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221 ーウの姫ー
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いやあね。いつも宴なんて、今日はこちらの着物召しませ。で着たら宴なんで、事前情報なんてないわけである。言われていなくて当然だった。
皇帝の妃としての装い。厚化粧の極みを得て、理音は頭の重みに耐えながらゆっくりと立ち上がる。
毎度顔を見て、誰だこれ。と思うわけだが、今日ほど厚化粧をありがたがる日はないだろう。ウの姫の女官たちに会うとなると気が重いが、致し方ない。
宴は午後に始まるため、ウの姫にリンがつく必要はない。いつも通り午前だけウの姫の棟で仕事をし、午後になってヘキ卿仕事を休み、宴に出る。
ヘキ卿ももちろんこの宴に出席するのだが、よくよく考えたらメイラクなども出席するのだろう。これは厚化粧で知らんぷり作戦が必要だった。無駄に彼らと視線を合わせないように気を付けなければならない。
春の宴はいつもの広場とは違う場所らしく、あの酔いそうになる輿に乗せられた。輿は周囲が見られる窓もなく、前は布が掛けられているため見えるのは地面のみ。どこに連れられているのか、どう曲がるのかもわからない。
そうして長く乗せられ連れられた場所には、既にフォーエンが待っていた。
久し振りに出る宴。前に二人で出た宴からかなり経っている。そのせいか、フォーエンが華やかな衣装で装っているのをまじまじと見るのも久し振りだった。
鮮やかな深みのある青色を基調として、暗緑色の刺繍が美しい。草木を象ったものだろうがもちろんそれは細かく、引き摺る裾の端々まで施されていた。髪飾りは着物の色に合わせた宝石が散りばめられた物で、何とも豪華だ。
深みのある色はとても似合う気がする。暖色は微妙だが、それ以外だと美しさが際立った。つい拍手したくなる。
春の宴だから新緑色なのだろうか。その着物に合わせたように、自分の装いも青や緑が使われている。フォーエンよりは淡い色で、白を基調にしながら配色は同じだ。
髪飾りはかなり重く、耳元でしゃりんしゃりん聞こえる。これも首を傾げたら付け毛ごと崩れ落ちないかヒヤヒヤする。首を動かさないようにぎこちなく歩くと、フォーエンが横目で凄んできた。
「動きがおかしいぞ」
「頭がもげそうで怖いの」
「その様なことにはならない。顔が強張っている。少し力を抜け」
そう言ってそろりと頬を撫でる。撫でられたらそれで頬が染まるんだが、わかっていてやってくるのだろうか。リラックスさせようとしているかもしれないが、逆効果である。
何もないふりをして、フォーエンの袖に視線を泳がし拍手をする。
「久し振りに見るとすごいね」
「何がだ」
「美人、美人」
眼福とまで言わなかったが、満足そうに頷いていると、それこそ久し振りに、馬鹿なのか?と言う視線をいただいた。完璧なモデルを横にして拍手をして何が悪いのか。
口を尖らせそうになる理音の手をとると、フォーエンは広場へ歩くように促す。
手を繋いで登場とは、また視線が痛くなるやつだ。そしてこちらの心臓にも配慮願いたい。
まだ少し冷える中での外の宴に、フォーエンが触れた手は暖かい。エスコートされて舞台に立つと、舞台下の人々はかしこまり頭を下げていた。
配置はいつも通りだろうが、今回はウの内大臣と姫がいる。そちらにはあまり顔を向けないようにするつもりだ。
会場にフォーエンが入ればすぐに挨拶が始まる。順に並ぶ者たちの声をフォーエンは相変わらず無言で聞き、反応のない皇帝に普段通り挨拶が続いた。
皇帝の親族は皇帝から席が近い。だがやはりそこにルファンの姿はない。イベントで一度も見たことはないので、ルファンが現れることはなかった。
