20 / 48
11 商品
しおりを挟む
帰り道、馬車の中で、エスターは口を尖らせた。
アルヴェールがその顔をその辺でやるなよ。と注意すれば、外ではやらないわよと反論する。
「なにが気に食わないんだ。気に入ったものがあったのだろう?」
予定ではドレスのつもりだったが、ドレスがなかったため不満なのかと思ったが、エスターは首を振る。
「珍しくない? いつもならデザイナーを紹介してくれるのに。みんなで案を出した。なんて。デザイナーを他に奪われたから、警戒しているのかしら」
「手が足りていないのは間違いなさそうだったな。商品の数が少なすぎた」
ドレスなどもあったが、ぱっとした物はなく、目に付いたのはレースのハンカチやショールなど、小物ばかりだった。ドレスまで手が回らないのだろう。改善する余裕がないのだ。出ている商品だけでまかなっているあたり、オーダーメイドで製作するのは難しそうだ。
(いったい、何人奪われたやらだな)
「でも、どこで新しいデザイナーなんて見つけてきたのかしら。あの店はもうダメっていう噂があったくらいだもの、デザイナーも勤め先に選ばなそうだけれど。無名のデザイナーが好機だと思って売りに行ったのかも? お兄様?」
「開けないのか?」
「見たいの? 素敵だったものねえ」
エスターはご機嫌で箱を開く。気になったのはデザインではない。それは口にせず、広げられたハンカチやショールを見つめた。
「素敵だわあ。このレースの編み方。蝶が舞っているみたい。今にも飛んでいってしまいそうよね。絶対いいデザイナーだから、紹介したくないのよ。また奪われたらたまらないものね」
「よく見せてくれ」
「なあに? 誰かに渡したくなった?」
「加護かかけられている」
「え!? 加護?? そんな特別品なんて言ってなかったわよ!? そんな価格じゃなかったじゃない」
加護というべきか、あたたかい光を感じた。
触れてみてやっと気づく程度だが、微かでも強い想いが感じられる。
加護がかけられている物は高級品で、主に戦いに行く時に持つ守護の石などが有名だ。剣や盾に加護をかけることもあるが、はめ込む石に加護の魔法をかけるのが主流だ。身に付ける物に加護はかけられるが、ハンカチなどにかけるものではない。
「体調が悪い時にでも持つといいぞ。治ることもあるだろうな」
「ええ、すごい! そういう加護もあるのね。剣とかについているのは聞いたことあるけど、あれは攻撃を弱くするとかでしょう?」
「戦争に行くときなどの有事に持つ物だからな。魔法の中でも加護の力は珍しい。編んだ者の祈りが加護になったのだろう。宝石などにかける加護などに比べたら弱いものだ」
「でも、すごいデザイナー見つけたってことじゃない。それであの価格なの? 加護のかけられたハンカチってだけで、高額で売れるのに!」
触れればほのかに温かさを感じ、作った人間の温かさまで感じるようだ。
石に祈りを込めるのとは違う。祈りながら編んだのだろう。購入した物にはすべて加護がかけられている。だとしたら、商品すべてに加護がかかっているのだ。
(意識して行っているのだろうか)
強力な物ではないが、それなりに効果がある。何枚も編めば疲れも溜まるだろうに。
気のせいか、感じたことのある力のように思えた。
(まさかな)
「パーティに持っていきましょー!」
馬車の中ではしゃぐエスターを前にして、アルヴェールは一人の女性を思い浮かべていた。
アルヴェールがその顔をその辺でやるなよ。と注意すれば、外ではやらないわよと反論する。
「なにが気に食わないんだ。気に入ったものがあったのだろう?」
予定ではドレスのつもりだったが、ドレスがなかったため不満なのかと思ったが、エスターは首を振る。
「珍しくない? いつもならデザイナーを紹介してくれるのに。みんなで案を出した。なんて。デザイナーを他に奪われたから、警戒しているのかしら」
「手が足りていないのは間違いなさそうだったな。商品の数が少なすぎた」
ドレスなどもあったが、ぱっとした物はなく、目に付いたのはレースのハンカチやショールなど、小物ばかりだった。ドレスまで手が回らないのだろう。改善する余裕がないのだ。出ている商品だけでまかなっているあたり、オーダーメイドで製作するのは難しそうだ。
(いったい、何人奪われたやらだな)
「でも、どこで新しいデザイナーなんて見つけてきたのかしら。あの店はもうダメっていう噂があったくらいだもの、デザイナーも勤め先に選ばなそうだけれど。無名のデザイナーが好機だと思って売りに行ったのかも? お兄様?」
「開けないのか?」
「見たいの? 素敵だったものねえ」
エスターはご機嫌で箱を開く。気になったのはデザインではない。それは口にせず、広げられたハンカチやショールを見つめた。
「素敵だわあ。このレースの編み方。蝶が舞っているみたい。今にも飛んでいってしまいそうよね。絶対いいデザイナーだから、紹介したくないのよ。また奪われたらたまらないものね」
「よく見せてくれ」
「なあに? 誰かに渡したくなった?」
