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32−2 混乱
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「エヴリーヌ。いらっしゃい。旅行はどうだったの?」
「あてぃいいい」
エヴリーヌはブラシェーロ公爵家に来ていた。人払いをしてもらってから、アティを抱きしめる。
「体調はどう? これお土産。アティはこういうの好きだと思って」
「うわ、ありがとう。体調はすこぶるいいわよ。やだ、妊婦用のクリーム? どこに塗るのこれ」
「お腹に塗るのよ。海辺の町だったから、美容系の物が多かったの。パックとかもあるからね。バスソルトも買いたかったんだけれど、妊娠中駄目らしいから」
お土産は実用性のある、無香料化粧品の数々だ。お肌に余念のないアティならば喜んでくれると思っていた。顔色も良さそうで、体調の悪さはないと言うことにホッとする。
「つわりは大丈夫なの? あ、匂い平気? 無理してお茶菓子出さないでいいわよ?」
「大丈夫よ。駄目なものは出してないから。旦那もね、なにかと気にしてくれて、もう子供部屋も作ってたわ」
「大事にされてるわねえ」
しみじみ言うと、アティは吹き出した。
「エヴリーヌも大事にされてるんでしょ? 大変だったから、旅行に連れて行ってくれたって聞いてるわ。愛されてるわねえ。どうせいちゃいちゃしてきたんでしょ?」
「あはは」
笑って誤魔化すしかない。こちらはまだキスの一つもないのに。
カリスが好きか嫌いかと言ったら好きになると思われる。けれど、本物の夫婦として過ごすとなると、それでいいのかという気持ちにもなる。ただ流されているだけではないかと。
恋愛音痴すぎて、この気持ちが愛する気持ちなのか、ただ好きなのかがよくわからない。
それをアティに聞きたいと思いつつも、身重のアティに相談する内容ではないこともあって、ここまで来ておきながら話すことができなかった。
恋愛にまったくなれていなさすぎて、自分の気持ちがわからないとは。
カリスにもう一度会って気持ちを確かめようとも思ったが、肝心のカリスが忙しく、二人で話す機会をもうけることができていないのだ。
(せめて二人きりにならないと、確認もしにくいと言うか。早朝話すわけにもいかないし)
それと、気になることが一つ。
「なにかあったの?」
「聖女の仕事があったから、公爵家の仕事をしていなくて。社交界にも出ていないでしょう? 公爵家の妻ってなんの仕事をするのか気になって。アティはどうしているの?」
「私は、社交界は問題ないから」
それもそうか。アティは都に入り浸っているようなものだったので、社交界に関しては問題ない。令嬢たちの嫌味に立ち向かうどころか、打ち勝つ力のある強気聖女だった。見た目だけで判断されて喧嘩を売られても、アティが負けることはない。聖女の上に公爵夫人だ。強者である
(田舎っ子は私だけだったわ)
「なにか、焦っているの?」
「う、そういうわけじゃないんだけれどね。ちょっと、不安があるような、ないような」
もしも本当に二年の契約がなくなれば、妻としての仕事をすることになる。しかし、公爵家のことを学ぶつもりがなかったので、公爵家のことをなにも知らない。公爵家に関わっていない。
そして気づいたのだ。もしカリスの妻に本当になれたとしても、公爵夫人として役立たずでは? と。
公爵夫人だとしても、聖女の仕事は続けることになるだろうが。
「気になることがあるなら、夫にはちゃんと言うのよ? 話さないとわからないことなんて、たくさんあるんだから」
アティは人生苦労しているので、助言をくれる。こういう時は姉のようだった。対人はアティの方が格上である。
(私は逃げてるから、あの頃からあんまり変わってないのよね)
それが良くないことだとわかっているが、聖女だからいいやと放棄していた。公爵夫人になるならば、なにかと学ぶのは当然となる。貴族らしく仲間作りや情報を仕入れる必要が出てくるだろう。
「そうだ。社交界はいいけれど、都の北で病気がはやりはじめたらしいから、気をつけるのよ?」
「風邪でもはやってるの? アティの方が危ないじゃない」
