妹を殺そうとした毒姉になったので逃亡することにした

MIRICO

文字の大きさ
22 / 48

12 屋敷

しおりを挟む
「奥様、ひどい顔。もう、フラフラじゃない」
 メイドたちは足を引きずるように頭を揺らしながら歩く、カイヤ・ラスペードを見かけて囁きあった。

 クリスティーンの部屋から出てくるようになったが、ほとんど部屋の中で過ごしている。ベッドの側で一日中過ごしているのか、メイドが食事に呼んでも出てこず、次の日になっても出てこないこともあった。カーテンを閉め切っているため、時間の経過もわかっていないようだった。

「この間、すごかったわよね。怪しげな祈祷師みたいなの呼んで」
「旦那様の激怒が凄まじかったわ。追い出された祈祷師がかわいそうだったくらい」
「顔の傷に悪魔が取り憑いている。なんて言ったんでしょ? 追い出されるわよ。そんなの」
「傷は魔道具を使ったせいだから、医者が治せないって言ってたわよ。呪いがかかっているんですって。それ聞いたから祈祷師なんて呼んだんでしょ。呪いの治し方は知らなかったらしいけど」
「怖いわ。どこでそんな恐ろしい道具手に入れたのかしら」

 ちらりとクリスティーンの部屋を見やる。扉は閉まっているが、今は入る気がしない。中に入れるメイドは決まっていないが、それでも入る気が起きなかった。

 掃除をしろと命じられてもカイヤがいるため、掃除をしようとすると追い出される。クリスティーンがほこりにまみれるだの、眠っているのにうるさいだの、文句を言ってくるのだ。それもヒステリックに泣き叫ぶように言うので、誰も近寄りたがらない。中は薄暗く、カイヤはやつれて顔色も悪いため、病にでも罹っていそうな雰囲気もあり、カイヤこそ呪いにかけられたのではないかと噂するメイドもいた。
 それもあって、誰もがクリスティーンの部屋に入りたがらないのだ。

「魔道具が呪いの道具だってわかってて使ったんでしょう? すごい恨みよね」
「ジョアンナ様がそれを使うと思う?」
「違うでしょ。奥様が怖くて誰も言わなかったけど、やったの絶対クリスティーン様よ」
「怖すぎるでしょ。姉を呪おうとするとか。それで自分があの顔になってるんだもの。自業自得だけど」
「目が覚めたらどうなると思う?」

 クリスティーンの顔は半分ただれてしまっている。しかもその範囲が少しずつ広がっているというのだ。
 メイドたちは体を震わせて部屋の前をそそくさと通り過ぎる。近づけば自分たちにもその呪いにかかりそうな気がするからだ。
 もしもクリスティーンが目覚めても、自分の顔を見て愕然とするだろう。死んだ方がマシだと思うかもしれない。その時の激昂は想像に難くない。

「今、なにか物音がしなかった?」
「ちょっと、やめてよ。奥様が出て行ったんだから、クリスティーン様しかいないわよ」
 言って、顔を見合わせる。
 クリスティーンの部屋から、微かな声が届いた。







「旦那様! 奥様! クリスティーン様が!」
 にわかに屋敷は騒ぎになった。

「クリスティーン!」
「お父様、お母様?」
「ああ、神よ! どれだけ心配したことか。クリスティーン」
「レオハルト様は? レオハルト様はどちらにいらっしゃるの!?」

 目が覚めてすぐにその言葉出てくることに、カイヤは嗚咽を漏らす。クリスティーンは周囲にいたメイドたちに視線を向けたが、誰もがその視線を逸らすように顔を背けた。

「レオハルト様は、お姉様と婚約破棄したんでしょう? 私と結婚の約束をしたんだから、婚約しなきゃいけないのよ? レオハルト様はどこ!?」
「すぐに連絡をするわ!」
「お母様、お願いよ!」

 クリスティーンの言葉に、カイヤは手紙を書くための紙を持ってこいと命令する。急いで部屋を飛び出すメイドを横に、父親のヘンリが部屋に入ってきたが、およそ娘を心配するような顔をしていなかった。

「お前たち、邪魔だ! さっさと仕事に戻れ! カイヤ、お前は余計なことをするな!」
 怒鳴り声に、メイドたちが蜘蛛の子を散らすように部屋から離れていく。

「マリアン、近寄らない方がいいわよ。修羅場」
「そうみたいね」

 廊下で騒ぎを聞きつけてやってきたが、近くに来るとその騒ぎのひどさがわかる。
 クリスティーンは状況がわかっていないと、興奮してレオハルトを呼んだ。しかし、すぐにヘンリの罵りが聞こえる。
 お前は騙されたんだ。だの、余計な真似をした。だの、あの手紙を読んでいるため、ヘンリも久しぶりに目覚めた娘に怒りしか湧かないのだろう。
 その声にカイヤが反論し、クリスティーンが現状を知って、しゃがれた声で叫び出した。

「私の顔、私の顔!!」
「自業自得だ! この馬鹿者が!」

 マリアンが踵を返して部屋から離れても、後ろからそんな大声が届いた。
 同情する気にもならない。マリアンはさっさと部屋から離れる。メイドたちも巻き込まれないように、その場を後にした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~

サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

完結 貴族生活を棄てたら王子が追って来てメンドクサイ。

音爽(ネソウ)
恋愛
王子の婚約者になってから様々な嫌がらせを受けるようになった侯爵令嬢。 王子は助けてくれないし、母親と妹まで嫉妬を向ける始末。 貴族社会が嫌になった彼女は家出を決行した。 だが、有能がゆえに王子妃に選ばれた彼女は追われることに……

