう訳で、ワシはまともな装備を作れないんじゃ」



 レムザさんはずっと全力を出せないままの体になってしまってツライだろうな。

 なんとか治してあげることはできないものだろうか。



「例えば、そのミスリルを摘出してしまえば元通りの力が出せたりしますか?」



「ハハハ!どうじゃろうな!もうこいつとは一生付き合う覚悟はできとるよ」



「ちなみに、ミスリルって武器や防具にするとどういう特徴があるんですか?」



「ミスリルはな、とても軽いのに丈夫なんじゃ。それに魔法との相性がいいため武器にすることも多いが、

防具にすると魔法防御耐性や温度変化にも強い防具ができる、とても優れた素材なんじゃよ」



「ということは、ミスリルの入手はかなり難しいのですか?」



「そうでもないぞ。この村の奥、山頂近くにもあるくらいじゃからな。ただし、それを製錬できる者はかなり少ない。

じゃからミスリルの武具は希少価値も高いんじゃ」



 え?そんな近くにあるの?

 手の届くところにあると知ると余計欲しくなるのが人情ってもんでしょ。



「では、俺達が取ってきます!レムザさんの力が出せないのや魔力が不足している事に関しては考えがありますので、俺達に装備を作ってもらえませんか?」



「バカなことを考えるんじゃない!鍛冶の修行をしていた当時ですら事故を起こしたワシじゃ。今ではたまにダクティやペレスに頼まれて簡単なものしか作っとらんのじゃ。今のワシにはそんなもの作れん」



「レムザさんもご存じだと思いますが、僕たちはそこそこ魔力を出せます。作っている間中、僕たちも一緒に魔力を供給すれば今度は事故も起こさず、きちんとしたものが出来るんじゃないでしょうか。それに力が足りないというのであれば、必要な力は僕たちが出します。どうでしょうか」



「むぅ……」



「では、僕たちに手伝うだけの力があることを証明すればいいんですよね。腕相撲で勝負して……」



「ガハハハ!もうその手はくわんぞ!5歳の頃にあっさり負けたんじゃ。あの頃よりさらに強くなっておるんじゃろ?」



「そうですね。でも、その分僕たちの力を知っているレムザさんなら信じてもらえないでしょうか」



 俺達は装備が欲しい。レムザさんは二度と扱えないと思っていたミスリルを扱える。

 お互いにウィンウィンの関係になれるだろうと思う。
 


「そうじゃな。ではこうしよう。お前さんたちがミスリルを持ってこれたら考えてやろう。ただし、ワシは場所も素材の特徴も教えん。それでもええか?」



「分かりました!約束ですよ!」



 はい、言質とりました。

 ミスリルが意外にもレアメタルじゃないのであれば、村の誰かに聞けば分かるだろうしね。

 さぁ!取ってくるぞ!



 話が終わってレムザ邸を出ると昼過ぎだった。

 一度帰宅して昼食をとる。

 その時に、アスラとララにミスリルについて聞いてみた。

 しかし、意外にもミスリル装備があることは知っていても鉱石の状態のミスリルは見たことがないと言われた。



 ということで、昼食後はダクティのところに行ってみる事にした。

 なんといってもこの村唯一の武器と防具を扱っている万屋だ。

 何か情報があるに違いない。



 と思ったけど、空振りだった。



 なんてこったい。



 気を取り直して、ベンさんとエリンさん辺りに聞きに行こう。



 ベン邸に向っている途中、都合よく村長とバッタリ会ったので聞いてみた。

 だいたい物知りなのが村長なんじゃないかと思っていた。

 が、こちらも空振りだった。



 なんてこったいパート2!



 再度気を取り直してベン邸にやってきた。



「こんにちはー」



「はいはい~、あらいらっしゃい。治療院じゃなくて家に来たってことは、ライカに御用かしら?」

エリン先生が出迎えてくれた。



「今日はベンさんとエリン先生話を聞きたくて来ました」



「あら、そうなの? じゃあ、こちらへどうぞ」



応接間へ案内してくれた。



「じゃあ少し待っててね、呼んでくるわ」



「はーい」



 といってエリン先生は家の奥に入っていった。



「ライカー、ケンちゃんとユイちゃんよー」



 あれ?ベンに用事があると言ったんだけどな??

