目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです

MIRICO

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27① ー混乱ー

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 離れて暮らすことに反対されるとは思ってもみなかった。

(離婚できないみたいだから、別居しようって提案だったんだけれど)

 セレスティーヌの両親をかわすには良い案だと思ったのだが、クラウディオからすればなにか問題があるのだろうか。

「セレスティーヌ様、お客様がいらっしゃいました」

 リディがセレスティーヌと呼んで、慌てるようにして客の到来を知らせた。
 リディの後ろには、ぞろり女性たちがついてきていた。
 何事か。またパーティなのか。女性たちと共に布や衣装が運ばれてきて、フィオナは口を開きっぱなしにしそうになった。その量が部屋を埋め尽くすほどだったからだ。

「お呼びいただきありがとうございます」

 女性たちの主人のような人が挨拶をしてからそんなことを言って、カタログを開いてくる。

(なんなの? 餞別ってこと??)

 反対していた割に、衣装を新調して持っていけということだろうか。
 フィオナは意味が分からずリディを見遣ったが、リディも困ったような顔をして耳打ちしてくる。

「旦那様からの命令でいらっしゃったのは間違いないんですが、どうしてそうなったのかは分かりません。セレスティーヌ様の専属ですので、購入したいだけ購入してください。いつもそうなさっていたので」

 フィオナはごくりと唾を飲み込む。またセレスティーヌを知っている人が来たわけだ。
 しかも、セレスティーヌの趣味を知っている人ときたら、フィオナの趣味で衣装を選んだ時、まったく趣味が違うことに気付かれるだろう。

「本日はどのようなお衣装をお作りいたしますか?」

 品の良い女性が派手な衣装のカタログを見せてくる。衣装だけでなく宝飾や靴など、小物なども揃えていると、箱から出した。

 どうする。セレスティーヌらしくしたいところだが、普段どんな会話をしているかなど想像が付かない。端から端までなんて言えば納得するだろうか。

 リディや、乳母、メイドたちをちらりと目にして、フィオナはにっこりと笑顔をつくった。

「今日は、皆の衣装を新調したいの。公爵家のメイドとして、新しい衣装を刷新したいと思っていたのよ」
「皆様のですか??」
「私の衣装も増やしたいとは思ったのだけれど、それよりも、皆の衣装を増やした方が箔がつくと思わない? ねえ、あなたたち。どんな衣装がいいかしら。働きやすそうで、けれど美しく見える衣装がいいと思うの」

 フィオナの言葉に控えていたメイドたちがわっと喜んだ。もちろん乳母たちにも新しい衣装を作らせたいと言いながら、彼女たちの意見を聞く。彼女たちはどんな布が良いのか、喜んで参加してきた。

「この布素敵だわ」
「柔らかい布でないと動きにくいわよ」
「メイドの衣装は少しスカートが広がって邪魔になりそうだし、プリーツが入ったのなんてどうかしら?」
「プリーツですか?」

 フィオナはカタログを開きながら、メイドたちの衣装を提案する。掃除などをしている時ふんわりしすぎて邪魔そうだと常々思っていたのだ。
 皆もわいわい言いながら意見を出す。メイドたちや乳母たちの衣装だけで結構な数になるだろう。セレスティーヌらしく大金とまではいかないが、そこそこのお金は使えると思う。

(えらいわ、私! なんとかなりそう)

「夫人の衣装はよろしいのでしょうか?」
「今日は彼女たちのだけで十分よ。エプロンや靴なども新調してあげて」

 なんとか事なきを得た。フィオナはなんとかこの場をやり過ごしたのである。
 




「なぜ、メイドたちの衣装を購入することに……?」

 午後になり、衣装購入の報告をクラウディオにしに行くと、どうして困惑した顔をしてきた。

(困ったのは私の方なんだけれど……)

「私は、あなたにと」
「私は必要ありませんから」

 パーティに行くのならばともかく、普段着る衣装など、正直なところなんでもいい。
 なんならメイド服でもいいくらいだ。フィオナの家ではそこまで大そうな衣装を着ていなかった。セレスティーヌの衣装は上等すぎて時折煩わしくなってしまうほどである。

「宝石類も、一切買わなかったのですか?」
「そういったものも、必要ありませんから」

 装飾品を着けるのも、実は慣れていない。常にネックレスを着けているだけで肩が凝るような気がする。セレスティーヌの体ではそんなこと起きないが、フィオナの体だったら夕方になる頃にはぐったりしているだろう。
 着け慣れていないし、それが必要だと思ったこともない。そうであれば、欲しいとも思わないのだ。

(セレスティーヌなら欲しがるだろうけれど、私はそれの良し悪しもあまりよく分からないのよ)

 気を遣っていただいて申し訳ないが、フィオナには十分すぎる物を元々セレスティーヌが持っている。これ以上増やしたいとか、考えたことはない。

「あの、なぜ急に店の者をお呼びになられたんですか? 餞別でしたら必要ないので……」
「そのような意味ではっ!」

 ならばどんな意味なのだろう。フィオナが首を傾げそうになると、クラウディオはきゅっと唇を噛んで黙りこくってしまった。

 たまにある、クラウディオの沈黙。

 なにを考えているのか。考えあぐねているのか。フィオナの選択に、クラウディオは理解が追い付かないのか。口を閉じて眉根を寄せたままだ。

「えーと。はっきりおっしゃってくださった方が助かります。私も察しが良い方ではないので。話してくださらなければ、なにも分かりません」
「……パーティの礼です」
「礼をもらうようなことはしてませんが?」

 なんの話だろうか。パーティに同行したことだろうか。
 フィオナにはまったく分からない。クラウディオもそれ以上は言わず、口を閉じていただけだったので、フィオナは結局訳がわからぬまま部屋を出ることにした。モーリスが目配せしてきたので、問題ないだろう。部屋を出ると、その後ろでクラウディオがどさりと力を失ったように椅子に座る音が聞こえた。

(なんだろうな。なんなのかしら? 餞別じゃなくて、じゃあなんなの??)

 部屋にいたモーリスもどこか困ったような顔をしていた。クラウディオとフィオナと交互にチラチラ見ては、クラウディオの沈黙に歯痒そうな顔を見せる。

(空気読まないクラウディオがしそうなことって何かしら……)

 クラウディオの行動にフィオナ頭の中ではてなしか出てこない。なにを求めているのか考えてみたが、結局なにも分からず、フィオナの世話をするメイドたちの衣装が刷新されることになったのだ。
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