「加護かかけられている」
「え!? 加護?? そんな特別品なんて言ってなかったわよ!? そんな価格じゃなかったじゃない」
加護というべきか、あたたかい光を感じた。
触れてみてやっと気づく程度だが、微かでも強い想いが感じられる。
加護がかけられている物は高級品で、主に戦いに行く時に持つ守護の石などが有名だ。剣や盾に加護をかけることもあるが、はめ込む石に加護の魔法をかけるのが主流だ。身に付ける物に加護はかけられるが、ハンカチなどにかけるものではない。
「体調が悪い時にでも持つといいぞ。治ることもあるだろうな」
「ええ、すごい! そういう加護もあるのね。剣とかについているのは聞いたことあるけど、あれは攻撃を弱くするとかでしょう?」
「戦争に行くときなどの有事に持つ物だからな。魔法の中でも加護の力は珍しい。編んだ者の祈りが加護になったのだろう。宝石などにかける加護などに比べたら弱いものだ」
「でも、すごいデザイナー見つけたってことじゃない。それであの価格なの? 加護のかけられたハンカチってだけで、高額で売れるのに!」
触れればほのかに温かさを感じ、作った人間の温かさまで感じるようだ。
石に祈りを込めるのとは違う。祈りながら編んだのだろう。購入した物にはすべて加護がかけられている。だとしたら、商品すべてに加護がかかっているのだ。
(意識して行っているのだろうか)
強力な物ではないが、それなりに効果がある。何枚も編めば疲れも溜まるだろうに。
気のせいか、感じたことのある力のように思えた。
(まさかな)
「パーティに持っていきましょー!」
馬車の中ではしゃぐエスターを前にして、アルヴェールは一人の女性を思い浮かべていた。
134
あなたにおすすめの小説
妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~
サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
完結 貴族生活を棄てたら王子が追って来てメンドクサイ。
音爽(ネソウ)
恋愛
王子の婚約者になってから様々な嫌がらせを受けるようになった侯爵令嬢。
王子は助けてくれないし、母親と妹まで嫉妬を向ける始末。
貴族社会が嫌になった彼女は家出を決行した。
だが、有能がゆえに王子妃に選ばれた彼女は追われることに……
孤島送りになった聖女は、新生活を楽しみます
天宮有
恋愛
聖女の私ミレッサは、アールド国を聖女の力で平和にしていた。
それなのに国王は、平和なのは私が人々を生贄に力をつけているからと罪を捏造する。
公爵令嬢リノスを新しい聖女にしたいようで、私は孤島送りとなってしまう。
島から出られない呪いを受けてから、転移魔法で私は孤島に飛ばさていた。
その後――孤島で新しい生活を楽しんでいると、アールド国の惨状を知る。
私の罪が捏造だと判明して国王は苦しんでいるようだけど、戻る気はなかった。
美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛
らがまふぃん
恋愛
こちらは以前投稿いたしました、 美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛 の続編となっております。前作よりマイルドな作品に仕上がっておりますが、内面のダークさが前作よりはあるのではなかろうかと。こちらのみでも楽しめるとは思いますが、わかりづらいかもしれません。よろしかったら前作をお読みいただいた方が、より楽しんでいただけるかと思いますので、お時間の都合のつく方は、是非。時々予告なく残酷な表現が入りますので、苦手な方はお控えください。10~15話前後の短編五編+番外編のお話です。 *早速のお気に入り登録、しおり、エールをありがとうございます。とても励みになります。前作もお読みくださっている方々にも、多大なる感謝を! ※R5.7/23本編完結いたしました。たくさんの方々に支えられ、ここまで続けることが出来ました。本当にありがとうございます。ばんがいへんを数話投稿いたしますので、引き続きお付き合いくださるとありがたいです。 ※R5.8/6ばんがいへん終了いたしました。長い間お付き合いくださり、また、たくさんのお気に入り登録、しおり、エールを、本当にありがとうございました。 ※R5.9/3お気に入り登録200になっていました。本当にありがとうございます(泣)。嬉しかったので、一話書いてみました。 ※R5.10/30らがまふぃん活動一周年記念として、一話お届けいたします。 ※R6.1/27美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛(前作) と、こちらの作品の間のお話し 美しく冷酷な公爵令息様の、狂おしい熱情に彩られた愛 始めました。お時間の都合のつく方は、是非ご一読くださると嬉しいです。※R6.5/18お気に入り登録300超に感謝!一話書いてみましたので是非是非!