「私は外に出てないから大丈夫よ。私も聞いた話なんだけれど、都の神殿の聖女たちは忙しいらしいわ。私が出れないのもあるけど、この時期に風邪なんてはやるのは珍しいから、気になって」
冬になればアティは都に訪れてばかりだった。風邪がはやるからだ。今回はそれよりも時期が早い。アティは妊娠していて風邪がはやるような場所に行けない。そのため、もしかしたらエヴリーヌが呼ばれるのではないかと、憂い顔をする。またエヴリーヌに負担がかかることを心配しているのだ。
「大丈夫よー。休んで元気だし。神殿から連絡はないから、たまには都で活動するのもありよ」
都で名前を売る必要があるのならば、もう嫌がっている場合ではない。それに、もうそこまで弱くはなかった。嫌味を言われても交わせるくらいには大人になった。なにかあれば、カリスも助けてくれるだろう。
そんな想像はできるが、本物の夫婦になるということの方が想像できない。
それでも、カリスの顔を思い出すと、顔が熱くなってくる。
「熱、あるんじゃないの!?」
「ない。ないわよ! 風邪の件はわかったわ。アティこそ、気をつけてね。病気にならないようにね!」
事あるごとにカリスの顔が頭に浮かんで、一人で熱くなったりしているのが恥ずかしい。馬車の中で両頬を自分の手で冷やした。相談しに行ったが、結局話せなかった。よくよく考えたらカリスの名誉もあるので、一人で解決するしかない。
「ちょっと、馬車止めて!」
「え、どうされましたか!?」
エヴリーヌの掛け声に、御者が馬車を止めてくれる。扉を開いてエヴリーヌは周囲を見回した。
「奥様? なにかありましたか?」
「今、いえ、神殿に行ってくれない?」
「承知しました」
今、横道になにかが見えた気がした。黒いもやのようなものだ。
(疫病? 風邪がはやってるって話だったし。でももう少し、嫌な感じの)
気のせいか? だが、あまり良い気ではなかった。風邪がはやっているとしたら、風邪ではなく疫病かもしれない。確認はしておいた方がいいだろう。
地方でも冬は疫病がはやり、黒いもやが村を覆ったことがある。しかし、まだ冬にもなっていないのに、風邪がはやるのも珍しい。
「なんだろう。嫌な感じね」
「あてぃいいい」
エヴリーヌはブラシェーロ公爵家に来ていた。人払いをしてもらってから、アティを抱きしめる。
「体調はどう? これお土産。アティはこういうの好きだと思って」
「うわ、ありがとう。体調はすこぶるいいわよ。やだ、妊婦用のクリーム? どこに塗るのこれ」
「お腹に塗るのよ。海辺の町だったから、美容系の物が多かったの。パックとかもあるからね。バスソルトも買いたかったんだけれど、妊娠中駄目らしいから」
お土産は実用性のある、無香料化粧品の数々だ。お肌に余念のないアティならば喜んでくれると思っていた。顔色も良さそうで、体調の悪さはないと言うことにホッとする。
「つわりは大丈夫なの? あ、匂い平気? 無理してお茶菓子出さないでいいわよ?」
「大丈夫よ。駄目なものは出してないから。旦那もね、なにかと気にしてくれて、もう子供部屋も作ってたわ」
「大事にされてるわねえ」
しみじみ言うと、アティは吹き出した。
「エヴリーヌも大事にされてるんでしょ? 大変だったから、旅行に連れて行ってくれたって聞いてるわ。愛されてるわねえ。どうせいちゃいちゃしてきたんでしょ?」
「あはは」
笑って誤魔化すしかない。こちらはまだキスの一つもないのに。
カリスが好きか嫌いかと言ったら好きになると思われる。けれど、本物の夫婦として過ごすとなると、それでいいのかという気持ちにもなる。ただ流されているだけではないかと。
恋愛音痴すぎて、この気持ちが愛する気持ちなのか、ただ好きなのかがよくわからない。
それをアティに聞きたいと思いつつも、身重のアティに相談する内容ではないこともあって、ここまで来ておきながら話すことができなかった。
恋愛にまったくなれていなさすぎて、自分の気持ちがわからないとは。
カリスにもう一度会って気持ちを確かめようとも思ったが、肝心のカリスが忙しく、二人で話す機会をもうけることができていないのだ。
(せめて二人きりにならないと、確認もしにくいと言うか。早朝話すわけにもいかないし)