ヘキ卿周りにいるメイラクたちとは目を合わさないようにして、シヴァ少将へと目を向ける。ここからでは小河原の顔色はよくわからないが、目線は伏せていてどこか疲れているように見えた。あれからずっと話をしていないが、周囲は安全なのか。心配になる。
理音は会場に来ている者たちの並びや顔をチェックする。大体の顔は覚えているつもりだ。その位置を確認し、表情を確認する。
顔を見ただけで全てがわかるわけではないが、誰が誰と話し、どんな顔をしてこちらを見るのかは自分なりに確認しようと思ったのだ。幸運なことに自分は後宮の外で彼らに会うことがある。誰がフォーエンを良く思っていないか、少しでも理解しておきたい。
その中で、女性たちが少なくなっているのは目に見えてわかった。
いとま組を増やし、後宮に入れる数を減らしている。
だから、その中で見知らぬ顔が見えて、それがウの姫だとすぐに気付いた。
女性たちが集まって一斉に挨拶をしてくる。掛け声を掛けたのは見知らぬ女性だ。少し幼めの、自分と年が変わらない女の子。
女性の挨拶で今まで見たことはない顔で、目鼻立ちが整っており目元の赤のアイシャドウが目を大きくさせている。鼻筋が通るように見えるシャドウやハイライトを使い、口紅も赤で幼い顔を大人っぽくさせているようにも思えた。理音もよくやられる化粧の仕方だ。
思ったよりも化粧が濃い。ウの姫は目尻を長く見せる化粧の仕方もしているので、おそらくもう少し目が小さいだろう。他の女性たちももちろん化粧が濃いのだが、あれでは人相が相当変わるのではないだろうか。
挨拶が終わると自分たちの席に戻り、女官たちに囲まれる。どの女性たちもそうだが女官は同じ服をまとい、似たような化粧を施していた。ウの姫も同じ。ジョアンは雰囲気が全く違うのだが、ルーシたちは雰囲気がよく似ている。
そこにいるのはジョアン、ルーシ、ミアン、ユエイン、ユイだけだった。女官は三人か四人を連れるのが普通である。
だから五人もいらなかったのか、レンカがいない。猫嫌いの、少々男勝りなところがあるレンカ。言葉遣いが彼女たちに比べて男っぽいため、今回は連れてこられなかったのだろうか。
ジョアンは彼女たちのリーダーだ。いなくてはならない。ユイはフォーエンの手である。いる必要があるだろう。ルーシ、ミアン、ユエイン、レンカの四人は雰囲気の似た女官で、誰がいても他から見たら一瞬では見分けがつきづらい。
そして、ウの姫も。
中央の舞台では花をモチーフにしたような踊り子たちが長い袖を使い踊りを始めている。そちらに目を向ける者たちを眺めながら、理音はふと呟いた。
「フォーエン、もしかして、姫さんて、いない…?」
理音の言葉に、フォーエンは一度口を閉じる。その顔だけで肯定されたと思った。
ウの姫はいない。初めから、あの部屋には誰もいなかった。だからジョアンは食事を口にしていたのだ。ウの姫がいると見せかけるために。
「後で話す」
フォーエンの静かな一言に、理音はただ頷くしかなかった。
ウの姫は元々養女だ。ウの方が内大臣になり、フォーエンとの繋ぎを深めるため、どこからか出自もはっきりしない女性を養女にしたという噂のある人だ。
それが嘘にしろ本当にしろ、フォーエンはウの内大臣の要求通り、姫を後宮に迎えた。
そう思っていた。
しかし、現実は、ウの姫は元々存在しておらず、それを女官たちが協力して隠し続け、表に出る時は代役を使っていた。
それもフォーエンが理解している。
「ウの姫は存在しない」
フォーエンは宴の後部屋に訪れると、はっきりとそれを口にした。
ジョアンが昼食を口にしたのを盗み見してから、おかしいとは思っていたが、まさか存在しないとは思わなかった。
なにせウの姫はフォーエンの妃の第一候補である。それが、偽物どころか、いないとは思わなかった。
何でそんなことをしているのか。問おうとすると、その前に釘を刺される。
「このことは忘れろ。いると思い、仕えておけ。これは極秘だ」
「いいけど…」
問うことも許されないのならば、もう何を言っても無駄だ。
