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16 ー絵本ー
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「こんな場所があったんですね」
アロイスを連れたまま、フィオナはクラウディオに案内されて書庫にやってきた。
いつも来ていた書庫には、フィオナが気付かなかった小さな扉があった。本棚ごと開くと下る階段があり、薄暗いそこを降りると隠された部屋があった。小さな書庫になっているのだ。
「古い文献が収められています。歴史あるものなので、厳重に保管されているんです。これをどうぞ。魔物に関する文献です。子供の頃、私も読まされました」
渡された本はところどころ茶色に染まっており、埃っぽい匂いがしカビ臭さを感じる。古い本なのだろう。触れると破いてしまうのではないかとどきどきする。
アロイスが触らないように慎重にページをめくっていると、先ほどの絵本と同じ内容の文章があった。
『魔法使いは魔獣を倒したが、法外な褒美を欲しがった。その上魔獣を操り、国を混乱に陥れた』
『その魔法使いのふりをした魔物を倒すために王が立ち上がり、遠い土地で魔物を封じることに成功した』
「……王は人々を助け英雄とされ、長く国を統治した。物語みたいな歴史ですね」
「何百年も前にあった国の話ですからね。大国であったため、王の権威を地方にまで轟かせるために、こんな物語を作ったのかもしれません」
フィオナはこれに似た話を知っていた。だが、似ていても全く違う話だ。
「どうかされましたか?」
「あの、これに似た別の話の本はありませんか?」
「別の話……ですか? モーリス、見たことはあるか?」
クラウディオは聞いたことがないとモーリスに問うが、モーリスも知らないと首を振る。
「どんな内容なのですか?」
「偉い人に命じられて遠い土地へ魔獣の討伐に行った魔法使いが、自らの命を使って魔獣を封じた話です」
「同じような話ですが、魔法使いが自分を使って封じたという話なんですね。聞いたことはないですが……」
クラウディオやモーリスだけでなく、リディも聞いたことがないそうだ。こちらで有名なのは魔法使いが悪役で、魔法使いが封じられる話しかない。
元は同じ話だが、伝わる途中話が変わったのだろうか。この国とフィオナの国は、元は同じ大国だったようだし、離れているせいで話が変わったかもしれない。
そうでなければ……。
「あとでそんな本がないか探させましょう。……セレスティーヌ? 大丈夫ですか!?」
「……だい、じょうぶです。少し、頭痛が」
頭にずきりと痛みを感じて、フィオナは額を押さえた。少しめまいもある。
セレスティーヌの体とはいえ、急にダンスなどしたからだろうか。それで文字を読んで頭が痛くなったのか、大丈夫だと顔を上げようとした時、体がふわりと浮いた。
「え、わっ!」
「部屋にお連れします!」
どこにそんな力があるのか。クラウディオがセレスティーヌの体を軽々と抱き上げたのだ。
(お姫様抱っこ!!)