 ライカはすぐにやってきた。



「こんにちは、ライカ」



「いらっしゃい。今日はどうしたの?」



「実は、俺達旅の準備のために装備を整えようと思っててね。それで、ライカのお父さんとお母さんに情報をもらえないかと思って来たんだ」



「へぇ~、ボクにも詳しく聞かせて」



 ということで、レムザとのやりとりを説明した。

 したところで、ベンとエリンが応接間にやってきた。





「こんにちは」



「いらっしゃい、ようこそ俺の城へ」



 ああ、うん。



「えっと、先日10歳になって精霊のお告げを受けたのはご存知だと思います」



「ああ、ライカからの聞いている。本当ならウチの小さな天使を旅になんてとんでもない!と言いたいところなんだが、精霊様のお告げとあればそれも仕方ない。が本当は旅立たせたくないんだよ!」



 ライカ可愛いもんな。父親としては心配にもなるよ。うん。



「しかも、旅はお前たち二人と一緒っていうじゃないか!? いいか、分かってるだろうけどな、何が何でもライカを守れよ!もし何かあったらその時は俺が許さないからな!」



「ちょっと父さま、やめてよ恥ずかしい!」

 ベンがちょっと熱くなりかけたところをうまい具合にライカが止めた。

 流石ベンの扱いには慣れている(笑)



「は、はい。それでですね。僕たちも旅立つ事になるのですが、その準備をしておりまして」



「いいか、お前たちも今のうちにしっかり親孝行しておくんだぞ!」



「あ、はい。それで装備を整えようと思うのですが聞くところによるとミスリル装備がいいなと思いまして」



「ミスリル装備といえば、魔法との相性がいいことで有名ね。あなた達よく知ってたわね」



「はい、レムザさんに教えてもらったんですよ」



「ああ、あいつならそういうのは詳しいからな」



「でもミスリル装備は珍しいからとてもお高い事でも有名よ?」



「そうなんです。ですので、できればミスリル鉱石を探してレムザさんに作ってもらおうかと思います」



「ミスリル鉱石……ねぇ。噂ではドワーフじゃないと見つけることが難しいって話だよな」



「詳しく教えて頂けませんか?」



「詳しくって言ってもなぁ。俺もそのくらいしか知らないぞ? なんでも、ドワーフが見れば普通の鉱石なのかミスリル鉱石なのか見分けが付くらしいんだが、普通の人だとその見分けが付かないらしい」



「ということは、鉱山にドワーフと一緒に行かないと取得できないものなんでしょうか」



「まぁそういうことになるな。少なくとも、人族には見わけつかないだろうな」



「エルフもいっしょね。そういうのはドワーフが最も長けているものよ」



「そうなんですか」



 なんてこったい。

 これじゃ見つける事ができないじゃないか。



 レムザさんはこれが分かっていたからあんな事を言ったのか。

 5年前の腕相撲の意趣返しか!?



「力になれなくてごめんね」



「いえ、ドワーフがいないと見つけれないことが分かっただけでも十分です」



「まぁレムザと一緒に探してみるといいぞ」



「わかりました。ありがとうございました」



 俺達はこれ以上の長居は悪いと思い、お礼を告げながら立ち上がった。



「ボク、ふたりをそこまで送ってくるね」



 帰る俺達をライカが送ってくれるらしい。



 家を出るときに再度お礼をいって、俺達三人は歩き出した。



「ねぇ、これからどうするの?」



「鉱石がありそうな場所は分かっているから、明日まずは行ってみることにするよ」



「そっか。じゃあボクも行くね」



「見つかるかどうか分からないよ?」



「うん。一緒にさがそう」



「分かった。じゃあ明日は朝の日課が終わったら山の入り口で待ってるね。見送りありがとう」



「また明日!」



こうして俺達は帰宅の途に就いた。
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