孤島送りになった聖女は、新生活を楽しみます

天宮有
恋愛
 聖女の私ミレッサは、アールド国を聖女の力で平和にしていた。  それなのに国王は、平和なのは私が人々を生贄に力をつけているからと罪を捏造する。  公爵令嬢リノスを新しい聖女にしたいようで、私は孤島送りとなってしまう。  島から出られない呪いを受けてから、転移魔法で私は孤島に飛ばさていた。  その後――孤島で新しい生活を楽しんでいると、アールド国の惨状を知る。  私の罪が捏造だと判明して国王は苦しんでいるようだけど、戻る気はなかった。

【完結】 私を忌み嫌って義妹を贔屓したいのなら、家を出て行くのでお好きにしてください

ゆうき
恋愛
苦しむ民を救う使命を持つ、国のお抱えの聖女でありながら、悪魔の子と呼ばれて忌み嫌われている者が持つ、赤い目を持っているせいで、民に恐れられ、陰口を叩かれ、家族には忌み嫌われて劣悪な環境に置かれている少女、サーシャはある日、義妹が屋敷にやってきたことをきっかけに、聖女の座と婚約者を義妹に奪われてしまった。 義父は義妹を贔屓し、なにを言っても聞き入れてもらえない。これでは聖女としての使命も、幼い頃にとある男の子と交わした誓いも果たせない……そう思ったサーシャは、誰にも言わずに外の世界に飛び出した。 外の世界に出てから間もなく、サーシャも知っている、とある家からの捜索願が出されていたことを知ったサーシャは、急いでその家に向かうと、その家のご子息様に迎えられた。 彼とは何度か社交界で顔を合わせていたが、なぜかサーシャにだけは冷たかった。なのに、出会うなりサーシャのことを抱きしめて、衝撃の一言を口にする。 「おお、サーシャ! 我が愛しの人よ!」 ――これは一人の少女が、溺愛されながらも、聖女の使命と大切な人との誓いを果たすために奮闘しながら、愛を育む物語。 ⭐︎小説家になろう様にも投稿されています⭐︎

強い祝福が原因だった

恋愛
大魔法使いと呼ばれる父と前公爵夫人である母の不貞により生まれた令嬢エイレーネー。 父を憎む義父や義父に同調する使用人達から冷遇されながらも、エイレーネーにしか姿が見えないうさぎのイヴのお陰で孤独にはならずに済んでいた。 大魔法使いを王国に留めておきたい王家の思惑により、王弟を父に持つソレイユ公爵家の公子ラウルと婚約関係にある。しかし、彼が愛情に満ち、優しく笑い合うのは義父の娘ガブリエルで。 愛される未来がないのなら、全てを捨てて実父の許へ行くと決意した。 ※「殿下が好きなのは私だった」と同じ世界観となりますが此方の話を読まなくても大丈夫です。 ※なろうさんにも公開しています。

美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛

らがまふぃん
恋愛
 こちらは以前投稿いたしました、 美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛 の続編となっております。前作よりマイルドな作品に仕上がっておりますが、内面のダークさが前作よりはあるのではなかろうかと。こちらのみでも楽しめるとは思いますが、わかりづらいかもしれません。よろしかったら前作をお読みいただいた方が、より楽しんでいただけるかと思いますので、お時間の都合のつく方は、是非。時々予告なく残酷な表現が入りますので、苦手な方はお控えください。10~15話前後の短編五編+番外編のお話です。 *早速のお気に入り登録、しおり、エールをありがとうございます。とても励みになります。前作もお読みくださっている方々にも、多大なる感謝を! ※R5.7/23本編完結いたしました。たくさんの方々に支えられ、ここまで続けることが出来ました。本当にありがとうございます。ばんがいへんを数話投稿いたしますので、引き続きお付き合いくださるとありがたいです。 ※R5.8/6ばんがいへん終了いたしました。長い間お付き合いくださり、また、たくさんのお気に入り登録、しおり、エールを、本当にありがとうございました。 ※R5.9/3お気に入り登録200になっていました。本当にありがとうございます(泣)。嬉しかったので、一話書いてみました。 ※R5.10/30らがまふぃん活動一周年記念として、一話お届けいたします。 ※R6.1/27美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛(前作) と、こちらの作品の間のお話し 美しく冷酷な公爵令息様の、狂おしい熱情に彩られた愛 始めました。お時間の都合のつく方は、是非ご一読くださると嬉しいです。※R6.5/18お気に入り登録300超に感謝!一話書いてみましたので是非是非! *らがまふぃん活動二周年記念として、R6.11/4に一話お届けいたします。少しでも楽しんでいただけますように。 ※R7.2/22お気に入り登録500を超えておりましたことに感謝を込めて、一話お届けいたします。本当にありがとうございます。  ※R7.10/13お気に入り登録700を超えておりました(泣)多大なる感謝を込めて一話お届けいたします。 *らがまふぃん活動三周年周年記念として、R7.10/30に一話お届けいたします。楽しく活動させていただき、ありがとうございます。 ※R7.12/8お気に入り登録800超えです!ありがとうございます(泣)一話書いてみましたので、ぜひ!

「貴女じゃ彼に不釣りあいだから別れて」と言われたので別れたのですが、呪われた上に子供まで出来てて一大事です!?

綾織季蝶
恋愛
「貴女じゃ彼に不釣りあいだから別れて」そう告げられたのは孤児から魔法省の自然管理科の大臣にまで上り詰めたカナリア・スタインベック。 相手はとある貴族のご令嬢。 確かに公爵の彼とは釣り合うだろう、そう諦めきった心で承諾してしまう。 別れる際に大臣も辞め、実家の誰も寄り付かない禁断の森に身を潜めたが…。 何故か呪われた上に子供まで出来てしまった事が発覚して…!?

処理中です...