「だ、大丈夫です!」
「いえ、ダンスの練習で無理をしたせいかもしれません。モーリス、医者を呼んでくれ!」
ほんのちょっと頭痛とめまいがあっただけなのに、クラウディオは大袈裟だ。しかし、有無を言わせずセレスティーヌを抱き上げたまま書庫を出る。驚いたアロイスが後ろで泣き喚く声も聞こえた。
「アロイスが……」
「乳母が連れてきています」
クラウディオはアロイスは後回しだと、廊下を大股で歩いた。セレスティーヌの体を抱いたまま、よくそんな早く歩けるものだと感心するが、それよりも、クラウディオが近すぎて困る。
あまりしっかり見ることのなかったクラウディオ。ダンス中でも足元を見てしまっていたので、ほとんど顔を見ていなかったことに気付く。
左眉毛の上に小さなホクロを見付け、そんなもの気付くほどの近さで、目のやり場に困る。
しかもなんだか爽やかな良い香りがする。先ほどまでダンスを踊っていたのだから、セレスティーヌの体は汗臭いのではなかろうか。フィオナはいたたまれなくなってくる。
「あの、本当に、大丈夫」
「すぐに部屋に着きます」
クラウディオにぴしゃりと言われてフィオナは口を閉じた。体調が悪いからと言ってお姫様抱っこで運ばれるなど初めての経験だ。体調が悪くなっても一人で歩いてベッドに潜っていたことを思い出して、フィオナはクラウディオの体温を感じることに不思議な気持ちになった。
(嫌いだと態度に出すくせに、目の前で体調を悪くしたら運んでくれるのね)
セレスティーヌが倒れた時も、フィオナが目を覚ました時は睨み付けていたが、倒れたと聞いた時は驚いたのではないだろうか。目の前で倒れていれば、セレスティーヌを心配したのではないだろうか。
セレスティーヌが仮病などしていなければ、クラウディオも信じただろうに。
「休んでください。無理をさせました」
「いえ、運んでくださって、ありがとうございます」
ベッドに座らせてもらい、フィオナが素直に礼を言うと、クラウディオはぱっと顔を背けた。
驚いて運んだはいいが、一瞬で後悔したのだろうか? モゴモゴ何か言って、医者はまだかとモーリスに大声を出す。
その声にモーリスが急いで呼んでくるようにメイドに伝え、大声に驚いたアロイスは大泣きして、大騒ぎだ。
「アロイス、いらっしゃい」
「セレスティーヌ、座っていないで眠ってください!」
そこまでひどいわけではないのだが、クラウディオがやけに心配するので、フィオナは大人しくベッドに横になる。もう眠くなるであろう、アロイスを先にベッドに眠らせればクラウディオは片眉を上げたが、大人しく横になったので小さく息を吐いた。
(怒ってるのかしら……?)
なまじ会うたびいつも不機嫌なので、ため息をつかれるとどきりとする。
それを確認する前に医師がやってきて、クラウディオはそのまま部屋を出て行った。
ダンスの休憩に書庫へ行ったら体調を崩したので、呆れているのかもしれない。
医師に診てもらえば特に悪いところはなく、ただダンスの練習で疲労しただけだろうと診断された。眠っていれば問題ないとのことだ。
クラウディオの剣幕が激しかったので、フィオナは静かに眠ることにした。
アロイスを連れたまま、フィオナはクラウディオに案内されて書庫にやってきた。
いつも来ていた書庫には、フィオナが気付かなかった小さな扉があった。本棚ごと開くと下る階段があり、薄暗いそこを降りると隠された部屋があった。小さな書庫になっているのだ。
「古い文献が収められています。歴史あるものなので、厳重に保管されているんです。これをどうぞ。魔物に関する文献です。子供の頃、私も読まされました」
渡された本はところどころ茶色に染まっており、埃っぽい匂いがしカビ臭さを感じる。古い本なのだろう。触れると破いてしまうのではないかとどきどきする。
アロイスが触らないように慎重にページをめくっていると、先ほどの絵本と同じ内容の文章があった。
『魔法使いは魔獣を倒したが、法外な褒美を欲しがった。その上魔獣を操り、国を混乱に陥れた』
『その魔法使いのふりをした魔物を倒すために王が立ち上がり、遠い土地で魔物を封じることに成功した』
「……王は人々を助け英雄とされ、長く国を統治した。物語みたいな歴史ですね」
「何百年も前にあった国の話ですからね。大国であったため、王の権威を地方にまで轟かせるために、こんな物語を作ったのかもしれません」
フィオナはこれに似た話を知っていた。だが、似ていても全く違う話だ。
「どうかされましたか?」
「あの、これに似た別の話の本はありませんか?」
「別の話……ですか? モーリス、見たことはあるか?」
クラウディオは聞いたことがないとモーリスに問うが、モーリスも知らないと首を振る。
「どんな内容なのですか?」
「偉い人に命じられて遠い土地へ魔獣の討伐に行った魔法使いが、自らの命を使って魔獣を封じた話です」
「同じような話ですが、魔法使いが自分を使って封じたという話なんですね。聞いたことはないですが……」
クラウディオやモーリスだけでなく、リディも聞いたことがないそうだ。こちらで有名なのは魔法使いが悪役で、魔法使いが封じられる話しかない。
元は同じ話だが、伝わる途中話が変わったのだろうか。この国とフィオナの国は、元は同じ大国だったようだし、離れているせいで話が変わったかもしれない。
そうでなければ……。
「あとでそんな本がないか探させましょう。……セレスティーヌ? 大丈夫ですか!?」
「……だい、じょうぶです。少し、頭痛が」
頭にずきりと痛みを感じて、フィオナは額を押さえた。少しめまいもある。
セレスティーヌの体とはいえ、急にダンスなどしたからだろうか。それで文字を読んで頭が痛くなったのか、大丈夫だと顔を上げようとした時、体がふわりと浮いた。
「え、わっ!」
「部屋にお連れします!」
どこにそんな力があるのか。クラウディオがセレスティーヌの体を軽々と抱き上げたのだ。
(お姫様抱っこ!!)
