ロンガニアの花 ー薬師ロンの奔走記ー

MIRICO

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50 ーロンガニアの花ー

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 日差しの中で、いつも通りと薬草を摘み取る。昼に咲く花をもいで、花びらのお茶を飲むつもりだ。
 お湯を注げば花びらが開いて、味もその見目もいいハーブティーになる花である。
 父親の分と、自分の分、それから客に出す分。

 扉を開くと、そこに銀の煌めきが見える。

「これは、見たことがないな…」
 眉の間にしわを集めて、リングはその枝をまじまじと眺めた。
 持っていた本を広げると、枝を探しはじめる。
「それね、この辺りでしか取れない品種なんだ。でも見たことなくて当然かも。それ化粧品に使うものだから」
 ロンに説明されて、部屋にあった別の本を手にする。どこに何があるかももうリングは分かっていた。
 王族直属薬師が化粧品に使う美容液なんてもの、作ったことはなかろうに。それでも勉強になるのか、本を眺めては納得するように頷いた。
「村にいる奥様方がほしがるんだ。そっち系も沢山作ってって。日に焼けるからそれようで…」
 話している途中、外の門扉が開く音がした。誰が来たのか気付いてすぐに扉を開ける。

「…何で、先にお前がいるんだ?」
 同じ銀色をまとう男は、汗をぬぐいながら不機嫌そうに入ってきた。
「来るなら、一緒に来ればいいのにね」
「違う!来るな!ここにいるな!薬草取り行くって言って、何でここなんだよ。他に行け!」
 久しぶりに訪れたシェインは、既に椅子に座ってくつろいでいるリングに、出て行けと言わんばかりに外を指差した。
「今日は定例の情報交換だ。お前に何か言われる筋合いはない」
 シェインががなれば、リングはつんとよそを向く。仲のいい兄弟喧嘩である。
「お前こそ、大聖騎士団は暇なのか?わざわざ長旅をして、いい身分だな」
「俺は、ティオに許しをもらってるんだよ。パンドラの確認と、ロンの薬草をもらいに!」
「暇なのか?」
「んだと!?」
 仲よしだなあ。なんて、言えば二人共怒るわけだが。ロンはシェインとリングの言い争いを、まるで母親の気分で眺めていた。
 リングは薬草を探しに。シェインはパンドラを無闇勝手に使っていないか確認に。どちらも何とも言えない理由でロンに会いに来ていた。
 何故か二人が同じ時期に来るのはティオの陰謀のような気がするのだが、間違ってはいないだろう。二人がここに訪れる為に許可を出すのはティオである。

「まあまあ、お茶でも飲んでゆっくりして。疲れたでしょ。すぐお昼にするからね」
 ロンの言葉に二人はすぐに口を閉じる。
 子供の頃離れていたせいでか、今更彼等は口喧嘩を行うわけである。人のことをだしにして喧嘩を楽しんでいるようにしか見えないのだが、それも口にするのはやめよう。何にしてもよい状況だ。前に比べればずっと近い場所で言い合えるのだから。
 わいわいがやがや。見ているだけで微笑ましい。

「ロン、来月の花祭りは城へ来いと、ティオが」
「丁度、パンドラの解読に城へ来る予定だ」
 シェインが言えばリングが答える。リングの言葉に目くじらを立てるのはいつもシェインだった。その様を見ているだけで楽しい。
「もう一年か。早いなー。今年はのんびり見れるだろうね」
 早いものだと思い起こして、ロンは二人を見やる。銀の煌めきは変わらず、けれど二人並んで座っていた。
「俺は警備」
「なら、私が案内しよう。その日は非番だから」
「なん、で、そうなるんだよ!」
 シェインがガタリと椅子を倒さんばかりに立ち上がる。リングがそれを横目でちらりと一目。
 その視線にもシェインは噛み付かんばかり。

 この二人、実は喧嘩がしたくてここに来てるんではないか思いたくなる。
「仲がよくていいねえ」
 やはり口にしてしまった。
 ロンの言葉に二人が同時にこちらを見る。
 驚くことないだろうに。二人は仲よしだ。

「絶対に違う!」
「有り得ない」

 同時に発言して、お互い顔を見合わせる。
 綺麗な花が顔を向き合わせているみたいだ。
 そのうちトゲでも出して戦いそうである。

 まあ、仲がいいことは何よりだ。

 そう思って、続く二人の口喧嘩を、ロンは暖かく見守ることにした。
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