もしかしたらレイセン宮の警備が完璧になってきたので、次の囮を考えているのかもしれない。ウの姫がいる棟はレイセン宮と違い、隔離された場所ではなかった。庭などに他の女官たちは入られるし、夜など簡単に侵入できる。
その対策を練っているのかもしれない。
理音の素っ気ない返事に、フォーエンは理音の反応を確認するように直視してくる。
「何もしないよ。ただ前から変だなとは思ってただけ」
「化粧で誤魔化した代役だ。行っているのは女官たちで決まっているわけではない」
「そうなの?」
今回レンカが代役を行なっていたが、それはまちまちらしい。だから似たような女官を集めていたのか。
「さすがにいつまでも籠っていることは難しい。今回の宴で表に出ることになったのだから、他の姫たちが茶会を開くと誘いも増えるだろう。ウの内大臣の姫としては相手をしなければならない」
本当ならば外に出したくないわけだ。何のために入内を勧めたのか聞かないが、女官たちが代役を勤めるとして、同じ人物に仕立てるのは大変なことのように思える。
その上で、親しい者はつくるなと命令はしているそうだ。
毎度化粧でごまかしているのだろうが、姫たちのお茶会となると自分の囮とはまた違った。かなりの苦労がありそうだ。
だがそれで納得した。ウの姫の部屋では誰かしらが文字の練習をしたり、食事をしたりと、姫がいるように見せているのだ。
「お前は今後も、知らぬふりで仕事をしろ。女官たちには慣れたのだろう?」
「うん。みんな優しいよ。私できること少ないから、荷物運びか掃除くらいしかやらないけど」
「縫い物もやらされたのだろう」
それを知っているか。口端を上げて言ってくるのだから下手なのはばれているようだ。
「エンセイのところでは常にラファレイの部下がついているが、あまり他に首を突っ込むなよ」
「私にウンリュウさんをつけたのは、やっぱりシヴァ少将の件で?」
その理由はまだ聞いていなかった。今まで自由にうろついていたのに、急にウンリュウを警備につけたのだから、フォーエンは何かしら不穏を感じ取っているか、その可能性に気づいているのだ。
理音の問いにフォーエンは僅かに瞼を下ろした。
皇帝の妃としての装い。厚化粧の極みを得て、理音は頭の重みに耐えながらゆっくりと立ち上がる。
毎度顔を見て、誰だこれ。と思うわけだが、今日ほど厚化粧をありがたがる日はないだろう。ウの姫の女官たちに会うとなると気が重いが、致し方ない。
宴は午後に始まるため、ウの姫にリンがつく必要はない。いつも通り午前だけウの姫の棟で仕事をし、午後になってヘキ卿仕事を休み、宴に出る。
ヘキ卿ももちろんこの宴に出席するのだが、よくよく考えたらメイラクなども出席するのだろう。これは厚化粧で知らんぷり作戦が必要だった。無駄に彼らと視線を合わせないように気を付けなければならない。
春の宴はいつもの広場とは違う場所らしく、あの酔いそうになる輿に乗せられた。輿は周囲が見られる窓もなく、前は布が掛けられているため見えるのは地面のみ。どこに連れられているのか、どう曲がるのかもわからない。
そうして長く乗せられ連れられた場所には、既にフォーエンが待っていた。
久し振りに出る宴。前に二人で出た宴からかなり経っている。そのせいか、フォーエンが華やかな衣装で装っているのをまじまじと見るのも久し振りだった。
鮮やかな深みのある青色を基調として、暗緑色の刺繍が美しい。草木を象ったものだろうがもちろんそれは細かく、引き摺る裾の端々まで施されていた。髪飾りは着物の色に合わせた宝石が散りばめられた物で、何とも豪華だ。
深みのある色はとても似合う気がする。暖色は微妙だが、それ以外だと美しさが際立った。つい拍手したくなる。
春の宴だから新緑色なのだろうか。その着物に合わせたように、自分の装いも青や緑が使われている。フォーエンよりは淡い色で、白を基調にしながら配色は同じだ。