「だ、大丈夫です!」
「いえ、ダンスの練習で無理をしたせいかもしれません。モーリス、医者を呼んでくれ!」
ほんのちょっと頭痛とめまいがあっただけなのに、クラウディオは大袈裟だ。しかし、有無を言わせずセレスティーヌを抱き上げたまま書庫を出る。驚いたアロイスが後ろで泣き喚く声も聞こえた。
「アロイスが……」
「乳母が連れてきています」
クラウディオはアロイスは後回しだと、廊下を大股で歩いた。セレスティーヌの体を抱いたまま、よくそんな早く歩けるものだと感心するが、それよりも、クラウディオが近すぎて困る。
あまりしっかり見ることのなかったクラウディオ。ダンス中でも足元を見てしまっていたので、ほとんど顔を見ていなかったことに気付く。
左眉毛の上に小さなホクロを見付け、そんなもの気付くほどの近さで、目のやり場に困る。
しかもなんだか爽やかな良い香りがする。先ほどまでダンスを踊っていたのだから、セレスティーヌの体は汗臭いのではなかろうか。フィオナはいたたまれなくなってくる。
「あの、本当に、大丈夫」
「すぐに部屋に着きます」
クラウディオにぴしゃりと言われてフィオナは口を閉じた。体調が悪いからと言ってお姫様抱っこで運ばれるなど初めての経験だ。体調が悪くなっても一人で歩いてベッドに潜っていたことを思い出して、フィオナはクラウディオの体温を感じることに不思議な気持ちになった。
(嫌いだと態度に出すくせに、目の前で体調を悪くしたら運んでくれるのね)
セレスティーヌが倒れた時も、フィオナが目を覚ました時は睨み付けていたが、倒れたと聞いた時は驚いたのではないだろうか。目の前で倒れていれば、セレスティーヌを心配したのではないだろうか。
セレスティーヌが仮病などしていなければ、クラウディオも信じただろうに。
「休んでください。無理をさせました」
「いえ、運んでくださって、ありがとうございます」
ベッドに座らせてもらい、フィオナが素直に礼を言うと、クラウディオはぱっと顔を背けた。
驚いて運んだはいいが、一瞬で後悔したのだろうか? モゴモゴ何か言って、医者はまだかとモーリスに大声を出す。
その声にモーリスが急いで呼んでくるようにメイドに伝え、大声に驚いたアロイスは大泣きして、大騒ぎだ。
「アロイス、いらっしゃい」
「セレスティーヌ、座っていないで眠ってください!」
そこまでひどいわけではないのだが、クラウディオがやけに心配するので、フィオナは大人しくベッドに横になる。もう眠くなるであろう、アロイスを先にベッドに眠らせればクラウディオは片眉を上げたが、大人しく横になったので小さく息を吐いた。
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それを確認する前に医師がやってきて、クラウディオはそのまま部屋を出て行った。
ダンスの休憩に書庫へ行ったら体調を崩したので、呆れているのかもしれない。
医師に診てもらえば特に悪いところはなく、ただダンスの練習で疲労しただけだろうと診断された。眠っていれば問題ないとのことだ。
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