それと、気になることが一つ。
「なにかあったの?」
「聖女の仕事があったから、公爵家の仕事をしていなくて。社交界にも出ていないでしょう? 公爵家の妻ってなんの仕事をするのか気になって。アティはどうしているの?」
「私は、社交界は問題ないから」
それもそうか。アティは都に入り浸っているようなものだったので、社交界に関しては問題ない。令嬢たちの嫌味に立ち向かうどころか、打ち勝つ力のある強気聖女だった。見た目だけで判断されて喧嘩を売られても、アティが負けることはない。聖女の上に公爵夫人だ。強者である
(田舎っ子は私だけだったわ)
「なにか、焦っているの?」
「う、そういうわけじゃないんだけれどね。ちょっと、不安があるような、ないような」
もしも本当に二年の契約がなくなれば、妻としての仕事をすることになる。しかし、公爵家のことを学ぶつもりがなかったので、公爵家のことをなにも知らない。公爵家に関わっていない。
そして気づいたのだ。もしカリスの妻に本当になれたとしても、公爵夫人として役立たずでは? と。
公爵夫人だとしても、聖女の仕事は続けることになるだろうが。
「気になることがあるなら、夫にはちゃんと言うのよ? 話さないとわからないことなんて、たくさんあるんだから」
アティは人生苦労しているので、助言をくれる。こういう時は姉のようだった。対人はアティの方が格上である。
(私は逃げてるから、あの頃からあんまり変わってないのよね)
それが良くないことだとわかっているが、聖女だからいいやと放棄していた。公爵夫人になるならば、なにかと学ぶのは当然となる。貴族らしく仲間作りや情報を仕入れる必要が出てくるだろう。
「そうだ。社交界はいいけれど、都の北で病気がはやりはじめたらしいから、気をつけるのよ?」
「風邪でもはやってるの? アティの方が危ないじゃない」
「私は外に出てないから大丈夫よ。私も聞いた話なんだけれど、都の神殿の聖女たちは忙しいらしいわ。私が出れないのもあるけど、この時期に風邪なんてはやるのは珍しいから、気になって」
冬になればアティは都に訪れてばかりだった。風邪がはやるからだ。今回はそれよりも時期が早い。アティは妊娠していて風邪がはやるような場所に行けない。そのため、もしかしたらエヴリーヌが呼ばれるのではないかと、憂い顔をする。またエヴリーヌに負担がかかることを心配しているのだ。
「大丈夫よー。休んで元気だし。神殿から連絡はないから、たまには都で活動するのもありよ」
都で名前を売る必要があるのならば、もう嫌がっている場合ではない。それに、もうそこまで弱くはなかった。嫌味を言われても交わせるくらいには大人になった。なにかあれば、カリスも助けてくれるだろう。
そんな想像はできるが、本物の夫婦になるということの方が想像できない。
それでも、カリスの顔を思い出すと、顔が熱くなってくる。
「熱、あるんじゃないの!?」
「ない。ないわよ! 風邪の件はわかったわ。アティこそ、気をつけてね。病気にならないようにね!」
事あるごとにカリスの顔が頭に浮かんで、一人で熱くなったりしているのが恥ずかしい。馬車の中で両頬を自分の手で冷やした。相談しに行ったが、結局話せなかった。よくよく考えたらカリスの名誉もあるので、一人で解決するしかない。
「ちょっと、馬車止めて!」
「え、どうされましたか!?」
エヴリーヌの掛け声に、御者が馬車を止めてくれる。扉を開いてエヴリーヌは周囲を見回した。
「奥様? なにかありましたか?」
「今、いえ、神殿に行ってくれない?」
「承知しました」
今、横道になにかが見えた気がした。黒いもやのようなものだ。
(疫病? 風邪がはやってるって話だったし。でももう少し、嫌な感じの)
気のせいか? だが、あまり良い気ではなかった。風邪がはやっているとしたら、風邪ではなく疫病かもしれない。確認はしておいた方がいいだろう。
地方でも冬は疫病がはやり、黒いもやが村を覆ったことがある。しかし、まだ冬にもなっていないのに、風邪がはやるのも珍しい。
「なんだろう。嫌な感じね」
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