髪飾りはかなり重く、耳元でしゃりんしゃりん聞こえる。これも首を傾げたら付け毛ごと崩れ落ちないかヒヤヒヤする。首を動かさないようにぎこちなく歩くと、フォーエンが横目で凄んできた。
「動きがおかしいぞ」
「頭がもげそうで怖いの」
「その様なことにはならない。顔が強張っている。少し力を抜け」
そう言ってそろりと頬を撫でる。撫でられたらそれで頬が染まるんだが、わかっていてやってくるのだろうか。リラックスさせようとしているかもしれないが、逆効果である。
何もないふりをして、フォーエンの袖に視線を泳がし拍手をする。
「久し振りに見るとすごいね」
「何がだ」
「美人、美人」
眼福とまで言わなかったが、満足そうに頷いていると、それこそ久し振りに、馬鹿なのか?と言う視線をいただいた。完璧なモデルを横にして拍手をして何が悪いのか。
口を尖らせそうになる理音の手をとると、フォーエンは広場へ歩くように促す。
手を繋いで登場とは、また視線が痛くなるやつだ。そしてこちらの心臓にも配慮願いたい。
まだ少し冷える中での外の宴に、フォーエンが触れた手は暖かい。エスコートされて舞台に立つと、舞台下の人々はかしこまり頭を下げていた。
配置はいつも通りだろうが、今回はウの内大臣と姫がいる。そちらにはあまり顔を向けないようにするつもりだ。
会場にフォーエンが入ればすぐに挨拶が始まる。順に並ぶ者たちの声をフォーエンは相変わらず無言で聞き、反応のない皇帝に普段通り挨拶が続いた。
皇帝の親族は皇帝から席が近い。だがやはりそこにルファンの姿はない。イベントで一度も見たことはないので、ルファンが現れることはなかった。
ヘキ卿周りにいるメイラクたちとは目を合わさないようにして、シヴァ少将へと目を向ける。ここからでは小河原の顔色はよくわからないが、目線は伏せていてどこか疲れているように見えた。あれからずっと話をしていないが、周囲は安全なのか。心配になる。
理音は会場に来ている者たちの並びや顔をチェックする。大体の顔は覚えているつもりだ。その位置を確認し、表情を確認する。
顔を見ただけで全てがわかるわけではないが、誰が誰と話し、どんな顔をしてこちらを見るのかは自分なりに確認しようと思ったのだ。幸運なことに自分は後宮の外で彼らに会うことがある。誰がフォーエンを良く思っていないか、少しでも理解しておきたい。
その中で、女性たちが少なくなっているのは目に見えてわかった。
いとま組を増やし、後宮に入れる数を減らしている。
だから、その中で見知らぬ顔が見えて、それがウの姫だとすぐに気付いた。
女性たちが集まって一斉に挨拶をしてくる。掛け声を掛けたのは見知らぬ女性だ。少し幼めの、自分と年が変わらない女の子。
女性の挨拶で今まで見たことはない顔で、目鼻立ちが整っており目元の赤のアイシャドウが目を大きくさせている。鼻筋が通るように見えるシャドウやハイライトを使い、口紅も赤で幼い顔を大人っぽくさせているようにも思えた。理音もよくやられる化粧の仕方だ。
思ったよりも化粧が濃い。ウの姫は目尻を長く見せる化粧の仕方もしているので、おそらくもう少し目が小さいだろう。他の女性たちももちろん化粧が濃いのだが、あれでは人相が相当変わるのではないだろうか。
挨拶が終わると自分たちの席に戻り、女官たちに囲まれる。どの女性たちもそうだが女官は同じ服をまとい、似たような化粧を施していた。ウの姫も同じ。ジョアンは雰囲気が全く違うのだが、ルーシたちは雰囲気がよく似ている。
そこにいるのはジョアン、ルーシ、ミアン、ユエイン、ユイだけだった。女官は三人か四人を連れるのが普通である。
だから五人もいらなかったのか、レンカがいない。猫嫌いの、少々男勝りなところがあるレンカ。言葉遣いが彼女たちに比べて男っぽいため、今回は連れてこられなかったのだろうか。
ジョアンは彼女たちのリーダーだ。いなくてはならない。ユイはフォーエンの手である。いる必要があるだろう。ルーシ、ミアン、ユエイン、レンカの四人は雰囲気の似た女官で、誰がいても他から見たら一瞬では見分けがつきづらい。
そして、ウの姫も。
中央の舞台では花をモチーフにしたような踊り子たちが長い袖を使い踊りを始めている。そちらに目を向ける者たちを眺めながら、理音はふと呟いた。
「フォーエン、もしかして、姫さんて、いない…?」
理音の言葉に、フォーエンは一度口を閉じる。その顔だけで肯定されたと思った。
ウの姫はいない。初めから、あの部屋には誰もいなかった。だからジョアンは食事を口にしていたのだ。ウの姫がいると見せかけるために。
「後で話す」
フォーエンの静かな一言に、理音はただ頷くしかなかった。
ウの姫は元々養女だ。ウの方が内大臣になり、フォーエンとの繋ぎを深めるため、どこからか出自もはっきりしない女性を養女にしたという噂のある人だ。
それが嘘にしろ本当にしろ、フォーエンはウの内大臣の要求通り、姫を後宮に迎えた。
そう思っていた。
しかし、現実は、ウの姫は元々存在しておらず、それを女官たちが協力して隠し続け、表に出る時は代役を使っていた。
それもフォーエンが理解している。
「ウの姫は存在しない」
フォーエンは宴の後部屋に訪れると、はっきりとそれを口にした。
ジョアンが昼食を口にしたのを盗み見してから、おかしいとは思っていたが、まさか存在しないとは思わなかった。
なにせウの姫はフォーエンの妃の第一候補である。それが、偽物どころか、いないとは思わなかった。
何でそんなことをしているのか。問おうとすると、その前に釘を刺される。
「このことは忘れろ。いると思い、仕えておけ。これは極秘だ」
「いいけど…」
問うことも許されないのならば、もう何を言っても無駄だ。
もしかしたらレイセン宮の警備が完璧になってきたので、次の囮を考えているのかもしれない。ウの姫がいる棟はレイセン宮と違い、隔離された場所ではなかった。庭などに他の女官たちは入られるし、夜など簡単に侵入できる。
その対策を練っているのかもしれない。
理音の素っ気ない返事に、フォーエンは理音の反応を確認するように直視してくる。
「何もしないよ。ただ前から変だなとは思ってただけ」
「化粧で誤魔化した代役だ。行っているのは女官たちで決まっているわけではない」
「そうなの?」
今回レンカが代役を行なっていたが、それはまちまちらしい。だから似たような女官を集めていたのか。
「さすがにいつまでも籠っていることは難しい。今回の宴で表に出ることになったのだから、他の姫たちが茶会を開くと誘いも増えるだろう。ウの内大臣の姫としては相手をしなければならない」
本当ならば外に出したくないわけだ。何のために入内を勧めたのか聞かないが、女官たちが代役を勤めるとして、同じ人物に仕立てるのは大変なことのように思える。
その上で、親しい者はつくるなと命令はしているそうだ。
毎度化粧でごまかしているのだろうが、姫たちのお茶会となると自分の囮とはまた違った。かなりの苦労がありそうだ。
だがそれで納得した。ウの姫の部屋では誰かしらが文字の練習をしたり、食事をしたりと、姫がいるように見せているのだ。
「お前は今後も、知らぬふりで仕事をしろ。女官たちには慣れたのだろう?」
「うん。みんな優しいよ。私できること少ないから、荷物運びか掃除くらいしかやらないけど」
「縫い物もやらされたのだろう」
それを知っているか。口端を上げて言ってくるのだから下手なのはばれているようだ。
「エンセイのところでは常にラファレイの部下がついているが、あまり他に首を突っ込むなよ」
「私にウンリュウさんをつけたのは、やっぱりシヴァ少将の件で?」
その理由はまだ聞いていなかった。今まで自由にうろついていたのに、急にウンリュウを警備につけたのだから、フォーエンは何かしら不穏を感じ取っているか、その可能性に気づいているのだ。
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