*らがまふぃん活動二周年記念として、R6.11/4に一話お届けいたします。少しでも楽しんでいただけますように。 ※R7.2/22お気に入り登録500を超えておりましたことに感謝を込めて、一話お届けいたします。本当にありがとうございます。 ※R7.10/13お気に入り登録700を超えておりました(泣)多大なる感謝を込めて一話お届けいたします。 *らがまふぃん活動三周年周年記念として、R7.10/30に一話お届けいたします。楽しく活動させていただき、ありがとうございます。 ※R7.12/8お気に入り登録800超えです!ありがとうございます(泣)一話書いてみましたので、ぜひ!
【完結】 私を忌み嫌って義妹を贔屓したいのなら、家を出て行くのでお好きにしてください
ゆうき
恋愛
苦しむ民を救う使命を持つ、国のお抱えの聖女でありながら、悪魔の子と呼ばれて忌み嫌われている者が持つ、赤い目を持っているせいで、民に恐れられ、陰口を叩かれ、家族には忌み嫌われて劣悪な環境に置かれている少女、サーシャはある日、義妹が屋敷にやってきたことをきっかけに、聖女の座と婚約者を義妹に奪われてしまった。
義父は義妹を贔屓し、なにを言っても聞き入れてもらえない。これでは聖女としての使命も、幼い頃にとある男の子と交わした誓いも果たせない……そう思ったサーシャは、誰にも言わずに外の世界に飛び出した。
外の世界に出てから間もなく、サーシャも知っている、とある家からの捜索願が出されていたことを知ったサーシャは、急いでその家に向かうと、その家のご子息様に迎えられた。
彼とは何度か社交界で顔を合わせていたが、なぜかサーシャにだけは冷たかった。なのに、出会うなりサーシャのことを抱きしめて、衝撃の一言を口にする。
「おお、サーシャ! 我が愛しの人よ!」
――これは一人の少女が、溺愛されながらも、聖女の使命と大切な人との誓いを果たすために奮闘しながら、愛を育む物語。
⭐︎小説家になろう様にも投稿されています⭐︎
強い祝福が原因だった
棗
恋愛
大魔法使いと呼ばれる父と前公爵夫人である母の不貞により生まれた令嬢エイレーネー。
父を憎む義父や義父に同調する使用人達から冷遇されながらも、エイレーネーにしか姿が見えないうさぎのイヴのお陰で孤独にはならずに済んでいた。
大魔法使いを王国に留めておきたい王家の思惑により、王弟を父に持つソレイユ公爵家の公子ラウルと婚約関係にある。しかし、彼が愛情に満ち、優しく笑い合うのは義父の娘ガブリエルで。
愛される未来がないのなら、全てを捨てて実父の許へ行くと決意した。
※「殿下が好きなのは私だった」と同じ世界観となりますが此方の話を読まなくても大丈夫です。
※なろうさんにも公開しています。
「貴女じゃ彼に不釣りあいだから別れて」と言われたので別れたのですが、呪われた上に子供まで出来てて一大事です!?
綾織季蝶
恋愛
「貴女じゃ彼に不釣りあいだから別れて」そう告げられたのは孤児から魔法省の自然管理科の大臣にまで上り詰めたカナリア・スタインベック。
相手はとある貴族のご令嬢。
確かに公爵の彼とは釣り合うだろう、そう諦めきった心で承諾してしまう。
別れる際に大臣も辞め、実家の誰も寄り付かない禁断の森に身を潜めたが…。
何故か呪われた上に子供まで出来てしまった事が発覚して…!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる